チンチラの疾病
2022年6月20日 月曜日
チンチラの死産
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、チンチラの死産です。
ここでチンチラの繁殖について、触れておきたいと思います。
チンチラの雄の性的成熟早くては3か月齢、平均的には6か月齢です。
雌の性的成熟は4か月から8か月齢と言われます。
雌の発情は1か月から1.5か月に一度、数日間やって来ます。
この数日間に交尾が行われ、交尾自体は一瞬で終了します。
交尾が成功裏に終わると半日以内に雌の膣から膣栓と呼ばれる白色の分泌液の塊が排出されます。
妊娠期間は、ウサギの28日間と比較すると平均111日間と非常に長いのが特徴です。
チンチラは、流産・死産が比較的多いです。
子宮内で胎仔は成長して骨化も進行しますが、何らかの原因で死亡し、結果として胎仔は吸収されます。
死産の原因は、栄養失調であったり、飼育環境の不全(高温多湿)によるストレス、物理的な落下、合併疾患によることが関係しています。
さて、そんなチンチラですが、本日は死産の症例について報告させて頂きます。
チンチラのウルちゃん(体重600g、雌、1歳)は、同居の雄と交配し、出産予定日から約1週間遅れて2匹を流産しました。
流産して2週間経過しても、陰部からおりものが出るとのことで当院を受診されました。



まずは、レントゲン撮影を実施しました。

子宮周辺を拡大します。
下写真黄色丸に恐らく胎仔の骨格と思われる像が認められます。

下は側臥姿勢のレントゲン像です。

子宮周辺の拡大像です。
黄色丸は既に吸収過程にある胎仔の骨格を示します。
この1匹は子宮内で死亡し、吸収されているものと思われます。

この死産した胎仔が吸収されるか、排出されるかを経過観察することとしました。
暫くは、抗生剤・消炎剤の投薬を継続します。
初診から1週間後にはおりものも陰部から出なくなり、ウルちゃんの全身状態も良好となりました。
そして、初診から2週間後に胎仔の骨格と思しきものを排出したとの連絡を飼主様から頂きました。
下写真は、飼主様がお持ちいただいた胎仔の骨格(陰部から排出したもの)です。


下写真の黄色矢印は胎仔の足の名残と思われます。

流産からカウントして約1か月近く胎仔は子宮内に存在したと思われます。
慢性的な子宮疾患にまで発展しなくて良かったです。
ウルちゃん、頑張りましたね。

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本日ご紹介しますのは、チンチラの死産です。
ここでチンチラの繁殖について、触れておきたいと思います。
チンチラの雄の性的成熟早くては3か月齢、平均的には6か月齢です。
雌の性的成熟は4か月から8か月齢と言われます。
雌の発情は1か月から1.5か月に一度、数日間やって来ます。
この数日間に交尾が行われ、交尾自体は一瞬で終了します。
交尾が成功裏に終わると半日以内に雌の膣から膣栓と呼ばれる白色の分泌液の塊が排出されます。
妊娠期間は、ウサギの28日間と比較すると平均111日間と非常に長いのが特徴です。
チンチラは、流産・死産が比較的多いです。
子宮内で胎仔は成長して骨化も進行しますが、何らかの原因で死亡し、結果として胎仔は吸収されます。
死産の原因は、栄養失調であったり、飼育環境の不全(高温多湿)によるストレス、物理的な落下、合併疾患によることが関係しています。
さて、そんなチンチラですが、本日は死産の症例について報告させて頂きます。
チンチラのウルちゃん(体重600g、雌、1歳)は、同居の雄と交配し、出産予定日から約1週間遅れて2匹を流産しました。
流産して2週間経過しても、陰部からおりものが出るとのことで当院を受診されました。



まずは、レントゲン撮影を実施しました。

子宮周辺を拡大します。
下写真黄色丸に恐らく胎仔の骨格と思われる像が認められます。

下は側臥姿勢のレントゲン像です。

子宮周辺の拡大像です。
黄色丸は既に吸収過程にある胎仔の骨格を示します。
この1匹は子宮内で死亡し、吸収されているものと思われます。

この死産した胎仔が吸収されるか、排出されるかを経過観察することとしました。
暫くは、抗生剤・消炎剤の投薬を継続します。
初診から1週間後にはおりものも陰部から出なくなり、ウルちゃんの全身状態も良好となりました。
そして、初診から2週間後に胎仔の骨格と思しきものを排出したとの連絡を飼主様から頂きました。
下写真は、飼主様がお持ちいただいた胎仔の骨格(陰部から排出したもの)です。


下写真の黄色矢印は胎仔の足の名残と思われます。

流産からカウントして約1か月近く胎仔は子宮内に存在したと思われます。
慢性的な子宮疾患にまで発展しなくて良かったです。
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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL
2022年3月10日 木曜日
チンチラの上腕骨骨折(外固定法による整復法)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、チンチラの上腕骨骨折の症例です。
チンチラは、ウサギと比較して後肢で立ち上がり、前肢で餌を保持して摂食する姿勢をとることが多く、骨折は圧倒的に後肢に多いと感じています。
そんな中にあって、今回は前肢の骨折例を観血的な外科手術による整復でなく、外固定による整復で治療したケースをご紹介します。
チンチラのリグ君(雄、2歳、体重506g)は左前肢に力が入らなくて痛そうにしているとのことで来院されました。

