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ハリネズミの疾病

2019年2月27日 水曜日

ハリネズミの断脚手術(扁平上皮癌)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ハリネズミの扁平上皮癌により断脚しなければならなくなった症例です。

以前にハリネズミの扁平上皮癌についての詳細は、こちら(ハリネズミの扁平上皮癌)こちら(ハリネズミの扁平上皮癌 その2)をクリックして下さい。


ヨツユビハリネズミのハーリーちゃん(雌、3歳、体重350g)は後ろ足が腫れて、他院で治療を受けていたけどさらに酷くなってきたとのことで、三重県からの受診です。

ハーリーちゃんの右後肢(黄色矢印)は、既に足としての形状をなしていないほど腫大しており、辛うじて体重を支えている模様です。

後肢の先端部は黒変しており、壊死が進行しているのが分かります。

元気食欲もなく、全身状態も良くありません。















ハリネズミである以上、身体を丸めますが右足は腫大のため格納出来ず、自らの針で右足を穿刺してしまい(下写真)、外傷による細菌感染も進行しています。



まずレントゲン撮影を実施しました。



踝骨(くるぶし)から下の中足骨、趾骨にかけて既に骨融解しており、壊死が進行しているのが分かります。

骨腫瘍の可能性も考え、また壊死による敗血症を回避するためにも、早急な断脚が必要です。

飼い主様のご了解を頂き、断脚手術を実施することとなりました。


ハーリーちゃんのは、麻酔導入箱に入って頂き、イソフルランを流入します。





麻酔導入が完了したところで、箱から出てもらい維持麻酔に変えます。







断脚は大腿骨骨幹部を離断する予定です。

患部周囲の剃毛を実施します。



ガス滅菌済みの粘着テープで後肢患部をテーピングします。



後肢の内側面からメスを入れて行きます。



後肢大腿部は大腿動脈や大腿静脈などの太い血管が走行しています。

これらの血管を結紮し、大腿内側の筋肉を切断します。



慎重に皮膚を切皮します。



大腿動静脈が出て来ました。



縫合糸を用いて血管を結紮します。





近位端と遠位端に2か所結紮し、メスで離断します。





メスで血管を離断します。



結紮部からの出血がないことを確認します。





続いて、筋肉層をバイポーラで切断していきます。





縫工筋、恥骨筋をここで切断します。



さらに外側面にある大腿四頭筋及び大態二頭筋、内転筋、半腱様筋を切断します。

下写真黄色矢印は大腿骨を示します。



大腿骨骨幹部を骨剪刃で離断します。



大腿骨の離断が完了しました。



軟部組織をトリミングします。



下写真黄色丸は離断した大腿骨断面です。



次いで、切断した各種筋肉を縫合して大腿骨断面を覆い、完全に閉鎖します。







最後にナイロン糸で皮膚を縫合して終了です。









ハーリーちゃんはまだ半覚醒の状態です。



イソフルランを切ってから、5分くらいで覚醒に至りました。





僅か350gの体からすれば、断脚は大きな試練です。

出血による血圧の下降、壊死部からの細菌が全身へ飛んでの敗血症など、術後に憂慮すべき点はたくさんあります。

出血も最小限で止めることが出来ましたし、麻酔覚醒も順調に終了しました。



術後のレントゲン写真です。

下写真の黄色丸は大腿骨の切断部を示します。





断脚した足です。



この足を改めてレントゲン撮影しました。

写真黄色下矢印は踝骨から爪先までが骨融解しているのが分かります。

腫瘍によって、骨が侵されたものと思われます。

この断脚した患部を病理検査に出しました。



手術翌日のハーリーちゃんです。

表情も良い感じです。



3本足でもなんとかバランスを取って歩行をしています。





ハーリーちゃんは、術後の経過も良好で5日後に退院して頂きました。



病理検査の結果ですが、扁平上皮癌との診断でした。

ヨツユビハリネズミは扁平上皮癌の罹患率が高いと思われますが、多くは口腔内に発生するタイプです。

今回は、足先から腫れて来たとのことですから、爪から扁平上皮癌が発症したのかもしれません。

扁平上皮癌とは、生体を覆っている上皮の一部である扁平上皮が腫瘍化したものを指します。

扁平上皮癌は、皮膚が存在している部位ならばどこでも発症する可能性のある悪性腫瘍です。

代表的な場所としては、鼻腔・副鼻腔・舌・口腔・扁桃・・股間などに犬では多いとされています。

ヨツユビハリネズミでは、まだその詳細は不明ですが、恐らく犬に準ずると思われます。



下写真は患部の病理標本です。

低倍率像です。

黄色矢印にあるのは、大小不規則な胞巣状の病変です。

この胞巣は、扁平上皮癌に特徴的な病理像です。



胞巣の拡大像です。

胞巣の中心部は、玉ねぎの皮のように何層にも角質(ケラチン)の形成を認めます(下写真黄色矢印)。

この胞巣を癌真珠と呼びます。



他部位の中等度倍率の病理像です。

胞巣内には、扁平上皮癌の細胞群が認められます。



拡大像です。

角質を産生する鱗状の腫瘍細胞が散在します。



今回、腫瘍細胞の脈管内浸潤は認められなく、近位端組織のリンパ節への転移もないとのことです。

扁平上皮癌は局所の浸潤性増殖を特徴とします。

腫瘍の遠隔転移は比較的まれです。

病理医からは、今回の摘出で根治が期待されるとのコメントがありました。

退院後3週間を経て、抜糸で来院されたハーリーちゃんです。

傷口も問題なく癒合してました。

経過も良好で元気食欲も元に戻ったとのことです。

歩行について走ることも上手に出来るようになりました。





今回のような四肢末端部の扁平上皮癌であれば、早期の外科的切除が功を奏するでしょう。

しかしながら、私の経験では圧倒的にヨツユビハリネズミは、口腔内の扁平上皮癌が多く、完治を目指すことは困難です。

これは、ハリネズミに限らず他の動物でも同じことだと思います。

ただ1kg未満の小さな動物であるため、犬のように外科的に顎切除は不可能であり、化学療法にも限界があり、放射線治療も厳しいでしょう。

せめて、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)の投薬でペインコントロールする範囲に留まると思われます。

エキゾチックアニマルの腫瘍治療は、犬猫と比較しても治療法の選択肢が限られてしまうのが辛い所ですが、善処していきたいと思っています。


ハーリーちゃん、お疲れ様でした!





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投稿者 院長 | 記事URL

2018年12月18日 火曜日

ハリネズミの膣脱(子宮間質性肉腫含む)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ハリネズミの膣脱です。

