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ハムスターなど小型げっ歯類の疾病

2023年1月 9日 月曜日

ハムスターの軟部組織肉腫

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ハムスターの軟部組織肉腫です。

軟部組織肉腫は、皮膚・皮下に発生する軟部組織由来の悪性腫瘍であり、臨床的な挙動が類似するいくつかの腫瘍(線維肉腫、血管周皮腫、神経鞘腫、平滑筋肉腫など)の総称を指して呼びます。

発生する場所によって、筋肉・骨・神経組織へと浸潤する悪性腫瘍で、治療の第一選択は外科的摘出です。



キンクマハムスターのむい君(雄、1歳10か月齢、体重170g)は左側腹部に大きな腫瘤が2週間くらい前から出来たとのことで来院されました。



下写真の黄色丸が腫瘤です。

疼痛を伴ってか、むい君は左後足で引掻いて皮膚が一部裂けています。






細胞診で間葉系の紡錘形細胞(腫瘍細胞)が確認され、外科的摘出を勧めさせて頂きました。

むい君をイソフルランで麻酔導入します。





麻酔導入が完了し、腫瘍周囲をバリカン・剃刀で剃毛します。



下写真は自家製の麻酔マスクをして、維持麻酔をしている模様です。





電気メス(モノポーラ)で腫瘍の皮膚周囲を切開します。





腫瘍へ向けて、周囲組織から栄養血管が浸潤してます。





特に大きな出血もなく、摘出は完了です。









皮膚は5-0ナイロン糸で縫合します。





切除した皮膚の領域は広いため、どうしても縫合時には皮膚にテンションをかけます。

術後暴れる小型齧歯類においては、これぐらいの皮膚緊張は必要です。







むい君と摘出した腫瘍です。



無事、麻酔から覚醒したむい君です。



摘出した腫瘍です。







メスで割を入れました。



病理検査の低倍率像です。

この腫瘤は、高度の異型性を示す紡錘形細胞、多角形腫瘍細胞により構成されています。



高倍率像です。

腫瘍細胞は弱好酸性細胞質、大小不同を示す類円形から淡染核、明瞭な核小体を有してます。

腫瘍細胞の組織内の脈管内浸潤及び切除縁に腫瘍細胞は認められませんでした。



肉腫は、繊維芽細胞や他の間質細胞を起源とする非上皮性悪性腫瘍の総称です。

軟部組織肉腫は局所再発率が高いため、要経過観察です。



むい君、お疲れ様でした!


