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ヘビの疾病

2020年9月 7日 月曜日

ボールパイソンの感染性口内炎

こんにちは 院長の伊藤です。

残暑厳しい毎日ですが、皆様お変わりありませんか?

雑務に追われてブログの更新が滞り、申し訳ありません。

本日、ご紹介しますのはヘビの口内炎です。

ヘビは、生餌を捕食した時に口腔内を傷つけたり、硬い食餌を捕食した際に歯が歯茎に食い込んだりして細菌性の口内炎を引き起こします。

この症状を称して、感染性口内炎(マウスロット)と呼んだりします。

以前にも、マウスロットの記事を載せてますので、興味のある方は こちら をクリックして下さい。



ボールパイソンの和代ちゃん(雌、体重1.85kg 4歳4か月齢)は頭部が腫れてきたとの事で来院されました。

左側の上顎部が腫大しているようです。





下写真の黄色丸・黄色矢印はその腫大している患部を示します。





左側口唇部をめくると赤く腫れた患部(黄色丸)が認められます。

和代ちゃんは食欲も落ちているとのことです。





この腫大している部位がどうなっているかを確認するために細胞診を実施しました。

細菌感染によるものか、腫瘍が発生しているものなのか、明らかに出来ればと思います。



下写真にように針を患部に穿刺して吸引した細胞を染色して確認します。

針穿刺した部位を圧迫しても出血・排膿は認められませんでした。



結果として、下写真の黄色矢印が示すように高度の細菌感染(青く点状に染色されているのが細菌)が認められました。

腫瘍を示唆する異型性細胞は認められませんでした。





患部をレントゲン撮影してみました。





下写真の黄色丸が腫大した患部を示します。

上顎骨の融解像が確認できます。

細菌感染による口内炎で歯根部から歯槽骨に至る箇所が壊死融解したものと思われます。





以前に掲載したグリーンパイソンのマウスロットと比較して、歯肉・歯根からのチーズ様の膿の存在は認められませんでしたが、これから進行する病態と考えられます。

細菌が産生する毒素により、歯槽骨が融解する現象は哺乳類同様、爬虫類でも起こります。

ただ歯槽骨として機能できなくなりますので、餌を咀嚼することは厳しいと思われます。

蛇の場合は、餌を丸呑みこみしますので、和代ちゃんも何とか採食行動は可能でしょう。

今後、患部の外用薬の塗布と抗生剤の内服で経過を診て行きます。

和代ちゃん、頑張って治していきましょう。




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投稿者 院長 | 記事URL

2019年4月 3日 水曜日

ベーレンパイソンのアイキャップ

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのはヘビの脱皮不全、特に眼の脱皮不全です。


ヘビは瞬きをしません。

常時、眼は開いた状態です。

その代わりに角膜の外側に透明な膜を形成しています。

この膜をアイキャップ(Eye cap)、もしくはスペクタクル(Spectacle)と呼びます。

爬虫類は定期的に脱皮を行います。

脱皮がスムーズに行われれば良いのですが、脱皮不全が生じることも多いです。

このアイキャップが頭部の脱皮部と共に連結して脱皮出来れば問題はないのですが、アイキャップだけ残ってしまう場合もあります。

本日はこのアイキャップが脱皮不全で残ってしまった症例です。




ベーレンパイソンのりんてん君(年齢不明、性別不明、体重7.0kg)は左眼が白く腫れているとのことで来院されました。

ベーレンパイソンはパイソンの中でも別格に扱われており、「ベーレン様」や「神」と呼ばれる存在です。

パプアニューギニア産で最大全長3m近くまで成長し、性格は温和とされます。

黒く大きな身体が特徴で別名black pythonとも呼ばれます。





下写真黄色丸が突出して白濁した左眼です。






アイキャップを切除処置します。

体重が7㎏ある大きなヘビのため、力もあり、飼主様含め保定の補助が必要です。



注射針を用いてアイキャップを引っ掛け、ピンセットで牽引して切除する方法を採ります。



25Gの注射針でアイキャップを穿刺します。

アイキャップと角膜の間には、涙液が産生され貯留しています。



アイキャップを軽く穿刺して、その傷を眼科用のピンセットで把持・牽引します。



古いアイキャップが固着して、なかなかスムーズに一皮むけるように外せません。





慎重にアイキャップを切除します。





下写真黄色丸は外したアイキャップの一部です。



心なしか眼元もすっきりしたりんてん君です。



外したアイキャップの一部の拡大写真です。

立派なヘビなのでアイキャップも乾燥すると厚めでコンタクトレンズのようです。



処置が終了したところですが、飼主様が持参されたネットに戻すのも大変です。



脱皮不全を防止するためには、飼育槽内の湿度管理(約40~60%)に留意して下さい。



りんてん君、お疲れ様でした!




