フェレットの疾病
2019年8月20日 火曜日
フェレットの脊索腫(その2)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、フェレットの脊索腫です。
以前もこの脊索腫についてはコメントさせて頂きました。
興味のある方はこちらをクリックして下さい。
脊索は胎生期に体を支える支柱として機能し、椎板から椎骨になる過程で退化し、出生後は椎間板の髄核として痕跡が残る組織です。
脊索腫は、この遺残した脊索から発生する悪性の腫瘍です。
治療法として、外科的切除が第一選択とされます。
尾に発生した脊索腫は切除後の局所での再発、遠隔転移の報告はなく、予後は良好とされています。
フェレットのシロンちゃん(3.5歳、去勢済、体重1.5kg)は、尻尾の先端部に大きな腫瘤ができたとのことで他院からの紹介で来院されました。


肉眼所見から脊索腫であることは疑いなく、このまま外科的切除を実施することとなりました。
まず全身麻酔が出来る状態にあるか、確認のため術前の血液検査を行います(下写真)。
肝機能、腎機能等特に問題はなく、このまま手術に移ります。

麻酔導入箱にシロンちゃんを入れ、麻酔導入します。

導入箱から出して、シロンちゃんを維持麻酔に替えます。

下写真黄色丸がその脊索腫です。
もともとシロンちゃんは尻尾が生まれつき短く、かつ小さな脊索腫が発生していたとのことです。
患部は数年前から現状の大きさになっていたようです。





尻尾の付根に止血帯(下写真黄色矢印)をつけて、断尾時の出血を抑えます。


早速、断尾を実施します。

V字にメスの切り込みを入れます。

V字にするのは切断面の接触面積を増やし、患部の皮膚癒合を促す目的のためです。

フェレットは尾骨も太く、皮膚も厚いです。
尾静脈に加えて、背外側動脈、腹外側動脈、腹側動脈、正中尾動脈などが走行してます。

バイポーラ(電気メス)で止血・切開を展開しながら尾骨にアプローチしていきます。

骨剪刃を用いて、尾骨を切断します。

切断面をメスでトリミングします。

次いで、止血帯を少しずつ緩めて出血部を確認し、バイポーラ(電気メス)で止血を実施します。



止血が完了したところで皮膚を縫合しますが、縫い代を十分に取るために尾骨をロンジュールでカットして微調整します。

皮膚縫合を行います。



これで手術は終了します。

患部は床面との摩擦などが想定されますので、テーピングします。

全身麻酔覚醒直後のシロン君です。

摘出した脊索腫です。


退院して2週間後のシロン君です。
患部の抜糸で来院して頂きました。


患部の若干の腫脹は認められますが、皮膚の癒合は完了しており、抜糸できる状態になっています。

抜糸直後の患部です。

大きな脊索腫でかなり重かったと思われますが、摘出後は動きも軽快になったシロン君です。
お疲れ様でした!

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本日ご紹介しますのは、フェレットの脊索腫です。
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脊索は胎生期に体を支える支柱として機能し、椎板から椎骨になる過程で退化し、出生後は椎間板の髄核として痕跡が残る組織です。
脊索腫は、この遺残した脊索から発生する悪性の腫瘍です。
治療法として、外科的切除が第一選択とされます。
尾に発生した脊索腫は切除後の局所での再発、遠隔転移の報告はなく、予後は良好とされています。
フェレットのシロンちゃん(3.5歳、去勢済、体重1.5kg)は、尻尾の先端部に大きな腫瘤ができたとのことで他院からの紹介で来院されました。


肉眼所見から脊索腫であることは疑いなく、このまま外科的切除を実施することとなりました。
まず全身麻酔が出来る状態にあるか、確認のため術前の血液検査を行います(下写真)。
肝機能、腎機能等特に問題はなく、このまま手術に移ります。

麻酔導入箱にシロンちゃんを入れ、麻酔導入します。

導入箱から出して、シロンちゃんを維持麻酔に替えます。

下写真黄色丸がその脊索腫です。
もともとシロンちゃんは尻尾が生まれつき短く、かつ小さな脊索腫が発生していたとのことです。
患部は数年前から現状の大きさになっていたようです。





