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チンチラの疾病

2020年12月 1日 火曜日

チンチラの鼻腔外傷と食滞

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、チンチラの鼻を咬傷の傷で呼吸不全となり、結果食滞(消化管内ガス貯留)となった症例です。

チンチラのオレオ君(2歳、雄、体重500g)は一週間ほど前に同居している他のチンチラに鼻を咬まれ、鼻腔内から膿が出始めたとのことで来院されました。





下写真の黄色丸は咬まれた鼻です。

鼻腔内からジワジワと膿が出ています。



鼻の正面(鼻鏡)は鼻汁と痂皮(かさぶた)で鼻は詰まり気味です。







チンチラに限らずウサギ、モルモットたちは鼻呼吸が基本の齧歯目の動物です。

何らかの原因で鼻呼吸が出来なくなると重篤な症状になります。

オレオ君は鼻呼吸が満足に出来ないため、口呼吸をするようになっています。

いわゆる開口呼吸になりますと、肺に行くよりも食道を介して胃の方に回る空気が多くなります。

結果として消化管は空気で鼓張し、胃腸蠕動は停滞し、食欲廃絶となり全身状態は不良となります。


オレオ君の全体像ですが、下写真をご覧いただけると腹が誇張しているのがお分かり頂けると思います。





上から見た写真です。

腹囲が腫れています。

食欲は既に無くなっており、被毛の艶はなくなり、所どころに脱毛があります。





レントゲン撮影を実施しました。

下写真で胃・盲腸にガスが停留しているのが分かります。



上写真の拡大像です。

食餌の内容物は殆どなく、食滞・鼓張状態です。



側臥状態のレントゲン像です。



盲腸にガスが多量に貯留しており、背骨を超えて鼓張しています。



鼻周辺の組織は、鼻骨の障害(融解)はありませんが、咬傷による組織炎症が進行しているのが分かります(黄色丸)。



オレオ君の一番の問題はこのガスを早急に抜くことです。

ウサギのように鼻腔がある程度の直径があれば、栄養カテーテルを経鼻胃カテーテルとして、鼻に挿入します。

そのままカテーテルを胃まで到達させ、胃内のガスを抜去する方法(減圧法)も考えられます。

しかしながら、チンチラは極めて鼻腔が狭いことに加えて、オレオ君の鼻腔は外傷で狭窄してるため、カテーテルの挿入は困難です。

そうなると直接胃へカテーテルを入れる方法が考えられます。

オレオ君の全身状態はよろしくなく、鼻呼吸が殆ど出来ていない状態です。

この状態で開口姿勢を維持して、胃へカテーテルを入れると呼吸停止に陥る可能性が大きいです。

また盲腸から下部のガス貯留については、開腹して腸切開してのガス抜きも困難です。

ましてや、皮膚から針を穿刺して腸管からガスを抜去するという処置は、ショック死する危険を伴います。

結局のところ、消泡剤・胃腸蠕動亢進薬・抗生剤・鎮痛剤の組み合わせで投薬して経過を診ていくこととしました。

残念ながら、オレオ君は受診当日に亡くなられました。



チンチラは細菌感染にウサギ以上に弱いこと、鼻腔の炎症や歯の疾患などで鼻呼吸が出来なくなると容態は急変することをご理解下さい。

特に草食獣は肺が小さく、呼吸不全になりやすいです。

鼻呼吸が出来なくなれば、開口呼吸に移行するのは時間の問題で、簡単に食滞・鼓張症に陥ります。

一旦、食滞・鼓張症になると回復させるには大変な努力が必要となります。

鼻呼吸がスムーズに出来ていないと感じたら、速やかに受診して下さい。

チンチラの病態の進行は非常に早く、犬猫の比ではないことをご了解下さい。






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2020年11月 9日 月曜日

チンチラの膀胱結石

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介するのは、チンチラの膀胱結石摘出の症例です。

