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ハリネズミの疾病

2017年7月14日 金曜日

ハリネズミの乳腺癌

こんにちは 院長の伊藤です。

ハリネズミの人気は5,6年前から急上昇し、当院ではすでにフクロモモンガやフェレットを引き離す勢いを見せています。

そんなハリネズミですが、腫瘍の症例が年々増えてます。

本日、ご紹介しますのは乳腺腫瘍です。

犬猫の乳腺腫瘍の外科的摘出は当院のホームページを参照して頂きたいのですが、ハリネズミのそれにあっては体の面積と比較して乳腺が大きいため摘出が比較的苦労する点、術後患部

が癒合不全に至るケースがある点で注意が必要です。


ヨツユビハリネズミのみんとちゃん(雌、2歳8か月、体重630g)は左下腹部に腫瘤を認めて来院されました。



患部を針生検して細胞診を検査センターに依頼したところ、化膿性炎症があり、その一方で腫瘍細胞は検出されませんとの報告でした。

細胞診の結果を鵜呑みにしてしまうと腫瘍が後ほど発覚したとき、摘出手術のタイミングを見逃してしまう事があります。

細胞診はあくまで腫瘍と思しきエリアを穿刺して、針の中に吸引された細胞一つ一つで評価されます。

たまたま腫瘍細胞を吸引することが出来なかった場合も想定しなくてはなりません。

飼い主様の了解のもと、最終的には私の直感で外科的に摘出することにさせて頂きました。


イソフルランガスを麻酔導入箱に流し込みます。



麻酔が効き始めて、丸まっていたみんとちゃんは体を開け始めました。



麻酔導入が完了したところで、箱から出てもらい維持麻酔に移します。



下写真の黄色丸が腫大している乳腺部です。






モニターの電極を装着して、手術を開始します。





患部は、出来る限りマージンを取れるだけ取る方針で切開ラインを入れます。



バイポーラ(電気メス)で止血をしながら腫瘍を摘出して行きます。





下写真の矢印が乳腺部を示します。





出血を避けるためにバイポーラを多用して大小血管を止血・切開していきます。



太い血管については、バイクランプでシーリングをします。









腫大している乳腺を摘出した後、その乳腺より下方にもう一つの乳腺が存在していました。

こちらも合わせて摘出します。







これで腫大していた乳腺の摘出が完了しました。

思いのほか大きな皮膚の欠損部となりました。





なるべく皮膚の縫合部に緊張を加えないようにするために吸収糸で皮下組織を縫合します。



皮下組織の縫合が終了しました。



皮膚縫合します。



これで手術は終了です。

大きな皮膚欠損でしたが、縫合はスムーズに出来ました。

縫合部が外陰部(排尿する部位、黄色丸)に近いため、尿が患部に飛散するかもしれません。

ちなみに肛門が赤丸で示しています。



後は時間と共に縫合部が開かないのを祈念します。



術後の皮下輸液を実施します。



麻酔覚醒直後のみんとちゃんです。





翌日には食欲も戻りました。




今回、摘出した腫大した乳腺組織です。



病理検査に出しました。

結論は浸潤性充実癌(中等度悪性)との病理医の診断でした。

下写真は低倍率画像です。

腫瘍性上皮細胞の増殖境界不整な浸潤性増殖像が観察されます。



高倍率の画像です。

異型腺上皮細胞が細胞シート状・細胞塊状増殖しています。



結果として、外科的に摘出できたのは良かったと思います。

今後は付属リンパ節や遠隔転移がないか要経過観察となります。



術後2週間目のみんとちゃんです。

抜糸のために来院されました。



傷口はこんな感じです。



みんとちゃんの経過は良好です。

みんとちゃん、お疲れ様でした!






