チンチラの疾病
2023年2月14日 火曜日
チンチラの脛骨骨折(創外固定法 その2)
こんちは 院長の伊藤です。
前回、チンチラの脛骨骨折(創外固定法 その1)でチンチラのしずくちゃんの脛骨骨折の手術をご紹介しました。
その詳細(チンチラの脛骨骨折 創外固定法 その1)はこちらをクリックして下さい。
本日は、その後のしずくちゃんの骨折治癒までの経過をご報告します。
骨折は治癒に至るまで非常に時間を要します。
骨折整復手術の成否は、手術自体の成功はもとより、何か月後に骨癒合が完全になされたかで決まります。
骨折の部位によりますが、1~3か月は安静が必要となります。
つまり骨癒合が完了するまでは、飼主様はもとより術者としての私も安心出来ません。
加えて、今回は創外固定法ということで手術後のケアが大変です。
それでは、しずくちゃんの骨癒合までの道のりをご覧いただきましょう。
チンチラのしずくちゃん(雌、1歳8か月齢、体重480g)は右脛骨を骨折しました(下写真黄色丸)。


骨折部の整復法として、創外固定法を実施しました。


黄色矢印が骨折部です。
骨折部の一部が粉砕して間隙があり、骨折端の完全な整復は期待できないのですが、後の仮骨による架橋形成を期待します。

パテで両側を固定して、手術は終了です。

以上が前回のあらましです。
その後、しずくちゃんは定期的に来院して頂き、ピン刺入部の術部管理をしました。

ピンが皮膚に刺さってる部位は、細菌感染の恐れがありますので、定期的に消毒洗浄します。

患部の洗浄をしています。

ピン刺入部にイソジンゲル®を塗布します。


再び、パテを脱脂綿で包み粘着テープで保護して終了です。

上記の消毒洗浄を行いながら、骨癒合するまでレントゲン撮影を継続して行いました。
以下に継時的に骨折部のレントゲン像を載せます。
術後4週目では、まだ骨折部をカバーする仮骨形成は不十分な状態です。

続いて、12週目の画像です。
仮骨の形成は進行しており、脛骨自体のアライメントもまっすぐに近い状態になって来ました。

16週目になると骨折ラインはもはや判明できないくらいに修復してます。
4か月近くの術後管理は大変でしたが、やっとピンを除去することが出来ます。

これから、しずくちゃんの創外ピン抜去を行います。
骨折整復手術時と同じくイソフルランで麻酔導入を実施します。

維持麻酔も落ち着いたところで、テーピングをはずしパテと創外ピンを露出します。

下写真黄色矢印に創外ピンが確認できます。

ピンをニッパーで切断していきます。

パテを外しました。

脛骨に残っている創外ピンをハンドドリルに装着して、ピンを抜去します。

まず、しっかり皮膚を消毒洗浄します。

ピンに絡みついた被毛を外します。

ピンバイスに創外ピンを装着し、骨髄内に残存したピンを抜去します。


ピン抜去が完了しました。

ピン抜去直後のレントゲン像です。
ピンの刺入した穴が確認されますが、骨折部(下写真黄色矢印)の骨癒合は完了してます。


ピンで刺入部の皮膚が修復するまで、1週間ほどテーピング保護します。



長い期間にわたる療養期間に耐えてくれたしずくちゃんです。
重いパテも取り除いたので、肢の動きも軽やかです。

ピン抜去から1週間後のしずくちゃんです。
動きが俊敏で写真撮影が難しいくらいです。



骨折した右後肢の動きもスムーズで、跛行も認められません。


骨癒合も完了し、神経学的問題もなく無事治療を終了出来て良かったです。
しずくちゃん、お疲れ様でした!

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前回、チンチラの脛骨骨折(創外固定法 その1)でチンチラのしずくちゃんの脛骨骨折の手術をご紹介しました。
その詳細(チンチラの脛骨骨折 創外固定法 その1)はこちらをクリックして下さい。
本日は、その後のしずくちゃんの骨折治癒までの経過をご報告します。
骨折は治癒に至るまで非常に時間を要します。
骨折整復手術の成否は、手術自体の成功はもとより、何か月後に骨癒合が完全になされたかで決まります。
骨折の部位によりますが、1~3か月は安静が必要となります。
つまり骨癒合が完了するまでは、飼主様はもとより術者としての私も安心出来ません。
加えて、今回は創外固定法ということで手術後のケアが大変です。
それでは、しずくちゃんの骨癒合までの道のりをご覧いただきましょう。
チンチラのしずくちゃん(雌、1歳8か月齢、体重480g)は右脛骨を骨折しました(下写真黄色丸)。


骨折部の整復法として、創外固定法を実施しました。


黄色矢印が骨折部です。
骨折部の一部が粉砕して間隙があり、骨折端の完全な整復は期待できないのですが、後の仮骨による架橋形成を期待します。

パテで両側を固定して、手術は終了です。

以上が前回のあらましです。
その後、しずくちゃんは定期的に来院して頂き、ピン刺入部の術部管理をしました。

ピンが皮膚に刺さってる部位は、細菌感染の恐れがありますので、定期的に消毒洗浄します。

患部の洗浄をしています。

ピン刺入部にイソジンゲル®を塗布します。


再び、パテを脱脂綿で包み粘着テープで保護して終了です。

上記の消毒洗浄を行いながら、骨癒合するまでレントゲン撮影を継続して行いました。
以下に継時的に骨折部のレントゲン像を載せます。
術後4週目では、まだ骨折部をカバーする仮骨形成は不十分な状態です。

