異物誤飲/犬
2021年1月21日 木曜日
犬の異物誤飲(その21 シュシュ)
こんにちは 院長の伊藤です。
犬の異物誤飲のご紹介をさせて頂きます。
本日は髪などを束ねるシュシュを誤飲したトイプードルです。
実際、飼主様の目前で異物誤飲したケースは対応がスムーズに運ぶことが可能です。
勿論異物によりますが、誤飲してから数十分から1時間以内であれば、催吐剤を投与して強制的に吐かせて終了です。
しかし、飼主様が異物誤飲した事実を全く関知していなかった場合は、血液検査、エコー検査やレントゲン撮影(消化管造影検査含む)などで絞り込みが必要となります。
トイプードルのブラウン君(雄、4か月齢、体重3.1kg)は、飼主様の目前でシュシュを誤飲したとのことで大急ぎで受診されました。

異物の種類、材質、大きさにより対応は異なる部分がありますが、選択肢は以下の通りです。
1:強制的に吐かせることなく、自然に糞便と共に排泄させる。
これは、どちらかというと消化管の直径よりも小さなサイズの異物を飲み込んだケースで時間と共に排泄見込みのある場合です。
2:催吐剤を投与して強制的に吐かせる。
催吐剤としては、以前は当院もオキシドール(過酸化水素水)を使用していましたが、胃が荒れて嘔吐が持続したりする場合もあり、現在使用していません。
あるいは、止血剤としてのトラネキサム酸を急速に静脈から注射します。
当院では現在、このトラネキサム酸を使用しています。
この催吐剤は、副作用として痙攣が認められる場合があること。
犬には有効だが、猫には無効とされています。
3:物理的に異物を摘出する。
(1) 内視鏡で摘出する。メリットとして開腹することなく低侵襲で摘出できる。
ただ内視鏡で把持できる形状の異物ならば良いのですが、そうでないケースもあり、その場合は外科的摘出が選択されます。
(2) 外科的に開腹し、異物を摘出する。
安全・確実に異物を摘出出来るのですが、入院が必要であり、コストがかかるのが難点です。
さて、ブラウン君の場合はまだ4か月令の仔犬です。
異物はシュシュということで大きさ、材質から間違いなく胃内で留まっています(レントゲンで確認済み)。
そのまま、排泄される可能性は極めて低いです。
物理的に内視鏡や外科的摘出するには、仔犬には多大なストレスを強いることになります。
選択肢として、今回は催吐剤を使用することにしました。
ブラウン君に頭側皮静脈に留置針を入れます。
これからトラネキサム酸を50㎎/kg静脈に注射します。


注入後、約4,5分ほどでブラウン君は嘔吐をする気配が出て来ました。


ちょっと辛そうですが、思い切り嘔吐しました。

嘔吐物の中には青と白の柄のシュシュがありました。

この大きさだと自然に胃から腸へと自然の蠕動運動で排泄することが出来ないのは想像できると思います。

ブラウン君はちょっと疲れた表情をしていますね。
でも、確実にシュシュを吐き出すことが出来たので良かったです。

特に仔犬の場合は、どんなものにも興味がありますから、飼主様は異物誤飲をさせないよう十分に注意して下さい。
ブラウン君、お疲れ様でした!

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犬の異物誤飲のご紹介をさせて頂きます。
本日は髪などを束ねるシュシュを誤飲したトイプードルです。
実際、飼主様の目前で異物誤飲したケースは対応がスムーズに運ぶことが可能です。
勿論異物によりますが、誤飲してから数十分から1時間以内であれば、催吐剤を投与して強制的に吐かせて終了です。
しかし、飼主様が異物誤飲した事実を全く関知していなかった場合は、血液検査、エコー検査やレントゲン撮影(消化管造影検査含む)などで絞り込みが必要となります。
トイプードルのブラウン君(雄、4か月齢、体重3.1kg)は、飼主様の目前でシュシュを誤飲したとのことで大急ぎで受診されました。