以前に膀胱結石が尿道まで降りてきて摘出した症例を載せました。

その症例に興味ある方はこちらをクリックして下さい。



チンチラのマチルダ君(雄、9歳、体重700g)は最近、血尿が出るため来院されました。

排尿時の疼痛感も伴っているようです。





まずは、レントゲン撮影を実施しました。





上のレントゲン写真の黄色丸は膀胱内の結石を表しています。

結石の大きさは直径が6㎜あります。

おそらくこの結石が原因で排尿時の疼痛や血尿などの症状が引き起こされてます。

膀胱結石が原因で排尿障害になりますとチンチラの場合は重篤な状態に陥るケースが多いように思います。

飼い主様の了解を得て、膀胱結石摘出手術を実施することとなりました。

麻酔導入箱にマチルダ君に入ってもらい、イソフルランで麻酔導入を行います。



麻酔導入が完了したところです。



麻酔導入箱から出てもらい、ガスマスクで維持麻酔に切り替えます。

術野を剃毛し、消毒します。



マチルダ君の麻酔状態も安定してきたところで手術を開始します。



開腹のためにメスで切皮します。



腹筋を切開します。



チンチラの臓器は非常に脆いので、極力指先で弄り回さずに滅菌綿棒で体外に出します。



下写真の中央部が膀胱です。



膀胱を牽引して支持するための支持糸を膀胱の先端部にかけます。



下写真は膀胱尖部に支持糸をかけ、牽引しているところです。

膀胱の腹側面を露出しており、ここからメスで膀胱壁を切開します。



№11のメスの先端部で膀胱に切開を入れます。

既に指先には硬い結石の存在を触知しています。



膀胱の漿膜面から切開し、粘膜面まで割を入れます。



下写真の黄色矢印は膀胱結石を示しています。



膀胱粘膜を傷つけないように結石を摘出します。



マチルダ君の膀胱と比べても大きく感じるサイズの結石です。





膀胱内部を生理食塩水でしっかり洗浄し、5‐0のモノフィラメント吸収糸で膀胱壁を縫合します。





チンチラの場合は膀胱自体が小さいため、犬猫に適用するような二重内反縫合法は行いません。

単層の単純結紮縫合法で対応します。



約2㎜間隔で縫合していきます。



縫合部がしっかり縫合できているか確認するためにリーク試験(漏出試験)を最後に行います。

これは、生理食塩水を注射器で膀胱内に注入し、縫合部から生食が漏れていないかを見ます。



下写真黄色矢印から生食が一部漏出しているようなので、この部位に縫合を追加することとしました。







再度漏出試験を実施し、漏れがないことを確認しました。



膀胱を腹腔内に戻し閉腹します。



腹筋を縫合したところです。



最後に皮膚を縫合します。



皮膚縫合完了です。



手術は完了しました。

後は麻酔を切り、マチルダ君の覚醒を待ちます。



皮下にリンゲル液を輸液してます。



麻酔から覚醒してきたマチルダ君です。





手術翌日のマチルダ君です。

エリザベスカラーはストレスの原因となりますが、2週間は頑張って装着して頂きます。

食欲もあり、排尿も出来ています。

特に問題なくマチルダ君は術後2日目に退院して頂きました。



下写真は摘出した膀胱結石です。

炭酸カルシウムの膀胱結石でした。

チンチラにおいては、食餌から摂取した過剰なカルシウムは殆どが糞便から排泄されるとされています。

一方、尿から排泄されるカルシウムも一定量に維持されるとされます。

結果、高カルシウムの食餌が膀胱結石の誘因とはならないと考えられています。

ならば、膀胱結石の原因はどこにあるのか、遺伝的要因なのか、あるいは他の要因が関連しているのか、今のところ不明です。



2週間後に抜糸に来院されたところです。

抜糸も問題なく終了しました。

退院後は血尿もなく、排尿もスムーズに出来ているとのことです。



マチルダ君、お疲れ様でした!