メスの場合、発情期のエストロジェン刺激に起因する膣粘膜の水腫性変化・過形成により生じるのが膣脱です。

膣脱の場合、外陰部から膣が組織脱出します。

膣壁の全周360度に及ぶ膣粘膜の突出から始まり、血行障害からの浮腫により腫脹した状態となります。

治療法として、整復を試みて脱出部が戻らない場合や壊死が起こっている場合は、脱出部を切断・縫合を施します。




ヨツユビハリネズミのマリアちゃん(雌、1歳5か月齢、体重305g)は血尿が続くとのことで来院されました。



いつものことながら、雌の血尿は子宮疾患を疑います。

最悪、子宮腺癌の可能性もありますので、予防医学的見地からも卵巣・子宮全摘出手術を勧めさせて頂きました。

さて、手術実施を決めてから2週間後の手術当日、マリアちゃんは血尿は継続してあるのですが、なんと膣脱が起こっていました。

この膣脱は卵巣子宮全摘出の手術のため、全身麻酔をかけた時点で気づきました。

ハリネズミの場合、日常的に下腹部をしっかり見る機会が少ないと思われますが、おそらく何日か前から膣脱が生じていたようです。



全身麻酔の導入を行っているところからご覧頂きます。



ガス麻酔導入後、維持麻酔に変えます。

下写真、黄色丸は膣脱を示します。

外陰部から膣が飛び出しているのがお分かり頂けると思います。





麻酔下で膣脱が整復できるか、確認します。

脱出している膣壁を洗浄消毒します。



綿棒を用いて、脱出した膣の外周を優しく戻していきます。







既に膣壁の黒くなっている部位は壊死が起こっていると判断しました。

綿棒による整復処置は困難を極め、これ以上続行すると脱出膣壁を傷つけますので止めました。

結局、脱出膣壁を外科的に切断し、整復する方針に変更します。

メスを入れる部位を剃毛・消毒します。



マリアちゃんに装着した生体情報モニターのセンサーが仰々しいですが、この姿勢で手術を実施します。



心拍数、血中酸素分圧も良好です。



まずは、卵巣子宮全摘出手術を実施します。



腹筋を切開します。



下写真に出てきているのは、若干腫大の認められる子宮角です。



子宮角が充うっ血・腫大しています。





今回は膣脱が主題ですから、卵巣子宮全摘出については、あらましだけ説明します。

卵巣動静脈をバイクランプでシーリングした後、子宮頚部を縫合糸で結索します(下写真)。





結紮した子宮頚部より近位端を外科剪刃で離断します。





子宮頚部離断端を縫合します。

これで卵巣子宮全摘出は完了です。



筋肉層、皮膚層を縫合して終了です。



さて、本題の膣脱手術です。

先端が黒くなっている脱出した膣壁(下写真黄色矢印)は、壊死を起こしていますので離断します。





脱出膣壁を支持するために縫合糸を膣壁に通します。



左右方向(下写真黄色矢印)から支持糸で脱出膣部を安定させます。



壊死部位(黄色丸)を鋏で離断します。

犬猫の場合、尿動口に尿道カテーテルを入れて脱出膣部の切除位置を確認します。

残念ながら、ハリネズミの場合は脱出膣部も小さく、加えて壊死部が広いために尿動口の確認が出来ません。

残念ながら尿動口に入れることのできるサイズのカテーテルは存在しません。

細心の注意を払って、壊死部(黄色丸)を最小の範囲で切除します。



離断端からの出血が認められます。

断端部は壊死していない証となります。



患部を生理食塩水で丹念に洗浄します。



滅菌綿棒で断端部の止血を行っています。



止血剤を患部に滴下します。



出血が納まったところで、断端壁の外周を縫合します。









膣断端の外周縫合は完了です。





手術が終わり、麻酔から覚醒したマリアちゃんです。



麻酔覚醒直後の外陰部です。

膣離断部がまだ外陰部内に完全に戻りきっていない状態です。



覚醒1時間後の外陰部です。

手術直後と比較して膣断端部は戻りつつあります。



手術翌日のマリアちゃんです。



外陰部はまだ若干の腫脹はありますが、膣断端は戻っています。






術後、マリアちゃんは気持ちよく大量の排尿はしていませんが、少量であれ排尿は出来ています。

また外陰部からの出血も治まっています。


今回摘出した子宮には、子宮内膜の間質性肉腫が病理学検査で確認されました。

下写真は子宮内膜の間質性肉腫の病理写真(中拡大)です。

子宮内膜はびまん性に過形成しています。



高倍率像です。

大型の核や複数の核を持つ腫瘍細胞が認められます。




卵巣子宮全摘出を実施することで、今後の膣脱の予後は良好とされます。

マリアちゃんの今後の経過を診て行きます。



マリアちゃん、お疲れ様でした!









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2018年11月 2日 金曜日

ハリネズミの卵巣腫瘍(起源の特定できない腫瘍)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのはハリネズミの卵巣腫瘍の症例です。