尻尾の付根に止血帯(下写真黄色矢印)をつけて、断尾時の出血を抑えます。


早速、断尾を実施します。

V字にメスの切り込みを入れます。

V字にするのは切断面の接触面積を増やし、患部の皮膚癒合を促す目的のためです。

フェレットは尾骨も太く、皮膚も厚いです。
尾静脈に加えて、背外側動脈、腹外側動脈、腹側動脈、正中尾動脈などが走行してます。

バイポーラ(電気メス)で止血・切開を展開しながら尾骨にアプローチしていきます。

骨剪刃を用いて、尾骨を切断します。

切断面をメスでトリミングします。

次いで、止血帯を少しずつ緩めて出血部を確認し、バイポーラ(電気メス)で止血を実施します。



止血が完了したところで皮膚を縫合しますが、縫い代を十分に取るために尾骨をロンジュールでカットして微調整します。

皮膚縫合を行います。



これで手術は終了します。

患部は床面との摩擦などが想定されますので、テーピングします。

全身麻酔覚醒直後のシロン君です。

摘出した脊索腫です。


退院して2週間後のシロン君です。
患部の抜糸で来院して頂きました。


患部の若干の腫脹は認められますが、皮膚の癒合は完了しており、抜糸できる状態になっています。

抜糸直後の患部です。

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2018年7月12日 木曜日
フェレットの異物誤飲(その2)
こんにちは 院長の伊藤です。
蒸し暑い日が続いてますが、皆様のペット達はいかがお過ごしでしょうか?
この1~2週間は熱中症の患者様の来院が増えています。
今の時期、涼しい環境で飼育することを念頭に置いて下さい。
さて、本日はフェレットの異物誤飲についてご紹介します。
以前も異物誤飲について載せましたが、興味のある方はこちらをクリックして下さい。
フェレットのユキちゃん(避妊済、体重1kg、1歳10か月齢)は異物誤飲の疑いで他院からの転院です。

触診しますと下腹部に小指頭大の腫瘤が認められます。
これが異物なのか腫瘍なのか、確認のためレントゲン撮影を実施しました。
下レントゲン写真の黄色丸は異物の可能性があります。
下写真赤矢印は顕著なガス貯留による腸管拡張を示してます。
一般には異物閉塞部から近位端(頭側側)にガスは貯留します。

下写真の黄色丸が上写真の異物と思しき陰影です。

続いて、エコーで異物と思われる部位を調べてみました。
下写真は球体状の異物を表しています(黄色丸)。

レントゲン・エコーの結果から、間違いなく異物を誤飲していると思われましたので早速、外科的に摘出手術を行うこととなりました。
まずは点滴のために前足の橈側皮静脈に留置針を入れます。

イソフルランで麻酔導入します。

導入がスムーズに出来ましたので、生体モニターを装着します。

ユキちゃんはしっかり寝ています。

これから開腹手術を実施します。

腹筋を切開します。

腸を体外に取り出した写真です。
黄色丸は異物を示します。
腸閉塞を起こしており、腸の色は充うっ血色を呈しており、閉塞から時間が経過しているのが推察されます。


異物の直上にメスで切開を入れます。

ボールと思しき球体が腸管内に閉塞しているのがお分かり頂けると思います。

切開部を軽く圧迫して、ボールを摘出します。


腸の内容物が漏出してきますので、速やかに切開部を縫合します。
腸管の管腔径の狭窄を防ぐために、欠損部を横断するように縫合していきます。

4-0の吸収糸を使用して、単純結紮縫合で行っています。


縫合は完了しました。
縫合部(黄色丸)は、腸管狭窄を防ぐため切開ラインと平行に縫合してため、若干いびつな形状をしてます。

縫合部を洗浄します。

腹筋を吸収糸で縫合します。

皮膚縫合して手術は終了です。

摘出した異物(ボール)です。

おそらく腸管内で停留していた時間が長くて、ボールの色は退色して表面は柔らかく劣化しています。

麻酔から覚醒したユキちゃんです。

以前に載せたフェレットの異物誤飲の記事にも書いたことなんですが、若いフェレットはボールやウレタン地の物体、消しゴムなどの弾力性のある異物が大好きです。
1㎝を超える異物を誤飲した場合は、すぐに病院を受診して下さい。
飼い主様が気づかないまま、数日を経過すると腸管が壊死する場合もあり、術後も予後不良になる場合があります。