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2019年10月28日 月曜日

チンチラの腸管吻合(自咬による腸管脱出)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、自咬症により腸が脱出し腸損傷を招いたチンチラの症例です。

犬猫同様、腸が損傷・壊死を起こした場合、患部を切除後、腸管を吻合する必要があります。

チンチラは体重が雄で600g、雌で800gが上限の平均とされます。

これはウサギのネザーランド種(小型品種)の3分の2から2分の1に当たる体重です。

当然、腸管の直径は小さく吻合の難易度は高くなります。

チンチラは腸重積が原因で直腸脱となるケースが多く、その場合は重積部周囲を切除後に腸管吻合を行うのが最善とされます。

そんなチンチラの腸管吻合をご紹介します。


チンチラのポテチ君(3歳、去勢済、体重450g)は2週間前に当院で去勢手術を受けられました。



去勢手術後の患部の写真です。



術後2週間で縫合部は癒合したので、抜糸を行ってエリザベスカラーを外しました。

しかし、帰宅されたのちに患部を自咬し、腸が飛び出しているとのことで慌てて再受診されました。

脱出した腸は床材(チモシー)にまみれ、自咬して損傷が認められました。

細くて脆弱な腸管ですから、炎症・損傷が疑われる部位は切除する必要があります。

ポテチ君を全身麻酔します。



下写真黄色丸は脱出した腸管です。



患部をしっかり生食で洗浄します。



自咬で開いた患部をさらに近位(頭側側)に向けて切開します。



脱出した腸の全容です。



下写真の黄色丸は腸損傷を示しています。

腸管は、内出血や血行障害もあり、うっ血色を呈してます。

いずれ壊死を招くと推察されます。



脱出した腸の近位を腸鉗子で優しく挟みます。



把持した腸鉗子の間を外科鋏で離断します。



離断した直後です。



離断した腸の断面です。



向かって左側が約2㎜、右側が約1.5㎜の腸管の内径です。

この2つの腸断面を吻合します。



腸間膜からの出血が認められたため、バイポーラ(電気メス)で止血します。



次に6-0モノフィラメント合成吸収糸(黄色矢印)で腸管を単純結紮縫合していきます。

髪の毛よりも細い縫合糸です。









腸管の漿膜、筋肉、粘膜下織の全層を針で貫通して縫合します。









このようにして腸管の全周を4か所縫合します。

糸が細すぎて分かりずらいと思いますが、下写真が完成形です。



次いで、脱出腸管を腹腔内に戻します。



自咬の結果、裂けた腹筋層を縫合します。





皮下組織も縫合します。



最後に皮膚を5‐0ナイロン縫合糸で縫合して終了です。

吻合した腸管は約3週間で完全に癒合するとされます。

術後の合併症は腸の裂開、穿孔、腹膜炎、腹部での癒着、腸管の狭窄及び腸閉塞の再発などです。

術後5日までに腸穿孔による腹膜炎は発症します。

ポテチ君の容態については1週間は要注意です。



切除した腸です。



術後の栄養管理は、点滴や強制給餌による流動食を与えます。

下写真は、ポテチ君に青汁を強制給餌しているところです。



ポテチ君はしっかり流動食を飲んでくれます。



下写真は流動食のMSライフケア®を与えているところです。

ポテチ君の術後経過は良好です。

食欲、運動性もあり、6日後には退院して頂きました。

抜糸までの間(約2週間)は流動食を中心とした食生活で腸に負担をかけないようにして頂きます。

手術も大変ですが、術後の食餌管理は本人も飼主様も大変です。



術後2週目のポテチ君です。

抜糸のために来院されました。



傷口は皮膚癒合が完了していましたので、早速抜糸します。



抜糸後の患部です。

傷口も目立ちません。



大変な手術を受けることになったポテチ君ですが、術後の感染症もなく、腸の蠕動障害もなく無事回復されて良かったです。

術後に患部を自傷するケースは初めて経験しました。

去勢後に皮膚癒合は完了していたのですが、齧歯目の切歯は鋭いため、神経質な個体であれば、今回の様に癒合部を吻開してしまうようです。



ポテチ君、お疲れ様でした!