続いて、12週目の画像です。
仮骨の形成は進行しており、脛骨自体のアライメントもまっすぐに近い状態になって来ました。

16週目になると骨折ラインはもはや判明できないくらいに修復してます。
4か月近くの術後管理は大変でしたが、やっとピンを除去することが出来ます。

これから、しずくちゃんの創外ピン抜去を行います。
骨折整復手術時と同じくイソフルランで麻酔導入を実施します。

維持麻酔も落ち着いたところで、テーピングをはずしパテと創外ピンを露出します。

下写真黄色矢印に創外ピンが確認できます。

ピンをニッパーで切断していきます。

パテを外しました。

脛骨に残っている創外ピンをハンドドリルに装着して、ピンを抜去します。

まず、しっかり皮膚を消毒洗浄します。

ピンに絡みついた被毛を外します。

ピンバイスに創外ピンを装着し、骨髄内に残存したピンを抜去します。


ピン抜去が完了しました。

ピン抜去直後のレントゲン像です。
ピンの刺入した穴が確認されますが、骨折部(下写真黄色矢印)の骨癒合は完了してます。


ピンで刺入部の皮膚が修復するまで、1週間ほどテーピング保護します。



長い期間にわたる療養期間に耐えてくれたしずくちゃんです。
重いパテも取り除いたので、肢の動きも軽やかです。

ピン抜去から1週間後のしずくちゃんです。
動きが俊敏で写真撮影が難しいくらいです。



骨折した右後肢の動きもスムーズで、跛行も認められません。


骨癒合も完了し、神経学的問題もなく無事治療を終了出来て良かったです。
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2023年1月29日 日曜日
チンチラの脛骨骨折(創外固定法 その1)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、チンチラの後肢骨折の症例です。
今回は骨折の中でも斜骨折・粉砕骨折という整復に大変なケースで創外固定法を選択しました。
チンチラのしずくちゃん(雌、1歳8か月齢、体重480g)は朝起きた時に右後肢を跛行(びっこ)が認められるとのことで来院されました(下写真黄色丸)。

右後肢がぶらぶらしており、触診で骨折が疑われたので、早速レントゲン撮影しました。
下写真黄色丸が脛骨骨幹部の斜骨折及び骨折部が一部粉砕しています。
飼い主様は、何が原因で骨折になったか不明とのことです。
経験的には、ケージの床のスノコに足先を挟んで暴れたり、2階3階建てのケージから落下して骨折というケース事例が多いようです。

側面のレントゲン像です。

さて骨折部の整復法ですが、骨髄ピンによるな内固定法では、骨折部に縦に亀裂が入り十分な固定が望めないと思われました。
チンチラは非常に脛骨の幅が狭く(脛骨の太い所で約4㎜、骨髄腔は1㎜)、犬とは比較にならないくらい細い骨です。
そのため、骨プレートによる内固定にしても、規格のプレートのサイズでは使用できません。
結果、患部にメスを入れることなく、閉鎖的に外部から骨折部の近位端と遠位端を数本のピンで固定する創外固定法を選択しました。
エキゾッチクアニマルの骨折は個人的に創外固定法を選択することが多いです。
過去の記事に創外固定法についてコメントしていますので、宜しかったら参照下さい。(ウサギの橈尺骨骨折その2、ウサギの橈尺骨骨折その3)
しずくちゃんに全身麻酔を施します。
麻酔導入箱に入ってもらい、イソフルランを流します。


麻酔導入が完了し、箱から出して維持麻酔に変えます。

骨折部の体毛を剃毛します。

チンチラの体毛は柔らかく細いため、完全に剃毛するのが大変です。

下写真黄色丸は骨折部です。
骨髄が破壊され、内出血している(黄色丸)のがお分かり頂けると思います。

これから手術に移ります。
創外固定法は、ピンを骨折部を挟み込むように打ち込みます。
骨折部にメスを入れることなく実施するため、打ち込む位置を認識するには空間把握能力が問われるところです。

これからドリルでピンを打ち込んでいきます。


脛骨近位端をピンドリルで貫通してます。



レントゲンを参考にノギスでピン刺入の位置を決めます。

2本目のピンを刺入します。



次いで、骨折部を挟んで脛骨の足根関節寄りにピンを刺入します。

脛骨遠位端にピンを刺入します。


3本目のピンを刺入れたところでレントゲンを撮りました。
狙いをつけた部位にピンは入っています。

4本目のピンを刺入します。

後でこれらのピンをパテで固めますが、パテの硬化後の安定性を高めるために、ピンの刺入角度を少し変えて打ち込みました。

パテとピンの接触面積を増やすために、折り曲げたピンの長さを長めにしてペンチでカットします。


ピンの折り曲げは下写真のような形でまとめます。

ピンを4本刺入したところのレントゲン像です。
ピンを近位端と遠位端で牽引して、骨折部の整復(ストレッチング)を行います。
骨折してから、時間が経過すると筋肉が拘縮してストレッチングが困難となります。
骨折部が粉砕しているため(下写真黄色矢印)、この状態が整復の限界です。
この状態を維持するために速やかにパテでピンを固定します。