ユキちゃん、お疲れ様でした!
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この1~2週間は熱中症の患者様の来院が増えています。
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触診しますと下腹部に小指頭大の腫瘤が認められます。
これが異物なのか腫瘍なのか、確認のためレントゲン撮影を実施しました。
下レントゲン写真の黄色丸は異物の可能性があります。
下写真赤矢印は顕著なガス貯留による腸管拡張を示してます。
一般には異物閉塞部から近位端(頭側側)にガスは貯留します。

下写真の黄色丸が上写真の異物と思しき陰影です。

続いて、エコーで異物と思われる部位を調べてみました。
下写真は球体状の異物を表しています(黄色丸)。

レントゲン・エコーの結果から、間違いなく異物を誤飲していると思われましたので早速、外科的に摘出手術を行うこととなりました。
まずは点滴のために前足の橈側皮静脈に留置針を入れます。

イソフルランで麻酔導入します。

導入がスムーズに出来ましたので、生体モニターを装着します。

ユキちゃんはしっかり寝ています。

これから開腹手術を実施します。

腹筋を切開します。

腸を体外に取り出した写真です。
黄色丸は異物を示します。
腸閉塞を起こしており、腸の色は充うっ血色を呈しており、閉塞から時間が経過しているのが推察されます。


異物の直上にメスで切開を入れます。

ボールと思しき球体が腸管内に閉塞しているのがお分かり頂けると思います。

切開部を軽く圧迫して、ボールを摘出します。


腸の内容物が漏出してきますので、速やかに切開部を縫合します。
腸管の管腔径の狭窄を防ぐために、欠損部を横断するように縫合していきます。

4-0の吸収糸を使用して、単純結紮縫合で行っています。


縫合は完了しました。
縫合部(黄色丸)は、腸管狭窄を防ぐため切開ラインと平行に縫合してため、若干いびつな形状をしてます。

縫合部を洗浄します。

腹筋を吸収糸で縫合します。

皮膚縫合して手術は終了です。

摘出した異物(ボール)です。

おそらく腸管内で停留していた時間が長くて、ボールの色は退色して表面は柔らかく劣化しています。

麻酔から覚醒したユキちゃんです。

以前に載せたフェレットの異物誤飲の記事にも書いたことなんですが、若いフェレットはボールやウレタン地の物体、消しゴムなどの弾力性のある異物が大好きです。
1㎝を超える異物を誤飲した場合は、すぐに病院を受診して下さい。
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2017年7月25日 火曜日
フェレットの皮膚腫瘍(その4 線維肉腫)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、ちょっと久しぶりになりますがフェレットの皮膚腫瘍です。
過去にもフェレットの皮膚腫瘍はその1からその3まで紹介させて頂いてますので、こちら(フェレットの疾病)をクリックして下さい。
さて本日ご紹介しますのは、フェレットの皮膚腫瘍の中でも悪性度の高い線維肉腫というものです。
マーシャルフェレットのラウル君(去勢済、7歳、体重1kg))は右腋下の腫瘤が大きくなり、当院を受診されました。
患部が床面と干渉して皮膚が破れ、出血を伴っています。