リグ君は左の前足を拳上するのが辛そうです。

現状では、3本足歩行してるとのことです。

レントゲン撮影を実施しました。
下写真の黄色矢印は、上腕骨の骨折してる部位を示します。

骨折部位の拡大です。
骨折端は斜めになっています。
上腕骨骨幹部の斜骨折です。

下写真は仰臥位像です。
黄色丸は骨折部位です。

拡大像です。
骨折の原因が飼主様にも不明とのことでした。
チンチラは極めて俊敏な動きをしますので、後肢ならともかく前肢は気づくのに時間がかかるかもしれません。

上腕骨骨折の場合、骨髄ピンを打ち込むか、あるいは創外固定ピンで整復するかを検討するところです。
しかし、飼い主様としては、あまり費用をかけられない背景がありました。
そのため、綺麗に骨折部が癒合する約束はできないけれど、レナサーム(熱可塑性ポリキャスト包帯)による外固定法での治療をお勧めしました。
チンチラは前肢で餌を把持して捕食する動物ですから、上腕骨骨折となると採食に苦労します。
しかし、体重を後肢にかけて二本足で立ち上がる姿勢を取ることも多く、前肢の骨折であれば外固定で骨癒合まで持っていけると思いました。
レナサームは熱湯で軟化する包帯で、患部を整復後に巻いて、継時的に硬化を待ちます。
強度はかなり固く、チンチラの切歯を持っても破壊するのは困難です。
ただ鎮静なり、麻酔なりしなければ骨折整復できませんので、今回全身麻酔を実施します。
リグ君に麻酔導入箱に入ってもらいます。

イソフルランを流し、麻酔導入します。

5分ほどでリグ君はぐったりしてきましたので、外に出してマスクを嵌めて維持麻酔を実施します。

骨折部位をバリカンで剃毛します。

ある程度、しっかり剃毛しないとレナサームのフィット感が出せません。

皮膚を保護するためにキャストパッドプラス3Mを骨折部位周囲に巻きます。


次いで熱湯に入れて軟化させたレナサームをリグ君の肘関節から上腕骨近位端(腋下部)までスプリントとして当てます。
この時、骨折部周囲を優しく押さえつつ、つま先を持って牽引し、出来る限りの整復をします。




最終的に下写真のように肘関節を上下に挟み込むようにレナサームを巻き付け、つま先から腋下部まで粘着テープでずれないように固定します。


チンチラの前肢は短いため、本人の挙動によってはスポンとレナサームごと外れてしまう事があります。

最後に自咬によるレナサームへの干渉を防ぐためにべトラップ(粘着テープ)を巻いて終了です。


全体でみると前肢の外固定が大きくなってしまいましたが、何とか骨癒合までの数か月を耐えて頂きたいと思います。

麻酔から覚めたリグ君です。


整復後のレントゲン像です。

拡大像です。
あくまで徒手整復ですので、ピンニングのように完全な整復は出来ませんが、今後の経過を診て行きます。

同じく仰臥位のレントゲン像です。

拡大像です。

下写真は術後4週後の画像です。
黄色矢印が骨折部を示します。

下は4週目の仰臥位像です。

まだ術後4週では癒合は出来ていません。
続いて下写真は10週目です。
黄色丸は骨折部を示します(レナサームは外れかけています)。
多少の上腕骨の変形はありますが、骨癒合が完了しているのがお分かり頂けると思います。

患部の拡大像です。

下写真は側臥像です。
骨折整復部がずれていましたが、骨折端が50%接触していれば骨癒合に至るとされますので、外固定で十分対応できたと思われます。

拡大像です。

術後10週のリグ君です。
レナサームを外して、すっきりした表情です。

左前肢に荷重もかけることが出来ています。

歩行にも問題がありません。
10週に及ぶ外固定でしたから、左前肢の被毛はバサバサですが、これから換毛と共に元に戻ります。

重くて邪魔なレナサームと思いますが、リグ君はよく耐えて頂いたと思います。
リグ君、お付けれ様でした!

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本日ご紹介しますのは、チンチラの上腕骨骨折の症例です。
チンチラは、ウサギと比較して後肢で立ち上がり、前肢で餌を保持して摂食する姿勢をとることが多く、骨折は圧倒的に後肢に多いと感じています。
そんな中にあって、今回は前肢の骨折例を観血的な外科手術による整復でなく、外固定による整復で治療したケースをご紹介します。
チンチラのリグ君(雄、2歳、体重506g)は左前肢に力が入らなくて痛そうにしているとのことで来院されました。

リグ君は左の前足を拳上するのが辛そうです。

現状では、3本足歩行してるとのことです。

レントゲン撮影を実施しました。
下写真の黄色矢印は、上腕骨の骨折してる部位を示します。

骨折部位の拡大です。
骨折端は斜めになっています。
上腕骨骨幹部の斜骨折です。

下写真は仰臥位像です。
黄色丸は骨折部位です。

拡大像です。
骨折の原因が飼主様にも不明とのことでした。
チンチラは極めて俊敏な動きをしますので、後肢ならともかく前肢は気づくのに時間がかかるかもしれません。

上腕骨骨折の場合、骨髄ピンを打ち込むか、あるいは創外固定ピンで整復するかを検討するところです。
しかし、飼い主様としては、あまり費用をかけられない背景がありました。
そのため、綺麗に骨折部が癒合する約束はできないけれど、レナサーム(熱可塑性ポリキャスト包帯)による外固定法での治療をお勧めしました。
チンチラは前肢で餌を把持して捕食する動物ですから、上腕骨骨折となると採食に苦労します。
しかし、体重を後肢にかけて二本足で立ち上がる姿勢を取ることも多く、前肢の骨折であれば外固定で骨癒合まで持っていけると思いました。
レナサームは熱湯で軟化する包帯で、患部を整復後に巻いて、継時的に硬化を待ちます。
強度はかなり固く、チンチラの切歯を持っても破壊するのは困難です。
ただ鎮静なり、麻酔なりしなければ骨折整復できませんので、今回全身麻酔を実施します。
リグ君に麻酔導入箱に入ってもらいます。

