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水棲カメの疾病

2018年3月22日 木曜日

スッポンモドキの皮膚病

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、スッポンモドキの皮膚病です。


そもそもスッポンモドキとはどんな生物なのか?というところから説明します。

スッポンと名のつくことからカメであることは明らかです。

しかしながら、全く別のカメに分類され、産卵以外は陸地に上がることのない完全水棲カメです。

英名ではpig-nose-turtle、日本名ではブタバナ・ガメと呼ばれてます。

分類はスッポンモドキ科スッポンモドキ属、分布はニューギニア南部・オーストラリア北部の河川・河口とされます。

スッポンモドキの最大の特徴は、最大甲羅長80㎝、体重22.5㎏に達する大型のカメです。

そのため、飼育環境の整備がとても重要で水質の衛生管理から水槽のレイアウトまで細かな配慮が必要とされます。

食餌は草食(野菜・果実)に近い雑食とされています。



全身の皮膚病、衰弱でスッポンモドキ(名称なし、23歳、体重5kg、性別不明)が来院されました。






皮膚炎が酷く、皮膚が剥離して痂皮を形成し、また痂皮が剥離して皮膚が潰瘍状態になるというプロセスを繰り返しています。



水槽ケースから出したスッポンモドキです。

ぐったりしており、全身状態はよろしくありません。



本来、活動性のあるカメですが頭を上げれない程に弱っています。



すでに食欲は全くなく、皮膚からは高度の細菌感染が認められました。



飼い主様宅では、30tの大きな水槽で飼育されているそうです。

おそらく30tの容量のある水槽であれば、この個体であれば余裕で回遊できると思われます。



水質に問題があり、細菌感染に至ったのではないかと思われます。



スッポンモドキは前肢はウミガメと同様にヒレの様になっています。



ヒレは泳ぐ度に水槽の壁に干渉するのでしょう、皮膚はびらん状態で赤くただれています。



甲羅の内側です。



甲羅の表面は発赤があり、甲羅内部では点状出血の疑いがあります。





爬虫類の場合、点状出血が現れると細菌やウィルスが血流を介して全身に及び敗血症に至っている場合が多いです。





レントゲン撮影を実施しました。

肺炎などの呼吸器の感染は認められません。



ニューキノロン系の抗生剤を注射します。



細菌感染による皮膚炎の治療では、外用薬の患部への塗布・薬浴・抗生剤の内服もしくは注射投与の手段を選択します。

今回のスッポンモドキは抗生剤の注射を連日で実施することと、イソジン等の体表部への塗布による消毒を継続することとしました。

同じ水槽内にもう1匹のスッポンモドキも同居しているそうなので、互いで攻撃して傷を広げている可能性もあります。

水棲カメの場合、さらに重要なポイントは、水質のPhや濾過器による濾過機能をチェックする必要があります。

スッポンモドキの場合は、完全に淡水棲種です。

餌の食べ残しや排泄物で水槽内の水はすぐに悪化してしまいます。

水質悪化した水槽水を飲用していれば、エロモナス等の細菌感染を引き起こすでしょうし、腎機能不全を招くこともあります。


このスッポンモドキは2004年、ワシントン条約のCITES2種に採択されています。

ワシントン条約とは絶滅の恐れのある野生の動植物の国際的商品取引を規制する条約のことです。

CITES1種に該当するのは、ウミガメ全種やガラパゴス・ゾウガメやオオサンショウウオ等が挙げられます。

スッポンモドキの場合は、今すぐに絶滅の危機はないにせよ要注意であるとの認識がされてるとのことです。

以前は、ペットとして多くの個体が日本へ輸入されていたようですが、最近ではその数は激減しています。

2008年には名古屋港水族館が、世界で初めてスッポンモドキの飼育下繁殖に成功しています。


このスッポンモドキ君も何とか回復して欲しいと思います。





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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