ピンにパテを盛り付けます。
エポキシパテ金属用®という固定素材を使用します。
当院では、このパテをエキゾチックアニマルの創外固定に使用することが多いです。

エポキシパテは、手で揉んで10分で完全に硬化しますので、手際よくピンに絡めながら盛り付けていきます。

後肢の内側と外側にパテの盛り付ける量的バランスを考慮して、均等に盛り付けていきます。

これで、パテの固定は終了です。
ピン刺入部には、皮膚からの雑菌汚染を予防する意味で、イソジンゲル®10%を塗布してます。


仕上げの状態でレントゲン撮影しました。
骨折部に仮骨が形成され、骨折間隙を埋めてくれるまで、安静に務めてもらうことになります。

パテがケージや食器にぶつかったりするとピンを介して衝撃が骨に伝達され、場合によっては骨のピン刺入部から亀裂が入る場合があります。
それを防ぐために、脱脂綿でパテを包んで緩衝材とします。

最後に粘着テープで内外側のパテを包んで終了です。



大変な手術でしたが、しずくちゃんは耐えてくれました。

イソフルランを切り、半覚醒の状態です。

麻酔から覚醒したしずくちゃんです。

骨折の手術は、骨折部が癒合するまで安心は出来ません。
創外固定法は患部を切開して、観血的に手術を行うわけではないため、ある意味地味な手術かもしれません。
骨髄ピンや骨プレートで内固定する方法と比較して、術後の経過観察や創外ピンのメンテナンスが煩雑な点が短所と言えるかもしれません。
チンチラのように3次元的な動きをする動物は、パテで固められた創外ピンが各種障害物と干渉します。
チンチラからすれば、重いおもりを足にぶら下げているようなもので、限りなくストレスを感じていると思われます。

脛骨骨折でも単純な横骨折であれば、1か月位で骨癒合まで期待できると思います。
しずくちゃんの場合は、骨癒合まで数か月かかると思われますので、飼主様にしっかりお世話して頂く必要があります。
しずくちゃんが、完全に治癒するまでの経過をチンチラの脛骨骨折(創外固定法 その2)として近日中に載せますので、ご期待ください。
それでは、しずくちゃん、お疲れ様でした!
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本日ご紹介しますのは、チンチラの後肢骨折の症例です。
今回は骨折の中でも斜骨折・粉砕骨折という整復に大変なケースで創外固定法を選択しました。
チンチラのしずくちゃん(雌、1歳8か月齢、体重480g)は朝起きた時に右後肢を跛行(びっこ)が認められるとのことで来院されました(下写真黄色丸)。

右後肢がぶらぶらしており、触診で骨折が疑われたので、早速レントゲン撮影しました。
下写真黄色丸が脛骨骨幹部の斜骨折及び骨折部が一部粉砕しています。
飼い主様は、何が原因で骨折になったか不明とのことです。
経験的には、ケージの床のスノコに足先を挟んで暴れたり、2階3階建てのケージから落下して骨折というケース事例が多いようです。

側面のレントゲン像です。

さて骨折部の整復法ですが、骨髄ピンによるな内固定法では、骨折部に縦に亀裂が入り十分な固定が望めないと思われました。
チンチラは非常に脛骨の幅が狭く(脛骨の太い所で約4㎜、骨髄腔は1㎜)、犬とは比較にならないくらい細い骨です。
そのため、骨プレートによる内固定にしても、規格のプレートのサイズでは使用できません。
結果、患部にメスを入れることなく、閉鎖的に外部から骨折部の近位端と遠位端を数本のピンで固定する創外固定法を選択しました。
エキゾッチクアニマルの骨折は個人的に創外固定法を選択することが多いです。
過去の記事に創外固定法についてコメントしていますので、宜しかったら参照下さい。(ウサギの橈尺骨骨折その2、ウサギの橈尺骨骨折その3)
しずくちゃんに全身麻酔を施します。
麻酔導入箱に入ってもらい、イソフルランを流します。


麻酔導入が完了し、箱から出して維持麻酔に変えます。

骨折部の体毛を剃毛します。

チンチラの体毛は柔らかく細いため、完全に剃毛するのが大変です。

下写真黄色丸は骨折部です。
骨髄が破壊され、内出血している(黄色丸)のがお分かり頂けると思います。

これから手術に移ります。
創外固定法は、ピンを骨折部を挟み込むように打ち込みます。
骨折部にメスを入れることなく実施するため、打ち込む位置を認識するには空間把握能力が問われるところです。