イソフルランを流し、麻酔導入します。

5分ほどでリグ君はぐったりしてきましたので、外に出してマスクを嵌めて維持麻酔を実施します。

骨折部位をバリカンで剃毛します。

ある程度、しっかり剃毛しないとレナサームのフィット感が出せません。

皮膚を保護するためにキャストパッドプラス3Mを骨折部位周囲に巻きます。


次いで熱湯に入れて軟化させたレナサームをリグ君の肘関節から上腕骨近位端(腋下部)までスプリントとして当てます。
この時、骨折部周囲を優しく押さえつつ、つま先を持って牽引し、出来る限りの整復をします。




最終的に下写真のように肘関節を上下に挟み込むようにレナサームを巻き付け、つま先から腋下部まで粘着テープでずれないように固定します。


チンチラの前肢は短いため、本人の挙動によってはスポンとレナサームごと外れてしまう事があります。

最後に自咬によるレナサームへの干渉を防ぐためにべトラップ(粘着テープ)を巻いて終了です。


全体でみると前肢の外固定が大きくなってしまいましたが、何とか骨癒合までの数か月を耐えて頂きたいと思います。

麻酔から覚めたリグ君です。


整復後のレントゲン像です。

拡大像です。
あくまで徒手整復ですので、ピンニングのように完全な整復は出来ませんが、今後の経過を診て行きます。

同じく仰臥位のレントゲン像です。

拡大像です。

下写真は術後4週後の画像です。
黄色矢印が骨折部を示します。

下は4週目の仰臥位像です。

まだ術後4週では癒合は出来ていません。
続いて下写真は10週目です。
黄色丸は骨折部を示します(レナサームは外れかけています)。
多少の上腕骨の変形はありますが、骨癒合が完了しているのがお分かり頂けると思います。

患部の拡大像です。

下写真は側臥像です。
骨折整復部がずれていましたが、骨折端が50%接触していれば骨癒合に至るとされますので、外固定で十分対応できたと思われます。

拡大像です。

術後10週のリグ君です。
レナサームを外して、すっきりした表情です。

左前肢に荷重もかけることが出来ています。

歩行にも問題がありません。
10週に及ぶ外固定でしたから、左前肢の被毛はバサバサですが、これから換毛と共に元に戻ります。

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2021年8月16日 月曜日
チンチラの膀胱結石・尿道結石
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、チンチラの尿路結石(膀胱結石及び尿道結石)の症例です。
チンチラの尿路結石は日常的に遭遇します。
特に尿道結石になった場合、尿道が細いためモルモットやウサギに比べて、排尿障害に陥りやすいという特徴があります。
排尿障害が24~48時間を超えると急性腎不全から尿毒症になります。
その結果、わずか直径数ミリの結石がチンチラの命を奪います。
結石が膀胱であれ、尿道であれ、症状は排尿障害と血尿です。
この症状を見逃さないようご注意下さい。
以前にチンチラの尿道結石、チンチラの膀胱結石の2本の記事を載せていますので、興味のある方は下線部をクリックしてご覧下さい。
チンチラのジロ君(1歳4か月齢、雄、体重600g)は昨日から排尿がないとのことで来院されました。
排尿したくて息むけれども出来ないようです。

触診で膀胱が張っている感じがあります。
早速、レントゲン撮影を実施しました。
膀胱内の結石は直径が5㎜、尿道内は約2.5㎜(3個)です。

特に尿道内の3個の結石が排尿障害の原因となっています。

尿道カテーテルを挿入して、生理食塩水でフラッシュしましたが尿道内結石を膀胱に戻すことは出来ませんでした。
全身状態は良くなく、血圧が低下しており、採血も出来ない状態です。
そもそも尿が完全に閉塞していますので、解除しない限り治療は先に進めません。
ジロ君は既に腎不全になっている可能性もありますし、麻酔のリスクも十分あることを飼主様に理解して頂きました。
全身麻酔をかけて、速やかに膀胱・尿道の結石を摘出することとしました。
ジロ君に麻酔導入箱に入って頂き、イソフルランを流します。

イソフルランが効いて来たようで、ジロ君の麻酔導入は完了です。

続いてガスマスクで維持麻酔に切り替え、下腹部を剃毛します。


剃毛は完了です。

下写真黄色丸の部分は膀胱を示します。
膀胱はおそらく尿で膨満状態にあり、外観からも盛り上がってみえます。

患部の消毒も終わり、これから執刀に移ります。

下腹部にメスを入れます。

腹筋を切開します。

切開した箇所から、膀胱が突出しました。
膀胱は暗赤色を示し、膀胱内での出血、炎症の進行が疑われます。


膀胱内圧を減じさせるため、尿を吸引します。

下写真の注射器の中は出血で褐色に変性した尿が確認できます。

これから膀胱に切開を加えますので、その前に膀胱の位置を固定するために支持糸を掛けます。

膀胱にメスを入れます。

膀胱壁に切開を加え、膀胱内の結石を探します。


膀胱内に存在する5㎜の結石は、容易に見つかりました。


膀胱内は剥離した粘膜や血餅などが確認されます。
結石が膀胱内で暴れ回り、膀胱粘膜に激しい損傷を与えていたのが予想されます。

膀胱内を洗浄します。

この状態でレントゲン撮影を行いました。
尿道内の3個の結石は回復前と同じ位置に存在しています。

尿道にカテーテルを入れて、生理食塩水で圧をかけてフラッシュし、膀胱内へ結石が戻せるかトライします。


一挙に圧をかけてフラッシュしたところ、膀胱は膨らみました。
膀胱は切開を加えていますので、破裂することはありません。

今の状態をさらにレントゲン撮影します。
下レントゲン写真の青丸は尿道カテーテルの外套部を示し、赤丸は3個の尿道結石です。
既にこの3個は尿道から膀胱内へと移動してるのが判明しました。