2017年11月30日 木曜日

クサガメの代謝性骨疾患

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは水棲カメの中でもポピュラーな存在であるクサガメです。

以前は在来種であるイシガメの幼体をゼニガメと呼んでいましたが、現在はこのクサガメの幼体をイシガメと呼称しています。

クサガメは在来種と思われている方が多いと思いますが、江戸時代中期以前にはクサガメに関する記録がないとされ、最古の文献でも200年前から日本国内で登場するそうです。

国内で棲息する水棲カメとしてはまだ新しい仲間になるようです。

恐らくは朝鮮半島から移入された品種と推定されます。

現在、日本国内でも野生のクサガメの数は激減しているそうで、すでに中国・台湾・韓国では国を挙げての保護の対象になっている品種です。



さてそんなクサガメですが、代謝性骨疾患の症例です。

クサガメちゃん(20歳、雌)が甲羅が変形しているとのことで来院されました。



甲羅の両端が反り返っている(下写真黄色矢印)のがお分かり頂けると思います。

明らかに甲羅の変形が認められます。



体と比較して甲羅が未成熟であり、体を保護するだけの甲羅の大きさがありません。

自然界ではこの状態では天敵から身を守ることは出来ません。







このような甲羅が未成熟かつ変形しているのは、代謝性骨疾患(くる病)に罹患した過去があるか、現在も罹患している状態を示しています。

この疾患はエキゾチックアニマルには必ずついて回るもので、カメに限らず他のトカゲ,イグアナ,カメレオン等にも見られます。

当院のトカゲ・イグアナあるいはカメレオンの疾病紹介にその詳細を載せましたので、興味のある方はご覧下さい。


代謝性骨疾患は、紫外線照射量と食餌に含まれるビタミンD3が不足することで腸管からのカルシウム吸収が出来なくなり発症する病気です。

カルシウムが吸収されなくなることで低カルシウム血症に至り、補正するためにカルシウムを貯蔵している骨や甲羅から血中にカルシウムを放出するようになります。

結果として、甲羅や骨が曲がったり、成長不良で小さく短い体躯となります。

最悪、骨折したり、顎が変形して食餌が摂れなくなったり、脊椎が湾曲して神経症状が出たりする個体もあります。



クサガメちゃんは年齢は20歳とのことで、残念ながら甲羅の変形は治すことは出来ません。

幸い、神経症状は出ていないので今後、代謝性骨疾患が進行しないよう食餌管理・十分な紫外線照射が必要です。

カメの場合、バランスの取れた食餌が与えられていないケースが多いです。

クサガメちゃんはエビが好きで昔から給餌されていたそうです。

好きな物(特に生餌)ばかり給餌することで栄養学的な問題が発生します。

水棲カメ用の飼料を幼体期から与えていくことが重要と思います。

在来種を飼育されるご家庭では、紫外線ランプまで用意されているケースは少ないと思われます。

しかし、紫外線はカメを飼育する上で重要視されねばなりません。

290nmから310nm前後の波長(UVB)は新陳代謝を促して、体内でのビタミンD3生成に関与します。

本能的にカメはリクガメであれ水棲カメであれ、日光浴を好みます。

飼育管理上の問題で紫外線ランプを常設できなければ一日の内、数時間は日光浴すると良いです。

加えて、クサガメちゃんは後肢の足底部皮膚炎を起こしていました(下写真黄色丸)。




カメは犬猫以上に長寿の個体が多いため、幼体期にしっかり飼育環境を整備しておかないと代謝性骨疾患に陥り、その後何十年も問題を抱えて生きて行かなくてはならなくなります。

一度、この代謝性骨疾患で骨変形すると元の状態に戻すことは出来ませんので、くれぐれもご注意を!




