歯・口腔の疾患/うさぎ
2014年1月26日 日曜日
ウサギの根尖膿瘍(眼窩膿瘍)
ウサギの歯にまつわる疾病は多く、日常的にも歯科診療の占める割合は多いと言えます。
特に歯周病が原因で生じる膿瘍を目にします。
歯根部からの細菌感染から皮下膿瘍、眼窩膿瘍に至る症例をご紹介します。
ウサギの まるちゃん(3歳4か月、雌)はこの1,2か月前から右眼が突出して来て、眼の周辺の皮膚が腫れているとのことで来院されました。

下写真黄色丸にあるように右眼球が突出しています。


眼の周辺を触診しますと粘稠性のある液体が貯留しています。
それはおそらく膿であり、皮下膿瘍、場合によっては眼窩膿瘍が生じていると思われます。
まずは、レントゲン撮影を実施しました。
黄色丸で囲んだ部位が突出している眼球と皮下の膿瘍と思しきmass(塊)を表します。

側面の画像では、黄色丸の部位が石灰化を起こした上顎臼歯の根尖膿瘍部(歯根部の膿瘍)を表しています。

患部を排膿するため、皮膚を注射針で穿孔します。

穿刺と同時にクリーム状の膿が皮下から流れ出してきました。


膿瘍を圧排した後、消毒液で患部の洗浄を行います。

膿が無くなった分、眼元がスッキリした感じです。

歯周病が高度に進行しすると口腔内を覗いて歯に触れただけで歯根部のグラつきが触知されます。
その場合は当然抜歯から始めます。
しかし、重度の膿瘍を伴わない臼歯の場合、抜歯は容易ではありません。
ウサギの骨密度は犬の半分以下と言われます。
慎重に抜歯しないと顎骨が骨折します。
したがって、多くの症例は膿瘍の治療が中心となります。
犬猫と異なり、ウサギの場合はカプセルの様に膿を有壁性の嚢胞で取り囲みます。
このスタイルを取ることで、細菌や細菌毒素が全身に回ることを防いで入るとも言えます。
そのため、抗生剤を投薬しても感染部位の細菌に薬剤が直接ダメージを与えることは難しいとされます。
内科的治療と共に、必ず排膿処置を並行して実施する必要があります。

また臼歯の根尖膿瘍は顎骨融解をもたらす場合があります(特に下顎骨)。
状況に応じて、この融解部を外科的に切除することもあります。
今のところ、まる君の患部は骨融解はありませんが、膿瘍が消退するまで治療は続きます。
まる君、治療頑張って行きましょう!
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2013年11月18日 月曜日
ウサギの感電(家電のケーブルにはご注意を!)
ウサギは何でも齧ります。
ウサギの歯は、常生歯という持続的に伸び続ける形態である以上、絶えず硬いものを齧って歯を摩耗させていかないと過長歯となります。
過長した歯棘が口腔内に傷害を与え、最終的に食欲減退に至ります。
齧り木だけ齧るウサギの場合は何の心配もありませんが、齧る対象が家電製品のケーブルであったら?
というのが、今回のテーマです。
ミニウサギのクルチェちゃん(1歳、雌)は家電製品のケーブルを齧ってから、食欲がなく口の周辺が腫れているとのことで来院されました。
以下の3枚の写真をご覧いただいて、口の周辺部が赤く腫脹しているのがお分かりいただけますか?



下写真の黄色丸で囲んだ箇所が腫れています。

電気コードを咬んで、感電した犬の診察を過去にしたことがあります。
その時は口腔内の熱傷と胃内に通電した結果、胃潰瘍を伴っていました。
その犬の場合は、咬みきったコードをある程度の長さまで飲み込んでしまったための結果です。
今回のクルチェちゃんの場合は、ウサギであるがゆえに電気コードを口先で齧っていたために口吻部のみの熱傷でとどまったと思われます。
口腔内を確認するために、開口器を用いて検査します。

舌が暗赤色に腫れ上がって(黄色丸)、上皮が熱変性して剥離しています(黄色矢印)。

水は何とか飲めるようですが、チモシーやペレットは厳しいかもしれません。
抗生剤とステロイド剤を処方させて頂きました。
しばらくの間は流動食でつないでいただく必要があります。
ウサギをケージから放って室内を徘徊させる習慣があるご家庭は、くれぐれも家電製品のケーブルを齧ったりしないように、細心の注意を払って下さいね!

