犬の育て方・病気猫の育て方・病気哺乳類の育て方・病気両生類の育て方・病気
  • home
  • スタッフ
  • 医院紹介
  • アクセス・診療時間
  • 初めての方へ
  • HOTEL
 

ハリネズミの疾病

2018年5月11日 金曜日

ヨツユビハリネズミの肥満細胞腫(その2)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ヨツユビハリネズミの肥満細胞腫です。

この肥満細胞腫は以前にもご報告させて頂きました(頭部に生じた皮膚型肥満細胞腫)。

詳細について興味のある方はこちらをクリックして下さい。


肥満細胞腫はイヌにおいては皮膚腫瘍の中で最も発生頻度が高いとされています。

ハリネズミについてはまだその詳細は解明されていません。

肥満細胞は体の中でアレルギー反応や炎症過程に不可欠な役割を果たしています。

免疫グロブリン(IgE抗体)が肥満細胞表面に結合すると、肥満細胞はヒスタミンやヘパリンを局所及び循環血中に放出し、アレルギー反応を引き起こします。

このヒスタミンは好酸球を引き寄せる特徴があり、またこの好酸球はヒスタミンを中和します。

そんな肥満細胞が腫瘍を惹起させたのが肥満細胞腫で、悪性腫瘍です。



ヨツユビハリネズミの吉田大福君(雄 4歳11か月齢)は左腋部に大きな腫瘤が出来たとのことで来院されました。

下写真の黄色丸がその腫瘤を示します。

腫瘤の皮膚表面は床面との干渉で裂けて痂皮が形成されています。



かなり大きな腫瘤ですが、見る限り腫瘍の可能性が大きいと思われました。



早速、細胞診をしてみましたが、紡錘形細胞が大量に認められ、軟部組織肉腫が疑われました。

飼い主様の了解を得て、腫瘍の外科的摘出を実施することとしました。

麻酔導入箱に吉田大福君を入れます。





イソフルランは効いて来たようで吉田大福君は寝てます。



導入箱から出てもらい、維持麻酔をします。



患部周辺は滲出液で汚染されていますので、消毒洗浄をします。



患部にメジャーをあててみました。



長軸方向だけでも40㎜を超える大きさがあります。



側面からのアングルですが、うっ血色を呈しており、触診では皮下脂肪の中を背側面まで浸潤しているように思われました。



生体情報モニターにセンサーをつなげていよいよ手術を行います。







腫瘍を囲い込むように船形に皮膚切開を施します。



電気メス(バイポーラ)を使用して、止血しながら慎重に組織を分離していきます。



腫瘍の至るところに太めの栄養血管が分布してます。



血管を傷つけないように滅菌綿棒を使って、ゆっくり腫瘍を健常組織から剥がします。



なるべく麻酔時間を短縮したいので、太い栄養血管の縫合糸による結紮は避けて、バイクランプでシーリングして血管を離断します。



バイクランプとバイポーラの併用で何とか、出血も回避できそうです。





一先ず、これで手術は終了かと思われたのですが。



かなり大きな腫瘍でしたが、その真下に新たに腫瘤が控えていました(下写真黄色丸)。



