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リクガメの疾病

インドホシガメの痛風結節


こんにちは 院長の伊藤です。

ヒトは中高年になりますと、日常的な食生活(アルコール、甘いものの多量摂取等)も相まって痛風という疾患になる場合があります。

ヒトでは、高尿酸血症により関節に尿酸の結晶が溜まって疼痛を生じます。

カメの場合も、ヒトと同様に痛風という疾患は存在し、疼痛による食欲不振、歩行困難などの症状が認められます。

今回、ご紹介しますのは,そんなリクガメの痛風です。



インドホシガメのマル君(年齢不明、雄)は右後肢の膝関節にしこりがあるとのことで来院されました。



膝の部分が大きく腫れている(黄色丸)のがお分かり頂けると思います。



患部を拡大します。

触診では非常に硬い組織です。



よくよく診てみますと右膝だけでなく、左の手根関節、頚腹部に腫瘤が認められます。

下写真は頚腹部の腫瘤です。



次いで左手根関節の腫瘤です。



まず、腫瘤の原因を確認するため、患部の細胞診を実施しました。

注射針で患部を穿刺して細胞を吸引します。







それぞれの患部から針生検した細胞は下の顕微鏡所見が共通していました。

低倍率画像です。



高倍率画像です。

緑の矢印は爬虫類に特有の有核赤血球です。

黄色丸はリンパ球です。

赤丸は哺乳類で血小板にあたる栓球です。



腫瘤本体の組織は硬く、その組織を取り巻く肉芽組織の細胞だけは吸引することが出来ました。

その肉芽組織の内容が上の顕微鏡写真画像を構成する、いわゆる炎症系細胞群です。

腫瘤の実態が細胞診では確認できない状況ですが、おそらくリクガメに見られる痛風結節と思われます。

痛風結節を構成する尿酸ナトリウムの結晶は硬く、注射針では上手く結晶体の吸引は出来ないようです。

痛風結節自体が組織にとっては異物になります。

生体内の異物は免疫系の細胞群により攻撃を受け、最終的に肉芽組織を経て吸収され、本来の組織に回復します。

しかしながら、ほぼ石に近い性状の痛風結節は吸収されることはなく、大きさによりますが外科的に摘出した方が良い場合が多いです。



リクガメの痛風が起こる原因は、高蛋白の餌を多給することにあります。

高蛋白の餌とは、モロヘイヤ、ナバナ、アシタバ、カラシナなどが挙げられます。

高蛋白状態が続くと血中の尿酸が増加し、高尿酸血症を招きます。

結果として、尿酸ナトリウム結晶が形成されて関節・軟骨や皮下組織・腱などにコブ状の肉芽腫を作ります。

この肉芽腫を称して痛風結節と言います。




今回、飼い主様から外科的摘出は希望されませんでしたので鎮痛剤を処方し、高蛋白の食餌を改善するようアドバイスさせて頂きました。

爬虫類は、食餌管理・飼育環境を見直すことで多くの疾病を予防することが出来ます。





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投稿者 院長 | 記事URL

ギリシャリクガメのヘミペニス損傷

以前、爬虫類のペニスについてコメントさせて頂いたことがあります。

ゼニガメカメレオンヘビのペニスについてです。(その詳細は左の下線部をクリックしてみて下さい!)