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投稿者 院長 | 記事URL

2018年11月27日 火曜日

パプアンパイソンの感染症

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、久々のヘビです。

ヘビは非常にデリケートな爬虫類で、特にウィルスや細菌感染により一挙に重篤な症状に陥ります。

実際、症状が確認出来て数日で死の転帰をたどる症例も多いです。


パプアンパイソンのメド君(雄、年齢不明、体重1.4㎏)は口内炎の疑いで来院されました。





パプアンパイソンはニシキヘビ科のパプアニシキヘビ属に分類されるヘビです。

ニューギニアやオーストラリアに棲息しています。

成体になると体重は22.5kg、全長は5mを超え、飼育許可の要らないヘビの中では最長とされてます。



そんなメド君ですが、食欲不振とのことでまずは口腔内の検査をさせて頂きました。

下写真の開口器を用いて口を開けます。





口の中に唾液が貯留しているのが分かります。







下写真で口腔内に貯留した白濁色の唾液(黄色矢印)が確認できます。

咽頭部の炎症も起こしているようです。





貯留唾液を綿棒でかき取ります。





かなりの粘稠性のある唾液です。



この唾液の中には、剥離した口腔粘膜上皮細胞と雑菌が一部認められました。





当初、口腔内の外傷などから発症するマウスロットを疑いました。

傷口と思われる部位がメド君の場合は見当たらず、マウスロットに特徴的なクリームからチーズ様の滲出物も認められませんでした。

マウスロットについて、興味のある方はこちら(ミドリニシキヘビのマウスロット)をクリックして下さい。

その一方で、下写真のように歯肉は腫脹して点状出血が認められます。

ヘビの全身性感染症の場合は、皮膚に点状出血が広範囲に出ることが多いです。

ヘビの全身性感染症(敗血症)については過去に記事を載せていますので、興味のある方はこちらをクリックして下さい。





下写真は歯肉部の拡大です。

広範囲に点状出血が確認できると思います。



今回のメド君のケースは、歯肉の点状出血にとどまっています。

皮膚に全身性に点状出血はありません。

マウスロットは、潰瘍性または壊死性の口内炎へと進行していきます。

口腔内に出来た滲出物が気道内に吸引されたり、嚥下されることで細菌性の肺炎・胃腸炎を引き起こすこともあります。



メド君は、マウスロットの初期症状と判断すべきか、あるいは細菌もしくはウィルス性の全身性感染症なのか、診断に悩まされました。

あるいは、パプアンパイソンという品種に特徴的な症状であるかもしれません。

爬虫類において明らかにされているウィルス感染症はまだごくわずかです。

その治療に対する報告例もほとんどありません。

ヘビの場合は、ヘルペスウィルス、パラミクソウィルス、レトロウィルスなどの感染症が知られています。

これらのウィルス感染症は個体によって、症状も様々で全く症状が出ないケースもあれば、短期間で死に至るケースもあります。

いずれにせよ、メド君はニューキノロン系の抗生剤を投薬して、支持療法により経過観察していきます。


メド君、頑張って治していきましょう。




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投稿者 院長 | 記事URL

2017年12月 4日 月曜日

ボールパイソンの原虫症

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのはヘビの下痢の原因と思われる原虫感染です。


一般に爬虫類はヘビに限らずトカゲであれ、カメであれ、何らかの寄生虫を腸管内に持っています。

哺乳類、特に犬猫では問題となる内部寄生虫でも、これら爬虫類では病気の原因となるのかというと不明な点が多いです。