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2012年9月 5日 水曜日
ウサギの歯周病起因の膿瘍
ウサギの膿瘍(皮下にできる膿)は、発症例として非常に多いといえます。
特に歯牙疾患に由来する膿瘍は、しつこく完治させることが難しいです。
以前にウサギの膿瘍は総括的に載せましたが、あまりに発症件数が多いので、今後その詳細を載せていきたいと思います。
今回ご紹介しますのは、ライオンヘッドラビット君です。

上の写真をご覧いただいても、何の写真やら分からないかもしれません。
黄色の丸で囲んだのが右の眼です。
オレンジの丸は眼下の膿瘍を指しています。
黄色矢印は鼻のある側を指しています。
オレンジの丸内は、皮膚が黒くなっていますが、すでに皮膚が壊死を起こしています。


黒くなっている皮膚は簡単に裂け、まず膿瘍を綺麗に洗浄しました。



壊死を起こした皮膚が開いて多量の膿が貯留していました。

長毛のため、気づかなかったのですが下顎にも膿瘍があり、同じく洗浄を実施しました。
加えて上顎臼歯が伸びて頬の内側を穿刺していましたので、過長した臼歯をカットしました。
その後は患部に蛋白融解剤やアイプクリームを入れ、抗生剤の内服をお願いしました。
2週間後の写真を下に載せました。
やっとライオンヘッドラビット君の顔形が判明したことと思います。


投与した薬の反応も良く、比較的短期間で回復しました。
膿瘍の原因は臼歯過長によるものです。
臼歯が伸びたか否かは、ご自宅で確認することは困難です。
専用の開口器を使用して、ライトを照射して当院では確認しています。
おそらく膿瘍が形成される前にすでに伸びた臼歯によって、舌や頬内側が傷を負っていますから、過剰な涎が出ているでしょう。
その場合は下顎が涎で濡れているはずです。
開口器を使用しなくても下顎が濡れていたら、臼歯は伸びていると考えて下さい。
そして、その段階で病院で受診して頂ければ、膿瘍で長く苦しまなくても済むと思います。
特に歯牙疾患に由来する膿瘍は、しつこく完治させることが難しいです。
以前にウサギの膿瘍は総括的に載せましたが、あまりに発症件数が多いので、今後その詳細を載せていきたいと思います。
今回ご紹介しますのは、ライオンヘッドラビット君です。

上の写真をご覧いただいても、何の写真やら分からないかもしれません。
黄色の丸で囲んだのが右の眼です。
オレンジの丸は眼下の膿瘍を指しています。
黄色矢印は鼻のある側を指しています。
オレンジの丸内は、皮膚が黒くなっていますが、すでに皮膚が壊死を起こしています。


黒くなっている皮膚は簡単に裂け、まず膿瘍を綺麗に洗浄しました。



壊死を起こした皮膚が開いて多量の膿が貯留していました。

長毛のため、気づかなかったのですが下顎にも膿瘍があり、同じく洗浄を実施しました。
加えて上顎臼歯が伸びて頬の内側を穿刺していましたので、過長した臼歯をカットしました。
その後は患部に蛋白融解剤やアイプクリームを入れ、抗生剤の内服をお願いしました。
2週間後の写真を下に載せました。
やっとライオンヘッドラビット君の顔形が判明したことと思います。


投与した薬の反応も良く、比較的短期間で回復しました。
膿瘍の原因は臼歯過長によるものです。
臼歯が伸びたか否かは、ご自宅で確認することは困難です。
専用の開口器を使用して、ライトを照射して当院では確認しています。
おそらく膿瘍が形成される前にすでに伸びた臼歯によって、舌や頬内側が傷を負っていますから、過剰な涎が出ているでしょう。
その場合は下顎が涎で濡れているはずです。
開口器を使用しなくても下顎が濡れていたら、臼歯は伸びていると考えて下さい。
そして、その段階で病院で受診して頂ければ、膿瘍で長く苦しまなくても済むと思います。
臼歯過長が原因のウサギ顔面の膿瘍が多いことをご理解された方は
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2011年9月 4日 日曜日
ウサギの膿瘍
今回はウサギの膿瘍、特に歯にまつわる膿瘍(歯周病起因のタイプ)をご紹介します。
ウサギの切歯・臼歯の過長症で説明したように、彼らの常生歯という特徴から咬み合わせの悪さから歯根部に細菌感染が及んで上顎や下顎が腫れあがるほどの膿瘍ができます。
ウサギの場合、犬猫の膿瘍と異なるのはチーズ様の粘性の高い膿の発生により完全排出が困難であることです。
加えて顎骨の変形・融解を伴うため完治させることが不可能です。
そのために飼い主様への患部処置法や食事管理等の指導がかかせません。
根本的治療は原因となる患歯の抜歯となります。
ウサギは犬猫に比べ骨密度が半分以下であり、膿瘍による顎骨の変形・融解が生じてい舞うので重度の膿瘍でない限りは当院では抜歯は行っていません。
したがって、治療の中心は膿瘍の治療となります。
患部の場所、膿瘍の程度、顎部の変形・融解などに応じた個々の処置法を当院では実施しています。
下の写真は膿瘍が下顎に出来たウサギです。