あとは膀胱内に逆流してきた結石を摘出するのみです。
結石2個がまとめて摘出出来ました(黄色丸)。

次いで残りの1個が見つかりました(下写真黄色丸)。


切開した膀胱を縫合します。

縫合が完了しました。

尿道カテーテルから生食を注入して、膀胱のリーク(漏れ)チェックを実施します。

縫合部の漏れはありません。

最後に腹筋を縫合します。


皮膚を縫合していきます。


手術は終了です。

手術から覚醒したばかりのジロ君です。

術後2日目のジロ君です。
血尿は治まり、自身で排尿出来るようになりました。


ジロ君は手術後4日目に退院して頂きました。
しかし、退院した翌日にショック状態に陥り、ジロ君は急逝されました。
入院中は経過が良好であったため、非常に残念です。
過去に尿道結石の手術を施したチンチラは予後不良となるケースが比較的多いです。
それは、前述の通り尿道が細いという点もありますし、飼主様が排尿障害になっていることに気づかれていないケースが多い点も挙げられます。
チンチラの飼主様は血尿・排尿障害を認めたら、速やかに受診して頂くようお願い致します。
合掌。

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チンチラの尿路結石は日常的に遭遇します。
特に尿道結石になった場合、尿道が細いためモルモットやウサギに比べて、排尿障害に陥りやすいという特徴があります。
排尿障害が24~48時間を超えると急性腎不全から尿毒症になります。
その結果、わずか直径数ミリの結石がチンチラの命を奪います。
結石が膀胱であれ、尿道であれ、症状は排尿障害と血尿です。
この症状を見逃さないようご注意下さい。
以前にチンチラの尿道結石、チンチラの膀胱結石の2本の記事を載せていますので、興味のある方は下線部をクリックしてご覧下さい。
チンチラのジロ君(1歳4か月齢、雄、体重600g)は昨日から排尿がないとのことで来院されました。
排尿したくて息むけれども出来ないようです。

触診で膀胱が張っている感じがあります。
早速、レントゲン撮影を実施しました。
膀胱内の結石は直径が5㎜、尿道内は約2.5㎜(3個)です。

特に尿道内の3個の結石が排尿障害の原因となっています。

尿道カテーテルを挿入して、生理食塩水でフラッシュしましたが尿道内結石を膀胱に戻すことは出来ませんでした。
全身状態は良くなく、血圧が低下しており、採血も出来ない状態です。
そもそも尿が完全に閉塞していますので、解除しない限り治療は先に進めません。
ジロ君は既に腎不全になっている可能性もありますし、麻酔のリスクも十分あることを飼主様に理解して頂きました。
全身麻酔をかけて、速やかに膀胱・尿道の結石を摘出することとしました。
ジロ君に麻酔導入箱に入って頂き、イソフルランを流します。

イソフルランが効いて来たようで、ジロ君の麻酔導入は完了です。

続いてガスマスクで維持麻酔に切り替え、下腹部を剃毛します。


剃毛は完了です。

下写真黄色丸の部分は膀胱を示します。
膀胱はおそらく尿で膨満状態にあり、外観からも盛り上がってみえます。

患部の消毒も終わり、これから執刀に移ります。

下腹部にメスを入れます。

腹筋を切開します。

切開した箇所から、膀胱が突出しました。
膀胱は暗赤色を示し、膀胱内での出血、炎症の進行が疑われます。


膀胱内圧を減じさせるため、尿を吸引します。

下写真の注射器の中は出血で褐色に変性した尿が確認できます。

これから膀胱に切開を加えますので、その前に膀胱の位置を固定するために支持糸を掛けます。

膀胱にメスを入れます。

膀胱壁に切開を加え、膀胱内の結石を探します。


膀胱内に存在する5㎜の結石は、容易に見つかりました。


膀胱内は剥離した粘膜や血餅などが確認されます。
結石が膀胱内で暴れ回り、膀胱粘膜に激しい損傷を与えていたのが予想されます。

膀胱内を洗浄します。

この状態でレントゲン撮影を行いました。
尿道内の3個の結石は回復前と同じ位置に存在しています。

尿道にカテーテルを入れて、生理食塩水で圧をかけてフラッシュし、膀胱内へ結石が戻せるかトライします。


一挙に圧をかけてフラッシュしたところ、膀胱は膨らみました。
膀胱は切開を加えていますので、破裂することはありません。

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下レントゲン写真の青丸は尿道カテーテルの外套部を示し、赤丸は3個の尿道結石です。
既にこの3個は尿道から膀胱内へと移動してるのが判明しました。