ハリネズミの雌においては、2歳以降に血尿で来院される場合、多くが子宮卵巣の腫瘍が関与していることが多いです。

実際、早期に血尿を見つけて外科的に卵巣子宮を摘出できれば、予後は良好です。

今回は、摘出した卵巣が腫瘍になっていたケースです。


ヨツユビハリネズミのしげぞうちゃん(雌、2歳6か月、体重600g)は血尿が出たとのことで来院されました。

血尿に関しては、まだ大量出血というステージではありません。



産科系疾患の予防医学的な面も含めて、卵巣子宮全摘出を飼主様が希望されたこともあり、手術を実施することとなりました。

いつも通りのイソフルランによる麻酔導入を実施します。

しげぞうちゃんには麻酔導入箱に入ってもらいます。



イソフルランが効いてきて足がふらつき始めます。



麻酔導入が完了したところで、下腹部を剃毛・消毒してモニターのセンサーを装着します。



皮膚にメスを入れます。



皮膚切開時に多少、下腹部を圧迫したためか陰部から出血が認められました(下写真黄色丸)。

下写真の外に出ている臓器は膀胱であり、膀胱内の出血は無いのがお分かり頂けると思います。

この点からも、膀胱炎などが原因の血尿と言うわけではなく、卵巣子宮からの出血が絡んだものであることが推察されます。



下写真の青矢印が子宮体であり、子宮角は若干腫大しており、一部内出血があるようです。

加えて、黄色丸は左の卵巣ですが大きく結節大に腫脹しています。



黄色矢印は嚢胞状を呈した卵巣を示します。





膀胱内には大量に蓄尿があり、子宮頚部を縫合糸で結紮する上で障害となりますので、注射針で膀胱穿刺して尿を吸引します。



卵巣動静脈をバイクランプでシーリングします。



シーリングした血管をメスで離断します。



反対側の卵巣もシーリングします。



子宮頚部を縫合糸で結紮をします。





子宮頚部を結紮すると血行が遮断されますので、卵巣や子宮角部の高度に血管が怒張・浸潤している部位が明瞭に分かります。



メスで子宮頚部を離断します。



子宮頚部を離断すると一挙に子宮内から血液が出て来ました。



メスで離断した子宮頚部を縫合します。



腹腔内に腫瘍が転移していないか、確認します。

肉眼的には他の臓器への腫瘍は認められませんでした。



腹筋を縫合します。



皮膚を縫合して手術は終了です。



陰部からの出血が認められます。



麻酔から覚醒したばかりのしげぞうちゃんです。





麻酔覚醒は順調で問題ありませんでした。



手術後1時間経過したところです。

しげぞうちゃんは普通に歩行できています。



摘出した卵巣子宮です。

黄色矢印は腫大していた左卵巣です。



裏側から見た卵巣です。



下写真は子宮内膜を示す病理写真です。

子宮内膜はびまん性に肥厚しており、子宮内膜ポリープを形成しています。



高倍像です。

ポリープを構成する子宮腺上皮細胞と紡錘形細胞が認められます。

子宮は、子宮内膜過形成及と子宮内膜ポリープとの病理診断でした。



問題となる左の卵巣の病理写真です(中等度倍率)。

多形性を示す類円形・多角形細胞(卵巣間質腺細胞)が認められ、核は大小不同・偏在を示し、明瞭な核小体を有しています。



病理医によるとこの卵巣由来と思われる腫瘍は、特徴が乏しく起源の特定は難しいとのことでした。



しげぞうちゃんの術後の経過は良好で、患部の抜糸も無事終了しました。

その後は陰部からの出血もなく、元気に過ごされています。



しげぞうちゃん、お疲れ様でした!



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2018年10月15日 月曜日

ハリネズミの扁平上皮癌(その2)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ハリネズミの扁平上皮癌です。