当初、私はこれは腋下のリンパ節かと思っていたのですが、病理検査にこの組織を出してみて新たな発見が得られました。

取り敢えず、リンパ節であれ廓清のためにも、この組織を摘出することとしました。



どちらかと言うと周りの組織から単離した感のある組織でした。



バイポーラで摘出したところです(下写真黄色丸)。



摘出した部位は皮下組織内も筋肉組織にも腫瘍を思わせる組織はありません。

出血も最小限で抑えることが出来ました。



最後に皮膚縫合を5-0ナイロン糸で縫合します。





これで吉田大福君の手術は終了です。





皮下輸液(乳酸リンゲル液)を実施してます。





麻酔から覚醒し始めた吉田大福君です。



術後1時間立たないうちにフードを食べ始めています。



摘出した皮膚表層部から背側面の筋肉層まで伸びていた腫瘍です。

吉田大福君の300gの体重からすれば、巨大な腫瘍です。





下写真は上の巨大な腫瘍の真下に存在していた組織です。



二つの腫瘤を並べてみました。



大きな腫瘍は重さが27gありました。

吉田大福君の体重の約1割にあたります。

50㎏の体重の大人なら5kgに匹敵する腫瘍です。



手術2日後の吉田大福君です。

退院直前の写真です。





食欲もしっかりあり、元気に退院して頂きました。



さて、摘出した腫瘍のうち、大きな方の病理写真です(中拡大像)。



下はその高倍率像です。

多形性・異型性に富む腫瘍細胞(紡錘形、多角形、類円形)のシート状・錯綜状・束状増殖が特徴です。

これらの腫瘍細胞は、分化度が低く起源が特定できない高悪性度肉腫との病理医からの判定でした。



続いて、私がリンパ節と思い込んでいた組織の病理写真です(中拡大像)。



下写真はその高倍率像です。



多形性のある円形・類円形細胞のシート状増殖によって特徴づけられます。

腫瘍細胞の周囲には多数の好酸球が認められます。

特殊染色(トルイジンブルー染色)等でさらに厳密な判定をしていただいた結果、肥満細胞腫であることが判明しました。

巨大な腫瘍とこの肥満細胞腫との関連は不明です。

全く、タイプの異なる腫瘍が混在していたのかもしれません。

いづれにせよ、ハリネズミは腫瘍が多い動物種であると感じます。



最近の当院では、ハリネズミの手術は9割近くが腫瘍の摘出になってます。

子宮の腫瘍が一番多いですが、皮膚の腫瘍も次いで増加傾向にあります。

今回の様に巨大でも皮下脂肪に留まる腫瘍は、比較的安全に摘出が可能です。

しかしながら、筋肉層や腹腔内、口腔内、食道・気管内に及ぶ腫瘍は摘出は困難です。

何しろ、体重が300~400gの動物ですから限界があります。

それでも、摘出を希望して当院を受診される飼主様もお見えです。

出来る限り、ご要望に応えられるように、今後も最善を尽くしたいと思います。




下写真は、抜糸のため来院された吉田大福君です。

傷口も綺麗に治り、体のラインもスリムに見えます。

今後は、再発や転移がないか、経過観察が必要です。






吉田大福君、お疲れ様でした!