これからドリルでピンを打ち込んでいきます。


脛骨近位端をピンドリルで貫通してます。



レントゲンを参考にノギスでピン刺入の位置を決めます。

2本目のピンを刺入します。



次いで、骨折部を挟んで脛骨の足根関節寄りにピンを刺入します。

脛骨遠位端にピンを刺入します。


3本目のピンを刺入れたところでレントゲンを撮りました。
狙いをつけた部位にピンは入っています。

4本目のピンを刺入します。

後でこれらのピンをパテで固めますが、パテの硬化後の安定性を高めるために、ピンの刺入角度を少し変えて打ち込みました。

パテとピンの接触面積を増やすために、折り曲げたピンの長さを長めにしてペンチでカットします。


ピンの折り曲げは下写真のような形でまとめます。

ピンを4本刺入したところのレントゲン像です。
ピンを近位端と遠位端で牽引して、骨折部の整復(ストレッチング)を行います。
骨折してから、時間が経過すると筋肉が拘縮してストレッチングが困難となります。
骨折部が粉砕しているため(下写真黄色矢印)、この状態が整復の限界です。
この状態を維持するために速やかにパテでピンを固定します。

ピンにパテを盛り付けます。
エポキシパテ金属用®という固定素材を使用します。
当院では、このパテをエキゾチックアニマルの創外固定に使用することが多いです。

エポキシパテは、手で揉んで10分で完全に硬化しますので、手際よくピンに絡めながら盛り付けていきます。

後肢の内側と外側にパテの盛り付ける量的バランスを考慮して、均等に盛り付けていきます。

これで、パテの固定は終了です。
ピン刺入部には、皮膚からの雑菌汚染を予防する意味で、イソジンゲル®10%を塗布してます。


仕上げの状態でレントゲン撮影しました。
骨折部に仮骨が形成され、骨折間隙を埋めてくれるまで、安静に務めてもらうことになります。

パテがケージや食器にぶつかったりするとピンを介して衝撃が骨に伝達され、場合によっては骨のピン刺入部から亀裂が入る場合があります。
それを防ぐために、脱脂綿でパテを包んで緩衝材とします。

最後に粘着テープで内外側のパテを包んで終了です。



大変な手術でしたが、しずくちゃんは耐えてくれました。

イソフルランを切り、半覚醒の状態です。

麻酔から覚醒したしずくちゃんです。

骨折の手術は、骨折部が癒合するまで安心は出来ません。
創外固定法は患部を切開して、観血的に手術を行うわけではないため、ある意味地味な手術かもしれません。
骨髄ピンや骨プレートで内固定する方法と比較して、術後の経過観察や創外ピンのメンテナンスが煩雑な点が短所と言えるかもしれません。
チンチラのように3次元的な動きをする動物は、パテで固められた創外ピンが各種障害物と干渉します。
チンチラからすれば、重いおもりを足にぶら下げているようなもので、限りなくストレスを感じていると思われます。

脛骨骨折でも単純な横骨折であれば、1か月位で骨癒合まで期待できると思います。
しずくちゃんの場合は、骨癒合まで数か月かかると思われますので、飼主様にしっかりお世話して頂く必要があります。
しずくちゃんが、完全に治癒するまでの経過をチンチラの脛骨骨折(創外固定法 その2)として近日中に載せますので、ご期待ください。
それでは、しずくちゃん、お疲れ様でした!
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2022年6月20日 月曜日
チンチラの死産
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、チンチラの死産です。
ここでチンチラの繁殖について、触れておきたいと思います。
チンチラの雄の性的成熟早くては3か月齢、平均的には6か月齢です。
雌の性的成熟は4か月から8か月齢と言われます。
雌の発情は1か月から1.5か月に一度、数日間やって来ます。
この数日間に交尾が行われ、交尾自体は一瞬で終了します。
交尾が成功裏に終わると半日以内に雌の膣から膣栓と呼ばれる白色の分泌液の塊が排出されます。
妊娠期間は、ウサギの28日間と比較すると平均111日間と非常に長いのが特徴です。
チンチラは、流産・死産が比較的多いです。
子宮内で胎仔は成長して骨化も進行しますが、何らかの原因で死亡し、結果として胎仔は吸収されます。
死産の原因は、栄養失調であったり、飼育環境の不全(高温多湿)によるストレス、物理的な落下、合併疾患によることが関係しています。
さて、そんなチンチラですが、本日は死産の症例について報告させて頂きます。
チンチラのウルちゃん(体重600g、雌、1歳)は、同居の雄と交配し、出産予定日から約1週間遅れて2匹を流産しました。
流産して2週間経過しても、陰部からおりものが出るとのことで当院を受診されました。



まずは、レントゲン撮影を実施しました。

子宮周辺を拡大します。
下写真黄色丸に恐らく胎仔の骨格と思われる像が認められます。

下は側臥姿勢のレントゲン像です。

子宮周辺の拡大像です。
黄色丸は既に吸収過程にある胎仔の骨格を示します。
この1匹は子宮内で死亡し、吸収されているものと思われます。

この死産した胎仔が吸収されるか、排出されるかを経過観察することとしました。
暫くは、抗生剤・消炎剤の投薬を継続します。
初診から1週間後にはおりものも陰部から出なくなり、ウルちゃんの全身状態も良好となりました。
そして、初診から2週間後に胎仔の骨格と思しきものを排出したとの連絡を飼主様から頂きました。
下写真は、飼主様がお持ちいただいた胎仔の骨格(陰部から排出したもの)です。