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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

2014年9月21日 日曜日

アカミミガメの嘴研磨

こんにちは 院長の伊藤です。

爬虫類の診療で最近、依頼されることが増えてるのが嘴の研磨処置です。

アカミミガメのデカちゃん(雌、30歳)は嘴がかなり伸びて食欲不振になっているとのことで来院されました。



30歳という年齢は当院の水棲カメ部門で堂々の長寿第1位です。

私を除く、他のスタッフの誰よりも年長ということですね。

体全体から醸し出される風格が感じられます。









嘴が過長している部分を下写真黄色丸で囲みます。



加えて伸びすぎた嘴をどこかに引っ掛けて出血が認められます(下写真草色丸)。



そこで、以前ビルマオオアタマガメの頭部鱗・研磨処置で活躍したマイクロエンジンの登場です。

詳細はこちらをご覧ください。



若いアカミミガメですと頭部を固定するのに暴れて大変なのですが、さすがデカちゃんは余裕でラウンドバーの回転にも動じることなく我慢してくれています。









上下の嘴の可動域を考慮して、しっかり嘴を開口して餌を把持できる最低ラインまで研磨していきます。

おそらくデカちゃんはこの嘴に至るまで長い年月をかけてきているはずです。

いきなり嘴を短く詰めてしまうと逆に拒食になる可能性も十分あります。

そこで、まず第一段階の研磨処置としてはこのあたり(下写真)で終了させて頂きました。







どうしょうか。

随分口周りがスッキリしたと思います。

加えて爪も伸びてますので、爪切りもしました。

犬猫用の爪切りを使用すると1発で切れなくなります。

工具のニッパーを使用します。







デカちゃん、お疲れ様でした!



それでは最後に嘴研磨のBefore



After!





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2014年6月26日 木曜日

アカミミガメのハーダー氏腺炎

こんちは 院長の伊藤です。


本日、ご紹介しますのはカメのビタミンAが欠乏して起こる「ハーダー氏腺炎」という疾病です。

実はこの疾病は日常的に遭遇することが多いです。


アカミミガメのRUNA君(3歳、雄)は、両側性の瞼の腫れで眼が開かないとのことで来院されました。



上写真のRUNA君の眼を拡大します。



高度に瞼が腫脹しています。

両瞼が炎症(眼瞼炎)をおこしており、浮腫も伴っています。



RUNA君は眼を開けることができませんので、餌を満足に食べることが出来ません。

RUNA君の瞼を綿棒を用いて優しく開眼させます。



良く診ますと瞼内にクリーム状の膿が溜まっていました。(下写真黄色丸)



眼球を生理食塩水で洗浄処置を施しました。


なぜRUNA君はこのような疾病になってしまったのでしょうか?