ハリネズミは歯肉炎や口腔内腫瘍に遭遇するケースが非常に多いです。

以前、ハリネズミの扁平上皮癌という表題でコメントしましたので、興味のある方はこちらをクリックして下さい。

ハリネズミの全疾患の中で口腔内疾患は4.2%を占めると報告されてます。

またハリネズミに発生する腫瘍全体の17.1%を口腔内腫瘍が占めるとされます。

特に口腔内は腫瘍の発生部位の中で3番目に多いとされており、扁平上皮癌が最も多いとされます。



ヨツユビハリネズミのだいふく君(雄、3歳8か月、体重210g)は口の中に出来物があるとの事で来院されました。





口の中を開けて確認します。



下写真の赤矢印は舌です。

黄色矢印は舌の上に発生した腫瘤です。



角度を変えてご覧いただきます。



側面から照明を当てます。

舌に匹敵するくらいの大きさの腫瘤であることが判明しました。



患部を針生検します。

細胞診することで腫瘍か否かを判定します。



穿刺後はしばらく患部からの出血が続きました。




細胞診の結果です。

淡明~青色の細胞質と類円形の核を有する扁平上皮腫瘍(強い異型性は認められないけれど扁平上皮癌)が一部に認められました。



紡錘形細胞(間葉系腫瘍)の増殖も多く認められます。



おそらくは舌の炎症が最初に起こり、食餌などの機械的な干渉により腫瘤(腫瘍)が形成されたものと思われます。

二次的に腫瘤は、繊維芽細胞や扁平上皮細胞の増殖を招いた可能性があります。

この腫瘍は舌から派生した組織です。

まるごと外科的に舌から切除出来ると良いのですが、難易度はかなり高いです。

基本的に腫瘍細胞を患部に取り残してしまえば、扁平上皮癌ならばすぐに再生を始めると思われます。

小さな動物の口腔内腫瘍は外科的アプローチが悩ましいです。

前述のハリネズミの扁平上皮癌で記したようにピロキシカムなどの内科的治療で効果があるか否か、トライすることにしました。





今後、この腫瘍がどのように展開していくか、要経過観察となります。



現時点で食餌は出来ているようですが、腫瘍がさらに増大したら場合によっては、呼吸不全に陥るかもしれません。

だいふく君、腫瘍が小さくなるのを期待して頑張りましょう。




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投稿者 院長 | 記事URL

2018年9月 4日 火曜日

ハリネズミの肝臓腫瘍

こんにちは 院長の伊藤です。

ヨツユビハリネズミは腫瘍の多い動物種です。

今回は、肝臓の腫瘍について述べたいと思います。


ヨツユビハリネズミの小春ちゃん(雌、1歳5か月齢、体重440g)は元気食欲がなく、お腹が張って来たとのことで来院されました。



ハリネズミは犬や猫の様に体を開いて容易に触診できるわけではありません。

勿論、全身麻酔すればある程度、詳細な情報を精密検査で得ることは可能です。

しかしながら、どんな疾病なのか分からない状態で、最初から全身麻酔を施すということはリスクが高いです。

結局、レントゲン撮影を実施致しました。

無麻酔下なので体を丸めてしまうため、諸臓器のチェックの詳細は困難となります。

下写真では、小春ちゃんの腹部は、磨りガラス様に白濁しています。

これは腹水が、高度に腹腔内に貯留していることを示しています。



加えて、側臥の状態では腹水と諸臓器のコントラストで、臓器の一部が腫大している(マス)が認められます。



数日の間、腹水を抜くために利尿剤などの投薬を行いましたが、小春ちゃんに劇的な変化は認められません。