下写真の黄色矢印は胎仔の足の名残と思われます。

流産からカウントして約1か月近く胎仔は子宮内に存在したと思われます。
慢性的な子宮疾患にまで発展しなくて良かったです。
ウルちゃん、頑張りましたね。

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本日ご紹介しますのは、チンチラの死産です。
ここでチンチラの繁殖について、触れておきたいと思います。
チンチラの雄の性的成熟早くては3か月齢、平均的には6か月齢です。
雌の性的成熟は4か月から8か月齢と言われます。
雌の発情は1か月から1.5か月に一度、数日間やって来ます。
この数日間に交尾が行われ、交尾自体は一瞬で終了します。
交尾が成功裏に終わると半日以内に雌の膣から膣栓と呼ばれる白色の分泌液の塊が排出されます。
妊娠期間は、ウサギの28日間と比較すると平均111日間と非常に長いのが特徴です。
チンチラは、流産・死産が比較的多いです。
子宮内で胎仔は成長して骨化も進行しますが、何らかの原因で死亡し、結果として胎仔は吸収されます。
死産の原因は、栄養失調であったり、飼育環境の不全(高温多湿)によるストレス、物理的な落下、合併疾患によることが関係しています。
さて、そんなチンチラですが、本日は死産の症例について報告させて頂きます。
チンチラのウルちゃん(体重600g、雌、1歳)は、同居の雄と交配し、出産予定日から約1週間遅れて2匹を流産しました。
流産して2週間経過しても、陰部からおりものが出るとのことで当院を受診されました。



まずは、レントゲン撮影を実施しました。

子宮周辺を拡大します。
下写真黄色丸に恐らく胎仔の骨格と思われる像が認められます。

下は側臥姿勢のレントゲン像です。

子宮周辺の拡大像です。
黄色丸は既に吸収過程にある胎仔の骨格を示します。
この1匹は子宮内で死亡し、吸収されているものと思われます。

この死産した胎仔が吸収されるか、排出されるかを経過観察することとしました。
暫くは、抗生剤・消炎剤の投薬を継続します。
初診から1週間後にはおりものも陰部から出なくなり、ウルちゃんの全身状態も良好となりました。
そして、初診から2週間後に胎仔の骨格と思しきものを排出したとの連絡を飼主様から頂きました。
下写真は、飼主様がお持ちいただいた胎仔の骨格(陰部から排出したもの)です。


下写真の黄色矢印は胎仔の足の名残と思われます。

流産からカウントして約1か月近く胎仔は子宮内に存在したと思われます。
慢性的な子宮疾患にまで発展しなくて良かったです。
ウルちゃん、頑張りましたね。

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2022年3月10日 木曜日
チンチラの上腕骨骨折(外固定法による整復法)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、チンチラの上腕骨骨折の症例です。
チンチラは、ウサギと比較して後肢で立ち上がり、前肢で餌を保持して摂食する姿勢をとることが多く、骨折は圧倒的に後肢に多いと感じています。
そんな中にあって、今回は前肢の骨折例を観血的な外科手術による整復でなく、外固定による整復で治療したケースをご紹介します。
チンチラのリグ君(雄、2歳、体重506g)は左前肢に力が入らなくて痛そうにしているとのことで来院されました。

リグ君は左の前足を拳上するのが辛そうです。

現状では、3本足歩行してるとのことです。

レントゲン撮影を実施しました。
下写真の黄色矢印は、上腕骨の骨折してる部位を示します。

骨折部位の拡大です。
骨折端は斜めになっています。
上腕骨骨幹部の斜骨折です。

下写真は仰臥位像です。
黄色丸は骨折部位です。

拡大像です。
骨折の原因が飼主様にも不明とのことでした。
チンチラは極めて俊敏な動きをしますので、後肢ならともかく前肢は気づくのに時間がかかるかもしれません。

上腕骨骨折の場合、骨髄ピンを打ち込むか、あるいは創外固定ピンで整復するかを検討するところです。
しかし、飼い主様としては、あまり費用をかけられない背景がありました。
そのため、綺麗に骨折部が癒合する約束はできないけれど、レナサーム(熱可塑性ポリキャスト包帯)による外固定法での治療をお勧めしました。
チンチラは前肢で餌を把持して捕食する動物ですから、上腕骨骨折となると採食に苦労します。
しかし、体重を後肢にかけて二本足で立ち上がる姿勢を取ることも多く、前肢の骨折であれば外固定で骨癒合まで持っていけると思いました。
レナサームは熱湯で軟化する包帯で、患部を整復後に巻いて、継時的に硬化を待ちます。
強度はかなり固く、チンチラの切歯を持っても破壊するのは困難です。
ただ鎮静なり、麻酔なりしなければ骨折整復できませんので、今回全身麻酔を実施します。
リグ君に麻酔導入箱に入ってもらいます。

イソフルランを流し、麻酔導入します。

5分ほどでリグ君はぐったりしてきましたので、外に出してマスクを嵌めて維持麻酔を実施します。

骨折部位をバリカンで剃毛します。

ある程度、しっかり剃毛しないとレナサームのフィット感が出せません。

皮膚を保護するためにキャストパッドプラス3Mを骨折部位周囲に巻きます。


次いで熱湯に入れて軟化させたレナサームをリグ君の肘関節から上腕骨近位端(腋下部)までスプリントとして当てます。
この時、骨折部周囲を優しく押さえつつ、つま先を持って牽引し、出来る限りの整復をします。




