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ハムスターの疾病

2018年5月30日 水曜日

ジャンガリアンハムスターの頬袋脱出(その2)

こんにちは 院長の伊藤です。

蒸し暑い日が続いてますが、これから熱中症のペットが来院する時期となります。

ペットの飼育環境を改めて見直し、高温多湿な環境を改善して頂くことで熱中症対策して下さい。


さて、本日ご紹介しますのはハムスターの頬袋脱出(頬袋脱)です。

以前にも、この頬袋脱をご紹介させて頂きました。

興味のある方はこちらをクリックして下さい。


ジャンガリアンハムスターのおもちちゃん(約1歳、雌)は頬袋が飛び出して戻らなくなったので来院されました。

下写真の黄色丸は脱出した頬袋を示します。



頬袋は食べた物を一時的に溜めこんでおく袋です。

順次、食べた物を頬袋から口腔内に出して咀嚼・嚥下します。

頬袋に入れた食物の量が多かったりすると、靴下を裏返すように頬袋の内面が口腔外へ脱出します。

この状態を頬袋脱と呼びます。



頬袋脱は脱出したばかりであれば、綿棒などを利用して元に戻すことが可能です。

脱出して数時間以上経過しますとハムスター自身が頬袋を気にして齧ったり、あるいは頬袋が血行障害を来して浮腫を招きます。

こうなってくると食欲が無くなり、自傷で受傷した部位から細菌感染を受けて治療が必要となります。



おもちちゃんの場合は、頬袋を整復処置をしても再脱出しました。

脱出してからの経過時間から、頬袋を切除することとしました。

全身麻酔を施します。



下写真のアングルから見ますと頬袋脱が良く分かると思います。



麻酔導入が完了しました。



自家製マスクで維持麻酔をします。

モノポーラ(電気メス)で患部を切除しますので、アースとしての電極板をおもちちゃんの体の下に敷きます。





脱出した頬袋を鉗子で牽引します。



モノポーラで慎重に頬袋を切除します。



特に大きな出血もありません。





脱出した頬袋を離断しました。



患部は浮腫を呈しており、切除部には漏出液が貯留しています。



鉗子で切除後の頬袋を口腔内に押し戻します(黄色矢印方向)。



整復後の右側口周りは、若干の腫脹が認められます。



切除した頬袋です。





麻酔から半覚醒したおもちちゃんです。





頬袋を切除した後、頬袋は再生します。

特に切除部を縫合しなくでも癒合するため、おもちちゃんはこの状態で経過観察します。

暫くは抗生剤や鎮痛剤の内服をして頂きます。

その後の経過は良好です。

おもちちゃん、お疲れ様でした!





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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

