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カメレオンの疾病

カメレオンの舌損傷(驚異の舌)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、カメレオンの舌損傷例です。


カメレオンの舌は独特な動きをします。

獲物を捕捉するときは、離れた距離から舌を強力にスプリングのように前方に打ち出し、獲物を舌先に吸着・絡めとり、口腔内に取り込みます。

普段は舌は、口の中に丸まって仕舞い込んでいますが、獲物を捕らえる時には、体長の約2倍の長さとなって口から飛び出します。

しかも、舌先は蠅取りの接着剤よろしく、強力に獲物をくっつけます。

ベルギーのモンス大学の研究では、カメレオンの唾液の粘性はヒトの1000倍あるそうです。

さらには、舌を出してから口腔内に戻すまで、何と1/20秒という短時間で済ませます。

カメレオンの舌は、100分の1秒で時速90kmに達することが判明しており、その加速度は250~260Gあるそうです。

一旦、カメレオンに狙われたら最後、獲物が逃げ延びるのは困難でしょうね。


解剖学的には、カメレオンの舌は、舌先から舌の中央部までが筋肉組織で形成されてます。

次に舌の根元から中央部までが筋肉に覆われた骨の部分で、この骨を舌骨と言います。 

舌を伸ばす前半部の筋肉は舌骨の周りに蛇腹状(アコーディオン状)に収納されています。

そして獲物を捕らえる時は、 この舌骨を前へと押し出すことで蛇腹状の筋肉を勢いよく前へ飛び出させるという仕掛けです。

このカメレオンにとっては、一番大事なパーツである舌を損傷した症例です。


パンサーカメレオンの海馬君(雄、2歳10か月齢、体重210g)は、自ら舌を噛んでから、口内に舌が戻らないとのことで来院されました。

下写真の黄色矢印は、飛び出した舌を示します。






写真にあるように舌を強く咬んで、ちぎれる手前の状態です。

口を開けて舌を格納出来ると良いのですが、強い痛みによるものか海馬君は、頑なに舌を噛み続けています。



舌を触っても自重でぶら下がっており、前述のように強力な舌の筋肉で持ち上げたりする動きは出来ないようです。



下写真の黄色丸は舌の先端を示します。

この部位で獲物を吸着して、口腔内に取り込みます。



舌を一旦、口腔内に格納させるために口を強制的に開けます。

口角から綿棒の先端を挿入して、口の先端部まで綿棒を移動させて開口を促します。





下写真黄色矢印が噛んだ舌の部位です。

かなり損傷が進んでおり、千切れる寸前です。

何とか口腔内に収めて、時間はかかっても患部の修復を待つことができればと思います。



患部に力を加えないようにして、口腔内に舌を戻せました。

飼い主様には高カロリーの経口栄養食(チューブダイエット®)を強制的に飲ませて頂くこととしました。

抗生剤・消炎剤の内服を実施します。





海馬君は、腰背部に外傷があり、脱皮不全が重なって痂疲(かさぶた)が形成されてます。





下写真は、2週間後の海馬君です。

自主的に摂食出来なくて、飼い主様の強制給餌に頼る日々が続いています。

体重が142gまで落ちており心配です。

海馬君は威嚇して自主的に開口はスムーズに出来るようです。







下写真は4週間後の海馬君です。

さらに体重は142gまで落ちました。

この4週間の舌患部の状態を記録に残したかったのですが、十分に開口状態にして、患部を写真に記録に残すことができませんでした。

患部は浮腫が進行しており、貧血色を呈していました。





下写真は、6週間後の海馬君です。

さらに体重減少が進み130gまで落ち込んでます。






今までは、開口に強く抵抗していたのですが、衰弱が進行して容易に口腔内を確認できます。





口腔内は接着剤のように粘性の高い唾液に満たされ、舌を中心に口腔内の炎症が進行しています。

十分に水分が補給されてないため、眼球は眼窩に落ち込み、高度の脱水が認められます。





下写真の黄色丸はチーズのように変性・壊死した舌筋肉部です。

口腔内からはわずかに腐敗臭を感じます。



下写真黄色矢印は、鉗子で舌先を把持して口腔外に出しているところです。



舌先(黄色矢印)は口腔外に出した瞬間、損傷部(自噛部)から脱落して取れました。



舌の筋肉組織は脱落壊死し、下写真黄色丸が最終的に残った舌骨です。

