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鳥の疾病

文鳥の上腕骨・脛骨骨折

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、文鳥の骨折症例です。

愛玩鳥は室内で放鳥時に突発的な事故(衝突や圧迫)で骨折に至るケースが多いです。

骨折整復がもちろん必要ですが、内臓を圧迫して肺出血や内臓破裂を起こしている場合も少なくありません。

状況に応じた迅速な判断が哺乳類以上に必要とされます。



文鳥(名前はなし、雄・10歳)を踏みつけてしまったとのことで、起立不能となった文鳥君の診察をすることになりました。



両翼からは出血があり、肢は力が入らない状態です。

右肢は明らかに骨折があり、翼の上腕骨も開放骨折が認められました。

呼吸はしっかりしており、骨格以外の問題は診たところ大丈夫のようです。

一先ずレントゲン撮影をしました。

下写真の黄色丸は、骨折の箇所を示してます。

両翼の上腕骨と右の脛骨が骨折しています。





下写真黄色丸は左翼の上腕骨の骨折端です。



全身状態は麻酔に耐えられると判断して、骨折整復手術を行うこととしました。

イソフルランで麻酔導入をしています。



維持麻酔に変えます。



下写真黄色矢印は左翼の骨折端が開放骨折をしている部位を示します。



ピンニングによる整復を施すために上腕骨骨折近位端から25Gの注射針を挿入します。

この注射針を肩関節側(下写真青矢印方向)に貫通(下写真青丸)させます。



次いで上写真青丸の貫通した穴から、上腕骨遠位端(下写真黄色矢印)方向へ新しい注射針を挿入します。

この時、最初に挿入した注射針は下写真青矢印方向に順次抜去していきます。



今回使用した25G(直径0.5mm)サイズで両端が尖った極細のキルシュナ―ワイヤーがあれば良いのですが、実情は注射針で代用しています。

注射針ですから中空構造のため、ニッパーでカットしても断端が変形してしまい、逆方向の骨髄内へ挿入が引っかかって苦労します。

それを回避するため、このような面倒な操作を今回は致しました。



次いで、上腕骨の骨折端同志を鉗子にて固定し、注射針でピンニングして固定します。



肩関節側の刺入した注射針をニッパーでカットします。





さらに右脛骨骨幹部の骨折整復を行います。

下写真は脛骨骨折部の皮下出血が進行している状態を示しています。





骨折部の皮膚をメスで切開します。



踵から注射針を刺入し、骨折部まで挿入していきます。



脛骨骨折遠位端まで注射針が貫通したところ(黄色丸)です。



骨折部遠位端(青丸)の注射針を今度は骨折部近位端(黄色丸)まで挿入します。

そのために骨折端同志を整復して固定します。



小型愛玩鳥の場合は、骨が細く脆弱のため、指先で整復し固定した後に注射針を貫通させます。





踵の部分の注射針をニッパーでカットし、断端を鉗子でLの字に曲げます(黄色丸)。



整復処置中、ピンの挿入が正しく行われているかをレントゲンで確認しました。

下写真は踵から注射針を刺入しているところです。



右上腕骨へ注射針を刺入しているところです。



刺入部をカットし、整復終了時の写真です。



開放創になっていた翼の筋膜と皮膚を縫合します。





次いで、右脛骨の筋膜と皮膚を縫合します。





三か所の骨折整復は、文鳥君にとって大変な試練であったと思われます。



ピンニングした骨折部は旋回運動に弱いため、テープにより外固定を施します。





翼は羽ばたいたりすると骨折部整復部が破たんしますので、テープで胴体ごと固定します。



なるべく胸郭の呼吸運動を抑制しないようにゆるいテーピングでとどめます。



まだ文鳥君は、自力で起立することが出来ませんので介護が必要です。





流動食を強制給餌しているところです。





皮つき餌を少しづつついばみ始めました。



今回は不慮の事故で大変な思いをした文鳥君、骨折が治癒するのもひと月ほど先となります。

まだ先は長いので、しっかり治療に専念したいです。




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投稿者 院長 | 記事URL

キバタンの脛骨骨折

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのはオウムの仲間のキバタンという愛玩鳥です。

キバタンの中でも目の周りのアイリング(眼の周囲の毛のない部位)が青いキバタンをアオメキバタンと呼びます。

キバタンはオーストラリアやニューギニア原産で体重400g~880g、体長44~50cmとされます。

平均寿命は50~70年と非常に長寿の鳥です。