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投稿者 院長 | 記事URL

2017年5月12日 金曜日

ヨツユビハリネズミの子宮腺過形成

こんにちは 院長の伊藤です。

ウサギに次いでハリネズミの子宮疾患は多く、卵巣・子宮全摘出を行うことで完治させてます。

ハリネズミの場合は子宮ポリープ、子宮内膜炎、子宮腺癌が多いのですが、今回は子宮腺が過剰に増生して子宮筋層まで進行して漿膜面まで過形成してしまった症例です。

手術手技的にも難しい点があり、ご紹介します。



ヨツユビハリネズミのこひなちゃん(雌、2歳4か月)は血尿が激しく続くとのことで三重県から来院されました。



かなりの出血が認められます。



早速、レントゲン撮影を実施しました。

下写真の黄色丸は腫大した子宮です。





子宮が腫大していることから、恐らくは子宮内膜炎などの炎症反応による出血と考えられました。

卵巣子宮全摘出手術を飼主様にお勧めし、ご了解を得たので早速全身麻酔をします。



麻酔導入が効いてきました。



維持麻酔に切り替えます。



陰部からの出血が確認されます。



心肺機能などのモニターのためのセンサーやコードが小さな体に装着されます。





腹部の正中切開を実施します。



切開線の真下に現れたのは子宮です。



赤矢印は子宮体ですが、多量の出血のため高度の貧血色を呈しています。

黄色矢印は子宮体に形成された茶褐色の腫瘤を示します。

当初この腫瘤は腫瘍であろうと思われました。

後ほどこの腫瘤の病理検査の結果をお伝えいたします。



まずは左側の卵巣動静脈をバイクランプでシーリングを行います。

バイクランプで80℃の高熱で血管を熱変性・シーリングします。

これだけ小さな部位は縫合糸で結紮するのは難しいのですが、バイクランプでは容易に短時間で達成できます。



シーリングされた部位はメスで離断します。

出血は全くありません。



次いで右側の卵巣動静脈をシーリングします。





シーリングの部位を同じく離断します。



次は子宮頸管に走行している子宮動静脈のシーリングです。



子宮頸管の左右に走行している血管を完全にシーリングします。



ご覧いただいて分かるように子宮頸管が非常に腫大(黄色矢印)しています。





当院HPのハリネズミの他の子宮疾患の記事をご覧いただけると明らかですが、正常なハリネズミの3倍以上の子宮頸管の太さになっています。

本来の縫合糸による結紮では十分な結紮は出来そうにありません。



子宮頸管内部がどのようになっているか不明のため、予想外の出血に対応できるようにレーザーメス(下写真)を準備しました。



この半導体レーザーのチゼルプローブは200℃近い熱を発し、微笑血管なら瞬時に炭化・止血します。



慎重に切開して行きます。



水分を多く含む組織では下写真の様に煙が立ちます。



切開を進めていくうちに充血・肥厚した子宮頸管内膜が出現しました。





切開して出現した組織(赤矢印)は過剰に形成された子宮内膜です。

興味深いのは黄色矢印の組織で、これは赤矢印の子宮内膜組織が子宮筋層を破って、子宮漿膜面に突出したものと思われます。





子宮漿膜面の外周をレーザーメスで切開して行くと子宮頸管内の子宮内膜組織が、そのまま一緒に外れるように摘出されました。



残っている子宮頸管は従来通り、吸収糸で縫合します。







これで卵巣・子宮の全摘出は完了です。

左手の鉗子で示しているのは膀胱です。



腹筋を縫合します。



皮膚を縫合します。







手術は無事終了しました。





術後1時間のこひなちゃんです。

貧血気味も加わり、足元はふらつき気味です。





今回摘出した卵巣・子宮です。

ヨツユビハリネズミの子宮としては随分大きく腫大してます。

下写真は腹側面です。



側面です。



子宮背側面です。



既に腹腔内で飛び出していた黄色矢印の組織が、子宮頸管内で増殖していた赤矢印の組織と同一のものかという点。

さらに腫瘍組織が関与しているかの点を確認するために病理検査に出しました。



病理検査の結果として、子宮内膜腺過形成増生と間質組織増生に伴う子宮壁の肥厚が認められること。

次いで、子宮内膜腺が筋層を破って突出していることが判明しました。



幸いなことに腫瘍細胞は検出されませんでした。



下写真の卵巣組織では、ホルモン分泌不均衡の原因となる卵巣嚢胞・卵胞嚢胞・黄体形成病変は検出されませんでした。



結論として、子宮内膜腺が過形成されることにより出血性・壊死性病変が起こり、出血多量をもたらしたと推察されます。

問題となる子宮組織を全摘出しましたので、予後は良好と思われます。



術後2日目のこひなちゃんです。

退院当日の写真ですが、食欲も出て来ました。

まだ貧血が治るには、1~2週間は必要ですが、食餌をしっかり取れれば問題ありません。



こひなちゃん、お疲れ様でした!