あとは膀胱内に逆流してきた結石を摘出するのみです。
結石2個がまとめて摘出出来ました(黄色丸)。

次いで残りの1個が見つかりました(下写真黄色丸)。


切開した膀胱を縫合します。

縫合が完了しました。

尿道カテーテルから生食を注入して、膀胱のリーク(漏れ)チェックを実施します。

縫合部の漏れはありません。

最後に腹筋を縫合します。


皮膚を縫合していきます。


手術は終了です。

手術から覚醒したばかりのジロ君です。

術後2日目のジロ君です。
血尿は治まり、自身で排尿出来るようになりました。


ジロ君は手術後4日目に退院して頂きました。
しかし、退院した翌日にショック状態に陥り、ジロ君は急逝されました。
入院中は経過が良好であったため、非常に残念です。
過去に尿道結石の手術を施したチンチラは予後不良となるケースが比較的多いです。
それは、前述の通り尿道が細いという点もありますし、飼主様が排尿障害になっていることに気づかれていないケースが多い点も挙げられます。
チンチラの飼主様は血尿・排尿障害を認めたら、速やかに受診して頂くようお願い致します。
合掌。

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2021年6月 6日 日曜日
高齢チンチラの臼歯過長症(祝21歳誕生日)
こんにちは 院長の伊藤です。
今回は、今年5月に21歳の誕生日を迎えたチンチラのご紹介です。
一般に言われるチンチラの平均寿命は10~15歳です。
ギネスの長寿記録はなんと29歳8か月齢とのことです。
当院では、このチンチラちゃんが病院始まっての最長老となります。
チンチラに限らず、齧歯目の動物は高齢になると不整咬合や胃のうっ滞などの疾病が絡んできます。
チンチラのコットンちゃん(6月現在21歳と17日齢、雌、体重460g)は、口腔内の涎で口周りの被毛が汚れているとのことで来院されました。

以前から、定期検診で診せて頂いてる患者様ですが、チンチラはウサギよりも不整咬合の調整が微妙で困難な動物です。
実際、今回の診察の1~2か月前から右下顎第1,2前臼歯の歯棘が伸張して、舌へ干渉を起こしており、歯の調整を度々実施してきました。
当院では、基本的に全身麻酔を行わずに歯棘をカット、研磨を施して不整咬合の調整をします。
ウサギレベルの口腔内サイズであれば、問題ないのですがチンチラはさらに一回り以上小さいので、口腔内に開口器やその他の器具を無麻酔でセッテイングするのは限界があります。
ヒトの歯科医のように咬み合わせのチェックを患者の意志で確認出来ると良いのですが、勿論、不可能です。
結局、微妙な咬合調整は麻酔下で実施するしかありません。
しかしながら、21歳という高齢のため麻酔は非常にリスクを孕んでいます。
飼い主様の強いご要望もあり、麻酔下での不整咬合調整をすることとなりました。
私自身も21歳のチンチラの全身麻酔は初体験となります。
基本は最短時間で確実に歯科調整することです。
麻酔前の入念な準備が必要です。
まずは、レントゲン撮影を行いました。

コットンちゃんの口腔内を確認したところ、以前と同様、右下顎第1.2前臼歯が湾曲・棘状で過長かつ舌干渉しているのが分かりました(上写真黄色丸)。
年齢を考慮すれば、不整咬合を初めとして根尖病巣も認められるのは当然のことです。
無麻酔での臼歯調整は、やはり限界がありますので全身麻酔を実施することになりました。
コットンちゃんの肺を少しでも酸素化させて、麻酔導入をスムーズにするためICU内で40%酸素を吸入します。


数時間ICU内で過ごしてもらい、これからイソフルランで麻酔導入します。


下写真黄色丸がコットンちゃんの流涎で乾燥・毛玉になっている被毛です。

麻酔導入箱にてイソフルランを流入します。

高齢でもあるため、麻酔導入は速やかに達成されました。

次に鼻に自家製のマスクを当てて、維持麻酔を行います。

口腔内は涎で一杯となっているため、綿棒で掻き出しています。

頬を拡張する器具を挿入します。

口腔内の写真は、光源が入れずらいこととフォーカスを合わせる対象物が小さすぎることで極めて撮影が困難です。
以下に載せる写真は、焦点がぼけていて見ずらい点があるかもしれませんがご了解ください。
前出のレントゲン像で、黄色丸で囲んでいた右下顎第1,2前臼歯が変形して棘状(下写真黄色矢印)になっているのがお分かり頂けると思います。

コットンちゃんをこの姿勢で維持し、過長の歯棘を切断・研磨します。

開口器を装着したところです。

臼歯カッターで歯棘を切断します。
カットした歯棘の一部を黄色丸で囲みました。

何ヶ所も歯棘をカットし、上下の臼歯の咬み合わせがスムーズになるように調整します。

新たにカッターで離断した歯棘を黄色矢印で示します。
この後、切断した臼歯の断面をヤスリで研磨処置します。

全ての処置後の口腔内です。
肉眼で見る限りは綺麗に咬合出来る様になったと思います。

この姿勢は辛そうに見えるかもしれませんが、呼吸する上ではウサギ、チンチラ、モルモットなどの齧歯目はこの仰け反る姿勢(スターゲージング)は呼吸が一番
楽な姿勢とされます。

離断した歯棘を黄色丸で囲みました。
無麻酔で開口する方法では、これほど詳細にわたる調整は難しかったと思います。

さて、処置は無事終了したコットンちゃんですが、麻酔から安全に覚醒して頂けるかが心配なところです。
イソフルランを切って、酸素吸入をしているコットンちゃんです。
体温も麻酔で低下しますので、常時温湯パックとヒーターで温めて対応してます。
既に意識は戻っています。