異物の種類、材質、大きさにより対応は異なる部分がありますが、選択肢は以下の通りです。
1:強制的に吐かせることなく、自然に糞便と共に排泄させる。
これは、どちらかというと消化管の直径よりも小さなサイズの異物を飲み込んだケースで時間と共に排泄見込みのある場合です。
2:催吐剤を投与して強制的に吐かせる。
催吐剤としては、以前は当院もオキシドール(過酸化水素水)を使用していましたが、胃が荒れて嘔吐が持続したりする場合もあり、現在使用していません。
あるいは、止血剤としてのトラネキサム酸を急速に静脈から注射します。
当院では現在、このトラネキサム酸を使用しています。
この催吐剤は、副作用として痙攣が認められる場合があること。
犬には有効だが、猫には無効とされています。
3:物理的に異物を摘出する。
(1) 内視鏡で摘出する。メリットとして開腹することなく低侵襲で摘出できる。
ただ内視鏡で把持できる形状の異物ならば良いのですが、そうでないケースもあり、その場合は外科的摘出が選択されます。
(2) 外科的に開腹し、異物を摘出する。
安全・確実に異物を摘出出来るのですが、入院が必要であり、コストがかかるのが難点です。
さて、ブラウン君の場合はまだ4か月令の仔犬です。
異物はシュシュということで大きさ、材質から間違いなく胃内で留まっています(レントゲンで確認済み)。
そのまま、排泄される可能性は極めて低いです。
物理的に内視鏡や外科的摘出するには、仔犬には多大なストレスを強いることになります。
選択肢として、今回は催吐剤を使用することにしました。
ブラウン君に頭側皮静脈に留置針を入れます。
これからトラネキサム酸を50㎎/kg静脈に注射します。


注入後、約4,5分ほどでブラウン君は嘔吐をする気配が出て来ました。


ちょっと辛そうですが、思い切り嘔吐しました。

嘔吐物の中には青と白の柄のシュシュがありました。

この大きさだと自然に胃から腸へと自然の蠕動運動で排泄することが出来ないのは想像できると思います。

ブラウン君はちょっと疲れた表情をしていますね。
でも、確実にシュシュを吐き出すことが出来たので良かったです。

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2020年12月16日 水曜日
犬の異物誤飲(その20 仔牛のあばら骨)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、久々の犬の異物誤飲シリーズです。
過去の記事からの抜粋ではなく、今年の7月の症例です。
今回の異物は仔牛のあばら骨です。
骨のおやつはペットショップで各種販売されています。
犬の体格に合わせた骨を与えている分には、まだ安心できるかもしれません。
しかし、しっかりかみ砕いて嚥下しているのか、丸呑みこみしているのか、本人次第というのが不安の種です。
フレンチブルドッグの小春ちゃん(2歳4か月、避妊済み、体重9.3kg)はおやつの仔牛のあばら骨を与えてから、食欲不振・嘔吐が続くとのことで来院されました。


フレンチブルドックは活動的です。
多少の異物誤飲をしても外見上はそんな風には見えないこともあります。
ただ嘔吐をしつこく続けるとなれば要注意です。
血液検査を実施しました。
CRP(炎症性蛋白)が7.0㎎/dlを振り切っており、白血球数は20,000/μlを超えてます。
お腹の中で何らかの炎症が起こっているのは疑いありません。
レントゲン撮影を実施しました。
下写真の黄色矢印を示すのが、仔牛のあばら骨の可能性が高いです。
そもそも肋骨が何本もある中で、誤飲した仔牛の肋骨が存在したならレントゲン上、紛らわしいですね。
矢印で示している肋骨は小春ちゃんの肋骨とほぼ同じ太さですが、その両端を確認すると断端が鋭利に割れています。

下写真の側臥状態では、矢印の肋骨は明らかに異物として外から飲み込んだ物と思われます。

胃の中に存在しているのは疑いないですが、場合によっては胃を穿孔していないか心配です。
いづれにせよ、この骨を外科的に摘出することが先決と考えました。
全身麻酔を小春ちゃんに施します。