既に患部からは膿が出ており、浸出液と共に腐敗臭が漂うほどで状態はよろしくありません。

全身状態のことを考えるとこのまま抗生剤や消炎剤で腫瘤部の炎症が落ち着く目途も立ちません。
結局、外科的に摘出して腫瘤については病理検査に出すことにしました。

いつものように麻酔導入箱にラウル君を入れてイソフルランによる導入麻酔をします。

次に麻酔導入が出来たら維持麻酔に変えます。
患部周辺は出血や浸出液により汚染された被毛を剃毛します。

腫瘤はラウル君の体と比較しても大きなものです。


自重で腫瘤が餅の様につぶされて扁平状になっているのが分かります。

剃毛後、患部を徹底的に洗浄消毒します。


消毒が完了したところで手術に移ります。

出来るだけ腫瘤を腫瘍と想定して、マージンを広く取るようにします。

腋下の部位に腫瘤は及んでいます。
この場所は神経や動脈が集まっていますので慎重にメスを入れて行きます。


下写真の中央部にありますように太い血管が走行しています。

手術時間を短縮するため、止血を確実にするためにバイクランプを使って血管のシーリングを行います。


下写真は腫瘤の裏側にあたりますが、栄養を腫瘤に運ぶ栄養血管が沢山走行しているのが分かります。

ほとんど出血することなく摘出手術は終了しまた。

腫瘤はこの時点ではどんな腫瘍なのかも分かりませんが、筋肉層まで浸潤は認められませんでした。

極力、死腔を作らないようにするため皮下組織を丹念に縫合して行きます。


皮下組織の縫合は終了です。
関節の可動域はどうしても皮膚形成では皺が出来てしまいます。

細かく皮膚縫合を実施します。


これですべて終了となります。

イソフルランの維持麻酔を終了して、酸素吸入のみでラウル君の覚醒を待ちます。

麻酔から半ば覚醒し始めたラウル君です。

ラウル君は翌日、無事退院して頂きました。
術後2週間目に抜糸のため来院されたラウル君です。

下写真は抜糸後の患部です。
綺麗に皮膚は癒合しました。

摘出した腫瘤です。
表面は床材との干渉で細菌感染で膿瘍化してます。

病理検査の結果は高悪性度の線維肉腫とのことでした。
下写真は患部の低倍率像です。
錯綜状・束状に増殖する異型性に富む紡錘形細胞が認められます。

高倍率の画像です。
間葉系悪性腫瘍が検出され、線維芽細胞由来の線維肉腫と診断されました。
核が大小不同であり、腫瘍細胞の分裂像は多く認められ、悪性度の高さを示しています。

今後はラウル君のこの腫瘍が局所再発や遠隔転移していく可能性がありますので、経過観察が必要となります。
術後の経過は順調なので、定期的な健診を継続して頂きたいと思います。
ラウル君、お疲れ様でした!

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マーシャルフェレットのラウル君(去勢済、7歳、体重1kg))は右腋下の腫瘤が大きくなり、当院を受診されました。
患部が床面と干渉して皮膚が破れ、出血を伴っています。