覚醒後、落ち着いてから再びICUに戻ったコットンちゃんです。
処置は終了し、無事生還出来て良かったです。

歯の処置3か月後のコットンちゃんです。
その後の歯のコンデションは良好で、以前のように流涎で悩まされることはないようです。
そして、この来院日の数日前にコットンちゃんは21歳の誕生日を迎えられました。

ウサギに比べると比較的長寿のイメージが強いチンチラです。
もともとタフな動物だと思いますが、10歳を過ぎても大きな病気ひとつ罹らずにいる個体も多いです。
その一方で、歯科疾患や食滞に一旦なると完治するのに長期戦になるケースが多い動物種でもあります。
特に歯科疾患となると口腔内が狭く、その一方で咽頭までが長いのでアプローチが非常に難しいです。
ウサギ用の歯科器具では限界を感じており、オリジナルのチンチラ用器具の開発を考えてます。


21歳を無事迎えられたのも、ひとえに飼主様の愛情の賜物です。
コットンちゃん、さらに長生きして周りの人たちに元気を与えて下さいね!


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今回は、今年5月に21歳の誕生日を迎えたチンチラのご紹介です。
一般に言われるチンチラの平均寿命は10~15歳です。
ギネスの長寿記録はなんと29歳8か月齢とのことです。
当院では、このチンチラちゃんが病院始まっての最長老となります。
チンチラに限らず、齧歯目の動物は高齢になると不整咬合や胃のうっ滞などの疾病が絡んできます。
チンチラのコットンちゃん(6月現在21歳と17日齢、雌、体重460g)は、口腔内の涎で口周りの被毛が汚れているとのことで来院されました。

以前から、定期検診で診せて頂いてる患者様ですが、チンチラはウサギよりも不整咬合の調整が微妙で困難な動物です。
実際、今回の診察の1~2か月前から右下顎第1,2前臼歯の歯棘が伸張して、舌へ干渉を起こしており、歯の調整を度々実施してきました。
当院では、基本的に全身麻酔を行わずに歯棘をカット、研磨を施して不整咬合の調整をします。
ウサギレベルの口腔内サイズであれば、問題ないのですがチンチラはさらに一回り以上小さいので、口腔内に開口器やその他の器具を無麻酔でセッテイングするのは限界があります。
ヒトの歯科医のように咬み合わせのチェックを患者の意志で確認出来ると良いのですが、勿論、不可能です。
結局、微妙な咬合調整は麻酔下で実施するしかありません。
しかしながら、21歳という高齢のため麻酔は非常にリスクを孕んでいます。
飼い主様の強いご要望もあり、麻酔下での不整咬合調整をすることとなりました。
私自身も21歳のチンチラの全身麻酔は初体験となります。
基本は最短時間で確実に歯科調整することです。
麻酔前の入念な準備が必要です。
まずは、レントゲン撮影を行いました。

コットンちゃんの口腔内を確認したところ、以前と同様、右下顎第1.2前臼歯が湾曲・棘状で過長かつ舌干渉しているのが分かりました(上写真黄色丸)。
年齢を考慮すれば、不整咬合を初めとして根尖病巣も認められるのは当然のことです。
無麻酔での臼歯調整は、やはり限界がありますので全身麻酔を実施することになりました。
コットンちゃんの肺を少しでも酸素化させて、麻酔導入をスムーズにするためICU内で40%酸素を吸入します。


数時間ICU内で過ごしてもらい、これからイソフルランで麻酔導入します。


下写真黄色丸がコットンちゃんの流涎で乾燥・毛玉になっている被毛です。

麻酔導入箱にてイソフルランを流入します。

高齢でもあるため、麻酔導入は速やかに達成されました。

次に鼻に自家製のマスクを当てて、維持麻酔を行います。

口腔内は涎で一杯となっているため、綿棒で掻き出しています。

頬を拡張する器具を挿入します。

口腔内の写真は、光源が入れずらいこととフォーカスを合わせる対象物が小さすぎることで極めて撮影が困難です。
以下に載せる写真は、焦点がぼけていて見ずらい点があるかもしれませんがご了解ください。
前出のレントゲン像で、黄色丸で囲んでいた右下顎第1,2前臼歯が変形して棘状(下写真黄色矢印)になっているのがお分かり頂けると思います。

コットンちゃんをこの姿勢で維持し、過長の歯棘を切断・研磨します。

開口器を装着したところです。

臼歯カッターで歯棘を切断します。
カットした歯棘の一部を黄色丸で囲みました。

何ヶ所も歯棘をカットし、上下の臼歯の咬み合わせがスムーズになるように調整します。

新たにカッターで離断した歯棘を黄色矢印で示します。
この後、切断した臼歯の断面をヤスリで研磨処置します。

全ての処置後の口腔内です。
肉眼で見る限りは綺麗に咬合出来る様になったと思います。

この姿勢は辛そうに見えるかもしれませんが、呼吸する上ではウサギ、チンチラ、モルモットなどの齧歯目はこの仰け反る姿勢(スターゲージング)は呼吸が一番
楽な姿勢とされます。

離断した歯棘を黄色丸で囲みました。
無麻酔で開口する方法では、これほど詳細にわたる調整は難しかったと思います。

さて、処置は無事終了したコットンちゃんですが、麻酔から安全に覚醒して頂けるかが心配なところです。
イソフルランを切って、酸素吸入をしているコットンちゃんです。
体温も麻酔で低下しますので、常時温湯パックとヒーターで温めて対応してます。
既に意識は戻っています。