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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

2019年9月22日 日曜日

チンチラの去勢手術

こんにちは 院長の伊藤です。


本日ご紹介しますのはチンチラの去勢手術です。

犬、猫においては去勢・避妊手術は一般的に認知されるところですが、まだチンチラの去勢・避妊手術を実施している病院は少数といえます。

勿論、この手術の目的は不妊です。

カップリングして相性が良いとチンチラは繁殖力が高いため、不妊手術は必要となります。


雌の場合、避妊手術をしていないとするとシニア世代になり、子宮蓄膿症(興味のある方はこちらをクリックして下さい)、子宮水腫、子宮平滑筋肉腫等の罹患率が上昇します。

上記の疾病は、場合によっては死亡に至る場合もあります。

そのため、産科系疾患を予防するためにも避妊手術は意義があります。


雄の場合は、ウサギのようにシニア世代(5歳以降)で頻発する精巣腫瘍は、私は遭遇した経験はありません。

しかし、チンチラの寿命が10年から20年近くに伸びつつある事から、あまり目にしていない泌尿器系の疾病が今後、出てくる可能性があります。

加えて、性的に成熟を迎えるとチンチラは群れを守ろうとして縄張り意識が出て来ます。

場合によっては、飼主様に攻撃性を持つに至るケースもあるでしょうから、去勢を施すことで性格をマイルドにすることが可能です。

本日は、どんな感じでチンチラの去勢手術が行われるかを説明させて頂きます。



今回、チンチラのトトロ君(雄、3歳)は去勢を希望して来院されました。







全身麻酔下での手術となりますので、トトロ君に麻酔導入箱に入って頂きます。



イソフルランを流し、麻酔導入が効果を表したところです。



次にトトロ君を導入箱から出して、ガスマスクを口周りにあててイソフルランによる維持麻酔を行います。



メスを入れる部位をバリカンで剃毛します。



心拍数、呼吸数、血圧、血中酸素濃度などをモニタリングしながら手術に臨みます。



ペニスの付根に紙テープで腹部を抑え込んでいるのは、精巣が腹腔内頭側に潜りこまないよう定位置に保つためです。

チンチラの特徴として、鼠径輪(精巣の精管・精巣動静脈が腹腔内へ入っていく孔)が開口しており、陰嚢がありません。

そのため精巣は絶えず可動する特徴を持ちます。

なお鼠径輪については、こちらをクリックして下さい。





精巣にアプローチするために皮膚に切開を加えます。



皮膚を切開した後、筋肉層を切開します。



鉗子で筋肉層を広げます。



精巣を包む総鞘膜を切開します。



これで精巣が露出されました。



下写真の黄色矢印は精巣、青矢印は蔓状静脈叢、ピンク矢印は精巣動静脈を示します。



精巣を包んでいる総鞘膜と蔓状静脈叢を電気メスで分離します。



下写真は完全に総鞘膜から精巣が分離された状態です。

下写真の矢印の色は上記写真と同じ部位を示し、オレンジ矢印は精子の通る精管を示します。



精巣動静脈を縫合糸で結紮します。



2か所ほど結紮を実施します。



次いで精管を結紮します。



精巣動静脈と精管をバイクランプでシーリング後に切断します。











切断端は腹腔内へ戻します。

下写真の黄色矢印は腹筋の断端を示します。



この腹筋を縫合します。





筋層の縫合は終了です。



下写真は、両側の精巣摘出・筋層縫合が終了したところです。



皮膚を縫合しました。



手術終了です。



皮下輸液します。



麻酔から覚醒したトトロ君です。





傷口はこれくらいの大きさです。









術後2週間で抜糸した直後の患部です。



術後の経過は良好です。

当院では、このような流れでチンチラの去勢手術を実施しております。

去勢手術は手術当日の午前中に来院して頂き、当日の午後退院という形でお願いしてます。

なおチンチラの避妊手術は一日入院という形です。

避妊手術の詳細は、また改めて掲載します。



トトロ君、お疲れ様でした!





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2018年5月24日 木曜日

チンチラの起源の特定できない悪性腫瘍

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、腫瘍の中でも種類の分類分け出来ない低分化度の悪性腫瘍のお話です。