既に患部からは膿が出ており、浸出液と共に腐敗臭が漂うほどで状態はよろしくありません。

全身状態のことを考えるとこのまま抗生剤や消炎剤で腫瘤部の炎症が落ち着く目途も立ちません。
結局、外科的に摘出して腫瘤については病理検査に出すことにしました。

いつものように麻酔導入箱にラウル君を入れてイソフルランによる導入麻酔をします。

次に麻酔導入が出来たら維持麻酔に変えます。
患部周辺は出血や浸出液により汚染された被毛を剃毛します。

腫瘤はラウル君の体と比較しても大きなものです。


自重で腫瘤が餅の様につぶされて扁平状になっているのが分かります。

剃毛後、患部を徹底的に洗浄消毒します。


消毒が完了したところで手術に移ります。

出来るだけ腫瘤を腫瘍と想定して、マージンを広く取るようにします。

腋下の部位に腫瘤は及んでいます。
この場所は神経や動脈が集まっていますので慎重にメスを入れて行きます。


下写真の中央部にありますように太い血管が走行しています。

手術時間を短縮するため、止血を確実にするためにバイクランプを使って血管のシーリングを行います。


下写真は腫瘤の裏側にあたりますが、栄養を腫瘤に運ぶ栄養血管が沢山走行しているのが分かります。

ほとんど出血することなく摘出手術は終了しまた。

腫瘤はこの時点ではどんな腫瘍なのかも分かりませんが、筋肉層まで浸潤は認められませんでした。

極力、死腔を作らないようにするため皮下組織を丹念に縫合して行きます。


皮下組織の縫合は終了です。
関節の可動域はどうしても皮膚形成では皺が出来てしまいます。

細かく皮膚縫合を実施します。


これですべて終了となります。

イソフルランの維持麻酔を終了して、酸素吸入のみでラウル君の覚醒を待ちます。

麻酔から半ば覚醒し始めたラウル君です。

ラウル君は翌日、無事退院して頂きました。
術後2週間目に抜糸のため来院されたラウル君です。

下写真は抜糸後の患部です。
綺麗に皮膚は癒合しました。

摘出した腫瘤です。
表面は床材との干渉で細菌感染で膿瘍化してます。

病理検査の結果は高悪性度の線維肉腫とのことでした。
下写真は患部の低倍率像です。
錯綜状・束状に増殖する異型性に富む紡錘形細胞が認められます。

高倍率の画像です。
間葉系悪性腫瘍が検出され、線維芽細胞由来の線維肉腫と診断されました。
核が大小不同であり、腫瘍細胞の分裂像は多く認められ、悪性度の高さを示しています。

今後はラウル君のこの腫瘍が局所再発や遠隔転移していく可能性がありますので、経過観察が必要となります。
術後の経過は順調なので、定期的な健診を継続して頂きたいと思います。
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2015年12月 7日 月曜日
フェレットの直腸脱(後編 ぺんね君救済計画)
こんにちは 院長の伊藤です。
先回、フェレットの直腸脱(前編 ぺんね君の受難)をブログに載せました。
今回はその続きで、ぺんね君の直腸脱を手術で治す内容となります。
フェレットのぺんね君(去勢済、2歳8か月)は直腸脱になり、脱出した直腸を戻して外肛門括約筋を縫合糸で絞り込んで、再脱出を防ぐ方法で対応しました。
しかしながら、2か月間で5回の再脱出を繰り返すことになりました。
ここまでが先回のブログ内容となります。
詳細はこちらをクリックして、ご覧下さい。
直腸脱4回目にして、肛門周囲を巾着縫合で絞り込み、何とか完治に持っていきたいと思っていたのもつかの間。
腹圧上昇に伴い直腸が、患部を突破して再脱出しました。

脱出している直腸の粘膜面(下写真黄色丸)も大きく腫大しています。


出血も伴い、このまま同じ処置を継続しても、回復の見込みは少ないと思われました。
そのため、外科的にしこりになっている直腸粘膜面を離断し、腸管を縫合して戻す方法を飼い主様に提案させて頂きました。
術式をイラストで表すと以下の通りです。
現時点でぺんね君の直腸は脱出し、粘膜は高度に炎症を起こしています。

脱出している直腸壁に支持糸を何ヶ所かにかけ、直腸を外に牽引します。
腫大している直腸粘膜面を離断します。

下のイラストは離断した直腸の断面です。
断面は二重に織り込まれているため、縫合糸で丁寧に縫い込んでいきます。

縫合が完了した時点で支持糸を離すと直腸は腹腔内に戻ります。
あとは縫合部が綺麗に吻合するのを待ちます。

飼い主様の了解を得て、早速外科的にアプローチをします。
ぺんね君の患部を洗浄消毒します。


脱出した直腸の拡大写真(黄色矢印)です。
ブログ前編時よりも腫大しています。

全身麻酔を施し、手術に移ります。


向かって右側が直腸のしこりです。
直腸壁に支持糸をかけて牽引したところ、直腸壁に裂け目が生じているのを確認しました。
この裂孔を縫合します。


直腸壁の縫合は完了です。

これから本題に入ります。
前述のイラスト通りにしこりの付根をメスで離断します。


離断すると直腸壁からの出血が認められます。

患部を洗浄します。

滅菌綿棒で患部を圧迫・止血してから直腸壁の縫合に移ります。

前述のイラストのように、直腸粘膜は2重に内反しているため、吸収性のモノフィラメント糸で細かく縫合します。

フェレットの直腸壁は犬に比べて薄いため、2重の内反している粘膜を縫い落とすと、後ほど腸管が狭窄します。
最悪、腸管に穴が開いた状態になりますので、糞便が腹腔内に漏出して腹膜炎になるため注意が必要です。



