犬の育て方・病気猫の育て方・病気哺乳類の育て方・病気両生類の育て方・病気
  • home
  • スタッフ
  • 医院紹介
  • アクセス・診療時間
  • 初めての方へ
  • HOTEL
 

ハリネズミの疾病

2019年7月 7日 日曜日

ハリネズミの子宮内膜間質結節

こんにちは 院長の伊藤です。

本日、ご紹介しますのはヨツユビハリネズミの子宮内膜間質結節の症例です。

ハリネズミは子宮内膜炎、子宮内膜ポリープ、子宮内膜間質肉腫など子宮疾患が非常に多い動物種です。

そんな中で子宮頚部に非常に大きな結節が生じたケースで、病理学的には子宮内膜間質結節と言われる疾病です。




ヨツユビハリネズミのハルちゃん(雌、2歳6か月齢、体重310g)は血尿が出るとのことで来院されました。

下写真のように下半身は出血で汚れているのがお分かり頂けると思います。



ヨツユビハリネズミの雌で、2歳齢以降の血尿は子宮疾患を疑います。

出血による貧血などの全身状態は、まだ全身麻酔に耐えられると判断しました。

飼主様に可能であれば、早急に試験的開腹を行い、状況に応じて卵巣子宮を全摘出すべきであることをお伝えしました。

飼い主様の了解を得て、早速手術です。

ハルちゃんに麻酔導入ケースに入ってもらい、イソフルランによる麻酔導入を行います。



麻酔導入が完了しました。



マスクを装着してイソフルランによる維持麻酔に切り替えます。

生体情報モニターの電極を装着します。

メスを入れる皮膚をバリカンで剃毛します。



仕上げにカミソリで剃毛します。



患部を消毒します。



この姿勢でモニター監視のもと手術を行います。



硬性メスで皮膚を切皮します。



腹筋を切開します。



腹筋を切開した直後に直下に位置する子宮が飛び出してきました。



下写真で私がつまんでいるのが子宮頚部です。

今回の子宮頚部はかなり腫大しています。





下写真の黄色矢印は左右の子宮角と呼ばれる部位です。

白矢印は左右の卵巣動静脈です。



下写真の黄色矢印は膀胱です。

膀胱には腫瘍は浸潤していないように見えます。



卵巣を子宮頚部から分離するため、両側の卵巣動静脈をバイクランプでシーリングします。



メスでシーリング部を離断します。



次に子宮頚部の子宮動静脈をシーリングするため、血管を頚部から剥離します。



両側の子宮動静脈をシーリングします。



子宮動静脈のシーリングが完了したところです。

反対側の子宮動静脈も同じくシーリングします。



ご覧の通りに子宮頚部の腫大が著しいです。

本来ならば、この子宮頚部を縫合糸で結紮して外科鋏で離断して終了となります。

今回の腫大レベルでは縫合糸による結紮は不可能です。

膀胱は機能していますので温存できると判断しました。

あとは子宮頚部の内部の腫瘍ごとスッポと外せないか悩みました。

結果、膀胱の直上に二本の縫合糸をかけて、中間部を切開して腫瘍ごと引っこ抜くという術式を試みました。



二本の縫合糸を子宮頚部にかけます。



子宮動静脈をシーリングした部位に狙いをつけてメスで切り込みを入れます。



メスを入れると同時に子宮頚部筋層からの出血が始まりました。

この子宮頚部の内部からの出血が止まらないようなら、この縫合糸で結紮して止血する予定です。



切開した子宮頚部の内部からは変性した子宮内膜組織がはみ出る位の勢いで飛び出しました。