にほんブログ村ランキングにエントリーしています。





宜しかったら、こちらupwardleftをクリックして頂けるとブログ更新の励みとなります。

投稿者 院長 | 記事URL

2018年3月 8日 木曜日

ハリネズミの軟部組織肉腫

こんにちは 院長の伊藤です。

本日はハリネズミの腫瘍についてコメントさせて頂きます。

最近当院では、ハリネズミは腫瘍の治療がメインとなりつつあります。

遺伝学的、繁殖上の問題(近親交配など)も背景にあるのかもしれません。

そんなハリネズミですが、今回は軟部組織肉腫という腫瘍についてです。


ヨツユビハリネズミのハリーちゃん(雌、2歳3か月齢)は尻尾の上あたりに腫瘤が出来たとのことで来院されました(下写真黄色丸)。







腫瘍であることは明らかでしたので、患部を針生検しました。

この細胞診の結果は、非上皮性の腫瘍という診断でした。

異型性を示す細胞が見つかったとのことで、悪性の非上皮性腫瘍が疑われると病理医からのコメントを頂き、飼主様の了解のもと外科的に摘出することになりました。



麻酔導入箱にハリーちゃんに入って頂き、イソフルランのガス麻酔導入します。



段々麻酔が効いてきました。



麻酔が維持できたところで患部周辺のハリを鉗子で抜去していきます。

手術自体よりもこの針を抜く行為が大変煩雑です。

しかし、確実に針を抜去しないと腫瘍切除後の皮膚縫合が困難になりますので慎重に実施します。



腫瘍摘出後の縫合部の縫い代(マージン)を含めて、これくらい針を抜去しました。



このポジションで患部を切除します。



腫瘍の大きさは約10㎜あります。



出来うる限り、マージンを広く取るようにメスを入れます。







バイポーラ(電気メス)で止血しながら腫瘍を切除します。





腰部の筋肉まで腫瘍は浸潤していませんでした。







特に出血もなく、摘出は完了しました。



腫瘍摘出後の患部です。

中央部に見えているのは皮下脂肪です。

ハリネズミは背部の皮下脂肪は発達しており、非常に分厚いです。



皮膚と皮下組織を鉗子で鈍性に剥離します。

これは、皮膚に柔軟性・伸展性を持たせて縫合しやすいようにするためです。



皮下組織を合成吸収糸で縫合します。



皮下組織の縫合は完了です。



最後にテンションがかかる部位のため、ステンレスワイヤーで皮膚縫合を実施しました。



患部の拡大像です。



麻酔から覚醒し始めたハリーちゃんです。



摘出した腫瘍です。





病理検査の所見です。

下写真は低倍率の写真です。

真皮領域において非上皮性悪性腫瘍組織(肉腫)が認められます。



高倍率の写真です。

紡錘形細胞の細胞束が花むしろ状に不規則に配列しています。

腫瘍細胞自体は、核の大小不動性・多形性、巨大・複数核小体などの中等度の異型性(悪性度)を示しています。



今回、軟部組織肉腫(低悪性度、グレード1)との病理診断が出されました。

軟部組織肉腫は動物の悪性腫瘍(癌)の一つのグループで、線維肉腫、血管周皮腫、神経鞘腫、脂肪肉腫などいくつかの腫瘍が含まれます。

これらの腫瘍は共通した特徴を持っているので、"軟部組織肉腫"というカテゴリーで診断・治療されます。

この腫瘍の特徴として、局所浸潤性が強い点と再発率が高い点が挙げられます。

その一方で、軟部組織肉腫はグレードによりますが、比較的転移が起こりにくいという特徴を持っています。

従って、皮膚に出来た軟部組織肉腫は、十分なマージンを取って、腫瘍の根の部分まで確実に摘出できれば、再発を防ぐことは可能です。


下写真は術後、2週間目での患部の抜糸跡です。



今後は、ハリーちゃんの患部の経過(再発)をしっかり経過観察する必要があります。

ハリーちゃん、お疲れ様でした!