患部の縫合がしっかりできているのか、滅菌綿棒を腸管内に挿入して確認します。

綿棒が、腸管内である程度余裕をもって前後に可動できるか確認します。


下写真が腸管縫合の完成形です。

ここで支持糸を外します。
牽引力が無くなると腸管は腹腔内に戻ります。

これで手術は終了となります。
あとはぺんね君には安静にして頂き、消化に良い食餌を暫く摂ってもらうことになります。
手術翌日のぺんね君です。
表情もだいぶ良くなってます。

お尻の状態です。

私が一番うれしいのは、ちゃんと朝一番で排便がしっかりとできている点です。

入院中のぺんね君です。
フェレットバイトや高カロリー流動食も進んで口にしてます。


今回、離断した腫脹した直腸粘膜部です。

断面を見ますと高度に直腸粘膜が腫れているのが分かります。


断面をスタンプ染色しました。
粘膜上皮細胞に混じって、マクロファージ(黄色矢印)などの炎症細胞が遊走しています。
脱出反転した粘膜面が、床面との干渉で炎症を起こし、血行障害による浮腫を起こしていました。

結局、ぺんねは1週間ほどの入院となりましたが、術後の経過は良好です。
退院直前のぺんね君です。

退院1週間後のぺんね君です。
便通も問題なく、直腸脱になる前と同じ良好な排便が出来るようになっています。

お尻の状態です。
肛門周囲は炎症も治まり、綺麗になりました。

2か月余りの闘病生活でしたが、元気に回復されて良かったです。
ぺんね君、お疲れ様でした!
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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL
2015年12月 3日 木曜日
フェレットの直腸脱(前篇 ぺんね君の受難)
こんにちは 院長の伊藤です。
お腹に力を込めて踏ん張ったりするとお尻から直腸が飛び出してしまうことを直腸脱と言います。
直腸脱の状態はイメージするだけでも痛そうです。
臨床の現場では、特にエキゾチックアニマルにおいては哺乳類のみならず、鳥類・爬虫類・両生類に至るまで幅広く発症例が認められます。
直腸脱は一般に初期のステージであれば、脱出した直腸を肛門から腹腔内に押し戻して、肛門の端に縫合糸をかけて再脱出を起こさぬよう処置します。
これまでも、何例もエキゾチックアニマルの直腸脱は報告させて頂きましたので、宜しければそちらの方も各種動物別の疾病紹介で参照して下さい。
イラストでこの直腸脱の整復を説明しましょう。
下イラストが健康なフェレットの肛門及び直腸の側面像です。

次に肛門に腹圧(下黒矢印)が加わり、直腸が脱出したイラストです。
靴下を裏返しにして引き出したイメージと言えば良いでしょうか。
外側に脱出しているのは直腸の内側の粘膜にあたります。
つまり、刺激に対してデリケートで非常に弱い組織が外面に露出しているわけです。

次に脱出した直腸に色んな外力(飼育環境下の床面との干渉、自咬など)によって、粘膜面は発赤・腫脹し出血を繰り返し、脱出が長期にわたると下イラストのように腫瘍のように腫れ上がります。