下写真黄色矢印は、子宮頚部の飛び出した内膜組織です。

大型のポリープ状腫瘤です。



下写真の黄色矢印方向に引き上げるとそのまま子宮頚部から剥離して外れ始めました。



予想した通りにポリープ状腫瘤は綺麗に外れました。



子宮頚部内部からの出血はそれほどはなく、準備していた縫合糸による結紮は必要ありませんでした。



そのまま子宮頚部を横断して切開します。





下写真の黄色矢印は綺麗に子宮頚部内膜組織が外れた後の頚部切断面です。



出血もほとんどない状態で、このまま頚部切断面を縫合します。







これで子宮頚部の縫合終了です。



最後に腹腔内の出血や腫瘍と思しき組織の有無を確認します。



腹筋を縫合します。



皮膚を縫合します。



手術は終了しました。

下写真は今回摘出した卵巣と子宮です。

特に子宮頚部の内膜組織(ポリープ状腫瘤)がいかに大きいかお分かり頂けると思います。



全身麻酔から覚醒したばかりのハルちゃんです。



術後10分で既に歩行しているのをみるとハリネズミはタフな動物であると感動します。



下写真は今回摘出した卵巣・子宮です。



黄色矢印は子宮角で、白矢印は子宮頚部、そして青矢印は子宮頚部離断面から突出したポリープ状の腫瘤です。





下写真は、病理写真(低倍像)です。

ポリープの表層部は自壊して壊死と炎症細胞が浸潤しています。



下は中拡大像です。

ポリープの中心部では多結節状に間質細胞が増殖しています。



間質細胞の中には細胞異型性(腫瘍細胞)が軽度から中等度で、核分裂像が認められます。

この腫瘍細胞は子宮内膜側に限局され、子宮筋層への浸潤はありません。



両卵巣に異常な所見は認められませんでした。

結論として、子宮内膜に由来する腫瘍性病変が認められましたが、これは良性の腫瘍でした。

病理組織学的な診断名は子宮内膜間質結節です。

また、病理医からの評価として病巣部は完全切除されており、良好な予後が期待できるとのことです。

今回、子宮頚部のポリープ状腫瘤(腫瘍)が子宮筋層まで浸潤しておらず、そのまま全部摘出できたのが良かったと思います。

過去に子宮頚部の内膜から筋層及び膀胱まで腫瘍が浸潤して、摘出を断念した症例もあります。

全てのハリネズミの子宮頚部の腫瘤が、今回のような子宮内膜間質結節ではありません。

子宮内膜と子宮筋層がヨツユビハリネズミの場合は綺麗に剥離できるのが興味深い点です。

犬や猫では今回の様には展開しません。

その点では、このような子宮頚部において内膜が結節上に腫大した事例は今後、今回の術式で対応できると思われます。




翌日のハルちゃんですが、しっかり食欲もあります。







ハリネズミのようにスキンシップがしっかり出来ない動物では、血尿でも気づかれない事例も多いです。

ヨツユビハリネズミは、2歳以降で血尿が継続する雌の場合は、子宮疾患を疑い、早めの受診をお願い致します。

ハルちゃん、お疲れ様でした!




にほんブログ村ランキングにエントリーしています。





宜しかったら、上記のバナーをクリックして頂けるとブログ更新の励みとなります。

投稿者 院長 | 記事URL

2019年6月19日 水曜日

ハリネズミの平滑筋肉腫(その2)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ハリネズミの平滑筋肉腫です。