アオメキバタンのシュガーちゃん(性別不明、2歳、体重550g)は左肢を拳上しているとのことで来院されました。



早速、レントゲン撮影を実施しました。



脛骨の中央部が斜骨折しているのが判明しました。



体重のある鳥なのでシンプルなギブス固定では骨癒合まで持っていくのは困難と思われます。

骨髄ピンによる固定法を選択することとしました。

斜骨折している骨折端が皮膚を貫通して骨髄炎までなると大変です。

急遽、手術となりました。

イソフルランでマスクによる導入麻酔をします。



シュガーちゃんはおとなしく、思いのほかスムーズに麻酔導入は遂行できました。



このまま維持麻酔をします。



左肢が外転してブラブラになっています。





皮膚をメスで切開して、骨折部にアプローチします。



筋肉層を鉗子で分離します。



下写真の黄色矢印は骨折端を示します。



斜骨折していますので、骨折端は下写真のように鋭い形状です。



遠位骨折端より踝に向けてピンを骨髄に挿入します。

キバタンの骨髄腔は広く、直径1㎜の骨髄ピンを使用しました。



ピンが踝を貫通しているのがお分かり頂けると思います。





ピンを完全に踝から突出させて、逆方向にドリルのピン装着します。

今度はピン(両端が鋭利なタイプ)の反対側を骨折端の近位部に向けて挿入します。



ピンが骨折部に顔を覗かせています。



ココで骨折部を固定して鉗子で整復します。





ピンを骨折部から脛骨近位端へ向けて挿入します。



ピンの先端が皮膚を穿孔して突出しています。



ここで確認のためレントゲン撮影をします。

骨髄にピンはしっかり入っています。



ここで骨折部の整復がしっかり出来ているかを確認します。



問題がないのを確認後、踝に突出しているピンをペンチで離断します。



次いで、脛骨近位端(膝関節部)に突出しているピンの先端をペンチで同じく離断します。





骨折部を露出するために分離した筋膜を縫合します。





筋膜縫合完了です。



次いで皮膚を縫合します。



これで手術は終了となります。



最終のレントゲンチェックです。





骨折した左肢は牽引すると正常な右肢と平行にまっすぐに伸展します。



骨折により骨髄や周囲組織が破たんして出血があり、患肢が内出血で黒ずんでいるのが分かります。



術後の管理で最も重要なのは、キバタンは咬む力が強いため患部を自傷しないようガードする必要があります。



まずは患部をテーピングします。



テーピングはこれで完了です。





シュガーちゃんがまだ麻酔から覚醒しない間にエリザベスカラーを装着します。



麻酔から覚醒したところです。



麻酔から完全に覚醒して初めて手術は無事終わったと実感します。



翌日のシュガーちゃんです。

装着したエリザベスカラーは見事に破壊されました。

元気なのは良いことです。





念のため二重にカラーを装着しました。



この状態でも食餌はしっかり食べることが出来ます。



シュガーちゃんは手術後2日目に退院されました。

下写真は術後1週間のシュガーちゃんです。



患肢への荷重も、ある程度抵抗なくできるようになりました。



飼い主様に甘えているシュガーちゃんです。





今後は、骨髄ピンを抜去するタイミングを経過観察していきます。



中型から大型の鳥の骨折はセキセイインコやオカメインコとは異なり、小型犬に近い感覚が必要になります。

特に長寿な鳥種ほど、手術は気を使います。

シュガーちゃん、お疲れ様でした!




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投稿者 院長 | 記事URL

セキセイインコの気嚢破裂

こんにちは 院長の伊藤です。


本日ご紹介しますのはセキセイインコの気嚢破裂と言う疾病です。


鳥の解剖学的構造は、哺乳類と比較して飛行するために特殊な構造をしています。

そもそも鳥には哺乳類のように横隔膜は存在せず、呼吸様式も横隔膜呼吸でなく、胸を膨らませるフイゴ式呼吸です。

そのため、鳥は胸を急に押さえることで低換気に至り死亡する場合もあります。



鳥に特徴的な構造として気嚢の存在が挙げられます。

気嚢とは肺から延長した空気の入る袋です。

鳥の飛行は肺による酸素供給だけでは賄えないほどのハードな運動です。

そこで空気を蓄えておく気嚢という袋が必要となりました。

気嚢の存在で常時、肺に空気が供給されるため、鳥は長時間飛行が可能になりました。

また長時間の飛行で体温が上昇した場合、気嚢から体熱を放散する効果も期待できます。

気嚢は鳥の種類により異なる場合もありますが、一般的に頚気嚢(無対)、鎖骨間気嚢(無対)、前胸気嚢(左右に一対)、後胸気嚢(一対)、腹気嚢(一対)が存在します(下模式図参照)。