下の写真は別のウサギです。下顎を切開して排膿して洗浄液で洗っているところです。



さらに別件のウサギですが、皮下膿瘍を切開して患部を開放創にしてこの創内に洗浄・消毒管理を実施している写真です。
術後、最低でも数週間の抗生剤の投与が必要です。
¥

次は下顎の膿瘍が破裂してしまったウサギです。
破裂した嚢包を縫合して、排膿のためにドレインチューブを留置しました。
ドレインチューブ内に洗浄消毒液・ニューキノロン系の抗生剤・アイプクリーム等を投与して治療を行いました。
これらの治療で二週間後には一旦、完治したかにみえましたが、数カ月後に同じ場所に膿瘍が再発しました。



何度も繰り返して申し上げますが、このウサギの歯科疾患由来の皮下膿瘍は完治させることが非常に難しいです。
各種治療法は提案されていますが、確立した治療法はありません。
我々としては、ウサギの歯のメンテナンスの必要性(歯科検診)や正しいウサギの食餌の重要性、歯にまつわる正しい知識を飼い主様に伝える努力をしていきたいと思っています。
ウサギの切歯・臼歯の過長症で説明したように、彼らの常生歯という特徴から咬み合わせの悪さから歯根部に細菌感染が及んで上顎や下顎が腫れあがるほどの膿瘍ができます。
ウサギの場合、犬猫の膿瘍と異なるのはチーズ様の粘性の高い膿の発生により完全排出が困難であることです。
加えて顎骨の変形・融解を伴うため完治させることが不可能です。
そのために飼い主様への患部処置法や食事管理等の指導がかかせません。
根本的治療は原因となる患歯の抜歯となります。
ウサギは犬猫に比べ骨密度が半分以下であり、膿瘍による顎骨の変形・融解が生じてい舞うので重度の膿瘍でない限りは当院では抜歯は行っていません。
したがって、治療の中心は膿瘍の治療となります。
患部の場所、膿瘍の程度、顎部の変形・融解などに応じた個々の処置法を当院では実施しています。
下の写真は膿瘍が下顎に出来たウサギです。

下の写真は別のウサギです。下顎を切開して排膿して洗浄液で洗っているところです。



さらに別件のウサギですが、皮下膿瘍を切開して患部を開放創にしてこの創内に洗浄・消毒管理を実施している写真です。
術後、最低でも数週間の抗生剤の投与が必要です。
¥


次は下顎の膿瘍が破裂してしまったウサギです。
破裂した嚢包を縫合して、排膿のためにドレインチューブを留置しました。
ドレインチューブ内に洗浄消毒液・ニューキノロン系の抗生剤・アイプクリーム等を投与して治療を行いました。
これらの治療で二週間後には一旦、完治したかにみえましたが、数カ月後に同じ場所に膿瘍が再発しました。