覚醒後、落ち着いてから再びICUに戻ったコットンちゃんです。
処置は終了し、無事生還出来て良かったです。

歯の処置3か月後のコットンちゃんです。
その後の歯のコンデションは良好で、以前のように流涎で悩まされることはないようです。
そして、この来院日の数日前にコットンちゃんは21歳の誕生日を迎えられました。

ウサギに比べると比較的長寿のイメージが強いチンチラです。
もともとタフな動物だと思いますが、10歳を過ぎても大きな病気ひとつ罹らずにいる個体も多いです。
その一方で、歯科疾患や食滞に一旦なると完治するのに長期戦になるケースが多い動物種でもあります。
特に歯科疾患となると口腔内が狭く、その一方で咽頭までが長いのでアプローチが非常に難しいです。
ウサギ用の歯科器具では限界を感じており、オリジナルのチンチラ用器具の開発を考えてます。


21歳を無事迎えられたのも、ひとえに飼主様の愛情の賜物です。
コットンちゃん、さらに長生きして周りの人たちに元気を与えて下さいね!


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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL
2021年2月 4日 木曜日
チンチラの腸重積(その2)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日、ご紹介しますのはチンチラの腸重積の症例です。
チンチラの場合、下痢や便秘によるしぶり(いきみ)が原因で腸重積や直腸脱が発症します。
腸重積とは、腸管の一部が連続する腸管の肛門側に引き込まれてしまうことによって生じる病気です。
例えとして、釣竿を折りたたむような感じで腸が腸に入り込むような感じと言えば、イメージして頂けるでしょうか?
進行すると腸管の血行不全で壊死を来します。
腸重積は緊急手術が必要になることも多いです。
腸が壊死していれば切除後、腸管吻合が必要となり、予後不良となることもある怖い疾患です。
チンチラのぐりちゃん(雌、10か月齢、体重490g)はお尻から腸が出ているとのことで受診されました。

下写真黄色丸は直腸が脱出しているのを示します。

拡大像です。
直腸が脱出して、充うっ血しており痛々しい感じです。

レントゲン撮影を実施しました。
盲腸にガスの貯留が認められます。
おそらく腸蠕動の障害があるように思われます。


単純な直腸脱ならば、整復処置を施し肛門に支持糸をかけて経過観察となります。
しかし、腸重積の場合は開腹手術となりますので、まずは綿棒を用いて腸重積の確認をします。
下写真のように綿棒を2本やさしく肛門と脱出してる直腸の間隙に挿入します。
約2㎝ほど綿棒は、この間隙に容易に入りました(下写真黄色矢印)。
直腸脱の場合は、この間隙は形成されませんので、腸重積の疑いが強いです。

腸重積の場合、緊急手術が必要となります。
飼い主様の了解を得て、早速開腹手術に移ることとなりました。
イソフルランによる麻酔導入を行います。

維持麻酔に切り替え、患部の剃毛処置を実施します。

ぐりちゃんの麻酔が安定してきたところで、手術のスタートです。

開腹手術に移ります。

腹筋を切開します。

膀胱は蓄尿が著しいため、膀胱穿刺して尿を吸引します。

ピンセットで確認しているのは、ぐりちゃんの子宮です。

直腸へ綿棒を挿入して、開腹した腹腔内の腸の動きを観察します。

触診すると硬くなって、動きが認められない小腸の部位がありました。
指先ではこの部位だけ太く、周囲からの血管も怒張しているのが分かります(下写真)。

下写真青丸は盲腸です。
黄色矢印は空回腸の盲腸へと移行する部位です。
この部位が腫脹し、触診で硬く感じられます。

この部位が腸重積を起こしている可能性があり、綿棒で持ち上げて周囲の余分な組織を分画していきます。

患部を脂肪組織が取り巻いているため、丁寧に切除します。

脂肪組織などを取り除いていくと赤く腫れた空回腸が現れました。


下写真の黄色丸は釣竿を折りたたむようにして、腸の中に腸が入り込んでいます。


患部を上方に牽引すると重責部が明らかになりました。

重責部を優しく、さらに牽引してみます。

重責部を伸展すると血行不良で充うっ血が確認できます(黄色矢印)。

患部(下写真黄色丸)は壊死が進行しているようです。

下写真の充うっ血色の部位を切除して、正常な腸管を吻合することとします。

切除する上流の腸に支持糸を掛けます。


外科鋏で壊死している腸管を切除します。


次いで、離断した腸管の断面同志を端・端並置縫合します。

縫合に使用する縫合糸は5-0のモノフィラメント合成吸収糸です。


チンチラの腸管内腔は、せいぜい3㎜程度なので縫合には細心の注意を払います。

腸管の全周を6か所縫合しました。




腸管縫合終了です。

支持糸を外して、患部を生理食塩水で洗浄します。


腹筋を縫合しています。

最後に皮膚縫合をして手術は終了です。

全身麻酔から覚醒したばかりのぐりちゃんです。

手術後、ICUの部屋に入ってもらいましたが、辛そうです。

今回、切除した小腸を調べてみました。

うっ血して腫脹しています。

断端を綿棒で抑えて、ピンセットで反対方向へ腸を牽引します。

腸管内に入り込んだ腸がズルズルと出て来ます。

腸が入り組んでいた箇所(下写真黄色矢印)が重責を起こしていた部位となります。
重責部は壊死を起こしていました。


術後翌日のぐりちゃんです。

食欲は少しづつ出てきて、青汁を自ら飲み始めました。

チモシーのような乾草を給餌すると縫合部に負荷を極端にかけますので、しばらくは青汁や強制給餌用のライフケア®などで給餌します。

運動性も出て来ましたので1週間入院の後、ぐりちゃんには退院して頂きました。

肛門から出ていた腸も無事納まりました。

腸重積は、直腸脱と誤認されるとその治療のため何日も経過してから、あわてて実は腸重責であったと気づいた時には、もう手遅れになっていることが多いです。
チンチラは小さな体の繊細な動物なので、長時間に及ぶ疼痛やストレスには耐えられません。
肛門から腸が飛び出していたら、早急に受診されることをお勧めします。
ぐりちゃん、お疲れ様でした!