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投稿者 院長 | 記事URL

2017年4月13日 木曜日

ヨツユビハリネズミの肥満細胞腫

こんにちは 院長の伊藤です。

4月に入り、当院でも春の健康診断や狂犬病ワクチンの予防接種などイベントが重なってます。

ご来院の患者様にあっては長い時間お待ちいただく場合もあり、ご迷惑おかけして申し訳ありません。


さて、本日ご紹介しますのは、ヨツユビハリネズミの腫瘍(肥満細胞腫)です。

ウニ君(2歳2ヶ月、雄)は頭頂部に腫瘤が認められるとのことで来院されました。



針の中で皮膚がどの程度腫れているかを評価するのは、思いのほか難しいです。

下写真の黄色丸の箇所が皮膚にできた腫瘤です。





腫瘍の可能性も踏まえて、細胞診を実施しました。

検査センターからの回答は肥満細胞腫が第一に考えられるとのこと。

悪性の腫瘍であり、付属リンパ節や脾臓を初めとする内臓への波及も考えなくてはなりません。

局所的に独立して発生している肥満細胞腫であれば、外科的な摘出が第一選択となります。

飼い主様の了解のもと、摘出手術を行うこととしました。



麻酔導入箱にウニ君に入ってもらい、イソフルランを流します。



麻酔導入が効いて来たところで、直接口に自作ガスマスクをかけて維持麻酔を行います。



患部を露出するために針を一本づつ、可哀そうですが抜いていきます(黄色丸)。



下写真に現れたのが腫瘍(肥満細胞腫)です。



皮膚腫瘍を摘出する場合はマージンを十分に取る必要があります。

しかしながら、腫瘍が耳根部に接触しており、場所が頭頂部でもあるためマージンが十分に取れません。





患部を消毒します。





出来る限り腫瘍の外周のマージンを取るよう電気メス(モノポーラ)で切開を加えて行きます。



ある程度の切除のアウトラインをイメージして延長線上の針を抜去しましたが、周辺の針は電気メスの運行の障害となります。





腫瘍の表層部を縫合糸で牽引して(下写真黄色矢印)、腫瘍の基底部を電気メス(バイポーラ)でなるべく深くえぐるように切除します。

ハリネズミは頸背部から背部、腰背部にかけて分厚い脂肪層にガードされています。





腫瘍を切除しました。



摘出部の皮下脂肪層をさらにモノポーラで切除します。

前述したように皮下脂肪層が厚いため、どの程度の深さまで切除したら良いか難しい所です。



下写真は摘出跡です。

筋肉層があと少しで届くくらいまでメスを入れました。



最後は皮膚縫合です。

これも針に縫合糸が当たり、気を付けないと縫合糸が切れたりします。







なるべく細かくテンションを掛けながら縫合を終了しました。



皮下に乳酸リンゲルを輸液しています。



麻酔から覚醒したばかりのウニ君です。

手術は無事終了しました。





さて、2週間後のウニ君です。

抜糸のため、来院して頂きました。



縫合部には痂皮(かさぶた)が形成され、縫合糸はその中に埋没しています。



鉗子で痂皮を牽引してみました。



縫合糸ともに痂皮は綺麗に取れ、縫合部の皮膚は癒合完了しています。



ひとまず、肥満細胞腫の摘出は完了です。

ウニ君は今後、肥満細胞腫の再発がないか、経過観察が必要となります。




今回摘出した腫瘍です。

腫瘍の外周には皮下脂肪が巻き付いてます。



この腫瘍の病理組織像です(低倍率)。



さらに高倍率像です。

真皮域にシート状に配列する独立円形細胞の腫瘍性増殖が観察されます。

通常の皮膚に検出される肥満細胞数を超える細胞数が腫瘍内に検出されました。

結果、皮膚肥満細胞腫(中等度分化から低分化型)との診断を病理医から受けました。



ヨツユビハリネズミにおける皮膚肥満細胞腫の報告例は少ないです。

2005年のSeminars in Avian and Exotic pet Medicine誌における

A Review of Neoplasia in the Capture African Hedgehogという題目の論文上では

肥満細胞腫は世界でまだ3例しか報告されていないようです。

ハリネズミの世界では、まだまだ犬猫のように調べられていない疾病は多いのが実情です。



残念ながら、この手術の8か月後に今回の患部とは別の部位に肥満細胞腫が再発しました。

外科的敵手が完全に出来ないならば、化学療法を試すことに飼主様もご了解いただきました。

現在トセラニブという抗ガン剤(分子標的薬)を投薬させて頂いてます。

機会があれば、継続してウニ君の経過報告をさせて頂きます。

ウニ君、頑張ろうね!