爬虫類の腸内環境で他の腸内細菌とのバランスを取っており、やみくもに寄生虫を駆虫すべきではないという意見の研究者もいます。

何しろ、哺乳類の様に血液検査を初めとした精密検査自体が難しい動物ですから、診察する獣医師側からしても情報量の少ない中での診療展開となります。



ボールパイソン君(名称なし、性別不明、1歳)は数週間にわたり軟便・下痢便を繰り返すとのことで来院されました。





診察中にタイミング良く排便しました。

ご覧の通りの下痢便です。





早速、検便をしました。

多数の原虫が遊泳しているのを確認しました。

下写真黄色丸がその原虫です。





原虫はこれまでにも他の動物種で度々、ホームページの疾病紹介で掲載しています。

原虫は基本的に活動的で、顕微鏡写真でピントを合わせて撮影が難しいです。

今回も撮影には苦労したのですが、動きが早すぎて低倍率で多数の原虫をとらえることが出来ませんでした。

ボールパイソン君は高度に感染してましたので、明らかにこの原虫が原因であろうと思われました。

ただこの原虫が犬猫では一般的に認められるジアルジアやトリコモナスとは異なる種類です。

一方で、原虫の仲間でクリプトスポリジウムによる感染症が話題になったりしています。

ヘビの場合は慢性肥厚性胃炎の原因になったりします。

今回のこの原虫はこのクリプトスポリジウムではありません。

犯人が特定できない状態での治療となります。

一般的に原虫症にはメトロニダゾールという薬剤が選択されます。

ヘビの体重1㎏に対して50㎎のメトロニダゾールを1~2週間経口投薬します。

75~125㎎を一回投与して、2週間後にもう一回投与する臨床医もいます。

いづれにせよ、ヘビの投薬は慎重に行う必要があり、個体によっては拒食に至ります。


一般的には野生の個体でなく、飼育孵化・繁殖させた健康な個体においても、一定レベルの原虫は保有しています。

ところが、何らかのストレスに暴露されたりすると胃腸系に障害をもたらします。

原虫症は、今回のような下痢に始まり、嘔吐・胃腸内ガスによる鼓張、呼吸器感染といった多くの問題を引き起こします。





ボールパイソン君、早く下痢が治って欲しいです。




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投稿者 院長 | 記事URL

2017年8月20日 日曜日

ボールパイソンの卵詰まり

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのはヘビの卵詰まりです。

当院のホームページにも鳥の卵詰まりをご紹介させて頂くことが多いですが、爬虫類にも卵詰まりは起こります。

過去にもカメレオンヒョウモントカゲモドキの卵詰まりを掲載しましたので興味のある方はご覧ください(下線をクリックして下さい)。

いずれにしても、最悪の場合は開腹手術が必要となる場合もあります。


ボールパイソンのかりんちゃん(3歳、雌、体重1.45kg)は3週間ほど前から産卵準備期に入り、3日前に数個の産卵があったとのこと。

その後陣痛が何度かあるものの、産卵には至ってないとのことで来院されました。



総排泄腔(お尻の穴)から10~15㎝上あたり(下写真黄色丸)が腫大しているのがお分かり頂けると思います。







腫大している箇所は卵が存在していると思われます。

早速、レントゲン撮影を実施しました。

レントゲン写真の黄色矢印は卵を示します。

2個卵があるようです。



下写真にありますように総排泄腔のすぐ上に卵は降りてきています。



ヘビの産卵に関わるメカニズムはまだ分からない点が多いとされます。

有精卵の中の胎児が発達して、母体からの酸素の供給が足りなくなった時点で、卵が何らかの化学物質を放出して、母体に合図を送り、産卵が始まるのではないかと考えられてます。