にほんブログ村ランキングにエントリーしています。




宜しかったら、こちらupwardleftをクリックして頂けるとブログ更新の励みとなります。

投稿者 院長 | 記事URL

2017年12月22日 金曜日

ハリネズミの異所性エナメル上皮腫

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ハリネズミのエナメル上皮腫という腫瘍です。

エナメル上皮腫と言うのは、歯に関わる歯原性腫瘍です。

本来、歯に発生すべきエナメル上皮腫が別の場所に発生した(異所性)症例です。


ヨツユビハリネズミのハリボウ君(雄 2歳 体重)は左耳根部に腫瘤が出来ているとのことで来院されました。



下写真黄色丸が腫瘤を示しています。



腫瘍の可能性がありますので、まずは細胞診を実施しました。

その結果が、上皮性の腫瘍が疑われるとのことでした。

飼い主様の了解を頂き、外科的に摘出切除を行うことになりました。

いつものごとく麻酔導入箱にハリボウ君に入ってもらい、イソフルランで麻酔導入します。



ハリボウ君は麻酔が効いてきて横たわり始めました。



早速、自家製のマスクに付け替えて維持麻酔を行います。

患部を剃毛しています。



ハリボウ君の小さな体に生体情報(心電図や血中酸素濃度など)のモニタリングためのセンサーを装着します。



腫瘍が顎の付根あたりまで浸潤していますので、下顎動脈や顔面の神経にまで及んでいないか心配です。

何しろ、せいぜい術野は1㎝と確保できない状況です。



下写真の黄色丸を腫瘍切除ラインとします。





出来る限り、切除のマージンは広めに取ります。



腫瘍の根の部分を見落とさないように電気メス(バイポーラ)で切除していきます。





幸いなことに筋肉層まで腫瘍は浸潤してませんでした。





切除後の皮下組織です。

出血も最小限に留めることが出来ました。



ハリネズミの場合、針が密生している部位に腫瘍ができる場合があります。

その場合、針を抜きながらメスを入れるエリアを確保する必要があるため大変です。

今回は幸い、針の生え際に出来た腫瘍のため針抜きせずに済みました。



皮膚の縫合が終了したところです。



麻酔から覚醒したハリボウ君です。

手術は無事終わりました。



切除したエリアはそれなりの大きさがありましたが、皮膚縫合で耳根部が尾側に牽引されることなく済みました。





摘出した腫瘍です。

弾力性のある膨隆した組織です。

細胞診だけでは不安なので病理検査に出すことにしました。



病理検査の結果はエナメル上皮腫と言う腫瘍であったことが判明しました。

前述の通り、エナメル上皮腫は歯の細胞が腫瘍化したものです。

具体的には、歯胚(しはい:歯の芽)のなかのエナメル器と呼ばれる部分が腫瘍化することにより生じます。

ヒトでは歯原性腫瘍の中で頻度の高い良性腫瘍とされ、顎骨の中で腫大します。

良性とは言え、手術による摘出の適応となります。

ハリボウ君の場合は、本来ならば顎の骨に出来てしかるべきエナメル上皮腫が耳の付根に発生したということになります。

おそらく歯の原基が胎生期にこの部分に迷入して腫瘍化したものと推察されます。


下写真は病理標本の低倍率像です。

青く染色されている部分がエナメル上皮腫です。



下画像は中拡大像です。

異型性の乏しい類円形・円柱細胞が索状に増殖し、その間隙を紡錘形細胞がシート状に増殖してます。

この二相性増殖により、エナメル上皮腫が特徴づけられます。



腫瘍細胞は、少量の弱好酸性細胞質、均一な大きさの類円形正染核、不明瞭な核小体を有しています。



今回は、異所性の腫瘍と言うことで珍しい症例と思われます。

病変部は完全に摘出されているとの病理医からの報告がありましたので、再発はないと思われます。

ハリボウ君、お疲れ様でした!






にほんブログ村ランキングにエントリーしています。




宜しかったら、こちらupwardleftをクリックして頂けるとブログ更新の励みとなります。

投稿者 院長 | 記事URL

2017年7月14日 金曜日

ハリネズミの乳腺癌

こんにちは 院長の伊藤です。

ハリネズミの人気は5,6年前から急上昇し、当院ではすでにフクロモモンガやフェレットを引き離す勢いを見せています。

そんなハリネズミですが、腫瘍の症例が年々増えてます。

本日、ご紹介しますのは乳腺腫瘍です。

犬猫の乳腺腫瘍の外科的摘出は当院のホームページを参照して頂きたいのですが、ハリネズミのそれにあっては体の面積と比較して乳腺が大きいため摘出が比較的苦労する点、術後患部