ダメージを受けた直腸粘膜面を保護・修復するために脱出した直腸を元に戻し(下イラスト赤矢印)、整復処置を実施します。

脱出した直腸を戻して、あとは障害を受けた直腸粘膜の修復を待ちます。

以上が整復処置の概略です。
さて、フェレットのぺんね君(去勢、2歳8か月)は、直腸脱になったとのことで来院されました。

下写真の黄色丸は脱出した直腸です。

前述したイラストの様に脱出した直腸粘膜は暗赤色に腫大しています。

早速、全身麻酔を施して直腸を戻すこととしました。

下写真の黄色矢印は、直腸の腫大部側面から便が漏出しているのが見つかりました。

ゾンデで確認したところ、裂けているのが分かります。
直腸は柔らかく脆いため、脱出してから床で擦れたのかもしれません。

裂孔部を修復するため、縫合します。

数針の縫合でクリア出来ました。

次に直腸を傷つけないように戻していきます。


まだそれほど大きな腫脹ではないので,容易に指先で戻すことが出来ました。

戻すことが成功しても、そのままでは直腸は再脱出してしまいます。
直腸脱防止のため、肛門の端に縫合糸で糸をかけて肛門の幅を絞り込む方法を採ります。
哺乳類に限らず、爬虫類や鳥類でも私はこの方法で対応することが多いです。

下写真はナイロン縫合糸で肛門の一端を縫い絞り込むところです。

一つの目安として、綿棒を肛門に挿入して排便が可能かを確認します。

この状態で一週間経過観察し、問題なければ抜糸して治療は終了です。

ぺんね君、お疲れ様という所だったのですが..........。


その後、ぺんね君は程度の差こそあれ、4回直腸脱を繰り返すこととなります。
肛門の両端を縫合する方法では、どうしても腹圧が強いと外肛門括約筋を縫合糸が分断して外れてしまいます。
ぺんね君の活動的な性格もあるのでしょうが、この一般的な整復法では限界です。
下写真は、1か月後のぺんね君です。
直腸脱の疼痛のため、排便も出来ず食欲廃絶、ショック状態になっています。

度重なる脱出で直腸粘膜は強い暗赤色を示しています。

肛門端の先回縫合した糸も直腸が脱出した勢いで、外肛門括約筋を寸断して皮膚にぶら下がっています。

再度、直腸を戻します。
既に直腸粘膜面は腫大したしこりの様になっています。

無事戻せましたが、ここからが本番です。

肛門の外周を巾着縫合という縫合法で締め上げることにしました。

このように巾着袋の口を締めるような形で、直腸の再脱出を抑え込みます。
この方法は、先の肛門端を縫合する方法よりも強い力で直腸を抑えることが可能です。

排便が出来るほどに肛門の開口幅を調整して締結します。

ショック状態になっているぺんね君の処置をして、これで本当に終了です、と言いたかったのですが.........。

なんとこの3週間後に再脱出が起きてしまいました。
あの脱出した直腸のしこりの部分が、綺麗に修復するまで巾着縫合の糸もまだ抜糸せずに経過観察でいたのですが残念です。
ぺんね君は最初に直腸脱になってから、なんと7週間も排便時の不快感や疼痛との戦いを展開してきたことになります。
ここで、私が飼主様に提案させて頂いたのは脱出している直腸を切断して、体外で直腸を吻合して体内に戻す方法です。
ぺんね君を救うにはこの方法しかありません。
次回、フェレットの直腸脱(後編 ぺんね君救済計画)をご期待ください!
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お腹に力を込めて踏ん張ったりするとお尻から直腸が飛び出してしまうことを直腸脱と言います。
直腸脱の状態はイメージするだけでも痛そうです。
臨床の現場では、特にエキゾチックアニマルにおいては哺乳類のみならず、鳥類・爬虫類・両生類に至るまで幅広く発症例が認められます。
直腸脱は一般に初期のステージであれば、脱出した直腸を肛門から腹腔内に押し戻して、肛門の端に縫合糸をかけて再脱出を起こさぬよう処置します。
これまでも、何例もエキゾチックアニマルの直腸脱は報告させて頂きましたので、宜しければそちらの方も各種動物別の疾病紹介で参照して下さい。
イラストでこの直腸脱の整復を説明しましょう。
下イラストが健康なフェレットの肛門及び直腸の側面像です。