2018年4月 6日 金曜日

ラットの線維腫

こんにちは 院長の伊藤です。

4月を迎えて、当院もフィラリア予防、狂犬病ワクチンの接種や春の健康診断などのイベントがあり、飼主様の受診までの待ち時間が長くなり、ご迷惑をおかけしております。


さて、本日ご紹介しますのはラットの線維腫です。

ラットの皮膚の腫瘍の中では、比較的一般的に発症するものです。

ラットのおこめちゃん(1歳3か月、雌、体重300g)は左前肢の腋下から上腕部に向けて腫瘤が出来たとのことで来院されました。





細胞診を実施したところ、マクロファージを主体とした炎症細胞の出現との診断を病理医から受けました。

しかしながら、その後1か月の間にも腫瘤は増大し、腫瘍の疑いも否めなくなりました。

飼い主様との話し合いで、結局のところ外科的に摘出することとしました。

いつものことですが、患部の細胞診と摘出組織の病理所見とは食い違うこともあります。

摘出後の腫瘤は病理検査に出すこととしました。


おこめちゃんに全身麻酔を施します。



麻酔導入箱におこめちゃんに入ってもらい、イソフルランを流します。



下写真の黄色丸に腫瘤が認められます。



麻酔導入が終了して、維持麻酔に変えます。



改めて、黄色丸が患部になります。



被毛を剃毛すると比較的大きな腫瘤であることがお分かり頂けると思います。



おこめちゃんの小さな体にたくさんのコードを装着しています。

これも生体情報(心電図、血中酸素分圧、血圧など)をモニターするために必要です。



皮膚を電気メスで切開して行きます。



腫瘤の大きさに合わせて、皮膚もマージンを十分取って切除したいのですが、患部が腋下から上腕部にかけてのエリアなので最小限に留めました。



腫瘤を鉗子で把持して上方に牽引します。



腫瘤と皮下組織を気を付けながら、バイポーラで剥離していきます。







下写真のように腫瘤へ栄養を運ぶ太い栄養血管が認められます。



大きな出血もなく無事、腫瘤を摘出しました。



摘出後の患部です。

皮下組織に腫瘤の浸潤は留まっていました。



皮膚縫合をして終了です。






ラットの場合、覚醒後の動きが素早く点滴も困難なため、皮下輸液を施します。



麻酔覚醒後のおこめちゃんです。



覚醒は速やかで手術は無事終了です。



摘出した腫瘤です。

2×2×2.5cmの大きさがありました。

ラットの小さな体からすれば、比較的大きなサイズの腫瘤です。





病理組織の所見です。

低倍率(40倍)の顕微鏡画像です。



中等度(100倍)の顕微鏡画像です。



高倍率(400倍)の画像です。

病理学的な診断名は線維腫でした。

線維腫の組織学的特徴は、成熟した線維細胞ないし線維芽細胞が豊富に膠原線維(コラーゲン)を産生しながら増殖します。

その膠原線維の配列は方向性が明瞭で、線維の束が織り込まれたような(花むしろ状)配列や渦巻き状の配列が見られることもあります。

線維腫は発育の遅い腫瘍で、完全摘出により治癒する良性腫瘍です。

今回のおこめちゃんの所見は、繊維芽細胞に類似した軽度の多形性は認められるものの、異型性に乏しい紡錘形細胞の錯綜状な増殖が認められました。

繊維芽細胞由来の良性腫瘍なので、摘出は完全であり、良好な予後が期待されるとの病理医からのコメントを頂きました。



おコメちゃん、お疲れ様でした!






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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

2017年5月25日 木曜日

ラットの紅い涙

こんにちは 院長の伊藤です。

蒸し暑い日が続きますが、当院ではすでに熱中症の患者さんも来院されるようになりました。

涼しい環境でペットのお世話をしていただくようご注意下さい。


さて本日ご紹介しますのは、ラットの紅い涙です。

キリスト像の血の涙でもあるまいし、宗教的な話題でもありません。

ファンシーラットのぽっけちゃん(雌、8か月)は眼から紅い涙を流しているとのことで来院されました。

診る限り眼球や瞼の外傷は見当たりません。



下写真黄色丸が赤い涙が流れた後です。



眼球を洗浄しました。





瞼周辺の紅いものも一緒に拭き取ってみます。



一見すると血液の様に思えますが、実はこれはラットによく現れるポルフィリンの涙です。



ぽっけちゃんは眼の周辺を洗浄すると特に問題はありません。





ポルフィリンとは有機化合物でピロールが4つ組み合わさって出来た環状構造を持つ物質です。

古代から使用されてきた貝紫(ポルフィラ)がその名の由来とされてます。

このポルフィリンはハーダー氏腺(涙腺と同様に存在する眼の分泌腺)から分泌されます。

正確には、このポルフィリンはhematoporphyrinという誘導体で光と反応して赤色を発する特性があります。

hematoporphyrin誘導体は現在、腫瘍に対する光線力学療法に用いられてます。

この誘導体は腫瘍細胞によく吸収される性質があり、光を当てることで活性化して腫瘍細胞を殺傷する効果が認められてます。


一般的には、ラットはストレスが溜まると紅い涙を流すとされます。

ストレス時にハーダー氏腺からのポルフィリン分泌量が増えるようです。


下は、ポッケちゃんに次いで同じく赤い涙で来院されたおこめちゃん(雌、10か月)です。



黄色丸の箇所は同じく赤い涙の流れた跡が分かります。






ポルフィリンはウサギでも尿中に排泄されて赤色尿・血尿と間違われることがあります。

ラットの場合は分泌されるのがハーダー氏腺という眼の分泌腺にため、血の涙もしくは鼻涙管を通じて鼻血という形で気づかれることが多いです。

いずれにしても、疾病ではありませんのでご心配なく!