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2021年5月 6日 木曜日

キンクマハムスターの悪性リンパ腫

こんにちは 院長の伊藤です。

去年の春先と比較して、今年は患者様の動きが早いです。

去年のコロナ禍以降、皆様の動向が多少安定し来て、以前のように繁忙期になってます。

フィラリア予防・狂犬病予防接種・春の健診などで、日によっては数時間待ちをお願いする場合もあり、ご迷惑おかけしています。

極力、患者様にストレスをおかけしないようスタッフ共々対応しますので宜しくお願い致します。


さて、本日ご紹介しますのはハムスターのリンパ腫です。

リンパ腫は血液の腫瘍、いわゆる造血器系腫瘍です。

血液を介して色々な臓器へ転移します。

特にゴールデンハムスターにおける悪性腫瘍の中で悪性リンパ腫が占める割合は20%台に達するという報告もあります。

当院のホームページでハムスターの疾病症例の中で、このリンパ腫については数例紹介していますので、興味のある方はこちらこちらをクリックして下さい。




ゴールデンハムスター(キンクマ)のおみつ君(雄、11か月齢、体重105g)は精巣が腫れてきたとの事で来院されました。





おみつ君は元気食欲はあるのですが、下写真のように精巣、特に左側が腫大しているのが分かると思います。



精巣を針生検して、院内で細胞診を実施したところ、間葉系の腫瘍細胞と思しき独立円形細胞が確認されたため、精巣腫瘍の疑いで外科的に摘出することとなりました。

全身麻酔を実施するため、ガスマスク内におみつ君を入れます。



おみつ君の麻酔導入が完了しました。



維持麻酔に切り替えて、患部を剃毛します。



生体情報モニターのセンサー等を装着しています。



左陰嚢にメスを入れます。



陰嚢皮膚と精巣は癒着しています。

精巣の著しい炎症が認められます。



バイポーラ(電気メス)を用いて陰嚢から精巣を剥離します。





精巣実質に傷をつけると出血が止まらなくなりますので慎重に剥離を続けます。





滅菌綿棒は鈍性に組織剥離する際に便利なため、活用する頻度が高いです。







精巣動静脈・精管をまとめて縫合糸で結紮します。



左精巣を切除した直後の写真です。



次いで、右精巣を同様にして摘出します。



結紮した精巣動静脈を外科剪刃で切除します。



両側精巣を切除しました。

切除部からの出血もなく、落ち着いています。



皮膚を縫合して手術は終了です。







麻酔から覚醒したおみつ君です。

ハムスターは覚醒と同時に暴れ出すことが多いです。



摘出した精巣です。

向かって、左側が右精巣で右側が腫大していた左精巣です。



検査センターで病理鑑定を依頼しました。

診断名はリンパ腫(中細胞型)でした。

犬やウサギと同様、精巣の腫瘍と思っていたので意外な結果でした。

下写真は中拡大の左精巣の病理写真です。

腫瘍細胞の一部が精細管間質へ軽度に浸潤しています。



下写真は高倍率像です。

腫瘍細胞は少量の好酸性細胞質、中型で円形から類円形の正染性核、小型の核小体を有しています。

腫瘍細胞の脈管浸潤像や被膜外へ露出する腫瘍細胞は認められないとのことです。



ハムスターのリンパ腫は皮膚型と多中心型が多いとされます。

皮膚型の場合は、重度の痒みと潰瘍、丘疹、脱毛です。

多中心型の場合は、腹腔内リンパ節の確認が困難なため、体表リンパ節の腫脹で鑑別診断します。

おみつ君の場合、残念ながら体表リンパ節の腫大はありませんでした。

術後、ステロイド(プレドニゾロン)の内服を開始し、患部の経過は良好です。

下写真は、術後1か月経過したおみつ君です。



縫合部の皮膚癒合は良好です。



下写真は3か月後のおみつ君です。

ステロイドの内服は継続して頂いてます。



患部は下毛も生えそろい、また体表リンパの腫大もなく、元気食欲は良好です。



リンパ腫はリンパ球由来の悪性腫瘍です。

ハムスターにおけるリンパ腫の発生はハムスターポリオーマウィルス(HaPyV)が関与している場合が多いとされます。

若齢から中年齢(4~30週齢)にかけて発症傾向が強く,HaPyV関連性リンパ腫の多くは腹腔内リンパ節に原発し、肝臓・腎臓・胸腺あるいは他の臓器へ浸潤するとされます。

今後、他の臓器への転移について経過観察が必要です。

おみつ君、お疲れ様でした!