セキセイインコのきいちゃん(1歳3か月、雌)は頸背部に大きな瘤があるとのことで来院されました。



下写真の赤矢印が腫大した頸背部です。





羽を分けて皮膚を露出すると下写真の赤丸のように皮下の膨らみが認められます。



触診するとこの膨らみは、流動性を持った内容物(水や膿)は入っておらず、腫瘍のように充実性の内容も認められません。

どちらかというと内容は空気でいわゆる皮下気腫です。



確認のため、レントゲン撮影を実施しました。



結果は以下の写真の通りです。

黄色矢印が示しているのが皮下に空気が溜まっている部位です。






皮下気腫が出来るというのは、気嚢が何らかの原因で障害を受けて空気が漏れ、皮下に貯留していることを表します。

この症状を気嚢破裂といいます。

前述のように気嚢は鳥の体内に分布しています。

障害を受けた気嚢の部位により気腫は、今回のように頸背部以外に喉や大腿部など予想外の部位に発生することもあります。



気嚢は気管支粘膜が膨らんでできた風船のようなものですから、極めて薄い脆弱な組織です。

気嚢が破れたとしても縫合するということは出来ません。

出来るだけ安静を保って、障害を受けた部位が自然治癒して塞がるのを待つ形になります。

自然治癒するまでの間は、気嚢から漏れ出た空気が皮下に貯留していきますから、注射針で皮下に穴をあけて空気を吸引する必要があります。

漏出した空気を吸引しないでおくと、気嚢の膨らむ余地が無くなりますから呼吸不全に陥ります。

結局、皮下に空気が溜まればその都度、空気を抜いて気嚢の障害の回復を待つという治療のスタイルを取ります。


下写真はきいちゃんの膨隆している皮下気腫を穿刺し、空気を吸引しているところです。





空気を抜いた直後の皮膚です。

若干の皮下出血が認められます。



きいちゃんの皮下気腫の空気抜去後は頸背部の腫れもなくなりスッキリしています。





気嚢の障害は様々です。

例えば、放鳥時にどこかにぶつかって、気嚢を損傷したりすることもあるでしょう。

気嚢炎になると呼吸不全から死亡する場合も出て来ますので、早めに内服で治療する必要があります。



きいちゃんは、暫く抗生剤や抗炎症剤の内服で気嚢炎治療も合わせて実施させて頂きます。



きいちゃん、お疲れ様でした!