下腹部に正中切開を行います。

真っ先に出てくる空回腸を確認します。

小腸の異常はありません。

次に核心部の胃をチェックします。

胃を触診した際、十二指腸あたりに指先に鋭利な突起物を感じました。
下写真黄色丸が十二指腸から飛び出している仔牛のあばら骨の先端と思われます。

異物が消化管を穿孔した場合、一番怖いのは細菌で汚染された内容物が腹腔内に漏れ出し、腹膜炎を起こすことです。
加えて、今回の様に肝臓に隣接した位置に突起物がありますので肝臓を損傷する可能性もあります。

穿孔部の拡大写真(黄色丸)です。
穿孔部の周囲組織は発赤腫脹していますが、腸管の癒着や腹水貯留など腹膜炎の症状はまだ出ていないようです。

あばら骨を摘出する上で切開部位を最小限に留めるためにも、穿孔部からメスを入れて、そのままあばら骨を取り出すこととしました。

あばら骨の先端部を鉗子で把持します。

メスを入れた切開部には、いきなり内容物が漏出しないよう縫合糸を先にかけておきます。

切開部を縫合します。
この時、縫合部と牽引するあばら骨と多少の抵抗があるくらいに縫合部にテンションをかけて縫合します。

これからあばら骨を牽引して摘出します。

あばら骨の牽引の進行と共に切開部をまた一針縫合していきます。

これから一気にあばら骨を引き抜きます。





あばら骨の摘出が終わりました。

患部からは出血がありましたが、内容物の漏出は最小限に留めることが出来ました。
さらに切開部とトリミングした穿孔部を縫合します。



縫合が終了しました。

最後に生理食塩水で何回も腹腔内を洗浄します。

術後、腹腔内に滲出液などが貯留する可能性も考えてドレインチューブを留置します。
ドレインチューブ(平型 10㎜)は排液のため数日間留置します。



仔牛のあばら骨摘出手術はこれで終了です。

あばら骨摘出後にレントゲン撮影を実施しました。
術後に腹腔内には異物らしきものは認められません。


全身麻酔から覚醒直後の小春ちゃんです。

3日間、ドレインチューブを腹腔内に留置して、排液も出なくなった術後4日目にチューブを抜去しました。

摘出した仔牛のあばら骨です。
約10㎝近い長さがあります。
本来なら咬み砕いて、砕片になってくれていれば良かったのですが。

ご覧の通り、骨の両端が鋭い槍のようになっています。
十二指腸を穿孔するのも理解できます。
一番、懸念していたのは穿孔部からの腹膜炎でした。
迅速に摘出できたので、大事に至らなかったのは幸いでした。

術後10日目に小春ちゃんは退院して頂きました。
退院時の小春ちゃんです。
便通も良く、元気に退院出来て良かったです。


退院後7日目のの小春ちゃんです。
患部の抜糸のため来院されました。
食欲もあり、元気に散歩も出来ています。
おやつの骨に関しては十分に注意して下さい。
犬は基本的に丸呑みこみすることが大好きな動物です。

小春ちゃん、お疲れ様でした!
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過去の記事からの抜粋ではなく、今年の7月の症例です。
今回の異物は仔牛のあばら骨です。
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犬の体格に合わせた骨を与えている分には、まだ安心できるかもしれません。
しかし、しっかりかみ砕いて嚥下しているのか、丸呑みこみしているのか、本人次第というのが不安の種です。
フレンチブルドッグの小春ちゃん(2歳4か月、避妊済み、体重9.3kg)はおやつの仔牛のあばら骨を与えてから、食欲不振・嘔吐が続くとのことで来院されました。


フレンチブルドックは活動的です。
多少の異物誤飲をしても外見上はそんな風には見えないこともあります。
ただ嘔吐をしつこく続けるとなれば要注意です。
血液検査を実施しました。
CRP(炎症性蛋白)が7.0㎎/dlを振り切っており、白血球数は20,000/μlを超えてます。
お腹の中で何らかの炎症が起こっているのは疑いありません。
レントゲン撮影を実施しました。
下写真の黄色矢印を示すのが、仔牛のあばら骨の可能性が高いです。
そもそも肋骨が何本もある中で、誤飲した仔牛の肋骨が存在したならレントゲン上、紛らわしいですね。
矢印で示している肋骨は小春ちゃんの肋骨とほぼ同じ太さですが、その両端を確認すると断端が鋭利に割れています。