つまり、産卵開始の決定権は胎児にあると推察されています。

ヘビのひと腹で産卵する卵数をクラッチといいます。

ボールパイソンは1クラッチが約4~8個とされます。

1クラッチで卵管内の卵がすべて産卵されているなら良いのですが、卵詰まりが途中で生じて一日以上の間が空くと、卵管内に残っている有精卵は全て死亡するとされています。

今回、かりんちゃんの1クラッチで産卵したのが3日前とすると、すでに残っている2個の卵も死んでる可能性は高いです。

まずは卵詰まりの部位を優しくマッサージして産卵してくれないか、試してみました。

しばらくマッサージを続けていると陣痛が始まりました。



いけるかなと思っていても、すぐに力が尽きて卵は元の位置に戻ってしまいます。



かりんちゃんの何度かの陣痛の波に合わせて、なんとか産卵解除に成功させようとしました。

下写真黄色矢印は卵管から顔を出している卵です。



卵管壁に傷をつけないように綿棒を挿入して卵殻をてこの原理で外へ押し出していきます。





少しづつ卵が全貌を表し始めています。





何とか一個目の解除が完了です。



次に2個目をレントゲンで確認します。



黄色丸は2個目の卵を示します。



かりんちゃんに何とか頑張ってもらい、残りの卵を産卵してもらいます。



1個目に比べ短時間で介助できました。



右が1回目の卵で左が2回目の卵です。

卵殻自体が非常に柔らかく表面が凸凹しています。

一般的にヘビの卵は卵殻が柔らかいです。

今回の卵は皺も多く、変形の傾向もあります。





卵の内容を確認のため開いてみました。



ヘビの卵は鳥の卵の様に卵黄と卵白は分離しておらず混ざり合っています。

発達の初期段階においては、卵のなかは卵黄らしきものでほとんど満たされており、卵を切開しても、透明な液体はほとんど見られません。

卵白がないため液体(卵白)のクッションを介して胚の回転が出来ません。

従って、ヘビの有精卵は産み落とされると卵の上面に胚が形成され、ここで卵の向きを下に変えると胚が呼吸できずに死亡します。

そのため、卵の上面に印をつけて動かすときは元の上面を上にする必要があります。

またヘビやトカゲの卵は卵白を持たないので、水分補給は周囲の土などから水分を吸収して育ちます。

有精卵を孵卵させるためには、卵をタッパーに入れ底面に十分に水を吸ったミズゴケを敷き詰めて、温度・湿度を管理して行います。

鶏の卵の孵化に比べて、非常に煩雑なケアが必要とされます。




薄い卵殻を切開しますと、内容は前述のとおり卵白や卵黄が一緒になった固形の栄養分が認められます。



赤くなっている上面を切開しますと胎児が確認できました。



下写真がヘビの胎児です。

眼が確認できます。



卵の横断面です。

下写真の黄色丸は胎児が存在していた卵の位置です。



2個目の卵の内容です。



1個目の卵の胎児と比べて内容物に埋没して胎児のシルエットも不明瞭です。

胎児は明らかに死亡しています。



かりんちゃんの卵は残念でしたが、卵詰まりはそのままにしておきますと母体の命まで奪います。

有精卵が腐敗すると細菌の毒素が血中に入り、敗血症に至ります。

緊急事態であれば、体側面から針を刺して卵の中身を吸引する方法や開腹して卵管を切開して卵を摘出する方法を選択します。

今回は腹部を温めてマッサージすることで陣痛を促し産卵介助できました。

卵が総排泄腔に近い位置にあったのも良かったと思います。

今後も産卵する機会があるかと思いますので、慎重な対応が必要ですね。

かりんちゃん、お疲れ様でした!







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投稿者 院長 | 記事URL

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