何度も繰り返して申し上げますが、このウサギの歯科疾患由来の皮下膿瘍は完治させることが非常に難しいです。
各種治療法は提案されていますが、確立した治療法はありません。
我々としては、ウサギの歯のメンテナンスの必要性(歯科検診)や正しいウサギの食餌の重要性、歯にまつわる正しい知識を飼い主様に伝える努力をしていきたいと思っています。
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2011年9月 3日 土曜日
ウサギの切歯・臼歯過長症
ウサギの歯科疾患は、切歯または臼歯の不正咬合を背景にした過長症が圧倒的に多いです。
ウサギの歯は、切歯(前歯)臼歯(奥歯)の全てが一生伸び続けます。
これらの歯を称して
「常生歯」
と言います。
文字通り「常に生える歯」と言う意味です。
資料によっても微妙に違いがありますが、ウサギの歯の伸びる速度は3~4才までぐらいの若い時期には
上顎の切歯で月に8ミリ、下顎の切歯は少し早く月に10ミリ程度伸びると言われています。
臼歯も月に10ミリ程度伸びるとされていますが、
それらも栄養状態などによって違ってくると思いますし、
高齢になるほど伸びる速度は遅くなるようです。
歯の咬み合わせが悪い場合、顎関節の咬み合わせを修正することはできませんので、結果として歯が伸びたらカット・研磨をして歯の咬合をコントロールしていきます。
食餌の内容も重要になってきます。
切歯は食物をもっぱら咬み切る運動をし、臼歯はすり潰す運動をします。
チモシー(乾草)を中心の食生活をしているウサギは切歯も臼歯もバランス良く摩耗していますが、ペレットフードが中心のウサギになりますと特に臼歯が伸びて食欲が消失します。
切歯の過長は唇をまくると上下に伸びますので、すぐにわかります。
一方、臼歯は開口器を使用して初めて過長が判明します。
下顎の臼歯は、舌に向かってトゲのように伸びて舌に潰瘍を作ります。
上顎の臼歯は、頬の内側をトゲのように伸びて、同じく潰瘍を作ります。
いずれにしても、よだれが過剰に出て痛さのあまり食欲は消失します。
当院では、過長の切歯・臼歯はニッパー・やすりあるいはマイクロエンジンンのハンドピースで切断をしています。
基本的には麻酔は実施せず、手際良く処置を心がけています。
それでも暴れたり、神経質なウサギには全身麻酔を施しています。
下の写真は切歯が過長のウサギ達です。


次は臼歯が過長になったウサギです。
上段左の写真は右上顎の臼歯が頬内部に食い込んでいます(矢印に示す)。
上段右の写真は下顎臼歯の過長です。矢印に示すように舌に食い込んで舌潰瘍になっています。
下段の写真も同じく下顎臼歯の過長です(鼻腔内にガスマスクを当て全身麻酔をしてます)。
歯にまつわる問題は適切な歯の切断で解決されます。


ウサギの歯は、切歯(前歯)臼歯(奥歯)の全てが一生伸び続けます。
これらの歯を称して
「常生歯」
と言います。
文字通り「常に生える歯」と言う意味です。
資料によっても微妙に違いがありますが、ウサギの歯の伸びる速度は3~4才までぐらいの若い時期には
上顎の切歯で月に8ミリ、下顎の切歯は少し早く月に10ミリ程度伸びると言われています。
臼歯も月に10ミリ程度伸びるとされていますが、
それらも栄養状態などによって違ってくると思いますし、
高齢になるほど伸びる速度は遅くなるようです。
歯の咬み合わせが悪い場合、顎関節の咬み合わせを修正することはできませんので、結果として歯が伸びたらカット・研磨をして歯の咬合をコントロールしていきます。
食餌の内容も重要になってきます。
切歯は食物をもっぱら咬み切る運動をし、臼歯はすり潰す運動をします。
チモシー(乾草)を中心の食生活をしているウサギは切歯も臼歯もバランス良く摩耗していますが、ペレットフードが中心のウサギになりますと特に臼歯が伸びて食欲が消失します。
切歯の過長は唇をまくると上下に伸びますので、すぐにわかります。
一方、臼歯は開口器を使用して初めて過長が判明します。
下顎の臼歯は、舌に向かってトゲのように伸びて舌に潰瘍を作ります。
上顎の臼歯は、頬の内側をトゲのように伸びて、同じく潰瘍を作ります。
いずれにしても、よだれが過剰に出て痛さのあまり食欲は消失します。
当院では、過長の切歯・臼歯はニッパー・やすりあるいはマイクロエンジンンのハンドピースで切断をしています。
基本的には麻酔は実施せず、手際良く処置を心がけています。
それでも暴れたり、神経質なウサギには全身麻酔を施しています。
下の写真は切歯が過長のウサギ達です。


次は臼歯が過長になったウサギです。
上段左の写真は右上顎の臼歯が頬内部に食い込んでいます(矢印に示す)。
上段右の写真は下顎臼歯の過長です。矢印に示すように舌に食い込んで舌潰瘍になっています。
下段の写真も同じく下顎臼歯の過長です(鼻腔内にガスマスクを当て全身麻酔をしてます)。
歯にまつわる問題は適切な歯の切断で解決されます。



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