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投稿者 院長 | 記事URL

セキセイインコの義足

こんにちは 院長の伊藤です。

鳥は、基本2本足で体重を荷重して木の枝に停まります。

1本足でだけでは全体重を荷重することは厳しいです。

従って、何らかの理由で片足が機能障害に陥った場合、生存の可能性は極めて低くなります。

今回、片足を受傷して機能障害になったセキセイインコの症例報告です。


セキセイインコのピヨ君(8歳、雄)は鳥かごに入った状態で、外に置かれていた時にカラスに襲われ、片足から激しい出血があるとのことで来院されました。



下写真の黄色矢印は出血が甚だしい患部を圧迫止血しているところです。

赤丸は出血で汚染された部位です。



速やかにガス麻酔を実施します。



出血量が多く全身状態も衰弱しているため、ピヨ君の麻酔の効きは早いです。



下写真黄色丸は圧迫止血を解除した受傷患部です。

ご覧のとおり、足の指が殆ど千切れかけているのがお分かり頂けると思います。

改めてカラスの攻撃力を再認識させられます。



患部を拡大した写真です。



背側面から見た患部です。

黄色矢印はほぼ離断しかけている足根関節です。

赤矢印は出血及び循環不全でうっ血状態により腫れあがっている下腿部です。



関節は既に砕けており、動脈も離断し神経も分断されています。

この足根関節以下の部位を復元することは、現実的に困難です。



この段階で飼主様のご了解を頂き、断脚をすることとしました。

一般に鳥の断脚は、場合のよっては安楽死を選択しなければならない状況になります。



この部位であれば人工的ないわゆる義足を作成して、ピヨ君の体重を支えられるかもしれないと算段しました。



義足が失敗に終われば、ピヨ君は生存していくのは厳しい局面に立たされます。

下写真は完全に断脚したところです。



離断した患部をトリミングします。



バイポーラ(電気メス)で止血します。



この下腿部に義足を上手く装着します。



患部に抗生剤軟膏を塗布します。





加えて患部を保護するために紙ガーゼで巻きます。



まず考えたのは義足の素材として軽量で加工しやすいものとしてストローを選択しました。

足の直径に合うサイズのストローを用意して、患部をストローに挿入して行きます。



健常な右脚に合わせてストローをカットします。



丁度、足首の部分にあたるところで折りこみを入れます。





麻酔から覚醒始めたピヨ君です。







心配なのはこの義足で起立できるかということです。



ピヨ君はまだ自身の脚が断脚されたとういうことを自覚できずにいます。

義足に対する違和感も感じていると思われます。

しっかり立つことが出来なくて倒れ込んでしまいます。



その後、何種類もの義足を試作しました。

最終型が下写真の義足です。

手術の翌日のピヨ君です。

起立出来ています。





歩行もぎこちなさはあるものの、しっかり起立は出来てますし、採食できます。

今後、止まり木にとまることは出来ないと思います。

平床での生活に甘んじなければならないのは可哀そうですが、致し方ありません。

2日の入院の後、ピヨ君は退院しました。



あとはこの義足の耐久性です。







術後10日目のピヨ君です。



飼い主様によれば、走ることも出来るようになったそうです。

ピヨ君自身はこの義足を突っついたりして、表面のガムテープを剥がしたりはしますが、義足を破壊するほどには至ってません。

幸い義足が足首から外れることもないようです。

歩く様は、ペンギンのような感がありますが、何とか実用性は大丈夫みたいです。



オリジナルの義足ですが、今後もこのような断脚の症例には適応できると思われます。



ピヨ君、お疲れ様でした!



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投稿者 院長 | 記事URL

錦華鳥(キンカチョウ)のバンブルフット(趾瘤症)

こんにちは 院長の伊藤です。

いよいよ大晦日となりましたね。

今年も振り返ると色々ありました。

当院の看板犬ベティ(下写真)を亡くしたことが、自分にとっては大きな節目となりました。



当院も開業して15年経過しました。

開業当時からのお付き合いをさせて頂いている患者様にあっては、加齢によることもありますが1件づつ何らかの疾病でお亡くなりになり、寂しい限りです。

また、新しい患者様との出会いもあり、新旧の患者様から日々学ばせて頂く毎日です。



さて、本日ご紹介させて頂きますのは錦華鳥(キンカチョウ)の足底部の疾患であるバンブルフット(趾瘤症)についてです。

キンカチョウの文吉君(1歳2ヶ月・雄)は左足の足底部に瘤が出来て止まり木にとまれないとのことで来院されました。



下写真赤丸で囲んである部位が足裏が瘤状に腫れ上がっている病変部です。

この瘤状を指してバンブルフット(趾瘤症)と言います。

原因となるのは、足裏もしくは指の傷から黄色ブドウ菌等が感染し、炎症を起こすことによります。





文吉君の場合は、瘤の大きさ(下写真黄色矢印)もあり左足にはとまり木を把持する力はなく、落鳥(とまり木から降りること)して床面上での生活を余儀なくされています。





治療法としては、まずは止まり木の太さを見直してください。

止まり木を把持した指が、止まり木横断面の全周の三分の二に留まるような太さの止まり木を用意して下さい。



内科的療法として、抗生剤・ビタミン剤の投薬が効果的です。

特にビタミンAが効果的との報告もあります。

加えて、患部の痂皮(かさぶた)をぬるま湯につけて綿棒などでふやかし、優しく剥がすことも効果があります。



文吉君はこのような治療を約1ケ月続けて頂き、再診で診察を受けられました。

下写真が1か月後の文吉君です。



下写真黄色丸は文吉君の左足裏です。

1か月前の瘤は既に消失しています。



まだ指には一部痂皮が残っています。



バンブルフットは治療せずに放置すると指が壊死を起こすことがあります。

あるいは細菌が全身に回って、敗血症に至る場合もあります。



しばらく抗生剤・ビタミン剤の投薬は必要ですが文吉君、ゴールが見えてきて良かったです。




2017年も最善を尽くして参ります。

皆様宜しくお願い致します。




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投稿者 院長 | 記事URL

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