カメレオンの驚異の舌の機能は今後、残念ながら発揮することができません。

舌骨は、舌筋肉を射出するためのカタパルトの土台のような存在で、やはり舌筋肉組織が獲物を吸着・捕捉の要であった事が分かります。

既に千切れかけていた舌組織は組織修復することは叶いませんでした。



下写真は、脱落・脱落した舌の筋肉組織です。



この筋肉組織あってのカメレオンの優れた獲物の捕捉能力は発揮できていたのですね。



これまで口腔内に残存して、強制給餌の妨げになっていた舌を摘出することで、液体状の給餌はやり易くなりました。

下写真はブドウ糖液を飲ませているところです。





そもそも自らの意思で獲物を認識して捕捉・摂食する爬虫類ですから、ヒトの都合で強制給餌されても受け入れてくれるかが問題です。

加えて流動食しか、物理的に嚥下出来ない状態です。

栄養学的に海馬君のサポートが今後展開できるか厳しい状況です。



この3日後に海馬君は、栄養障害による衰弱で逝去されました。

高性能な複雑なシステムをもつカメレオンの舌組織は一旦、障害を受けると回復は困難です。

飼育する中で、口周りは日常的にチェック怠らないようにしたいものです。

合掌。






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投稿者 院長 | 記事URL

エボシカメレオンの直腸脱と卵塞

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、久しぶりのカメレオンです。

カメレオンも性的に発情し、交尾、産卵、孵化というプロセスをたどって繁殖をします。

性的成熟と交尾のタイミングも難しいのですが、産卵については他の爬虫類と同様、卵塞(卵づまり)が命に関わる場合があります。

今回は卵塞が背景にあり、直腸脱に至った症例です。


エボシカメレオンのキョロちゃん(2歳8か月、♀)はお尻から何か飛び出し、元気食欲がないとのことで、三重県から来院されました。

下写真のキョロちゃんは眼が窪んでおり、脱水が進行しているのが伺えます。





総排泄腔を確認したところ、直腸脱(下写真黄色丸)が認められました。



脱出した直腸粘膜にまだ傷はなく、整復は可能と思われました。



まず脱出直腸を綺麗に洗浄します。





洗浄後に患部にブドウ糖液を滴下します。

これは浸透圧差によって、浮腫により腫大した直腸粘膜の水を抜くために行います。



加えて、脱出直腸の滑りを良くするために流動パラフィンを患部に塗布します。



綿棒を用いて、優しく直腸を整復して行きます。





何本か、綿棒を用いて整復をしていきますが、脱出直腸は脆弱のため、なるべく出血をさせないよう配慮が必要です。



直腸が戻ったら、次は再脱出を防ぐために総排泄口周りの皮膚を何針かで縫合します。



左側2針、右側1針を縫合しました。

この総排泄行の幅で排便ができれば大丈夫です。



脱出直腸は整復しましたが、キョロちゃんの腹部は大きく膨隆しています。



下写真の黄色矢印は腫れた下腹部を表します。





念のため、レントゲン撮影を実施しました。



かなりの数の卵が認められます。

キョロちゃんは抱卵状態にあった訳です。



産気付いてくると腹圧をかけ始めますので、それが直腸脱の原因になったものと考えられます。

一旦、直腸脱の整復処置は終了しましたのでキョロちゃんには帰宅して頂きました。

5日後に飼主様から、キョロちゃんが無事産卵したとの電話を頂きました。

エボシカメレオンの場合、抱卵期間は30~40日間とされます。

産卵数は国内の報告では20~80個、孵卵期間は6~9か月と報告されてます。



キョロちゃんの産卵数は62個あったそうです。

総排泄口の縫合糸は、飼主様に切ってもらいました。

その後の再脱出もなく、無事今回の件は治療終了しました。

産卵がスムーズに出来なければ、最終的に卵管ごと摘出する必要があります。

カメレオンのように産卵数の多い爬虫類の卵塞は大変ですね。




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投稿者 院長 | 記事URL

デレマカメレオンの口腔内膿瘍(マウスロット)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介するのは、ブログ登場は久しぶりのカメレオンです。