平滑筋とは消化器や呼吸器,泌尿器,生殖器,血管などの壁にあって,緊張の保持と収縮を司る筋肉です。

意志とは無関係に働くので,不随意筋の一種です。

そんな平滑筋ですが、悪性の腫瘍(肉腫)として発症する場合があります。

過去にハリネズミの平滑筋肉腫として記事を載せてますので、宜しかったらこちらもクリックして下さい。



ヨツユビハリネズミのもぐちゃん(雌、1歳8か月齢)は陰部周囲が腫れているとのことで来院されました。

下写真黄色丸は出血を伴った外陰部周囲の腫瘤です。



ハリネズミは下腹部の皮膚の状態を診るにあたり、緊張・興奮により体を常時丸くしますので鎮静をかけなくてはならないことが多いです。

もぐちゃんの腫瘤をパッと見た感じでは膣脱の可能性があると思われました。

以前、当院のHPにてハリネズミの膣脱について記事を載せています。

興味のある方はこちらをクリックして下さい。

もぐちゃんが膣脱の場合、抗生剤や消炎剤の投薬で膣が戻る場合がありますので、ひとまず内科的治療で経過を確認させて頂きました。

2週間以上経過したところで、患部の縮小もなく,さらに腫大傾向があるとのことで外科的に切除することとなりました。

イソフルランで麻酔導入を実施します。



維持麻酔に切り替えます。

もぐちゃんの陰部周辺は出血で汚染されています。



外陰部全体が腫脹しているように見えます。



腫瘤を裏側から見た画像です。



腫瘤を自傷したり、床材との干渉や体表の針が刺さったりなどで患部は出血、痂皮形成を繰り返してきたことが伺えます。



患部を綺麗に洗浄消毒します。





洗浄後の患部です。

この角度から見ると膣脱と言うよりは、外陰部を裏打ちするように内部から腫瘤が形性されている感があります。





この段階では、膣脱の可能性もあるとみており、卵巣子宮全摘出術を先に実施しました。





卵巣子宮全摘の模様は、今回の本筋ではありませんので簡単に流します。



腹筋を切開します。



子宮頚部を結紮してます。



子宮頚部をメスで離断します。

この段階で特に子宮頚部が腫脹していたり、頚部に腫瘍と思しき病変は認められません



下腹部の縫合は終了です。

下写真黄色丸は摘出した卵巣子宮です。



さて本題の腫瘤摘出です。

膣脱であれば、下写真の黄色矢印から膣部が突出するはずなのですが、外陰部自体(下写真黄色丸)が腫瘍で腫れ上がっています。

従って、膣脱は否定されました。

意識下では暴れて患部の詳細を確認することがハリネズミは非常に難しいため、全身麻酔下で詳細が確認されるケースは多いです。



外陰部の腹側面を牽引して露出し、皮膚を切開してから内部の腫瘤にアプローチすることとしました。



バイポーラ(電気メス)で切開・止血を慎重に行います。



ご覧の通りの細かな作業となります。



外陰部の皮膚を切開して行くと皮下に明らかな腫瘤(腫瘍)が認められました。





太い栄養血管に包まれた腫瘍組織です。





出来る限りマージンを取るようにして、外陰部の皮膚を外科鋏で切断します。





外陰部の皮膚を切除した跡の写真です。



摘出した腫瘍組織(赤色丸)と卵巣子宮(黄色丸)です。



切除後の外陰部の皮膚を縫合します。



縫合終了です。



全身麻酔を切って覚醒を待ちます。



覚醒したもぐちゃんです。



覚醒直後から歩行を始めました。



摘出した腫瘍です。





摘出した腫瘍を病理検査に出しました。

診断は平滑筋肉腫でした。

肉腫に相当する悪性腫瘍性病変です。

下写真は中拡大像です。

病巣部は不規則に錯綜しながら増生する平滑筋様の束状の腫瘍増生巣で構成されています。



下写真は高倍率像です。

卵円形核と好酸性細胞質を有する長紡錘形細胞が増殖しています。

細胞異型性は中等度で核分裂像が散見されます。



病理検査では切断面への腫瘍細胞の露出は見られないとのことですが、今後ももぐちゃんの局所再発のモニターは必要です。



術後2日目にもぐちゃんは退院して頂きました。

もぐちゃん、お疲れ様でした!