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2020年7月31日 金曜日

ジャンガリアンハムスターの乳腺癌

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介するのはジャンガリアンハムスターの乳腺癌です。

ジャンガアンハムスターの腫瘍の発生率は高く、その中でも乳腺腫瘍は40%以上が悪性腫瘍であり、雌雄に限らず発生するとの報告があります。



ジャンガリアンハムスターのぐりちゃん(雌、7か月齢)は左胸部に大きな腫瘤があるとのことで来院されました。



下写真の黄色丸及び黄色矢印は胸部の腫瘤を示します。





患部を細胞診したところ、乳腺腫瘍の可能性が認められました。

飼い主様の了解のもと、乳腺腫瘍摘出手術を行うことになりました。

ぐりちゃんをイソフルランで麻酔導入を行います。



次いで、維持麻酔に変えて患部を剃毛します。



患部の消毒をします。



横からのアングルでこの腫瘍の大きさがお分かり頂けると思います。



患部を皮膚ごと摘出できると良いのですが、そうすると皮膚欠損領域が極めて大きくなります。

結果として、縫合時に強くテンションを掛けなくてはなりません。

左前足の挙動は制限され、ぐりちゃんは患部を気にして縫合部を齧り、吻開することになります。



今回は、皮膚を電気メス(モノポーラ)で切開して、腫瘍をバイポーラで摘出する方法を選択しました。



モノポーラで皮膚切開を進めて行きます。



腫瘍が顔を覗かせています。



患部は乳腺そのものなので、血管に富んでおり出血は比較的多いです。



皮膚から乳腺を優しく剥離する感覚で進めます。

特に腫瘍組織自体は豆腐の様に脆弱であるため、取り扱いは慎重に行います。



ピンセットで腫瘍を抑え込み、気持ち牽引しながらバイポーラにより腫瘍を摘出します。



黄色矢印は、乳腺に分布する太い血管です。

バイポーラでこれらの太い血管を止血・離断します。



患部を摘出しました。



腫瘍摘出後の胸部です。

取り残しの腫瘍組織がないか確認します。



切除した皮膚及び皮下組織から静脈性の少量の出血があり、バイポーラで止血します。



皮膚を5-0ナイロン糸で縫合します。



縫合が終了しました。





イソフルランを切り、酸素吸入しながら覚醒を待ちます。

リンゲル液を皮下輸液します。



無事、全身麻酔から覚醒したぐりちゃんです。



摘出した乳腺です。





病理検査の結果です。

下写真は低倍率像です。

今回の腫瘤は皮下組織の乳腺小葉内において、軽度に異型性を示す腺上皮性腫瘍細胞の腺腔状・乳頭状・嚢胞状の増殖巣から構成されています。



高倍率像です。

腫瘍細胞の多くに核分裂像が認められ、腫瘍細胞の脈管浸潤像は認められません。

今回の腫瘍細胞群は、分化度が高く、悪性度は低いと考えられるとの病理医の診断でした。



術後3週間のぐりちゃんです。

抜糸のために来院して頂きました。



抜糸後の患部は綺麗に皮膚は癒合しています。



今後は他の乳腺の状態を経過観察していく予定です。

ぐりちゃん、お疲れ様でした!




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2018年12月 1日 土曜日

ラットの脂腺癌

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ラットの脂腺癌の症例です。

ラットはいろんなタイプの腫瘍に罹患します。

遺伝的に発症する腫瘍もあれば、突発的に発症する症例もありますが、ラット自体腫瘍の多い動物種であるという感があります。


ラットのたろ君(雄、2歳5か月齢、体重470g)は右臀部の腫瘤が次第に大きくなってきたとのことで来院されました。



患部の腫瘤は直径が約3㎝ほどあります。

ラットの体格からすれば、かなり大きな腫瘤と思われます。

短期間で腫大した腫瘤であることと、膿瘍で無い点から腫瘍の可能性を考えました。

飼い主様のご要望もあり、腫瘍摘出手術の実施となりました。



いつも通りの麻酔導入箱に入ってもらい、イソフルランを流します。



麻酔導入は速やかに完了しました。



外に出てもらい、患部を剃毛します。





被毛に隠れて見えずらかったのですが、下写真黄色矢印が今回の腫瘤です。



拡大した写真です。

触診では、患部と周囲組織(特に筋肉層)との固着はなさそうです。





早速、腫瘤の麓にあたる部位から外周にかけて硬性メスを入れて行きます。



薄い被膜につつまれた腫瘤が現れました。



周囲組織からの血管浸潤があり、電気メス(バイポーラ)で止血と切開を繰り返して腫瘤を剥離します。



腫瘤に向けて栄養血管(黄色矢印)が走行しています。



止血は完了して、皮膚と腫瘤をまとめて摘出します。



これで摘出は終了です。



腫瘤摘出後の患部です。



皮膚をナイロン糸で縫合します。



縫合完了です。





全身麻酔から覚醒したたろ君です。







摘出した腫瘤です。



この腫瘤にメスで切開を入れます。



腫瘤内部は脂肪と赤血球に富んでおり、多結節状の腫瘤で形成されたに肉芽様組織です。



この腫瘤を病理検査に出しました。

下写真は中等度の倍率です。

シート状に多形細胞(類円形、短紡錘形)が増殖しています。



高倍率の像です。

多形細胞(腫瘍細胞)の一部は、細胞質が泡沫状を呈して、脂腺細胞への分化を呈しています。

病理学的な診断は、脂腺癌とのことです。



今回の腫瘍細胞は、核分裂像が多数認められる点、大小不同を示す点、明瞭な核小体を有する点などから悪性度の高い腫瘍であるとのことです。

たろ君は今後、要経過観察が必要です。



たろ君、お疲れ様でした!