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本日、ご紹介しますのはチンチラの腸重積の症例です。
チンチラの場合、下痢や便秘によるしぶり(いきみ)が原因で腸重積や直腸脱が発症します。
腸重積とは、腸管の一部が連続する腸管の肛門側に引き込まれてしまうことによって生じる病気です。
例えとして、釣竿を折りたたむような感じで腸が腸に入り込むような感じと言えば、イメージして頂けるでしょうか?
進行すると腸管の血行不全で壊死を来します。
腸重積は緊急手術が必要になることも多いです。
腸が壊死していれば切除後、腸管吻合が必要となり、予後不良となることもある怖い疾患です。
チンチラのぐりちゃん(雌、10か月齢、体重490g)はお尻から腸が出ているとのことで受診されました。

下写真黄色丸は直腸が脱出しているのを示します。

拡大像です。
直腸が脱出して、充うっ血しており痛々しい感じです。

レントゲン撮影を実施しました。
盲腸にガスの貯留が認められます。
おそらく腸蠕動の障害があるように思われます。


単純な直腸脱ならば、整復処置を施し肛門に支持糸をかけて経過観察となります。
しかし、腸重積の場合は開腹手術となりますので、まずは綿棒を用いて腸重積の確認をします。
下写真のように綿棒を2本やさしく肛門と脱出してる直腸の間隙に挿入します。
約2㎝ほど綿棒は、この間隙に容易に入りました(下写真黄色矢印)。
直腸脱の場合は、この間隙は形成されませんので、腸重積の疑いが強いです。

腸重積の場合、緊急手術が必要となります。
飼い主様の了解を得て、早速開腹手術に移ることとなりました。
イソフルランによる麻酔導入を行います。

維持麻酔に切り替え、患部の剃毛処置を実施します。

ぐりちゃんの麻酔が安定してきたところで、手術のスタートです。

開腹手術に移ります。

腹筋を切開します。

膀胱は蓄尿が著しいため、膀胱穿刺して尿を吸引します。

ピンセットで確認しているのは、ぐりちゃんの子宮です。

直腸へ綿棒を挿入して、開腹した腹腔内の腸の動きを観察します。

触診すると硬くなって、動きが認められない小腸の部位がありました。
指先ではこの部位だけ太く、周囲からの血管も怒張しているのが分かります(下写真)。

下写真青丸は盲腸です。
黄色矢印は空回腸の盲腸へと移行する部位です。
この部位が腫脹し、触診で硬く感じられます。

この部位が腸重積を起こしている可能性があり、綿棒で持ち上げて周囲の余分な組織を分画していきます。

患部を脂肪組織が取り巻いているため、丁寧に切除します。

脂肪組織などを取り除いていくと赤く腫れた空回腸が現れました。


下写真の黄色丸は釣竿を折りたたむようにして、腸の中に腸が入り込んでいます。


患部を上方に牽引すると重責部が明らかになりました。

重責部を優しく、さらに牽引してみます。

重責部を伸展すると血行不良で充うっ血が確認できます(黄色矢印)。

患部(下写真黄色丸)は壊死が進行しているようです。

下写真の充うっ血色の部位を切除して、正常な腸管を吻合することとします。

切除する上流の腸に支持糸を掛けます。


外科鋏で壊死している腸管を切除します。


次いで、離断した腸管の断面同志を端・端並置縫合します。

縫合に使用する縫合糸は5-0のモノフィラメント合成吸収糸です。


チンチラの腸管内腔は、せいぜい3㎜程度なので縫合には細心の注意を払います。

腸管の全周を6か所縫合しました。




腸管縫合終了です。

支持糸を外して、患部を生理食塩水で洗浄します。


腹筋を縫合しています。

最後に皮膚縫合をして手術は終了です。

全身麻酔から覚醒したばかりのぐりちゃんです。

手術後、ICUの部屋に入ってもらいましたが、辛そうです。

今回、切除した小腸を調べてみました。

うっ血して腫脹しています。

断端を綿棒で抑えて、ピンセットで反対方向へ腸を牽引します。

腸管内に入り込んだ腸がズルズルと出て来ます。

腸が入り組んでいた箇所(下写真黄色矢印)が重責を起こしていた部位となります。
重責部は壊死を起こしていました。


術後翌日のぐりちゃんです。

食欲は少しづつ出てきて、青汁を自ら飲み始めました。

チモシーのような乾草を給餌すると縫合部に負荷を極端にかけますので、しばらくは青汁や強制給餌用のライフケア®などで給餌します。

運動性も出て来ましたので1週間入院の後、ぐりちゃんには退院して頂きました。

肛門から出ていた腸も無事納まりました。

腸重積は、直腸脱と誤認されるとその治療のため何日も経過してから、あわてて実は腸重責であったと気づいた時には、もう手遅れになっていることが多いです。
チンチラは小さな体の繊細な動物なので、長時間に及ぶ疼痛やストレスには耐えられません。
肛門から腸が飛び出していたら、早急に受診されることをお勧めします。
ぐりちゃん、お疲れ様でした!

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