にほんブログ村ランキングにエントリーしています。





宜しかったら、上記のバナーをクリックしていて頂けるとブログ更新の励みとなります。

投稿者 院長 | 記事URL

2019年3月28日 木曜日

ハリネズミの組織球性肉腫

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ヨツユビハリネズミの組織球性肉腫です。

ヨツユビハリネズミには各種の腫瘍が発生しますが、この組織球性肉腫は骨髄起源の樹状細胞由来と考えられている悪性腫瘍です。

特にイヌでは多く報告されている腫瘍です。

当院HPでも犬の脾臓全摘手術(組織球性肉腫)として症例報告しています。

興味のある方は、こちらをクリックして下さい。



ヨツユビハリネズミのまるちゃん(2歳6か月、雌、体重450g)は背中に腫瘤が出来たとのことで来院されました。

当院のヨツユビハリネズミの患者様は600件ほどみえますが、その中でもこのまるちゃんは穏やかな性格で体を丸めることのほとんどない希少なタイプです。



腫瘍の可能性を考慮して細胞診を実施しました。

病理医からは、組織球増加を伴う慢性炎症との診断を受けました。

その後抗生剤の投薬を継続しましたが、結局患部はさらに増大し、3か月近く経過しました。

残念ながら、細胞診の結果と病変部の真実が異なることは、日常的に経験するところです。

このままでは、何の解決にも至りませんので飼い主様の同意を得て、外科的に切除することとなりました。

背部の腫瘤はかなり大きいため、針をカットして出来る限り術野を広く取る必要があります。

そのため、ニッパーを使用して長時間かかりますが針の切断を実施しました。







下写真の黄色丸が腫瘤を示します。

背部の四分の一くらいの面積を占める大きさです。





腫瘤は高さもあり、内部が柔軟な組織で充実しています。





まるちゃんを麻酔導入箱に入ってもらい、イソフルランを流します。



5分ほどで麻酔導入は完了しました。

麻酔導入箱からまるちゃんを出して、維持麻酔に切り替えます。



生体情報モニターのセンサー等を装着します。





この体勢で手術を実施します。





出来る限りの腫瘤周りのマージンを取りたいのですが、身体の小さな動物であるため限界があります。

縫い代を最低限、確保するために腫瘤の外周を皮膚切開して行きます。





電気メス(バイポーラ)を使用して皮膚を慎重に剥離します。



皮膚に付着して腫瘤が摘出されつつあります。





腫瘤への太い栄養血管が認められます(下写真黄色矢印)。



念のため、栄養血管を縫合糸で結紮離断します。



栄養血管の近位端・遠位端を縫合糸で結紮しているところです。





結紮部をメスでカットします。





無事、腫瘤を摘出出来ました。



ところが、またその下の皮下組織に新たな腫瘤が見つかりました。

皮膚の表層部の腫瘤に連結するような形で球状の腫瘤が真下に控えています。



私の指で把持しているところが新たな腫瘤です。



この腫瘤も同じ要領で摘出します。









腫瘤の基底部(背筋に近い部位)に太い血管が認識されたので、バイクランプでシーリングします。



最後はバイポーラでカットして摘出完了です。



摘出後の患部です。

広範囲の皮膚、深部の皮下組織まで摘出領域を取りました。

摘出時の出血は最小限に抑えることが出来ました。

これから皮下組織・皮膚の縫合を始めます。



極力、死腔を作らないように皮下組織に合成吸収糸をかけて縫合します。



皮下組織の縫合が完了したところです。



最後に5‐0ナイロン糸で皮膚縫合します。





これで手術は終了となります。



リンゲル液を用いて皮下輸液をします。



数分後には、まるちゃんは覚醒し始めました。



手術中、心拍数、血中酸素分圧共に安定していました。



麻酔から覚醒したばかりのまるちゃんです。



覚醒後に直ぐにフードを食べ始めています。



摘出した皮膚側の腫瘤です。



腫瘤の裏側です。



腫瘤に割を入れました。



さらにその下に存在していた腫瘤です。



割を入れたところです。



摘出した2個の腫瘤です。

2個並べるとまるちゃんの皮下組織は広い部分が占められていたのが分かります。



摘出した腫瘤を病理検査に出しました。

その結果、2個ともに組織球性肉腫であることが判明しました。

下写真は200倍の腫瘍病理像です。



さらに400倍の病理像です。

シート状に増殖する多形性・異型性を示す類円形・多角形・紡錘形の腫瘍細胞により構成されています。



組織球性肉腫の特徴は極めて悪性度が高く、急速に全身性に播種、転移します。

イヌでは、局所性組織球性肉腫と播種性組織球性肉腫に分かれ(樹状細胞由来)、その一方脾臓に発生することの多い血液細胞を貪食する血球貪食性組織球性肉腫(マクロファージ由来)も存在します。

イヌにおいては、局所性の場合は外科的切除プラス抗がん剤の治療で生存中央期間は128日、播種性は全身性のため抗がん剤の使用で生存中央期間は106日とも報告されています。