下写真の側臥状態では、矢印の肋骨は明らかに異物として外から飲み込んだ物と思われます。

胃の中に存在しているのは疑いないですが、場合によっては胃を穿孔していないか心配です。
いづれにせよ、この骨を外科的に摘出することが先決と考えました。
全身麻酔を小春ちゃんに施します。



下腹部に正中切開を行います。

真っ先に出てくる空回腸を確認します。

小腸の異常はありません。

次に核心部の胃をチェックします。

胃を触診した際、十二指腸あたりに指先に鋭利な突起物を感じました。
下写真黄色丸が十二指腸から飛び出している仔牛のあばら骨の先端と思われます。

異物が消化管を穿孔した場合、一番怖いのは細菌で汚染された内容物が腹腔内に漏れ出し、腹膜炎を起こすことです。
加えて、今回の様に肝臓に隣接した位置に突起物がありますので肝臓を損傷する可能性もあります。

穿孔部の拡大写真(黄色丸)です。
穿孔部の周囲組織は発赤腫脹していますが、腸管の癒着や腹水貯留など腹膜炎の症状はまだ出ていないようです。

あばら骨を摘出する上で切開部位を最小限に留めるためにも、穿孔部からメスを入れて、そのままあばら骨を取り出すこととしました。

あばら骨の先端部を鉗子で把持します。

メスを入れた切開部には、いきなり内容物が漏出しないよう縫合糸を先にかけておきます。

切開部を縫合します。
この時、縫合部と牽引するあばら骨と多少の抵抗があるくらいに縫合部にテンションをかけて縫合します。

これからあばら骨を牽引して摘出します。

あばら骨の牽引の進行と共に切開部をまた一針縫合していきます。

これから一気にあばら骨を引き抜きます。





あばら骨の摘出が終わりました。

患部からは出血がありましたが、内容物の漏出は最小限に留めることが出来ました。
さらに切開部とトリミングした穿孔部を縫合します。



縫合が終了しました。

最後に生理食塩水で何回も腹腔内を洗浄します。

術後、腹腔内に滲出液などが貯留する可能性も考えてドレインチューブを留置します。
ドレインチューブ(平型 10㎜)は排液のため数日間留置します。



仔牛のあばら骨摘出手術はこれで終了です。

あばら骨摘出後にレントゲン撮影を実施しました。
術後に腹腔内には異物らしきものは認められません。


全身麻酔から覚醒直後の小春ちゃんです。

3日間、ドレインチューブを腹腔内に留置して、排液も出なくなった術後4日目にチューブを抜去しました。

摘出した仔牛のあばら骨です。
約10㎝近い長さがあります。
本来なら咬み砕いて、砕片になってくれていれば良かったのですが。

ご覧の通り、骨の両端が鋭い槍のようになっています。
十二指腸を穿孔するのも理解できます。
一番、懸念していたのは穿孔部からの腹膜炎でした。
迅速に摘出できたので、大事に至らなかったのは幸いでした。

術後10日目に小春ちゃんは退院して頂きました。
退院時の小春ちゃんです。
便通も良く、元気に退院出来て良かったです。


退院後7日目のの小春ちゃんです。
患部の抜糸のため来院されました。
食欲もあり、元気に散歩も出来ています。
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2020年8月15日 土曜日
アーカイブシリーズ 犬の異物誤飲(化粧用パフ)
こんにちは 院長の伊藤です。
暑い日が続きますが、皆様のペット達は元気にお過ごしでしょうか?
本日もアーカイブシリーズとして犬の異物誤飲の症例をご紹介します。
今回は、化粧用のパフを誤飲されてしまったマルチーズです。
こんにちは 院長の伊藤です。
4月からの繁忙期にかまけて、ブログの更新が1か月近くできずにいました。
院長は再度入院したのかと心配される飼主様もおみえで、ご心配おかけしました。
私もスタッフも元気で、臨床の現場で日々精進しております。
その間、疾病の紹介ネタが溜まりに溜まりまして、これから順次ご紹介させて頂きたいと思います。
さて、本日ご紹介しますのは、犬の異物誤飲シリーズの第14弾目になります。
これまでにも様々な犬が誤飲する異物をご紹介してきましたが、今回は化粧用のパフです。
マルチーズのひなちゃん(雌、5か月、1.9kg)は飼主様の化粧用パフを食べてしまったとのことで来院されました。


パフの大きさは5㎝位はあるかもしれません。
嘔吐させる薬を飲ませて、口から吐出させるにはちょっと厳しいように思えます。
ひなちゃんは体重が2kgもありませんので、もし嘔吐剤を投薬して食道で閉塞してしまったら大変です。
早速、レントゲン撮影を実施します。
下のレントゲン写真の黄色丸が誤飲したパフと思われます。
胃内の大部分をパフが占めている感があります。


このような場合は、最善策として胃切開を選択します。
まだ5か月令の幼犬なので、可哀そうに思われるかもしれませんが胃の中で異物が停留している時が摘出のタイミングとしてはベストです。
飼い主様の了解をいただき、胃切開手術を行います。
ひなちゃんに気管挿管をしてガス麻酔をかけます。

メスを入れる部位を剃毛して消毒してます。

麻酔に関わる生体情報をモニターで確認します。


メスを入れて皮膚切開をします。

胃を体外に出します。
若いだけあって、非常にきれいな胃です。
この時、胃体を支持するために縫合糸をかけます。

パフが存在すると思われる箇所にメスを入れます。

切開した部位は極力小さく留めます。
患部から鉗子を入れてたところ、弾力性のある異物を確認しました。
パフと思しき物体を鉗子で把持します。
下写真にあるようにパフが胃から頭を出し始めています。


胃の中はパフでその内腔は一杯になっています。
胃切開が正解でした。


パフを胃から摘出しました。

次に切開した胃を縫合していきます。
縫合糸はモノフィラメントの吸収性縫合糸を使用します。
縫合は丁寧に確実に行います。


これで胃縫合は終了です。
胃を腹腔に戻し、腹筋と皮下脂肪、皮膚を順次縫合していきます。

下は皮膚縫合した手術終了時の写真です。

ひなちゃんは術後の経過も良好です。

胃切開術後は24時間は絶飲食が必要で、その間は点滴を行います。
この手術は酸塩基平衡や電解質のバランスが崩れやすいので、しばらく点滴と流動食で対応していきます。
下写真は摘出したパフです。

生後1歳未満は、どんなものにも興味を持ちます。
特に飼主様が身につけたり、匂いが付いているものは口に入れたいという衝動を持ちます。
今回のパフはその最たるものでしょう。
飼い主様がその場を見ているから、今回速やかな対応が取れました。
これが一人で留守番中であれば、こちらも確信が持てないので、バリウムを飲んでもらい消化管造影をして精密検査になったりする場合もあり得ます。
まずは、ワンちゃんの口の届く所に興味を持つ物体、特に誤飲したら問題を起こしそうな物は置かないことです。
ひなちゃん、お疲れ様でした。

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暑い日が続きますが、皆様のペット達は元気にお過ごしでしょうか?
本日もアーカイブシリーズとして犬の異物誤飲の症例をご紹介します。
今回は、化粧用のパフを誤飲されてしまったマルチーズです。
こんにちは 院長の伊藤です。
4月からの繁忙期にかまけて、ブログの更新が1か月近くできずにいました。
院長は再度入院したのかと心配される飼主様もおみえで、ご心配おかけしました。
私もスタッフも元気で、臨床の現場で日々精進しております。
その間、疾病の紹介ネタが溜まりに溜まりまして、これから順次ご紹介させて頂きたいと思います。
さて、本日ご紹介しますのは、犬の異物誤飲シリーズの第14弾目になります。
これまでにも様々な犬が誤飲する異物をご紹介してきましたが、今回は化粧用のパフです。
マルチーズのひなちゃん(雌、5か月、1.9kg)は飼主様の化粧用パフを食べてしまったとのことで来院されました。


パフの大きさは5㎝位はあるかもしれません。
嘔吐させる薬を飲ませて、口から吐出させるにはちょっと厳しいように思えます。
ひなちゃんは体重が2kgもありませんので、もし嘔吐剤を投薬して食道で閉塞してしまったら大変です。
早速、レントゲン撮影を実施します。
下のレントゲン写真の黄色丸が誤飲したパフと思われます。
胃内の大部分をパフが占めている感があります。


このような場合は、最善策として胃切開を選択します。
まだ5か月令の幼犬なので、可哀そうに思われるかもしれませんが胃の中で異物が停留している時が摘出のタイミングとしてはベストです。
飼い主様の了解をいただき、胃切開手術を行います。
ひなちゃんに気管挿管をしてガス麻酔をかけます。

メスを入れる部位を剃毛して消毒してます。

麻酔に関わる生体情報をモニターで確認します。


メスを入れて皮膚切開をします。

胃を体外に出します。
若いだけあって、非常にきれいな胃です。
この時、胃体を支持するために縫合糸をかけます。

パフが存在すると思われる箇所にメスを入れます。

切開した部位は極力小さく留めます。
患部から鉗子を入れてたところ、弾力性のある異物を確認しました。
パフと思しき物体を鉗子で把持します。
下写真にあるようにパフが胃から頭を出し始めています。


胃の中はパフでその内腔は一杯になっています。
胃切開が正解でした。


パフを胃から摘出しました。

次に切開した胃を縫合していきます。
縫合糸はモノフィラメントの吸収性縫合糸を使用します。
縫合は丁寧に確実に行います。


これで胃縫合は終了です。
胃を腹腔に戻し、腹筋と皮下脂肪、皮膚を順次縫合していきます。

下は皮膚縫合した手術終了時の写真です。

ひなちゃんは術後の経過も良好です。

胃切開術後は24時間は絶飲食が必要で、その間は点滴を行います。
この手術は酸塩基平衡や電解質のバランスが崩れやすいので、しばらく点滴と流動食で対応していきます。
下写真は摘出したパフです。

生後1歳未満は、どんなものにも興味を持ちます。
特に飼主様が身につけたり、匂いが付いているものは口に入れたいという衝動を持ちます。
今回のパフはその最たるものでしょう。
飼い主様がその場を見ているから、今回速やかな対応が取れました。
これが一人で留守番中であれば、こちらも確信が持てないので、バリウムを飲んでもらい消化管造影をして精密検査になったりする場合もあり得ます。
まずは、ワンちゃんの口の届く所に興味を持つ物体、特に誤飲したら問題を起こしそうな物は置かないことです。
ひなちゃん、お疲れ様でした。

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2020年7月25日 土曜日
アーカイブシリーズ 犬の異物誤飲(ボール)
本日もアーカイブシリーズです。
引き続いて犬の異物誤飲です。
ボールを誤飲してしまったラブラドルレトリバーのお話です。
大型犬で食道も太いため、嘔吐剤を投与して異物を吐き出すことが出来た症例です。
全ての犬種に該当できる治療法ではありません。
状況に応じて外科的に開腹して摘出するか、内視鏡で摘出するかという選択が必要となります。
こんにちは 院長の伊藤です。
本日は久しぶりの異物誤飲の症例をご紹介します。
ラブラドルレトリバーのバル君(雄、2歳6か月、体重27kg)は遊んでいてボールを飲み込んでしまったとのことで来院されました。

飼い主様の見てる前での行動ですから、誤飲は間違いありません。
早速、レントゲン撮影をしました。
下写真の黄色丸がボールです。
柔軟性を持った柔らかな素材のボールのようです。
ボール内の空気が抜けてつぶれて胃の中に納まっています。


レントゲン画像からその大きさを測定すると約8cmの直径です。
バル君の体格で、柔らかな素材(ビニールやゴム)の場合であれば、催吐剤を使用して吐かせることは可能です。
嘔吐させるつもりが、食道あたりでボールが詰まってしまうと逆効果となります。
異物誤飲の場合は嘔吐剤で吐かせるか、あるいは胃切開で外科的に摘出するか、誤飲した異物の大きさと材質、犬の体格や気質などを総合的に判断して対応させて頂きます。
バル君に催吐剤を飲ませて、5分くらいでいきなり嘔吐が始まりました。

胃液と共にボールが出て来ました。
バル君は特に苦悶するわけでもなく、簡単にボールを吐き出すことに成功しました。
吐きだせなければ、最終的には胃を切開してボールを摘出しなくてはなりません。
スタッフ共々、ホッとしました。

バル君自身は異物を飲み込んだことに対する反省はなさそうです。


今回飲み込んだボールです。
大型犬になると10cm位の異物なら簡単に飲み込んでしまいます。

過去の患者様で、異物誤飲で3回胃切開や腸切開をして摘出手術をした症例があります。
犬自身は、異物誤飲の怖さを認識できません。
やはり、飼主様が犬の口の届く範囲に異物を置かないようご注意して頂くしかありません。
現在は、屋外よりも室内犬が圧倒的に多い飼育環境となってますから、なおのことです。
一度、異物誤飲した犬は2度、3度と繰り返すということをお忘れなきようお願い致します!
バル君は催吐剤の使用で胃の中が荒れることが予想されますので、胃粘膜保護剤を投薬させて頂きます。

すっきりした顔でご帰還のバル君でした。
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引き続いて犬の異物誤飲です。
ボールを誤飲してしまったラブラドルレトリバーのお話です。
大型犬で食道も太いため、嘔吐剤を投与して異物を吐き出すことが出来た症例です。
全ての犬種に該当できる治療法ではありません。
状況に応じて外科的に開腹して摘出するか、内視鏡で摘出するかという選択が必要となります。
こんにちは 院長の伊藤です。
本日は久しぶりの異物誤飲の症例をご紹介します。
ラブラドルレトリバーのバル君(雄、2歳6か月、体重27kg)は遊んでいてボールを飲み込んでしまったとのことで来院されました。

飼い主様の見てる前での行動ですから、誤飲は間違いありません。
早速、レントゲン撮影をしました。
下写真の黄色丸がボールです。
柔軟性を持った柔らかな素材のボールのようです。
ボール内の空気が抜けてつぶれて胃の中に納まっています。


レントゲン画像からその大きさを測定すると約8cmの直径です。
バル君の体格で、柔らかな素材(ビニールやゴム)の場合であれば、催吐剤を使用して吐かせることは可能です。
嘔吐させるつもりが、食道あたりでボールが詰まってしまうと逆効果となります。
異物誤飲の場合は嘔吐剤で吐かせるか、あるいは胃切開で外科的に摘出するか、誤飲した異物の大きさと材質、犬の体格や気質などを総合的に判断して対応させて頂きます。
バル君に催吐剤を飲ませて、5分くらいでいきなり嘔吐が始まりました。

胃液と共にボールが出て来ました。
バル君は特に苦悶するわけでもなく、簡単にボールを吐き出すことに成功しました。
吐きだせなければ、最終的には胃を切開してボールを摘出しなくてはなりません。
スタッフ共々、ホッとしました。

バル君自身は異物を飲み込んだことに対する反省はなさそうです。


今回飲み込んだボールです。
大型犬になると10cm位の異物なら簡単に飲み込んでしまいます。

過去の患者様で、異物誤飲で3回胃切開や腸切開をして摘出手術をした症例があります。
犬自身は、異物誤飲の怖さを認識できません。
やはり、飼主様が犬の口の届く範囲に異物を置かないようご注意して頂くしかありません。
現在は、屋外よりも室内犬が圧倒的に多い飼育環境となってますから、なおのことです。
一度、異物誤飲した犬は2度、3度と繰り返すということをお忘れなきようお願い致します!
バル君は催吐剤の使用で胃の中が荒れることが予想されますので、胃粘膜保護剤を投薬させて頂きます。