最終的に下写真のように肘関節を上下に挟み込むようにレナサームを巻き付け、つま先から腋下部まで粘着テープでずれないように固定します。


チンチラの前肢は短いため、本人の挙動によってはスポンとレナサームごと外れてしまう事があります。

最後に自咬によるレナサームへの干渉を防ぐためにべトラップ(粘着テープ)を巻いて終了です。


全体でみると前肢の外固定が大きくなってしまいましたが、何とか骨癒合までの数か月を耐えて頂きたいと思います。

麻酔から覚めたリグ君です。


整復後のレントゲン像です。

拡大像です。
あくまで徒手整復ですので、ピンニングのように完全な整復は出来ませんが、今後の経過を診て行きます。

同じく仰臥位のレントゲン像です。

拡大像です。

下写真は術後4週後の画像です。
黄色矢印が骨折部を示します。

下は4週目の仰臥位像です。

まだ術後4週では癒合は出来ていません。
続いて下写真は10週目です。
黄色丸は骨折部を示します(レナサームは外れかけています)。
多少の上腕骨の変形はありますが、骨癒合が完了しているのがお分かり頂けると思います。

患部の拡大像です。

下写真は側臥像です。
骨折整復部がずれていましたが、骨折端が50%接触していれば骨癒合に至るとされますので、外固定で十分対応できたと思われます。

拡大像です。

術後10週のリグ君です。
レナサームを外して、すっきりした表情です。

左前肢に荷重もかけることが出来ています。

歩行にも問題がありません。
10週に及ぶ外固定でしたから、左前肢の被毛はバサバサですが、これから換毛と共に元に戻ります。

重くて邪魔なレナサームと思いますが、リグ君はよく耐えて頂いたと思います。
リグ君、お付けれ様でした!

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本日ご紹介しますのは、チンチラの上腕骨骨折の症例です。
チンチラは、ウサギと比較して後肢で立ち上がり、前肢で餌を保持して摂食する姿勢をとることが多く、骨折は圧倒的に後肢に多いと感じています。
そんな中にあって、今回は前肢の骨折例を観血的な外科手術による整復でなく、外固定による整復で治療したケースをご紹介します。
チンチラのリグ君(雄、2歳、体重506g)は左前肢に力が入らなくて痛そうにしているとのことで来院されました。

リグ君は左の前足を拳上するのが辛そうです。

現状では、3本足歩行してるとのことです。

レントゲン撮影を実施しました。
下写真の黄色矢印は、上腕骨の骨折してる部位を示します。

骨折部位の拡大です。
骨折端は斜めになっています。
上腕骨骨幹部の斜骨折です。

下写真は仰臥位像です。
黄色丸は骨折部位です。

拡大像です。
骨折の原因が飼主様にも不明とのことでした。
チンチラは極めて俊敏な動きをしますので、後肢ならともかく前肢は気づくのに時間がかかるかもしれません。

上腕骨骨折の場合、骨髄ピンを打ち込むか、あるいは創外固定ピンで整復するかを検討するところです。
しかし、飼い主様としては、あまり費用をかけられない背景がありました。
そのため、綺麗に骨折部が癒合する約束はできないけれど、レナサーム(熱可塑性ポリキャスト包帯)による外固定法での治療をお勧めしました。
チンチラは前肢で餌を把持して捕食する動物ですから、上腕骨骨折となると採食に苦労します。
しかし、体重を後肢にかけて二本足で立ち上がる姿勢を取ることも多く、前肢の骨折であれば外固定で骨癒合まで持っていけると思いました。
レナサームは熱湯で軟化する包帯で、患部を整復後に巻いて、継時的に硬化を待ちます。
強度はかなり固く、チンチラの切歯を持っても破壊するのは困難です。
ただ鎮静なり、麻酔なりしなければ骨折整復できませんので、今回全身麻酔を実施します。
リグ君に麻酔導入箱に入ってもらいます。

イソフルランを流し、麻酔導入します。

5分ほどでリグ君はぐったりしてきましたので、外に出してマスクを嵌めて維持麻酔を実施します。

骨折部位をバリカンで剃毛します。

ある程度、しっかり剃毛しないとレナサームのフィット感が出せません。

皮膚を保護するためにキャストパッドプラス3Mを骨折部位周囲に巻きます。


次いで熱湯に入れて軟化させたレナサームをリグ君の肘関節から上腕骨近位端(腋下部)までスプリントとして当てます。
この時、骨折部周囲を優しく押さえつつ、つま先を持って牽引し、出来る限りの整復をします。




最終的に下写真のように肘関節を上下に挟み込むようにレナサームを巻き付け、つま先から腋下部まで粘着テープでずれないように固定します。


チンチラの前肢は短いため、本人の挙動によってはスポンとレナサームごと外れてしまう事があります。

最後に自咬によるレナサームへの干渉を防ぐためにべトラップ(粘着テープ)を巻いて終了です。


全体でみると前肢の外固定が大きくなってしまいましたが、何とか骨癒合までの数か月を耐えて頂きたいと思います。

麻酔から覚めたリグ君です。


整復後のレントゲン像です。

拡大像です。
あくまで徒手整復ですので、ピンニングのように完全な整復は出来ませんが、今後の経過を診て行きます。

同じく仰臥位のレントゲン像です。

拡大像です。

下写真は術後4週後の画像です。
黄色矢印が骨折部を示します。

下は4週目の仰臥位像です。

まだ術後4週では癒合は出来ていません。
続いて下写真は10週目です。
黄色丸は骨折部を示します(レナサームは外れかけています)。
多少の上腕骨の変形はありますが、骨癒合が完了しているのがお分かり頂けると思います。