次に肛門に腹圧(下黒矢印)が加わり、直腸が脱出したイラストです。
靴下を裏返しにして引き出したイメージと言えば良いでしょうか。
外側に脱出しているのは直腸の内側の粘膜にあたります。
つまり、刺激に対してデリケートで非常に弱い組織が外面に露出しているわけです。

次に脱出した直腸に色んな外力(飼育環境下の床面との干渉、自咬など)によって、粘膜面は発赤・腫脹し出血を繰り返し、脱出が長期にわたると下イラストのように腫瘍のように腫れ上がります。

ダメージを受けた直腸粘膜面を保護・修復するために脱出した直腸を元に戻し(下イラスト赤矢印)、整復処置を実施します。

脱出した直腸を戻して、あとは障害を受けた直腸粘膜の修復を待ちます。

以上が整復処置の概略です。
さて、フェレットのぺんね君(去勢、2歳8か月)は、直腸脱になったとのことで来院されました。

下写真の黄色丸は脱出した直腸です。

前述したイラストの様に脱出した直腸粘膜は暗赤色に腫大しています。

早速、全身麻酔を施して直腸を戻すこととしました。

下写真の黄色矢印は、直腸の腫大部側面から便が漏出しているのが見つかりました。

ゾンデで確認したところ、裂けているのが分かります。
直腸は柔らかく脆いため、脱出してから床で擦れたのかもしれません。

裂孔部を修復するため、縫合します。

数針の縫合でクリア出来ました。

次に直腸を傷つけないように戻していきます。


まだそれほど大きな腫脹ではないので,容易に指先で戻すことが出来ました。

戻すことが成功しても、そのままでは直腸は再脱出してしまいます。
直腸脱防止のため、肛門の端に縫合糸で糸をかけて肛門の幅を絞り込む方法を採ります。
哺乳類に限らず、爬虫類や鳥類でも私はこの方法で対応することが多いです。

下写真はナイロン縫合糸で肛門の一端を縫い絞り込むところです。

一つの目安として、綿棒を肛門に挿入して排便が可能かを確認します。

この状態で一週間経過観察し、問題なければ抜糸して治療は終了です。

ぺんね君、お疲れ様という所だったのですが..........。


その後、ぺんね君は程度の差こそあれ、4回直腸脱を繰り返すこととなります。
肛門の両端を縫合する方法では、どうしても腹圧が強いと外肛門括約筋を縫合糸が分断して外れてしまいます。
ぺんね君の活動的な性格もあるのでしょうが、この一般的な整復法では限界です。
下写真は、1か月後のぺんね君です。
直腸脱の疼痛のため、排便も出来ず食欲廃絶、ショック状態になっています。

度重なる脱出で直腸粘膜は強い暗赤色を示しています。

肛門端の先回縫合した糸も直腸が脱出した勢いで、外肛門括約筋を寸断して皮膚にぶら下がっています。

再度、直腸を戻します。
既に直腸粘膜面は腫大したしこりの様になっています。

無事戻せましたが、ここからが本番です。

肛門の外周を巾着縫合という縫合法で締め上げることにしました。

このように巾着袋の口を締めるような形で、直腸の再脱出を抑え込みます。
この方法は、先の肛門端を縫合する方法よりも強い力で直腸を抑えることが可能です。

排便が出来るほどに肛門の開口幅を調整して締結します。

ショック状態になっているぺんね君の処置をして、これで本当に終了です、と言いたかったのですが.........。

なんとこの3週間後に再脱出が起きてしまいました。
あの脱出した直腸のしこりの部分が、綺麗に修復するまで巾着縫合の糸もまだ抜糸せずに経過観察でいたのですが残念です。
ぺんね君は最初に直腸脱になってから、なんと7週間も排便時の不快感や疼痛との戦いを展開してきたことになります。
ここで、私が飼主様に提案させて頂いたのは脱出している直腸を切断して、体外で直腸を吻合して体内に戻す方法です。
ぺんね君を救うにはこの方法しかありません。
次回、フェレットの直腸脱(後編 ぺんね君救済計画)をご期待ください!
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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL