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異物誤飲/犬

2019年6月27日 木曜日

犬の異物誤飲(その19)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、犬の異物誤飲の症例です。

当院のHP上に犬の疾病で異物誤飲シリーズを載せています。

今回は19回目の異物誤飲紹介となります。

犬がどんな異物を誤飲するかを皆様に知って頂き、誤飲予防の一助になればと思います。



柴犬の豆太君(2歳5か月齢、去勢済、4.3kg)はおやつ用のペーストを塗りつける芯棒(スティック)をかみ砕いて誤飲してしまったとのことで来院されました。



約4㎝位のプラスチック製の芯棒とのことです。

早速、レントゲン撮影を実施しました。

レントゲン写真の黄色丸が胃を示します。



特に下写真の側臥像で胃内(黄色丸)の横に波線の入った異物が存在しているのがお分かり頂けると思います。



今回、誤飲したと申告のあった異物の形状に非常に酷似してます。

異物の大きさから恐らくは十二指腸まで降りることは不可能です。

結局、胃を切開して異物を摘出することとなりました。

豆太君を全身麻酔します。





剣状突起直後から臍までをメスで正中切開します。



切開線直下に胃が垣間見えます。



胃を牽引したところです。

胃内には硬い異物が触知できます。



下写真のとおりに胃の漿膜面(外側部)に異物の波状の横線が浮かび上がって描出されています。



レントゲンで撮影した通りの長軸が4㎝位の異物です。



胃体部で血管走行の少ない部位にメスを入れます。



メスを入れた部位から外科鋏で胃の漿膜・筋層・粘膜面(全層)をカットしていきます。



胃の創面部を鉗子で優しく把持し広げます。



胃内に黄色を帯びた異物が認められます。



当初、簡単に摘出できると見積もっていたのですが、胃の粘膜面に異物のヒダが食い込んで、思うように摘出が出来ません。



なるべく胃の切開ラインは広げることなく異物を取り出したいのですが、力を加えて牽引すると胃が裂けそうな感じです。





時間を掛けながら、慎重に少しづつ異物を胃内から引き出しました。



やっと摘出出来ました。



次に胃の閉鎖を行います。

胃切開した部位は二重縫合で閉鎖します。

私の場合、まず第一層目は単純連続縫合を行います。

下写真がその単純連続縫合です。

漿膜、筋層、粘膜下織まで全層貫通して針を入れます。





単純連続縫合が終了したところです。



次に第二層目は、結節レンベルト縫合を実施します。

漿膜・筋層までに針を入れて縫合します。







これで胃の閉鎖は終了です。

二重縫合法は創部の止血・漿膜の接着に優れているとされます。



合成吸収糸で腹膜・筋肉層を縫合します。



最後に皮膚をナイロン糸で縫合します。



これで豆太君の手術は終了です。



全身麻酔から覚醒したばかりの豆太君です。





スティックに塗布するペーストがおいしくて、スティックの先端部をまるごと噛み切って誤飲したようです。

この異物のヒダ状の形状もあって、胃の粘膜面にしっかり食い込んでいました。

早急に胃切開で摘出できて良かったと思われます。



下写真が摘出した異物です。



綺麗に洗浄した後の異物です。



豆太君は経過良好で1週間後に退院されました。


術後2週間目に抜糸で来院された豆太君です。



異物誤飲は飼主様の責任です。

異物をペットの口の届く場所の置かないこと、摂食する機会をなくすことを心がけて下さい。

当院の患者様で、異物誤飲で3回摘出手術を実施したケースがあります。



豆太君、お疲れ様でした!





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2016年10月26日 水曜日

犬の異物誤飲(その17 軍手・ヘッドホンのイヤーパッドetc.)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、異物誤飲の症例です。

毎回、各種の異物を犬は誤飲しますが今回は大型犬です。

大型犬の場合、一度に多量の異物を誤飲してしまうケースも多く、また常習的に誤飲する犬もいます。


シベリアンハスキーのホクト君(雄、10歳8か月)は軍手を飲み込んだとのことで他院にかかっていたのですが、嘔吐が続き良くならないとのことで当院を受診されました。



飲み込んだ異物にもよりますが、長い時間そのままで放置することは危険です。

エコー・レントゲンでお腹の中を確認しました。



下はレントゲン写真ですが、黄色丸の胃内には何か異物が存在しているのは明らかです。

加えて黄色矢印が示している十二指腸から空回腸の領域にはガスが貯留しています。



下写真は側面の状態ですが、黄色丸の胃には線維状の異物があるようです。

さらに赤丸の空回腸にはまた別の異物があるようです。



ホクト君は異物を誤飲してから数日は経過しているそうなので、早速試験的開腹を行うこととなりました。

気管挿管を行います。



大型犬のシベリアンハスキーなので手術台から頭一つ分はみ出してしまいます。





上腹部からメスを入れていきます。



最初に胃からアプローチします。

下写真の中央部に見えるのが胃です。

胃の4か所に支持糸をかけて胃にテンションを与えます。



血管があまり走行していない部位にメスを入れます。



胃切開直後に出てきたのは、黒い物体です。

摘出後に分かったのですが、ヘッドホンの耳当て(イヤーパッド)でした。



次に出てきたのは、飼主様も誤飲を認識していた軍手です。







この軍手を摘出して胃内はスッキリしたのですが、まだ胃内に硬い線維が触知されました(下写真黄色矢印)。



この線維は十二指腸へと入り込んでおり、空回腸まで及んでいるかもしれません。

十二指腸にメスを入れ、この線維の断端を鉗子で把持します。





ついでさらに下に位置する空腸近位端を引き出します。

写真にありますように空腸は中に入り込んだ線維物により、アコーディオンカーテンのように引っ張られて固まっています。



この空腸に切開をして、内容物を摘出することとしました。

このような線維状の異物を線状異物といいます。

ホクト君は腸閉塞の状態にあります。

線状異物は腸を強い力で牽引して、腸の粘膜を傷害します。

場合によっては、腸が壊死を起こすこともあり慎重に摘出します。



数か所にわたり、空腸を切開して線状異物をリレー式に摘出します。



随分長い繊維が空腸まで降りていました。



メスを入れた複数個所を縫合します。



空回腸の腸間膜には下写真の黄色矢印にします点状出血が認められます。

線状異物により牽引された空回腸及び腸間膜の血管が破たんして出血したものと思われます。



胃も縫合します。



腹腔内を何回も洗浄して閉腹します。

手術終了後のホクト君です。





摘出した胃腸内異物です。



下の黒い物体がヘッドホンの耳当てです。



軍手です。



下写真の黄色丸が空回腸までダメージを与えた線維状の異物です。

ボロボロになった雑巾の端切れのようです。



これらの異物は胃腸内で長らく停留すれば、胃腸に障害を与えますし、腸内フローラを乱して腸内発酵を生じます。

その結果、腸内細菌の産生する毒素により腸性毒血症を引き起こし、ショック症状に至る場合もあります。

なぜこのような異物を摂食するのかは犬自身の性格や本能に根差す部分もあると思います。

しかしながら、口の届く範囲に食べて問題を起こしそうな物体は下げておくこと。

これが一番大切なことです。

異物誤飲は飼い主様の責任です。



退院時のホクト君です。

お疲れ様でした!








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2016年9月13日 火曜日

犬の異物誤飲(その16 湿布)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、久しぶりとなります犬の異物誤飲シリーズです。

色んな異物を犬は誤飲します。

飼い主様からすれば、意外な物を誤飲しますので、どんな異物を誤飲するのかをご紹介しています。

皆様の愛犬は、このような異物を誤飲しないよう日常生活でご注意いただければ幸いです。



トイプードルのシュシュ君(6歳、雄)は飼主様の湿布を誤飲したとのことで来院されました。



実は、このシュシュ君は免疫介在性溶血性貧血(IMHA)で、以前から当院で治療を受けて頂いています。

このIMHAとは、免疫グロブリンが結合した赤血球がマクロファージによって貪食され、赤血球が破壊される難しい疾病です。

その治療のため、シュシュ君は免疫抑制量のプレドニゾロンを投薬して頂いている最中でのアクシデントです。



まずは、レントゲン撮影を行いました。

下写真の黄色丸の部位が気になります。



下は患部をさらに拡大した写真です。

小腸内に湿布と思しき異物(下黄色丸)が確認されます。



飼い主様が誤飲した事実を確認している場合は、こちらも状況を把握しやすいです。

シュシュ君の場合はおそらく、腸閉塞になっている可能性が高いです。

直ぐに開腹し、異物摘出手術を行うこととしました。

麻酔前投薬を前足の静脈から実施します。



気管挿管を行います。

イソフルランによる全身麻酔(ガス麻酔)に導入して行きます。



シュシュ君は完全に麻酔下で管理されてます。





雄の場合はペニスの傍らを皮膚切開して、腹筋を切開します。



脂肪で包まれた小腸(空回腸)を体外に出したところです。



下写真の黄色矢印は異物が腸内を閉塞して腸の血液循環が滞り充血しています。

白矢印は、まさに異物が閉塞して血流障害を起こしてうっ血色を呈しています。

このままいけば、腸壊死に至ります。

IMHAに罹患しているため、腸管は貧血色を呈しています。





触診で異物が存在していると思える箇所にメスを入れます。



腸粘膜下に灰褐色の異物が見えます。



鉗子で異物を把持して、緩やかに牽引します。



幾重にも折りたたまれた湿布が出て来ました。





完全に湿布を摘出しました。



腸管の切開部を洗浄します。



患部に抗生剤を滴下します。



腸管切開後の縫合は、腸管の管腔径の狭窄を防ぐことが重要です。

切開部を横断するように縫合します。





異物が大きいこともあり、腸管を縦に大きく切開したため縫合すると多少いびつな形状になります。

重要な点は、腸内容物がスムーズに縫合部を通過できるかに尽きます。







腹腔内の脂肪(大網)で縫合部を包み、閉腹します。











麻酔から覚醒後のシュシュ君です。



摘出した湿布です。

10×12cmもの大きさがありました。

早急な対応が出来たのは幸いです。

おそらく、あと2日もしたら腸閉塞から腸壊死にいたり腹膜炎、敗血症と進んでいたことでしょう。




術後のシュシュ君です。

暫しの流動食生活です.。

元気も出てきて,術後の経過は良好です。





異物を誤飲したのを見たら、1時間以内にかかりつけの動物病院を受診して下さい。

シュシュ君、お疲れ様でした!



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2015年7月25日 土曜日

犬の異物誤飲 (その15 紐)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日、ご紹介しますのは犬の異物誤飲で 紐(ひも) です。



チワワのセナ君(雄、7歳)は紐を誤飲したとのことで来院されました。



紐は歯石を取るために齧らせていた太めの紐(ロープに近い)とのことです。

紐や糸のような異物を線状異物と言います。

線状異物を誤飲しますと胃から十二指腸を通って、空回腸あたりで引っかかり腸を巻き込んで、腸が団子状に丸くなってしまいます。

最悪、腸は血行障害により壊死に至りますので、患部の腸を切除して健全な腸の端と端を吻合しなくてはなりません。

そうなっては大変ですから、早速セナ君のレントゲン撮影を実施しました。





黄色丸の胃内に何かありそうな感じがしますが、フードを食べており詳細は不明です。

ただ十二指腸以下には恐らく異物は認められません。



飼い主様が紐の誤飲は確認していますので、試験的開腹をすることとなりました。

全身麻酔下のセナ君です。







皮膚切開を行います。





胃を外に出しました。

触診すると胃内部に硬い紐の感触が分かります。

恐らく胃内で紐は移動せずに停留していたようです。



胃を切開します。



切開部から紐が顔を出しています。

問題はこのまま鉗子で紐を牽引して、十二指腸で引っかかっていないかということです。

紐が十二指腸を巻き込んでいれば、腸に切開をして紐を摘出することになります。



そんな私の心配とは関係なく、紐を牽引したところ、スルスルと紐はその全容を現しました。





胃の中で紐は留まっていてくれたようです。

摘出した紐です。



切開した胃です。



これから胃を縫合します。



胃の縫合は終了です。



皮膚縫合して手術は終了です。





麻酔から覚醒したばかりのセナ君です。



暫くはセナ君は、食事制限をした入院生活をしていただくこととなりました。


退院時のセナ君です。





異物誤飲は詰まる所、飼主様の不注意に根差します。

動物は、異物を食べることの良し悪しの判断はできません。

あくまで感情的に口に入れてしまうだけです。

嘔吐させる薬を飲んで、吐き出すことが出来ればよいのですが、出来なければ胃切開するしかありません。

異物を誤飲したと確認したら、一時間以内に病院を受診して下さい。

どんな異物を食べたら、どんな結末が待っているのかを飼主様にお伝えするために異物誤飲シリーズを今後も続けていく所存です。


セナ君、お疲れ様でした!





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2015年5月12日 火曜日

犬の異物誤飲(その14 パフ)

こんにちは 院長の伊藤です。

4月からの繁忙期にかまけて、ブログの更新が1か月近くできずにいました。

院長は再度入院したのかと心配される飼主様もおみえで、ご心配おかけしました。

私もスタッフも元気で、臨床の現場で日々精進しております。

その間、疾病の紹介ネタが溜まりに溜まりまして、これから順次ご紹介させて頂きたいと思います。


さて、本日ご紹介しますのは、犬の異物誤飲シリーズの第14弾目になります。

これまでにも様々な犬が誤飲する異物をご紹介してきましたが、今回は化粧用のパフです。

マルチーズのひなちゃん(雌、5か月、1.9kg)は飼主様の化粧用パフを食べてしまったとのことで来院されました。





パフの大きさは5㎝位はあるかもしれません。

嘔吐させる薬を飲ませて、口から吐出させるにはちょっと厳しいように思えます。

ひなちゃんは体重が2kgもありませんので、もし嘔吐剤を投薬して食道で閉塞してしまったら大変です。



早速、レントゲン撮影を実施します。

下のレントゲン写真の黄色丸が誤飲したパフと思われます。

胃内の大部分をパフが占めている感があります。





このような場合は、最善策として胃切開を選択します。

まだ5か月令の幼犬なので、可哀そうに思われるかもしれませんが胃の中で異物が停留している時が摘出のタイミングとしてはベストです。

飼い主様の了解をいただき、胃切開手術を行います。

ひなちゃんに気管挿管をしてガス麻酔をかけます。



メスを入れる部位を剃毛して消毒してます。



麻酔に関わる生体情報をモニターで確認します。





メスを入れて皮膚切開をします。



胃を体外に出します。

若いだけあって、非常にきれいな胃です。

この時、胃体を支持するために縫合糸をかけます。



パフが存在すると思われる箇所にメスを入れます。



切開した部位は極力小さく留めます。

患部から鉗子を入れてたところ、弾力性のある異物を確認しました。

パフと思しき物体を鉗子で把持します。

下写真にあるようにパフが胃から頭を出し始めています。





胃の中はパフでその内腔は一杯になっています。

胃切開が正解でした。





パフを胃から摘出しました。



次に切開した胃を縫合していきます。

縫合糸はモノフィラメントの吸収性縫合糸を使用します。

縫合は丁寧に確実に行います。





これで胃縫合は終了です。

胃を腹腔に戻し、腹筋と皮下脂肪、皮膚を順次縫合していきます。



下は皮膚縫合した手術終了時の写真です。



ひなちゃんは術後の経過も良好です。



胃切開術後は24時間は絶飲食が必要で、その間は点滴を行います。

この手術は酸塩基平衡や電解質のバランスが崩れやすいので、しばらく点滴と流動食で対応していきます。

下写真は摘出したパフです。



生後1歳未満は、どんなものにも興味を持ちます。

特に飼主様が身につけたり、匂いが付いているものは口に入れたいという衝動を持ちます。

今回のパフはその最たるものでしょう。

飼い主様がその場を見ているから、今回速やかな対応が取れました。

これが一人で留守番中であれば、こちらも確信が持てないので、バリウムを飲んでもらい消化管造影をして精密検査になったりする場合もあり得ます。

まずは、ワンちゃんの口の届く所に興味を持つ物体、特に誤飲したら問題を起こしそうな物は置かないことです。

ひなちゃん、お疲れ様でした。








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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

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