患部の拡大像です。

下写真は側臥像です。
骨折整復部がずれていましたが、骨折端が50%接触していれば骨癒合に至るとされますので、外固定で十分対応できたと思われます。

拡大像です。

術後10週のリグ君です。
レナサームを外して、すっきりした表情です。

左前肢に荷重もかけることが出来ています。

歩行にも問題がありません。
10週に及ぶ外固定でしたから、左前肢の被毛はバサバサですが、これから換毛と共に元に戻ります。

重くて邪魔なレナサームと思いますが、リグ君はよく耐えて頂いたと思います。
リグ君、お付けれ様でした!

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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL
2021年8月16日 月曜日
チンチラの膀胱結石・尿道結石
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、チンチラの尿路結石(膀胱結石及び尿道結石)の症例です。
チンチラの尿路結石は日常的に遭遇します。
特に尿道結石になった場合、尿道が細いためモルモットやウサギに比べて、排尿障害に陥りやすいという特徴があります。
排尿障害が24~48時間を超えると急性腎不全から尿毒症になります。
その結果、わずか直径数ミリの結石がチンチラの命を奪います。
結石が膀胱であれ、尿道であれ、症状は排尿障害と血尿です。
この症状を見逃さないようご注意下さい。
以前にチンチラの尿道結石、チンチラの膀胱結石の2本の記事を載せていますので、興味のある方は下線部をクリックしてご覧下さい。
チンチラのジロ君(1歳4か月齢、雄、体重600g)は昨日から排尿がないとのことで来院されました。
排尿したくて息むけれども出来ないようです。

触診で膀胱が張っている感じがあります。
早速、レントゲン撮影を実施しました。
膀胱内の結石は直径が5㎜、尿道内は約2.5㎜(3個)です。

特に尿道内の3個の結石が排尿障害の原因となっています。

尿道カテーテルを挿入して、生理食塩水でフラッシュしましたが尿道内結石を膀胱に戻すことは出来ませんでした。
全身状態は良くなく、血圧が低下しており、採血も出来ない状態です。
そもそも尿が完全に閉塞していますので、解除しない限り治療は先に進めません。
ジロ君は既に腎不全になっている可能性もありますし、麻酔のリスクも十分あることを飼主様に理解して頂きました。
全身麻酔をかけて、速やかに膀胱・尿道の結石を摘出することとしました。
ジロ君に麻酔導入箱に入って頂き、イソフルランを流します。

イソフルランが効いて来たようで、ジロ君の麻酔導入は完了です。

続いてガスマスクで維持麻酔に切り替え、下腹部を剃毛します。


剃毛は完了です。

下写真黄色丸の部分は膀胱を示します。
膀胱はおそらく尿で膨満状態にあり、外観からも盛り上がってみえます。

患部の消毒も終わり、これから執刀に移ります。

下腹部にメスを入れます。

腹筋を切開します。

切開した箇所から、膀胱が突出しました。
膀胱は暗赤色を示し、膀胱内での出血、炎症の進行が疑われます。


膀胱内圧を減じさせるため、尿を吸引します。

下写真の注射器の中は出血で褐色に変性した尿が確認できます。

これから膀胱に切開を加えますので、その前に膀胱の位置を固定するために支持糸を掛けます。

膀胱にメスを入れます。

膀胱壁に切開を加え、膀胱内の結石を探します。


膀胱内に存在する5㎜の結石は、容易に見つかりました。


膀胱内は剥離した粘膜や血餅などが確認されます。
結石が膀胱内で暴れ回り、膀胱粘膜に激しい損傷を与えていたのが予想されます。

膀胱内を洗浄します。

この状態でレントゲン撮影を行いました。
尿道内の3個の結石は回復前と同じ位置に存在しています。

尿道にカテーテルを入れて、生理食塩水で圧をかけてフラッシュし、膀胱内へ結石が戻せるかトライします。


一挙に圧をかけてフラッシュしたところ、膀胱は膨らみました。
膀胱は切開を加えていますので、破裂することはありません。

今の状態をさらにレントゲン撮影します。
下レントゲン写真の青丸は尿道カテーテルの外套部を示し、赤丸は3個の尿道結石です。
既にこの3個は尿道から膀胱内へと移動してるのが判明しました。