カメレオンはコオロギ等の生餌を捕食します。

当然生餌ですから、口の中に取り込んだ瞬間に即死するわけはなく、口腔内で暴れたりすると口腔粘膜を傷つけたりします。

その結果、口腔内の炎症・膿瘍が生じます。

この口腔内炎症・膿瘍を総称してマウスロットと呼びます。

以前、パンサーカメレオンの口腔内膿瘍についてコメントさせて頂きました。

その詳細は、こちらをクリックして下さい。


デレマカメレオンのデルマちゃん(雌、2歳)は右側口角部の腫脹が気になり、来院されました。



デレマカメレオンは俗に角カメレオンと呼ばれる、3本角を有するジャクソンカメレオンに代表される品種の仲間です。

正式にはカメレオン属ミツヅノカメレオン亜属デレマカメレオンと呼びます。

雄は3本の角がありますが、雌にはありません。

雄はこの3本の角をぶつけ合って戦うそうです。

デレマちゃんは口角の内側が腫れて、その痛みにより食欲がありません。



下写真黄色丸の部位が腫脹しているのがお分かり頂けると思います。





上から見た状態ですが、下写真黄色丸の部位が顕著に腫れています。



指で圧迫を加えると流動感を感じます。

口腔内に膿瘍が出来ているように思われます。



歯や舌を傷つけないように綿棒を使用して圧迫排膿をします。



口角の外側面の痂皮(かさぶた)が剥がれました。



下写真黄色矢印が圧迫されて出て来た膿です。



みるみる多量の膿が出て来ます。



皆さん、お気づきだと思いますがデレマちゃんの体表部が黒い点が出て来ました。

この小さな黒い斑点は警戒体勢になると現れるとされます。

いきなり患部を圧迫されて、デレマちゃんはかなりご立腹のようです。





デルマちゃんは痛がって暴れますが、外見上ワサビのような膿が多量に出ました。



患部を排膿後は、顔面もすっきりしてきました。



下写真黄色丸の部位に示すように腫れもある程度引きました。



口腔内をゾンデ等で洗浄できると良いのですが、カメレオンは威嚇した時に誤嚥するケースもあるので避けた方が賢明です。



デレマちゃんには、しばらく抗生剤を内服して頂き、治療を継続する予定です。



綺麗な黒色斑点ですね。

緑の体表色に映えています。



デレマちゃん、お疲れ様でした!





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投稿者 院長 | 記事URL

ジャクソンカメレオンの指間膿瘍

こんにちは 院長の伊藤です。

本日は久しぶりにカメレオンの話題をさせて頂きます。

カメレオンは樹上生活を送ります。

野生の個体は自身にとって、つかまりやすい枝ぶりの樹に生息し、適応していきます。

しかしながら、ペットとして飼育されている個体については飼育環境が全てとなります。

飼育槽内の温度・湿度はもとより枝の太さ・硬さも問題を起こすことがあります。



今回は指の間に炎症が起こり、膿瘍が出来てしまった症例です。

今年の4月の話です。

ジャクソンカメレオンのトミー君(キサントロプス亜種、雄、年齢不明)のトミー君は右前肢を気にして、あまり枝をしっかり掴めないとのことで来院されました。






右の前肢を診ますと若干の腫れ(下写真黄色丸)が認められます。



カメレオンは一日中絶えず枝を把持しています。

枝の表面がザラザラであったり、個体の指の間のサイズに合わない場合は、指間の炎症を招くことがあります。

飼い主様にはなるべく今以上の太めの枝を使用するようにお伝えしました。

指間の外傷は際立って認められませんが、念のため抗生剤を処方しました。









抗生剤の内服は継続していただきつつ、今年7月のトミー君です。

3か月経過したのですが、右前肢はさらに腫れが出てきています。



ケージに掴まるのも左前肢だけで、患肢の右肢は把持できなくなっています。



トミー君には再度、抗生剤・鎮痛剤の内服とイソジン外用液を処方させて頂きました。




さらに2か月経過したトミー君です。



下写真黄色丸の幹部ですが、さらに晴れてきました。

幹部をかばって歩行にも支障が出ています。



患部が注射針で穿刺して排膿出来るほどに熟していますので、穿刺することにしました。



穿刺部を軽く圧迫しますと膿が中から出てきました(下写真黄色丸)。





膿はワサビのような緑色を呈しています。





排膿後の患部は随分スッキリして、腫れも収まっています。



排膿した膿です。



患部をしっかり消毒して治療は終了です。



患部は開放創のまま、自宅で外用消毒と抗生剤内服で完治させます。



爬虫類の場合、哺乳類と比較して外傷のダメージは緩やかに進行していくようです。

変温動物であるということもその一因でしょう。

カメレオンにおける飼育環境に由来する外傷の中では、この指間膿瘍は非常に多いと思われます。

前述したように指間に小さな傷が出来ても、時間をかけながらダメージが進行していき膿瘍に至ります。

なるべく指間にストレスのかからない枝を用意していただくのが最善策でしょう。

トミー君、お疲れ様でした!