イヌにおいても病理学的分類が明瞭に分類されていない現状なのですが、ヨツユビハリネズミにおいてはさらに混迷しています。

今回のまるちゃんの組織球性肉腫がどのタイプなのかも不明なのですが、少なくても今後の転移が予想されます。

まるちゃんは術後の経過は良好で、術後3日で退院して頂きました。



術後2週目で抜糸で来院されたまるちゃんです。

皮膚の癒合は良好です。



患部の拡大写真です。



術部も良好で、元気そうなまるちゃんです。





ところが、術後1か月くらい経過した頃から、まるちゃんは緑便や緑尿が出るようになり、元気消失してきました。

当初懸念していた腫瘍の転移が症状として出て来たと思われます。

レントゲン撮影を実施したところ、肝臓の腫大・肺野の炎症像が確認されました。

内科的療法をその後、約1か月継続して頂きましたが、残念ながら力及ばずにまるちゃんは逝去されました。

とても愛くるしい子で、忘れることは出来ません。

腫瘍との戦いはどの動物でも厳しいものです。

しかし、皆が可能な限り長生きして天寿を全うできるように、努力していきたいと思います。





にほんブログ村ランキングにエントリーしています。





宜しかったら、こちらupwardleftをクリックして頂けるとブログ更新の励みとなります。

投稿者 院長 | 記事URL

2019年2月27日 水曜日

ハリネズミの断脚手術(扁平上皮癌)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ハリネズミの扁平上皮癌により断脚しなければならなくなった症例です。