あとは膀胱内に逆流してきた結石を摘出するのみです。
結石2個がまとめて摘出出来ました(黄色丸)。

次いで残りの1個が見つかりました(下写真黄色丸)。


切開した膀胱を縫合します。

縫合が完了しました。

尿道カテーテルから生食を注入して、膀胱のリーク(漏れ)チェックを実施します。

縫合部の漏れはありません。

最後に腹筋を縫合します。


皮膚を縫合していきます。


手術は終了です。

手術から覚醒したばかりのジロ君です。

術後2日目のジロ君です。
血尿は治まり、自身で排尿出来るようになりました。


ジロ君は手術後4日目に退院して頂きました。
しかし、退院した翌日にショック状態に陥り、ジロ君は急逝されました。
入院中は経過が良好であったため、非常に残念です。
過去に尿道結石の手術を施したチンチラは予後不良となるケースが比較的多いです。
それは、前述の通り尿道が細いという点もありますし、飼主様が排尿障害になっていることに気づかれていないケースが多い点も挙げられます。
チンチラの飼主様は血尿・排尿障害を認めたら、速やかに受診して頂くようお願い致します。
合掌。

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本日ご紹介しますのは、チンチラの尿路結石(膀胱結石及び尿道結石)の症例です。
チンチラの尿路結石は日常的に遭遇します。
特に尿道結石になった場合、尿道が細いためモルモットやウサギに比べて、排尿障害に陥りやすいという特徴があります。
排尿障害が24~48時間を超えると急性腎不全から尿毒症になります。
その結果、わずか直径数ミリの結石がチンチラの命を奪います。
結石が膀胱であれ、尿道であれ、症状は排尿障害と血尿です。
この症状を見逃さないようご注意下さい。
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チンチラのジロ君(1歳4か月齢、雄、体重600g)は昨日から排尿がないとのことで来院されました。
排尿したくて息むけれども出来ないようです。

触診で膀胱が張っている感じがあります。
早速、レントゲン撮影を実施しました。
膀胱内の結石は直径が5㎜、尿道内は約2.5㎜(3個)です。

特に尿道内の3個の結石が排尿障害の原因となっています。

尿道カテーテルを挿入して、生理食塩水でフラッシュしましたが尿道内結石を膀胱に戻すことは出来ませんでした。
全身状態は良くなく、血圧が低下しており、採血も出来ない状態です。
そもそも尿が完全に閉塞していますので、解除しない限り治療は先に進めません。
ジロ君は既に腎不全になっている可能性もありますし、麻酔のリスクも十分あることを飼主様に理解して頂きました。
全身麻酔をかけて、速やかに膀胱・尿道の結石を摘出することとしました。
ジロ君に麻酔導入箱に入って頂き、イソフルランを流します。

イソフルランが効いて来たようで、ジロ君の麻酔導入は完了です。

続いてガスマスクで維持麻酔に切り替え、下腹部を剃毛します。


剃毛は完了です。

下写真黄色丸の部分は膀胱を示します。
膀胱はおそらく尿で膨満状態にあり、外観からも盛り上がってみえます。

患部の消毒も終わり、これから執刀に移ります。

下腹部にメスを入れます。

腹筋を切開します。

切開した箇所から、膀胱が突出しました。
膀胱は暗赤色を示し、膀胱内での出血、炎症の進行が疑われます。


膀胱内圧を減じさせるため、尿を吸引します。

下写真の注射器の中は出血で褐色に変性した尿が確認できます。

これから膀胱に切開を加えますので、その前に膀胱の位置を固定するために支持糸を掛けます。

膀胱にメスを入れます。

膀胱壁に切開を加え、膀胱内の結石を探します。


膀胱内に存在する5㎜の結石は、容易に見つかりました。


膀胱内は剥離した粘膜や血餅などが確認されます。
結石が膀胱内で暴れ回り、膀胱粘膜に激しい損傷を与えていたのが予想されます。

膀胱内を洗浄します。

この状態でレントゲン撮影を行いました。
尿道内の3個の結石は回復前と同じ位置に存在しています。

尿道にカテーテルを入れて、生理食塩水で圧をかけてフラッシュし、膀胱内へ結石が戻せるかトライします。


一挙に圧をかけてフラッシュしたところ、膀胱は膨らみました。
膀胱は切開を加えていますので、破裂することはありません。

今の状態をさらにレントゲン撮影します。
下レントゲン写真の青丸は尿道カテーテルの外套部を示し、赤丸は3個の尿道結石です。
既にこの3個は尿道から膀胱内へと移動してるのが判明しました。

あとは膀胱内に逆流してきた結石を摘出するのみです。
結石2個がまとめて摘出出来ました(黄色丸)。

次いで残りの1個が見つかりました(下写真黄色丸)。


切開した膀胱を縫合します。

縫合が完了しました。

尿道カテーテルから生食を注入して、膀胱のリーク(漏れ)チェックを実施します。

縫合部の漏れはありません。

最後に腹筋を縫合します。


皮膚を縫合していきます。


手術は終了です。

手術から覚醒したばかりのジロ君です。

術後2日目のジロ君です。
血尿は治まり、自身で排尿出来るようになりました。


ジロ君は手術後4日目に退院して頂きました。
しかし、退院した翌日にショック状態に陥り、ジロ君は急逝されました。
入院中は経過が良好であったため、非常に残念です。
過去に尿道結石の手術を施したチンチラは予後不良となるケースが比較的多いです。
それは、前述の通り尿道が細いという点もありますし、飼主様が排尿障害になっていることに気づかれていないケースが多い点も挙げられます。
チンチラの飼主様は血尿・排尿障害を認めたら、速やかに受診して頂くようお願い致します。
合掌。

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