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投稿者 院長 | 記事URL

2016年8月30日 火曜日

ハリネズミの子宮内ポリープ

こんにちは 院長の伊藤です。

残暑厳しい中、皆様のペット君達は夏バテしてませんか?

この1か月、私自身は手術に追われてブログの更新もままならなく、読者の皆様にご心配おかけしております。

1年ほど前の手術症例もまだブログにまとめる時間がないままでいます。

それでも、頑張って報告して行きますのでよろしくお願い致します!



本日、ご紹介しますのはハリネズミの子宮内ポリープです。

ヨツユビハリネズミのリッチョちゃん(3歳9か月齢、雌、体重370g)は激しい血尿が出るとのことで来院されました。

リッチョちゃんは、はるばる新幹線で兵庫県から来院されました。



血尿が続く症例では、全身状態が不良なことが多いです。

実際のところ、エコーで腹部,特に子宮を確認したいところなんですが、そのために全身麻酔をかけることは避けることとしました。

代わりにレントゲン撮影を実施しました。

下写真の黄色丸が子宮の部位になりますが、多少の腫大が確認できます。





卵巣・子宮全摘出を前提とした試験的開腹を行うこととしました。

早速、全身麻酔を実施します。

麻酔導入箱にリッチョちゃんを入れてイソフルランを流します。



麻酔導入が効いて来たリッチョちゃんです。



導入箱から出して維持麻酔に変えます。

この時点でリッチョちゃんの陰部から出血(黄色丸)が認められます。



このような出血量が日常的に続くようですと高度の貧血状態に陥ってしまいます。



四肢を固定し、剃毛を施します。



術野を消毒し、手術の準備ができました。







腹部の正中線にメスで切開をします。





切開部の真下には、腫大している子宮が認められます。



丸く巻いている子宮角が白く貧血色を呈しているのがお分かり頂けると思います。

長らくの出血で貧血が進行しているようです。



下写真の向かって右側の子宮角(黄色矢印)が腫大しています。





卵巣動静脈(黄色丸)をバイクランプを用いてシーリングをします。



80℃の高熱で動静脈がシーリングされているのを確認後、メスで離断します。



反対側の卵巣動静脈(下写真黄色丸)をシーリングします。



子宮頚部を縫合糸で結紮したところ、その圧迫で外陰部(下写真黄色丸)からガーゼに出血が認められます。

子宮内にある程度の出血した血液が貯留していると思われます。



子宮頚部をメスで離断します。



離断した子宮頚部(下写真黄色丸)の断面を縫合糸で縫合して行きます。



腹腔内に不正出血や他の病変(腫瘍など)がないか確認します。



特に問題はありませんでしたので、閉腹します。





皮膚を縫合して終了です。



今回は、点滴のための留置針が入れられなかったので皮下にリンゲル液を輸液します。



麻酔覚醒後のリッチョちゃんです。

術後の疼痛で不機嫌な表情です。



術後3時間後のリッチョちゃんです。

麻酔から完全に覚醒してインキュベーター内を徘徊できるようになりました。



手術翌日のリッチョちゃんです。

食欲も出て来ました。



しっかり、ハリネズミフードを食べてます。



下写真は摘出した卵巣・子宮です。



両子宮角を切開したところ、子宮角内膜が肥大膨隆しています(黄色矢印)。



肥大した子宮内膜には血腫(黄色丸)が認められます。



下写真は低倍像の病理所見です。

子宮内膜は子宮腺上皮細胞の増殖があり、子宮内膜過形成となっています。

過形成構造の内部(下写真の空砲内)は液体が貯留しています。

この空砲をポリープと呼び、リッチョちゃんは子宮内膜ポリープ及びびまん性の子宮内膜過形成と病理医から診断されました。



子宮内膜ポリープの拡大像です。



過形成化した子宮内膜の拡大像です。

腫瘍細胞は認められませんでした。



子宮内膜過形成は、過剰な長期にわたるエストロゲンやプロゲステロンによる子宮内膜の刺激が原因で生じるとされます。

そして、子宮内膜ポリープは子宮内膜過形成の延長にあると解釈されます。

いずれにせよ、これらの病変が子宮内の出血を引き起こします。

ハリネズミの場合は、出血量が多いことが特徴です。

出血が、何日も続くようですと手術を受けて頂く時には貧血が酷く、全身麻酔のリスクが高くなります。

ウサギ同様、雌のハリネズミで血尿が認められたら、子宮疾患を疑って早期の受診をお勧めします。


リッチョちゃんは術後の経過は良好で、2週間後には無事抜糸することが出来ました。

リッチョちゃん、お疲れ様でした!