以前にハリネズミの扁平上皮癌についての詳細は、こちら(ハリネズミの扁平上皮癌)こちら(ハリネズミの扁平上皮癌 その2)をクリックして下さい。


ヨツユビハリネズミのハーリーちゃん(雌、3歳、体重350g)は後ろ足が腫れて、他院で治療を受けていたけどさらに酷くなってきたとのことで、三重県からの受診です。

ハーリーちゃんの右後肢(黄色矢印)は、既に足としての形状をなしていないほど腫大しており、辛うじて体重を支えている模様です。

後肢の先端部は黒変しており、壊死が進行しているのが分かります。

元気食欲もなく、全身状態も良くありません。















ハリネズミである以上、身体を丸めますが右足は腫大のため格納出来ず、自らの針で右足を穿刺してしまい(下写真)、外傷による細菌感染も進行しています。



まずレントゲン撮影を実施しました。



踝骨(くるぶし)から下の中足骨、趾骨にかけて既に骨融解しており、壊死が進行しているのが分かります。

骨腫瘍の可能性も考え、また壊死による敗血症を回避するためにも、早急な断脚が必要です。

飼い主様のご了解を頂き、断脚手術を実施することとなりました。


ハーリーちゃんのは、麻酔導入箱に入って頂き、イソフルランを流入します。





麻酔導入が完了したところで、箱から出てもらい維持麻酔に変えます。







断脚は大腿骨骨幹部を離断する予定です。

患部周囲の剃毛を実施します。



ガス滅菌済みの粘着テープで後肢患部をテーピングします。



後肢の内側面からメスを入れて行きます。



後肢大腿部は大腿動脈や大腿静脈などの太い血管が走行しています。

これらの血管を結紮し、大腿内側の筋肉を切断します。



慎重に皮膚を切皮します。



大腿動静脈が出て来ました。



縫合糸を用いて血管を結紮します。





近位端と遠位端に2か所結紮し、メスで離断します。





メスで血管を離断します。



結紮部からの出血がないことを確認します。





続いて、筋肉層をバイポーラで切断していきます。





縫工筋、恥骨筋をここで切断します。



さらに外側面にある大腿四頭筋及び大態二頭筋、内転筋、半腱様筋を切断します。

下写真黄色矢印は大腿骨を示します。



大腿骨骨幹部を骨剪刃で離断します。



大腿骨の離断が完了しました。



軟部組織をトリミングします。



下写真黄色丸は離断した大腿骨断面です。



次いで、切断した各種筋肉を縫合して大腿骨断面を覆い、完全に閉鎖します。







最後にナイロン糸で皮膚を縫合して終了です。









ハーリーちゃんはまだ半覚醒の状態です。



イソフルランを切ってから、5分くらいで覚醒に至りました。





僅か350gの体からすれば、断脚は大きな試練です。

出血による血圧の下降、壊死部からの細菌が全身へ飛んでの敗血症など、術後に憂慮すべき点はたくさんあります。

出血も最小限で止めることが出来ましたし、麻酔覚醒も順調に終了しました。



術後のレントゲン写真です。

下写真の黄色丸は大腿骨の切断部を示します。





断脚した足です。



この足を改めてレントゲン撮影しました。

写真黄色下矢印は踝骨から爪先までが骨融解しているのが分かります。

腫瘍によって、骨が侵されたものと思われます。

この断脚した患部を病理検査に出しました。



手術翌日のハーリーちゃんです。

表情も良い感じです。



3本足でもなんとかバランスを取って歩行をしています。





ハーリーちゃんは、術後の経過も良好で5日後に退院して頂きました。



病理検査の結果ですが、扁平上皮癌との診断でした。

ヨツユビハリネズミは扁平上皮癌の罹患率が高いと思われますが、多くは口腔内に発生するタイプです。

今回は、足先から腫れて来たとのことですから、爪から扁平上皮癌が発症したのかもしれません。

扁平上皮癌とは、生体を覆っている上皮の一部である扁平上皮が腫瘍化したものを指します。

扁平上皮癌は、皮膚が存在している部位ならばどこでも発症する可能性のある悪性腫瘍です。

代表的な場所としては、鼻腔・副鼻腔・舌・口腔・扁桃・・股間などに犬では多いとされています。

ヨツユビハリネズミでは、まだその詳細は不明ですが、恐らく犬に準ずると思われます。



下写真は患部の病理標本です。

低倍率像です。

黄色矢印にあるのは、大小不規則な胞巣状の病変です。

この胞巣は、扁平上皮癌に特徴的な病理像です。



胞巣の拡大像です。

胞巣の中心部は、玉ねぎの皮のように何層にも角質(ケラチン)の形成を認めます(下写真黄色矢印)。

この胞巣を癌真珠と呼びます。



他部位の中等度倍率の病理像です。

胞巣内には、扁平上皮癌の細胞群が認められます。



拡大像です。

角質を産生する鱗状の腫瘍細胞が散在します。



今回、腫瘍細胞の脈管内浸潤は認められなく、近位端組織のリンパ節への転移もないとのことです。

扁平上皮癌は局所の浸潤性増殖を特徴とします。

腫瘍の遠隔転移は比較的まれです。

病理医からは、今回の摘出で根治が期待されるとのコメントがありました。

退院後3週間を経て、抜糸で来院されたハーリーちゃんです。

傷口も問題なく癒合してました。

経過も良好で元気食欲も元に戻ったとのことです。

歩行について走ることも上手に出来るようになりました。





今回のような四肢末端部の扁平上皮癌であれば、早期の外科的切除が功を奏するでしょう。

しかしながら、私の経験では圧倒的にヨツユビハリネズミは、口腔内の扁平上皮癌が多く、完治を目指すことは困難です。

これは、ハリネズミに限らず他の動物でも同じことだと思います。

ただ1kg未満の小さな動物であるため、犬のように外科的に顎切除は不可能であり、化学療法にも限界があり、放射線治療も厳しいでしょう。

せめて、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)の投薬でペインコントロールする範囲に留まると思われます。

エキゾチックアニマルの腫瘍治療は、犬猫と比較しても治療法の選択肢が限られてしまうのが辛い所ですが、善処していきたいと思っています。


ハーリーちゃん、お疲れ様でした!





にほんブログ村ランキングにエントリーしています。





宜しかったら、こちらupwardleftをクリックして頂けるとブログ更新の励みとなります。

投稿者 院長 | 記事URL

2018年12月18日 火曜日

ハリネズミの膣脱(子宮間質性肉腫含む)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ハリネズミの膣脱です。