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2018年11月 9日 金曜日

デグーマウスのリンパ腫

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、デグーマウスのリンパ腫です。

リンパ腫は血液の腫瘍です。

白血球中のリンパ球がガン化して発症します。

発生する部位はリンパ系組織とリンパ外臓器に分かれます。

リンパ系組織はリンパ節、胸腺、脾臓、扁桃などです。

リンパ外組織は骨髄や肺などの臓器です。

リンパ系の組織は全身に分布していますので、リンパ腫は全身どの部位でも発症する可能性があります。


デグーマウスのたけちゃん(雄、3歳、体重185g)は左の頚部に大きな腫瘤が出来て、頭部の動きもままならないとのことで来院されました。

下写真、赤矢印の部位が問題の腫瘤です。







細胞診を実施しましたが、細菌と炎症系の細胞(白血球やマクロファージ、リンパ球)が大部分を占める構成であり、腫瘍細胞は確認できませんでした。

エキゾチックアニマルの場合、腫瘤の表層部は、自ら掻破したりして細菌感染を起こしている場合が多いため、腫瘍自体が基底部に隠れている場合もあります。



腫瘍が大きすぎるということもあり、首を曲げての摂食も満足に出来ません。

少しでもたけちゃんのストレスを軽くしたいという飼主様の意向です。

結論として、腫瘍を可能なだけでも外科的に摘出するということになりました。



たけちゃんを全身麻酔します。

イソフルランで麻酔導入を行います。



この大きさの腫瘤(下写真黄色丸)になりますと前足で餌を把持することは困難と思われます。





麻酔導入が効いて来たようです。

腫瘤が大きいため、横になっても頭部が持ち上がってしまいます。





イソフルランを維持麻酔に変えて電極版の上にたけちゃんを乗せます。

腫瘍で顔面が隠れてます。



電気メス(モノポーラ)を使用して腫瘤の外周から皮膚を切開して行きます。



続いてバイポーラを使用して皮下組織を止血・切開します。





表層部の腫瘤(下写真黄色矢印)は硬結した脂肪組織のようです。

その下の腫瘤層(下写真白矢印)は血管に富んだ脆弱な組織です。



この脆弱な腫瘤の裏側には太い動脈が走行していましたので、バイクランプでシーリングします。



さらに続いて、バイポーラで切除を続けます。




切除出来る範囲の腫瘤を摘出完了しました。

すぐ下には頸静脈が走行しています。



思いのほか、根深い腫瘤でしたので広範囲の皮膚を切除することとなりました。

そのため、皮膚縫合のための縫い代を十分に取るため、皮膚と皮下組織の間を外科剪刃で鈍性に剥離していきます。



耳根部にまで切除域が及んでいます。



5-0ナイロン糸で皮膚を縫合します。



縫合部の緊張が高いと皮膚が簡単に裂けてしまうため、かなり細かく縫合します。







皮膚縫合は終了です。



麻酔から覚醒直後のたけちゃんです。



縫合部の血行障害もなさそうです。




摘出した腫瘤です。

直径5㎝ほどありました。

下写真は腫瘤の表層部です。



腫瘤の裏側から見た写真です。





病理検査に出した結果、大細胞型リンパ腫との診断でした。



高倍率の写真です。

独立円形細胞腫瘍が認められます。

核仁が明瞭で、核の大小不同を示しています。

核の分裂が非常に活発で増殖活性の高い腫瘍であるため、摘出した患部の局所再発は免れないであろうとの病理医からのコメントを頂きました。

加えて、体腔内臓器への腫瘍の波及も考慮する必要があります。



たけちゃんの術後経過は患部の疼痛のためか、食欲不振が認められました。

縫合部が広範囲にわたってるため、縫合糸で口が引っ張られて、左側の開口運動がしづらそうです。

大きな腫瘍を摘出できたので、四肢の動きは円滑に出来るようになりました。





残念ながら、術後4日目にして、たけちゃんは逝去されました。

リンパ腫ですから体腔内に腫瘍の転移もあったでしょうし、手術前までギリギリのところで頑張っていたのだと思います。

今回はリンパ腫という全身性の腫瘍ですから、外科的な皮膚腫瘍摘出で全ての治療が終了とはいきません。

おそらく、たけちゃんの術後経過が良好でも、化学療法が必要となったと思われます。



とにかく小さくても腫瘍の可能性を感じられたら、病院を受診して下さい。

小さなエキゾッチクアニマルであるほどに、早めの対処をすべきだと思います。

何しろ、犬の体表面積の何十分の1という小さな動物達です。

特に外科的摘出で解決できる腫瘍であるほどに、小さなサイズの腫瘍であれば、腫瘍の種類によりますが完治の可能性はあります。






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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

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