チンチラのぽん汰君(15歳6か月、雄)は肘に腫瘤が出来たとのことで来院されました。



チンチラで15歳6か月齢は非常に高齢です。

チンチラの平均寿命が10歳と言われます。

ギネス記録としてはドイツで29歳8か月という個体がいたとされていますが、当院では紛れもなくぽん汰君は最長老と言えます。



下写真の黄色丸は左ひじの腫瘤です。

既に床面との干渉で、肘の皮膚は裂けて痂皮が形成されています。

加えて、赤矢印は頸腹部の腫脹を示します。



まずは肘の腫瘤を細胞診しました(下写真)。



核の大小不同、核小体の大型化・複数化、複数核・大型核形成などの異型所見が認められました。

これらの異型性を示す細胞成分が単一の細胞群として採取される点から、悪性腫瘍が強く疑われます。

外科的に切除が可能なのかが問題です。

ぽん汰君が超高齢のため、全身麻酔に耐えられるかと言う点。

肘の悪性腫瘍を完全に切除出来るかと言う点。

この2点をクリアできれば手術をする意義はあると思います。

飼い主様の意向としては、現状のままではぽん汰君は肘を痛がり、出血も断続的に続き、見ていても辛いとのことです。

腫瘍が完全切除出来なくても、この状態を改善できれば手術も止む無しとのことです。

飼い主様のご了解のもと、最善を尽くして手術に臨むこととなりました。

ぽん汰君をICUに入れて、高酸素下で少しでも全身麻酔のリスクを下げます。



麻酔導入箱に入ってもらい、ぽん汰君に寝て頂きます。





麻酔導入が出来ましたので、外に出して維持麻酔に変えます。

助手に前足をテープで牽引してもらい、患部皮膚に緊張をかけて、メスを入れやすくします。





肘の腫瘍が思いの外、大きいのがお分かり頂けると思います。



皮膚は裂けており、腫瘍と健常な皮膚との境界は不明瞭です。



極力、マージンを大きめに取るように電気メス(モノポーラ)で切除していきます。



切開している部位から出血も始まりましたので、バイポーラで止血します。







腫瘍への太い栄養血管が出て来ました。



バイクランプでこれらの栄養血管をシーリングします。



無事、腫瘍を切除出来ました。





問題はこの腫瘍切除後の皮膚欠損の修復です。



肘の関節運動がありますから、縫合部が裂けないようにある程度の緊張を持たせて、皮膚を細かく縫合します。

今回は5-0ナイロン縫合糸を使用しました。





縫合は終了しました。

皮膚の欠損領域が広いため、縫合は多少きつめとなりました。

これで、日常生活で患部が開かないのを祈念します。



次いで、頸腹部の腫脹ですが、注射針で患部を穿刺すると圧迫後に膿が出て来ました。



出来る限り圧迫排膿しました。

左下顎の臼歯歯根部が炎症を起こし、結果として根尖膿瘍という歯根部に膿が蓄膿する状態になっていました。



今回の手術はこれで終了となります。

後は、ぽん汰君の麻酔覚醒を待ちます。



背部にリンゲル液の皮下輸液を行います。



麻酔覚醒した直後のぽん汰君です。



高齢なので慎重に手術をしましたが、何とか無事終了出来てホッとしたところです。






さて、下写真は摘出した腫瘍です。

肘の皮下組織に浸潤していた側を表に下写真です。




痂皮が形成された裂けた表皮側を表にした写真です。



腫瘍の側面の写真です。



下写真は顕微鏡の病理画像(中拡大像)です。

新皮から皮下組織にかけて胞巣状・シート状に増殖する多形性・異型性に富む類円形・多角形細胞によって今回の腫瘤は構成されています。



下写真3枚は高倍率像です。

いずれも腫瘍細胞は、明瞭な細胞境界、好酸性細胞質、大型の類円形淡染核、明瞭な核小体を持っています。





病理医から腫瘍細胞の分化度が低く、診断名の特定は困難とのことでした。

腫瘍細胞の形態や増殖パターンから上皮系悪性腫瘍、特に形成部位から基底細胞癌の可能性があるそうです。



摘出した腫瘍組織の底部には、腫瘍細胞が露出している点から再発の可能性もあるため、要経過観察とのことです。



手術2週間後のぽん汰君です。

患部の抜糸のため来院されました。



下写真は肘の縫合部です。

綺麗に皮膚は癒合しています。




その後、ぽん汰君は4か月頑張りましたが、左の頚腹部に新たに腫瘍が出来ました。

飼主様の希望もあり、治療はせずに15歳10か月齢でぽん汰君は天命を全うしました。

合掌。





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