爬虫類のペニスは生殖機能のために存在します。

そしてこのペニスをヘミペニスと呼びます。

爬虫類は排尿は総排泄口から行い、ヘミペニスでは排尿しません。



今回は、飼主様が誤ってこのヘミペニスを引きちぎって、大きな穴がお尻に生じ、その欠損部を修復する過程をご紹介します。


ギリシャリクガメの太郎君(雄、8歳)は、肛門とは別に尻尾の付け根に皮膚欠損が生じたとのことで来院されました。



下写真黄色矢印が総排泄腔で、黄色丸が欠損部です。



この皮膚欠損部はよくよく診ますと、総排泄腔へと降りてくる直腸に横穴が開いてしまっている感じです。

下写真黄色丸が示す欠損部内外に、糞便と共に排泄される尿酸の白い粉が付着しています。



そして、飼主様が「何かわからないけれど体から出ていたものを引っこ抜いて持ってきた」という組織片が下写真です。



以前コメントしたゼニガメのヘミペニスとは見た目が異なりますが、これはギリシャリクガメのヘミペニスです。

おそらくヘミペニスが脱出して戻らなくなっており、たまたま飼主様がそれを発見されて、ヘミペニスと知らずに引っこ抜かれてしまったようです。

まずは、欠損部を綺麗に消毒洗浄します。



洗浄しますとこのように欠損部は赤くなっています。



患部周辺に局所麻酔を実施します。

間違って直腸を傷つけないために総排泄腔からカテーテルを挿入して、直腸を保護します。



陳旧化した皮膚はトリミングして新鮮創をつくり縫合します。

今回、尻尾の付け根に欠損部が入り込んでいますので、縫合は非常に難易度が高かったです。









下写真黄色丸が縫合後の患部です。





このまま縫合部が開かないのを信じて、経過を診ていきたいと思います。

爬虫類のヘミペニスにまつわる障害は意外と多いです。

まずは飼主様がヘミペニスの存在を知らないというケースが多いため、実際に遭遇してビックリされる方もみえます。

やはり飼育していく上では、自分のペットの体の構造はある程度は理解して頂きたく思います。



太郎君、早く良くなって下さいね!!




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投稿者 院長 | 記事URL

ギリシャリクガメの嘴・爪切り

リクガメを飼育していく中で、案外飼主様が苦労されるのが嘴・爪切りです。

自然の生態系で生活している場合であれば、硬い大地を歩き回ったり、穴を掘ったりとリクガメは活動的ですが、飼育下ではそうもいきません。

爪が伸びれば歩きにくくなるでしょうし、嘴が伸びれば食餌もしっかり取ることが出来なくなります。

今回、ご紹介するのはギリシャリクガメのポイ君です。

年齢不詳(おそらく5歳以上?)のポイ君ですが、歩行が辛そうで採食も苦労しているとのことで来院されました。



嘴がいびつに長く伸びているのがお分かり頂けると思います。



爪も結構、長いです。

一般には、このような場合、犬猫用の爪切りや齧歯類の切歯切断用のニッパーを使用しますが、ポイ君の嘴と爪は非常に硬く、これらの治療用器具が破損してしまうくらいのタフさでした。

こんな時に活躍してくれるのが、いわゆる大工道具です。

ラジオペンチと金ヤスリで対処いたしました。





基本的にカメからすれば、嘴を切られることは恐怖以外の何物でもありませんので、頸を引っ込めて逃げようとします。





それでも何とか嘴をカットして、金ヤスリで研磨しました。



如何でしょうか?

カット前に比べて嘴のフォルムがかなりシャープになりました。



爪切りもこれだけ伸びてきますと、多少の出血を覚悟しないと理想的な長さに調整できません。

状況に応じて犬猫同様、止血用のパウダーを使用します。

リクガメを飼育する上ではこのようなメンテナンスが必要となります。

長らく放置されますと、後のケアが大変となりますのでご注意ください。



リクガメの嘴が硬そう! と感じられた方は
 

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投稿者 院長 | 記事URL

アルダブラゾウガメとジアルジア感染症

アルダブラゾウガメのクロちゃんが下痢が続くとのことで来院されました。

このアルダブラゾウガメ、舌を噛みそうな名前ですが、セーシェル諸島(アルダブラ岩礁)に分布するゾウガメです。

世界最大とされるガラパゴスリクガメに次いで、巨大となるリクガメです。

海岸沿いにある草原や内陸部の低木林、マングローブからなる湿原に生息しています。








アルダブラゾウガメは食用や剥製、ペット目的の乱獲で20世紀初頭にアルダブラ諸島を除いて絶滅したゾウガメです。

その後,セーシェルではこのゾウガメは保護の対象とされて、生息地のアルダブラ岩礁は世界遺産に登録され、許可なく上陸できなくなっています。

クロちゃんは、このような希少価値のあるゾウガメです。

下痢ということで早速、検便をしました。



顕微鏡下(高倍率)ではジアルジアという原虫が多数回遊しています。



黄色の丸で示した所がジアルジア原虫です。

あまりに動きが素早く、写真がクリアに撮れませんでした。

これら原虫は泌尿器に寄生して腎障害や肝障害をもたらします。

飲水量が増加してアンモニア臭のきつい尿をします。

幼体であれば嗜眠、成長障害がみられます。

ジアルジアはメトロニダゾールが良く効きますが、2週間かけてもまだ完全に落とし切れてません。

同じ飼い主様がギリシアリクガメを飼育していまして、このギリシアリクガメも同程度のジアルジアが検出されたのですが、1週間の投薬で完治しました。

同じリクガメでも薬剤の感受性は異なるようです。

現在、倍量で治療中です。






アルダブラゾウガメって言うと噛んじゃうsign03

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