が癒合不全に至るケースがある点で注意が必要です。


ヨツユビハリネズミのみんとちゃん(雌、2歳8か月、体重630g)は左下腹部に腫瘤を認めて来院されました。



患部を針生検して細胞診を検査センターに依頼したところ、化膿性炎症があり、その一方で腫瘍細胞は検出されませんとの報告でした。

細胞診の結果を鵜呑みにしてしまうと腫瘍が後ほど発覚したとき、摘出手術のタイミングを見逃してしまう事があります。

細胞診はあくまで腫瘍と思しきエリアを穿刺して、針の中に吸引された細胞一つ一つで評価されます。

たまたま腫瘍細胞を吸引することが出来なかった場合も想定しなくてはなりません。

飼い主様の了解のもと、最終的には私の直感で外科的に摘出することにさせて頂きました。


イソフルランガスを麻酔導入箱に流し込みます。



麻酔が効き始めて、丸まっていたみんとちゃんは体を開け始めました。



麻酔導入が完了したところで、箱から出てもらい維持麻酔に移します。



下写真の黄色丸が腫大している乳腺部です。






モニターの電極を装着して、手術を開始します。





患部は、出来る限りマージンを取れるだけ取る方針で切開ラインを入れます。



バイポーラ(電気メス)で止血をしながら腫瘍を摘出して行きます。





下写真の矢印が乳腺部を示します。





出血を避けるためにバイポーラを多用して大小血管を止血・切開していきます。



太い血管については、バイクランプでシーリングをします。









腫大している乳腺を摘出した後、その乳腺より下方にもう一つの乳腺が存在していました。

こちらも合わせて摘出します。







これで腫大していた乳腺の摘出が完了しました。

思いのほか大きな皮膚の欠損部となりました。





なるべく皮膚の縫合部に緊張を加えないようにするために吸収糸で皮下組織を縫合します。



皮下組織の縫合が終了しました。



皮膚縫合します。



これで手術は終了です。

大きな皮膚欠損でしたが、縫合はスムーズに出来ました。

縫合部が外陰部(排尿する部位、黄色丸)に近いため、尿が患部に飛散するかもしれません。

ちなみに肛門が赤丸で示しています。



後は時間と共に縫合部が開かないのを祈念します。



術後の皮下輸液を実施します。



麻酔覚醒直後のみんとちゃんです。





翌日には食欲も戻りました。




今回、摘出した腫大した乳腺組織です。



病理検査に出しました。

結論は浸潤性充実癌(中等度悪性)との病理医の診断でした。

下写真は低倍率画像です。

腫瘍性上皮細胞の増殖境界不整な浸潤性増殖像が観察されます。



高倍率の画像です。

異型腺上皮細胞が細胞シート状・細胞塊状増殖しています。



結果として、外科的に摘出できたのは良かったと思います。

今後は付属リンパ節や遠隔転移がないか要経過観察となります。



術後2週間目のみんとちゃんです。

抜糸のために来院されました。



傷口はこんな感じです。



みんとちゃんの経過は良好です。

みんとちゃん、お疲れ様でした!