メスの場合、発情期のエストロジェン刺激に起因する膣粘膜の水腫性変化・過形成により生じるのが膣脱です。

膣脱の場合、外陰部から膣が組織脱出します。

膣壁の全周360度に及ぶ膣粘膜の突出から始まり、血行障害からの浮腫により腫脹した状態となります。

治療法として、整復を試みて脱出部が戻らない場合や壊死が起こっている場合は、脱出部を切断・縫合を施します。




ヨツユビハリネズミのマリアちゃん(雌、1歳5か月齢、体重305g)は血尿が続くとのことで来院されました。



いつものことながら、雌の血尿は子宮疾患を疑います。

最悪、子宮腺癌の可能性もありますので、予防医学的見地からも卵巣・子宮全摘出手術を勧めさせて頂きました。

さて、手術実施を決めてから2週間後の手術当日、マリアちゃんは血尿は継続してあるのですが、なんと膣脱が起こっていました。

この膣脱は卵巣子宮全摘出の手術のため、全身麻酔をかけた時点で気づきました。

ハリネズミの場合、日常的に下腹部をしっかり見る機会が少ないと思われますが、おそらく何日か前から膣脱が生じていたようです。



全身麻酔の導入を行っているところからご覧頂きます。



ガス麻酔導入後、維持麻酔に変えます。

下写真、黄色丸は膣脱を示します。

外陰部から膣が飛び出しているのがお分かり頂けると思います。





麻酔下で膣脱が整復できるか、確認します。

脱出している膣壁を洗浄消毒します。



綿棒を用いて、脱出した膣の外周を優しく戻していきます。







既に膣壁の黒くなっている部位は壊死が起こっていると判断しました。

綿棒による整復処置は困難を極め、これ以上続行すると脱出膣壁を傷つけますので止めました。

結局、脱出膣壁を外科的に切断し、整復する方針に変更します。

メスを入れる部位を剃毛・消毒します。



マリアちゃんに装着した生体情報モニターのセンサーが仰々しいですが、この姿勢で手術を実施します。



心拍数、血中酸素分圧も良好です。



まずは、卵巣子宮全摘出手術を実施します。



腹筋を切開します。



下写真に出てきているのは、若干腫大の認められる子宮角です。



子宮角が充うっ血・腫大しています。





今回は膣脱が主題ですから、卵巣子宮全摘出については、あらましだけ説明します。

卵巣動静脈をバイクランプでシーリングした後、子宮頚部を縫合糸で結索します(下写真)。





結紮した子宮頚部より近位端を外科剪刃で離断します。





子宮頚部離断端を縫合します。

これで卵巣子宮全摘出は完了です。



筋肉層、皮膚層を縫合して終了です。



さて、本題の膣脱手術です。

先端が黒くなっている脱出した膣壁(下写真黄色矢印)は、壊死を起こしていますので離断します。





脱出膣壁を支持するために縫合糸を膣壁に通します。



左右方向(下写真黄色矢印)から支持糸で脱出膣部を安定させます。



壊死部位(黄色丸)を鋏で離断します。

犬猫の場合、尿動口に尿道カテーテルを入れて脱出膣部の切除位置を確認します。

残念ながら、ハリネズミの場合は脱出膣部も小さく、加えて壊死部が広いために尿動口の確認が出来ません。

残念ながら尿動口に入れることのできるサイズのカテーテルは存在しません。

細心の注意を払って、壊死部(黄色丸)を最小の範囲で切除します。



離断端からの出血が認められます。

断端部は壊死していない証となります。



患部を生理食塩水で丹念に洗浄します。



滅菌綿棒で断端部の止血を行っています。



止血剤を患部に滴下します。



出血が納まったところで、断端壁の外周を縫合します。









膣断端の外周縫合は完了です。





手術が終わり、麻酔から覚醒したマリアちゃんです。



麻酔覚醒直後の外陰部です。

膣離断部がまだ外陰部内に完全に戻りきっていない状態です。



覚醒1時間後の外陰部です。

手術直後と比較して膣断端部は戻りつつあります。



手術翌日のマリアちゃんです。



外陰部はまだ若干の腫脹はありますが、膣断端は戻っています。






術後、マリアちゃんは気持ちよく大量の排尿はしていませんが、少量であれ排尿は出来ています。

また外陰部からの出血も治まっています。


今回摘出した子宮には、子宮内膜の間質性肉腫が病理学検査で確認されました。

下写真は子宮内膜の間質性肉腫の病理写真(中拡大)です。

子宮内膜はびまん性に過形成しています。



高倍率像です。

大型の核や複数の核を持つ腫瘍細胞が認められます。




卵巣子宮全摘出を実施することで、今後の膣脱の予後は良好とされます。

マリアちゃんの今後の経過を診て行きます。



マリアちゃん、お疲れ様でした!









にほんブログ村ランキングにエントリーしています。



宜しかったら、こちらupwardleftをクリックして頂けるとブログ更新の励みとなります。

投稿者 院長 | 記事URL

カテゴリ一覧

カレンダー

2019年7月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31