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2015年1月26日 月曜日

キンクマハムスターのジアルジア症


こんにちは 院長の伊藤です。


ハムスターは特に小さなお子さんのいる家庭で、飼育されるケースが多いです。

ご両親がお子さんの教育(動物の飼育指導)も兼ねていると思われます。

そんなハムスターですが、ペットショップで販売される個体については、生後1か月満たないものもあり、飼主様が購入されてすぐに体調不良で来院される症例も多いです。


本日、ご紹介しますのはキンクマハムスターの内部寄生虫疾患です。

キンクマハムスターのモコ君(2か月齢、雄)は購入してまもなく軟便、下痢が続くとのことで来院されました。







ゴールデンハムスターは、体調不良になると眼を閉じて沈鬱な表情を浮かべる個体が多いです。

モカ君は診察中ずっと眼を閉じて猫背の姿勢のままです。

下写真の様に軟便が肛門に付着しています(黄色丸)。





下痢をしているとのことで、まずは検便です。

動画を乗せられないのが残念ですが、活動性のある多数の原虫が群れを成しています。



高倍率の顕微鏡写真です。



木の葉が舞うような動きをしているこの原虫は、ジアルジアと呼ばれます。

ジアルジアは腸粘膜に吸着し、障害を与え、消化器症状(下痢)を引き起こします。

このジアルジアは栄養体のステージにあります。

モカ君はまだ2か月という幼体ですから、免疫力も弱く今回のようなジアルジアの多数寄生では、下痢に至るのも無理ありません。

特に幼体が下痢を起こすとすぐに脱水状態に陥ります。

脱水を改善するために皮下にリンゲル液を輸液します。



このジアルジアの駆除にはメトロニダゾールという薬を使用します。

この薬は非常に苦く不味いようで、ハムスターはじめとして動物には不評のようです。

ブドウ糖も混ぜて、飲みやすくしたものを内服して頂いてます。

下写真はその投薬しているところです。



飼い主のお兄ちゃんも心配しています。

モカ君、早く治って下さいね!






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2014年7月14日 月曜日

ゴールデンハムスターの悪性リンパ腫


こんにちは 院長の伊藤です。


本日ご紹介しますのは、ハムスターの悪性リンパ腫です。

ハムスターの体表腫瘍は日常的に遭遇する機会が多いです。

背部の腫瘍であれば外科的切除も容易ですが、腋下や内股等血管の走行が密な部位ほどに摘出は難しくなってきます。

犬猫に比べて非常に小さな動物ですから、手術時の出血を最小に抑えることに苦心します。


ゴールデンハムスター・シルバー(長毛種)のゴルダちゃん(雌、1歳)は左側背部に大きな腫瘤があるとのことで来院されました。



下写真黄色丸内がその腫瘤です。

ゴルダちゃんも気にして患部を引掻いて化膿しています。



腫瘍の可能性が高く、細胞診を実施しました。

下写真のように核が濃縮して、核仁が明瞭な大型リンパ球の分裂像も多数認められます。





悪性リンパ腫との診断で、早速外科手術を実施することとしました。

まずは全身麻酔を施すため、犬用のガスマスクに入ってもらい寝て頂きます。



次いで自家製のガスマスクに顔を入れて術野の剃毛・消毒に移ります。

腫瘍がずいぶん大きいのがお分かり頂けると思います。



電気メスで細心の注意を払って、腫瘍のマージンを極力維持しながら切開をしていきます。





若干、うっ血気味の腫瘍が顔を出しました。



腫瘍に栄養を運ぶための太い栄養血管が何本も走行しています。

血管をバイクランプでシーリングしていきます。

従来は細い縫合糸で結紮していましたが、限界を感じていました。

極力、出血は回避したいので現在、このバイクランプを使用して無血手術を目指してます。









腫瘍切除後の患部です。



皮膚欠損が広い範囲に及んでいますので、細かく縫合していきます。





ガス麻酔を切って、少し意識が戻ってきたゴルダちゃんです。



全身麻酔のリスクは犬猫以上に小動物にはついて回ります。

犬猫であれば術前に血液検査を実施して、麻酔のリスクに対処できますが、ハムスタークラスになると血液検査はできませんので、水面下に潜んでいる基礎疾患を見つけることは難しいです。

長時間の手術に及ぶ場合はさらに慎重になります。

麻酔覚醒20分後のゴルダちゃんです。

しっかり動くことが出来るようになりました。





すすんで食餌も口にできるようです。



患部を自咬しないようにフェルト地のエリザベスカラーを装着します。





今回、他の組織への浸潤は認められず、分離摘出はスムーズに出来ましたが、再発の可能性はあります。

抗癌作用のあるサプリメントで、今後対応していきたいところです。

ゴルダちゃん、しばらく患部が回復するまで安静にして下さい。




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