それには、涙を産生する部位(涙腺)の構造から説明する必要があります。


今回の話題のハーダー氏腺は涙腺の一つなんですが、第三眼瞼(瞬膜線)という構造物の中に存在します。

第三眼瞼(瞬膜線)は全ての動物に存在する眼球構造物です。

ハーダー氏腺は、カメを初めとした爬虫類における主要な涙液分泌腺です。

この分泌液は脂を主体とする脂質腺液で、水棲動物の眼球をこの脂で守るという役目があります。

一方、犬猫などの哺乳類では、第三眼瞼腺(瞬膜線)が涙液分泌を担っている点が異なります。


そこで、カメの餌に含まれるビタミンAが不足するとハーダー氏腺の涙管、涙腺、結膜上皮細胞の変性が生じます。

それによって涙管などに変性組織が詰まってしまい、涙腺の分泌液が蓄積していきます。

結果的にカメの涙液分泌は減少していき、ドライアイを引き起こします。

以前、犬のドライアイ(乾性角結膜炎)についてコメントしましたので興味のある方はご覧ください。

爬虫類も哺乳類と同様、ドライアイになりますと二次的細菌感染を受け、結膜炎となります。

さらに症状が進行すると、眼瞼の痙攣・眼瞼の浮腫そして眼瞼炎へと悪化していきます。

そんな現象がRUNA君の小さな瞼の中で展開されていたわけです。



治療ですが、第一にビタミンAの供給です。

魚の切り身やエビなどの生肉のみを与えているケースで発症することが圧倒的に多いです。

ビタミンAのような脂溶性ビタミンは過剰摂取に要注意です。

RUNA君にはこのビタミンAの内服と抗生剤の点眼薬を処方させて頂きました。

飼い主様にお願いして、暫くの通院で眼球の洗浄もさせて頂くこととしました。

加えて水質が悪化して、水中内の雑菌が増加してくると眼瞼炎・結膜炎が憎悪しますので、水質に絶えず気を使っていただくようお願い致しました。


下写真は3週間後のRUNA君です。

瞼の炎症も治り、眼元がスッキリしているのがお分かり頂けると思います。






一般的なカメ用の配合飼料や小魚などの生餌を食していれば、このビタミンA欠乏症にはなりにくいと考えられています。

初期のハーダー氏腺炎であれば、適切な餌とビタミンAで治せます。

しかし、瞼が開かない状態まで進行した場合は、専門の治療をしない限り治療が困難になることも多いです。

瞼が少し腫れて、食欲不振に気づいたら、動物病院の早期受診をお勧めします。


幼体でこのハーダー氏腺炎に罹患しますと、食餌が不可能なため体力消耗が著しく死亡することが多いため、たかがビタミン不足と侮らないでくださいね!





RUNA君の飼主様は、治療に非常に熱心な方で短期間で回復されて良かったです。

RUNA君、飼い主様、お疲れ様でした。




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2014年6月 7日 土曜日

ビルマオオアタマガメの頭部鱗・研磨処置


院長の伊藤です。


本日ご紹介しますのはビルマオオアタマガメというオオアタマガメ属のカメです。

ビルマオオアタマガメはカンボジア・タイ・ベトナム・ミャンマー・ラオスに棲息します。

特徴は背中の甲羅が扁平で幅広い点と大きな頭部が鱗で覆われている点にあります。

嘴は鈎状にとがっており、カミツキガメに近い感じです。


一般にはカメは自身の頭を胴体に引っ込めて身を守るイメージが強いです。

しかし、このオオアタマガメは甲羅が扁平で幅が狭く大きな頭部を胴体に格納することはできません。

その代り、頭部に立派な鱗が存在して頭部を保護しています。

この鱗が問題で、場合によっては大きく伸びて眼球を覆う位置まで伸展するすると視界が邪魔されて捕食もままならなくなります。

今回は、そんな状況に陥ったオオアタマガメのお話です。



ビルマオオアタマガメ君(雄、3歳)は頭部の鱗が伸展して眼にあたるとのことで来院されました。






下写真黄色丸にありますように頭部鱗が眼の所まで伸びてきているのがお分かり頂けると思います。

ヘルメットのように感じるのは私だけでしょうか?



鱗と一般には呼ばれていますが、むしろ背中の甲羅が頭部に延長して来ているかのように感じます。



そこで伸展した鱗の処置になりますが、歯科処置する時に使用するマイクロエンジンのラウンドバーで研磨することとしました。









開口して威嚇するとカミツキガメのように凶暴なイメージもあります。

しかし、非常におとなしい個体なので研磨処置は順調に行うことが出来ました。



結果として、下写真の様に眼球の動きを邪魔しないように研磨することが出来ました。



正面からご覧いただくと頭部が大きいのが分かります。




以前はこのオオアタマガメはカミツキガメの近縁と分類されてました。

最近では、ゲノムDNAやミトコンドリアDNAの塩基配列の統計学的解析ではリクガメ科に含まれるとされているそうです。

水棲カメなのに意外ですね。

大分県安心院町にある3,000,000年前(鮮新世)の地層からこのオオアタマガメの化石が発見されており、しかもオオアタマガメの化石は世界的にも日本でしか発見されていないそうです。

そんな話を聞くと壮大な歴史の流れの中で、たくましく生き抜いてきた動物種なんだと改めて感銘を受けます。





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