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投稿者 院長 | 記事URL

エボシカメレオンのグロテスク・スマイル(妊娠含む)


こんにちは 院長の伊藤です。


先月の当院のエキゾッチクアニマルの新患数が、犬猫の新患合計数の3倍に達している事実を知りびっくりしてます。

たくさんの動物病院のHPを拝見していますが、疾病紹介については犬猫よりエキゾッチクアニマルは、はるかに少数派であまり掲載されてません。

ついつい疾病の目新しさ・アピール度を考慮して当院ではエキゾチックアニマルの紹介が多くなってしまった傾向があると思います。

ある意味、これも自分の使命と思っていますので、今後もエキゾチックアニマルの疾病紹介は継続していきます。

勿論、エキゾッチクアニマル以上に犬猫は好きですから、犬猫編も力を入れて行きますのでよろしくお願い致します!



さて本日ご紹介させて頂きますのは、エボシカメレオンのグロテスク・スマイルです。

英語の直訳で醜い笑顔です。

以前にグリーンイグアナの代謝性骨疾患でグロテスク・スマイルについてコメントさせて頂きました。

その詳細に興味のある方は、こちらをクリックして下さい。


エボシカメレオンのねえさん(8か月齢、雌)はお腹が張ってきたとのことで来院されました。





腹部が大きく腫大しています。

妊娠の可能性もありますのでレントゲン撮影を実施しました。

ねえさんの実寸大は下のレントゲン写真の通りです。

10数センチの体です。



拡大像です。

黄色丸の部分が卵管で卵がたくさん詰まっています。







エボシカメレオンは、約1か月の妊娠期間を経て床面に産卵床を掘り、20~40個の卵を産卵します。

ねえさんはそろそろ産卵の時期に達しているようです。

無事産卵が出来るように産卵床を含めた環境整備が重要となります。


加えて、ねえさんを診て気になるのは、顎の変形です。

下写真黄色丸の部分、特に下顎が変形しているのがお分かりいただけると思います。

ねえさんは口をしっかり閉じることが出来ません。





恐らくねえさんは、代謝性骨疾患(MBD)に罹患して顎が変形したものと思われます。

MBDによるこの顎の変形を称してグロテスク・スマイルと言います。

幼体期の餌のバランスは非常に重要です。

特にビタミンDとカルシウム、そして十分な紫外線量が取れていないと代謝性骨疾患(MBD)になります。

特に幼体期は十分な骨格を形成するためカルシウムを大量に必要とします。

MBDになりますと、背骨・尻尾・手足の変形や顎の変形が起こります。


MBDは自然界には存在しない疾病です。

グリーンイグアナのMBDの症例報告でも申し上げたのですが、MBDは100%人為的な原因(食餌・温度管理・紫外線照射量)
で発症します。





MBDの治療法は十分な紫外線量です。

そのため爬虫類用の紫外線ランプを使用して下さい。

そして十分なカルシウムを含む野菜(青梗菜、コマツナ等)、さらにビタミンDを与えて下さい。

残念ながら、幼体期のMBDによる骨変形に関わる症状・病態は回復させることは困難とされます。

加えて、ねえさんの場合は妊娠中ということで、カルシウムが不足の状態になりますと卵つまりになる可能性もあります。

卵の卵殻形成にカルシウムが消費され、さらにMBDの個体はただでさえ血中カルシウム濃度が低いため、卵殻は非常に軟弱となり卵管をスムーズに降りることが出来なくなります。

結果として卵つまりとなった場合、開腹手術をして卵管切開して卵を摘出する必要が生じます。

最悪そのような状況にならないよう祈念したいところです。







その後、ねえさんは無事産卵できたとの報告をいただきました。

爬虫類の疾病は、その多くが食餌や飼育環境が原因で起こるケースが非常に多いです。

特に幼体を飼育される場合、この2点は気を付けて頂きたいと思います。



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投稿者 院長 | 記事URL

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