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投稿者 院長 | 記事URL

2016年6月22日 水曜日

ハリネズミの平滑筋肉腫

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ヨツユビハリネズミの平滑筋肉腫です。

ハリネズミは色々な腫瘍に罹患します。

平滑筋は消化器などを構成する筋肉組織ですが、この平滑筋が肉腫という悪性腫瘍になりますと難しいことになります。



ヨツユビハリネズミの芝ちゃん(8か月齢、雌、体重500g)は血尿が頻発するとのことで来院されました。

雌のハリネズミの血尿は以前から子宮疾患を疑うように申しておりましたが、今回は一般的な子宮内膜炎か子宮腺癌あたりではないかと思われました。



触診をしてもなかなか下腹部を触らせてくれませんので、レントゲン撮影を実施しました。





膀胱内の尿石や子宮が特に腫大した所見は見当たりません。

しかしながら、出血量は多くて、このままでは高度の貧血状態に陥る可能性大です。



上写真にあるように排尿時に出血が認められます。

飼い主様の了解を頂き、試験的開腹をさせて頂く事にしました。

いつものごとく、芝ちゃんに麻酔導入箱に入ってもらいます。





少しづつ麻酔が効いてきます。



麻酔導入箱から出て頂き、手製のマスクに顔を入れてイソフルランで維持麻酔を行います。



心電図や血中酸素分圧などをモニタリングするための電極を装着します。





これから下腹部にメスを入れます。



下写真は子宮です。

赤紫のうっ血色を呈している腫瘤(下写真黄色丸)が、ちょうど子宮頚部に認められます。



この赤紫色の部位はおそらく腫瘍と考えられますので、接触による患部出血を回避するために慎重に取り扱います。



次にいつものごとくバイクランプにより、卵巣動静脈をシーリング致します。

犬や猫の卵巣なら鉗子で把持することは容易ですが、ことハリネズミになりますと小さいことと組織脆弱なことで、鉗子を使わず指先で把持しての手術となります。



卵巣動静脈をバイクランプでシーリングします。





度重なる出血から子宮自体は貧血色を呈しています。



子宮頚部の腫瘤(黄色丸)の全容です。



子宮頚部を結紮します。





子宮頚部を離断します。

ハリネズミの子宮頚部は短く、離断する位置はなるべく膀胱に近い遠位に持っていきたいのですが、限界があります。



子宮頚部を離断しました。



卵巣・子宮切除後の腹腔内を確認します。

この時点で、特に腹腔内臓器に腫瘍病巣は見当たりませんでした。



腹壁を縫合します。



皮膚縫合して手術は終了です。



ガス麻酔を切って、芝ちゃんの覚醒を待ちます。



麻酔から覚醒直後の芝ちゃんです。

覚醒時は暴れることが多いですが、それは覚醒が良好な状態であることを示しています。



手術は無事終了です。



術後一時間の芝ちゃんです。

四肢での起立は出来ていますが、筋肉は硬直し疼痛を感じているようです。



翌日の芝ちゃんです。

排尿時の出血はなくなり、排尿(黄色丸)もスムーズに行うことが出来ます。



摘出した子宮(下写真)の腫瘤を細胞診しました。



黄色丸で囲んだ部位は病変部を縦断して切開したものです。



細胞診の顕微鏡像です。





核の異型性を示す紡錘形細胞が多数認められました。

発生部位が子宮頚部筋層であることから、平滑筋肉腫の判定が出ました。



術後2日目に芝ちゃんは元気に退院して頂きました。

しかし、残念ながら術後11日目に急逝されました。

合掌。



子宮腺癌ではなく、平滑筋肉腫ということで、恐らく子宮筋層から発生した腫瘍が子宮の漿膜面(外層)に出て空回腸などの消化器や腹膜などへ転移していたのかもしれません。

小さな動物のため、開腹時に腹腔内をつぶさに確認することが難しく感じます。

過去のハリネズミの子宮疾患は子宮内膜炎が一番多く、術後の経過は良好です。

しかし、今回の様に平滑筋肉腫が絡んだりすると既に他の臓器に転移いてる可能性があります。

諸検査を実施するにしても、すぐに針を立てて丸くなる性格上、鎮静・麻酔が必要になったりします。

なるべくストレスのない検査をしたいのですが、難しいのがハリネズミです。

病巣部の早期発見・早期治療を心がけたいと思います。




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投稿者 院長 | 記事URL

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