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スタッフブログ

2019年12月28日 土曜日

新人獣医師平林のつぶやき ~マダニが運ぶ感染症~

お久し振りです。平林です。




今日はマダニについてのお話をさせて頂こうと思います。





マダニというとフィラリア、ノミと同様に月に一回の予防薬で対策をされている方が多いかと思います。

そして「予防薬って4~12月じゃなかったっけ?なんで今の季節にマダニの話?」と思っている方も一部いらっしゃるかもしれません。

たしかにフィラリアは蚊が媒介する寄生虫なので蚊のいない時期はお薬をお休みしても良いのですが、実はノミとダニに関しては一年中感染の機会があります

年間でワンちゃんのマダニ被害が最も多いのは秋、9~10月ですが、13℃以上あれば生存・繁殖ができてしまいます。

そのため、ノミダニ予防薬については周年、使って頂くことをオススメします。




では次に、どういった経路でワンちゃんとマダニが出会ってしまうかのお話をさせてください。

マダニは普段草むらに潜んでおり、例えば家の庭や公園、河原などでお散歩のときに寄生をされてしまうことが多いです。

草むらでじっと待ち、ワンちゃんの体に寄生して十分に吸血したら落下、再度草むらで待機、というのを繰り返します。

寄生部位としてよくあるのは、目の縁・耳の付け根・頬・肩・前脚などです。

マダニは寄生の際に接着剤の働きをするセメント様物質を注入し、差し込まれた口器を傷口に固定して強固にくっついてしまいます




次にダニに刺されることによってどのような被害が起こるかです。

まずは皮膚炎

刺された部位が腫れて赤くなり、炎症を起こします。

また、不適切なマダニの除去によって頭部が取れて体内に残ると、化膿することもあります。

次に貧血です。

マダニはノミに比べて吸血量が多く、吸血の前後で体重が200倍違うと言われています。

そのため、大量に寄生されると貧血を起こします。

下に当院のマダニコレクションの一部を紹介させて頂きます。

様々な成長段階、吸血状態が混在しています。







ここまでがマダニに刺されることによる直接の被害です。

そして次は間接的な被害、マダニが運んできてしまう病気についてのお話です。




ノミや蚊、ハエなど、自然界には病気の媒介者として働いてしまう虫がたくさんいます。

マダニもその一つで、吸血時に唾液を介して病原体をワンちゃんの元へ届けてしまいます。

中には人間にも被害をもたらす病気もあり(人獣共通感染症・zoonosisと呼ばれています)、重症化するようなものも決して少なくはありません。

マダニが媒介してしまう病気は数多くありますが、今日はその中の1つ、SFTS重症熱性血小板減少症、以下SFTS)という病気を紹介させて頂きます。




SFTSは、2011年に中国で新しい感染症として報告された病気で、日本国内では2013年に初めて見つかって以降、毎年60~90人前後の患者が報告されています。

この病気は近年問題となることが多く、ペットショップで注意喚起されていたり、ニュースになっていたりもするものです。

西日本での発生が多いですが、それ以外の地域の方も注意が必要です。




まず始めに、SFTSに感染するとどのような健康被害があるかについてお話をさせてください。

ワンちゃんネコちゃんについては、普段と特に変わりがない(不顕性感染)場合がほとんどです。

まれに元気がない・食欲がない・下痢をしている・発熱があるといった症状を示すこともあります。




次に人の場合ですが、こちらは重症化する傾向が非常に強いです。

人も感染経路としてはマダニに咬まれることですが、SFTSを発症している動物の体液に触れることで感染する可能性があるそうなので注意が必要です。

もし人が感染してしまうと、6日~2週間の潜伏期間(感染してから症状を示すまで)を経て、高熱・嘔吐・下痢・頭痛・筋肉痛に加えて、意識障害や呼吸困難、出血症状を引き起こすことがあります。

出血症状というのは、歯肉からの出血や血便、皮下の出血(紫斑)などが挙げられます。

症状としてはインフルエンザ様ですがSFTSの致命率は非常に高く、この病気にかかった人が10人いたら2人はなくなってしまうと言われています。




今回、1例としてSFTSを紹介させて頂きましたが、マダニによって媒介される怖い感染症は非常に多く、この場で全てを紹介させて頂くのは残念ながら難しいです。

これらの病気に対して早期に対応できるよう、マダニに咬まれたらすぐに病院に行って頂くことができれば良いのですが、マダニは唾液の中に弱い麻酔成分を含みます。

なので、咬まれたことにすぐに気が付く、というのは実はなかなか難しいのです。




となると、マダニをワンちゃんに寄生させない、家に持ち込まない、というのが一番の対策になるというのがご理解いただけるかと思います。

当院では冬の間もノミダニの駆虫薬としてチュアブルタイプ(おやつのように食べるタイプ)やスポットオンタイプ(皮膚に滴下するタイプ)をお出しさせて頂いていますが、それは寄生による痒みや痛みのストレス貧血の対策としてだけでなく、人獣共通感染症からおうちの方を守るという意味でも、ぜひ使って頂きたいなと考えております。




では最後に、実際にお散歩の際にマダニの寄生を受けてしまった症例をいくつかご紹介して終わりにさせて頂きます。




まずこちらは、脇にマダニが食いついてしまった柴さんです。











このような状態を発見されたら「取ってあげなきゃ!」と頭に浮かぶのが普通かなと思いますが、まずは落ち着いて病院に連れてきてください。

引き抜く際に胴体を圧迫してしまうとマダニ体内の病原体をワンちゃんの体に押し出してしまいます。

また、口器は非常に強固に皮膚に固定されているので、普通に引っ張ると頭部がちぎれて残ってしまい、炎症の原因になります。

ですので、マダニを除去する際は皮膚ごと口器をつまんで引き抜く必要があります。















次に、お尻にマダニが食いついてしまったポメラニアンさんです。















毛が多い犬種であるにも関わらず飼い主様が早期に気付いて連れてきてくれたためまだ吸血しておらず、とても小さいです。

さきほど紹介させて頂いた症例と比べると、大きさが明らかに違いますね。

こちらも同様に、口器を皮膚ごとつかんで引き抜きます。







今回の記事で、マダニ予防の重要性が少しでも伝わってくれたら幸いです。



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