にほんブログ村ランキングにエントリーしています。




宜しかったら、こちらupwardleftをクリックして頂けるとブログ更新の励みとなります。

投稿者 院長 | 記事URL

2017年5月12日 金曜日

ヨツユビハリネズミの子宮腺過形成

こんにちは 院長の伊藤です。

ウサギに次いでハリネズミの子宮疾患は多く、卵巣・子宮全摘出を行うことで完治させてます。

ハリネズミの場合は子宮ポリープ、子宮内膜炎、子宮腺癌が多いのですが、今回は子宮腺が過剰に増生して子宮筋層まで進行して漿膜面まで過形成してしまった症例です。

手術手技的にも難しい点があり、ご紹介します。



ヨツユビハリネズミのこひなちゃん(雌、2歳4か月)は血尿が激しく続くとのことで三重県から来院されました。



かなりの出血が認められます。



早速、レントゲン撮影を実施しました。

下写真の黄色丸は腫大した子宮です。





子宮が腫大していることから、恐らくは子宮内膜炎などの炎症反応による出血と考えられました。

卵巣子宮全摘出手術を飼主様にお勧めし、ご了解を得たので早速全身麻酔をします。



麻酔導入が効いてきました。



維持麻酔に切り替えます。



陰部からの出血が確認されます。



心肺機能などのモニターのためのセンサーやコードが小さな体に装着されます。





腹部の正中切開を実施します。



切開線の真下に現れたのは子宮です。



赤矢印は子宮体ですが、多量の出血のため高度の貧血色を呈しています。

黄色矢印は子宮体に形成された茶褐色の腫瘤を示します。

当初この腫瘤は腫瘍であろうと思われました。

後ほどこの腫瘤の病理検査の結果をお伝えいたします。



まずは左側の卵巣動静脈をバイクランプでシーリングを行います。

バイクランプで80℃の高熱で血管を熱変性・シーリングします。

これだけ小さな部位は縫合糸で結紮するのは難しいのですが、バイクランプでは容易に短時間で達成できます。



シーリングされた部位はメスで離断します。

出血は全くありません。



次いで右側の卵巣動静脈をシーリングします。





シーリングの部位を同じく離断します。



次は子宮頸管に走行している子宮動静脈のシーリングです。



子宮頸管の左右に走行している血管を完全にシーリングします。



ご覧いただいて分かるように子宮頸管が非常に腫大(黄色矢印)しています。





当院HPのハリネズミの他の子宮疾患の記事をご覧いただけると明らかですが、正常なハリネズミの3倍以上の子宮頸管の太さになっています。

本来の縫合糸による結紮では十分な結紮は出来そうにありません。



子宮頸管内部がどのようになっているか不明のため、予想外の出血に対応できるようにレーザーメス(下写真)を準備しました。



この半導体レーザーのチゼルプローブは200℃近い熱を発し、微笑血管なら瞬時に炭化・止血します。



慎重に切開して行きます。



水分を多く含む組織では下写真の様に煙が立ちます。



切開を進めていくうちに充血・肥厚した子宮頸管内膜が出現しました。





切開して出現した組織(赤矢印)は過剰に形成された子宮内膜です。

興味深いのは黄色矢印の組織で、これは赤矢印の子宮内膜組織が子宮筋層を破って、子宮漿膜面に突出したものと思われます。





子宮漿膜面の外周をレーザーメスで切開して行くと子宮頸管内の子宮内膜組織が、そのまま一緒に外れるように摘出されました。



残っている子宮頸管は従来通り、吸収糸で縫合します。







これで卵巣・子宮の全摘出は完了です。

左手の鉗子で示しているのは膀胱です。



腹筋を縫合します。



皮膚を縫合します。







手術は無事終了しました。





術後1時間のこひなちゃんです。

貧血気味も加わり、足元はふらつき気味です。





今回摘出した卵巣・子宮です。

ヨツユビハリネズミの子宮としては随分大きく腫大してます。

下写真は腹側面です。



側面です。



子宮背側面です。



既に腹腔内で飛び出していた黄色矢印の組織が、子宮頸管内で増殖していた赤矢印の組織と同一のものかという点。

さらに腫瘍組織が関与しているかの点を確認するために病理検査に出しました。



病理検査の結果として、子宮内膜腺過形成増生と間質組織増生に伴う子宮壁の肥厚が認められること。

次いで、子宮内膜腺が筋層を破って突出していることが判明しました。



幸いなことに腫瘍細胞は検出されませんでした。



下写真の卵巣組織では、ホルモン分泌不均衡の原因となる卵巣嚢胞・卵胞嚢胞・黄体形成病変は検出されませんでした。



結論として、子宮内膜腺が過形成されることにより出血性・壊死性病変が起こり、出血多量をもたらしたと推察されます。

問題となる子宮組織を全摘出しましたので、予後は良好と思われます。



術後2日目のこひなちゃんです。

退院当日の写真ですが、食欲も出て来ました。

まだ貧血が治るには、1~2週間は必要ですが、食餌をしっかり取れれば問題ありません。



こひなちゃん、お疲れ様でした!




にほんブログ村ランキングにエントリーしています。




宜しかったら、こちらupwardleftをクリックして頂けるとブログ更新の励みとなります。

投稿者 院長 | 記事URL

カテゴリ一覧

カレンダー

2018年5月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31