飼い主様とも相談して、試験的開腹を実施することとしました。

イソフルランの麻酔導入を行います。



次第に麻酔が効いてきました。



一旦、麻酔導入箱から出て維持麻酔に切り替えます。



筋肉も弛緩しているので、改めてレントゲン撮影を行いました。

黄色矢印は腹腔内の貯留している腹水を示します。



側臥姿勢でも黄色矢印は腹水を示しますが、食欲不振のため小腸内にガスが貯留しています(赤矢印)。



加えて、麻酔下でエコー検査を実施しました。



エコーの画像ですが、黄色丸は腫大した肝臓を示します。

低エコー領域と液体の貯留している領域が確認できます。

均一なエコー源性が無い点から、肝実質の炎症や腫瘍が疑われます。





試験的開腹を実施します。

ご覧の様に腹部の腫大が著しいのがお分かり頂けると思います。



腹部正中線に切開を加えます。





腹筋を切開して、腹部を確認すると大量の腹水が貯留しているのが分かります。



腹水を吸引して、腹部をすっきりさせます。



下写真で暗赤色で顔を出しているのが肝臓です。



肝臓の表面は凸凹しており、血管が肝表面に怒張・浸潤しています。



小雪ちゃんの頭と比較して、肝臓が大きく腫大しているのが分かります。



出来れば肝臓の細胞を針穿刺して調べたかったのですが、高度の血管浸潤により穿刺後の出血が止まらなくなる場合を想定して、中止しました。



肝臓全体に腫瘍が広がっているため、特定の部位を摘出というわけにいかず、このまま残念ながら閉腹させて頂きました。

腹腔内の詳細を確認させて頂きましたが、腫瘍が確認できたのは肝臓だけで他の臓器への転移はありませんでした。

肝原発性の腫瘍と考えられます。



麻酔から覚醒した小雪ちゃんです。



術後1時間で食餌を摂り始めました。

恐らく多量の腹水により、圧迫されていた消化器が蠕動運動を始めたものと思われます。



肝臓腫瘍に対して内科的治療を実施させて頂くこととしました。

強肝剤、利胆剤、利尿剤などを投薬して経過を診させて頂きます。

試験開腹後の経過は良好で、小雪ちゃんはある程度の食欲は改善してきました。

あくまで対症療法ですから、肝臓腫瘍が完治するわけではありません。

ホスピス的に天寿を全うする方針に飼主様も同意されました。

今後はペインコントロールを含めて要経過観察です。



試験開腹後、2週間経過した小雪ちゃんです。

抜糸のため来院されました。

活動性が出てきており、腹部の腫大も治まっています。





小雪ちゃんは約3か月間、闘病生活を送られた後に逝かれました。

あの肝臓の状態で3か月頑張ることが出来たのは、小雪ちゃんの体力・気力は勿論のこと、飼主様の細やかな愛情によるところが大きいです。



当院では、ヨツユビハリネズミの疾病中、腫瘍症例が大部分を占めるようになって来ました。

血尿に始まる子宮疾患や乳腺癌、皮膚腫瘍のように見た目で判断できる疾病ならば、早急な対応も可能です。

しかし、今回のような腹部主要臓器の腫瘍となりますと飼主様も気が付かないことがほとんどです。

犬猫同様、ハリネズミも定期検診をせめて半年に一度くらいの割合で受診されると良いと思います。




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投稿者 院長 | 記事URL

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