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2019年6月27日 木曜日
犬の異物誤飲(その19)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、犬の異物誤飲の症例です。
当院のHP上に犬の疾病で異物誤飲シリーズを載せています。
今回は19回目の異物誤飲紹介となります。
犬がどんな異物を誤飲するかを皆様に知って頂き、誤飲予防の一助になればと思います。
柴犬の豆太君(2歳5か月齢、去勢済、4.3kg)はおやつ用のペーストを塗りつける芯棒(スティック)をかみ砕いて誤飲してしまったとのことで来院されました。

約4㎝位のプラスチック製の芯棒とのことです。
早速、レントゲン撮影を実施しました。
レントゲン写真の黄色丸が胃を示します。

特に下写真の側臥像で胃内(黄色丸)の横に波線の入った異物が存在しているのがお分かり頂けると思います。

今回、誤飲したと申告のあった異物の形状に非常に酷似してます。
異物の大きさから恐らくは十二指腸まで降りることは不可能です。
結局、胃を切開して異物を摘出することとなりました。
豆太君を全身麻酔します。


剣状突起直後から臍までをメスで正中切開します。

切開線直下に胃が垣間見えます。

胃を牽引したところです。
胃内には硬い異物が触知できます。

下写真のとおりに胃の漿膜面(外側部)に異物の波状の横線が浮かび上がって描出されています。

レントゲンで撮影した通りの長軸が4㎝位の異物です。

胃体部で血管走行の少ない部位にメスを入れます。

メスを入れた部位から外科鋏で胃の漿膜・筋層・粘膜面(全層)をカットしていきます。

胃の創面部を鉗子で優しく把持し広げます。

胃内に黄色を帯びた異物が認められます。

当初、簡単に摘出できると見積もっていたのですが、胃の粘膜面に異物のヒダが食い込んで、思うように摘出が出来ません。

なるべく胃の切開ラインは広げることなく異物を取り出したいのですが、力を加えて牽引すると胃が裂けそうな感じです。


時間を掛けながら、慎重に少しづつ異物を胃内から引き出しました。

やっと摘出出来ました。

次に胃の閉鎖を行います。
胃切開した部位は二重縫合で閉鎖します。
私の場合、まず第一層目は単純連続縫合を行います。
下写真がその単純連続縫合です。
漿膜、筋層、粘膜下織まで全層貫通して針を入れます。


単純連続縫合が終了したところです。

次に第二層目は、結節レンベルト縫合を実施します。
漿膜・筋層までに針を入れて縫合します。



これで胃の閉鎖は終了です。
二重縫合法は創部の止血・漿膜の接着に優れているとされます。

合成吸収糸で腹膜・筋肉層を縫合します。

最後に皮膚をナイロン糸で縫合します。

これで豆太君の手術は終了です。

全身麻酔から覚醒したばかりの豆太君です。


スティックに塗布するペーストがおいしくて、スティックの先端部をまるごと噛み切って誤飲したようです。
この異物のヒダ状の形状もあって、胃の粘膜面にしっかり食い込んでいました。
早急に胃切開で摘出できて良かったと思われます。

下写真が摘出した異物です。

綺麗に洗浄した後の異物です。

豆太君は経過良好で1週間後に退院されました。
術後2週間目に抜糸で来院された豆太君です。

異物誤飲は飼主様の責任です。
異物をペットの口の届く場所の置かないこと、摂食する機会をなくすことを心がけて下さい。
当院の患者様で、異物誤飲で3回摘出手術を実施したケースがあります。

豆太君、お疲れ様でした!
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本日ご紹介しますのは、犬の異物誤飲の症例です。
当院のHP上に犬の疾病で異物誤飲シリーズを載せています。
今回は19回目の異物誤飲紹介となります。
犬がどんな異物を誤飲するかを皆様に知って頂き、誤飲予防の一助になればと思います。
柴犬の豆太君(2歳5か月齢、去勢済、4.3kg)はおやつ用のペーストを塗りつける芯棒(スティック)をかみ砕いて誤飲してしまったとのことで来院されました。

約4㎝位のプラスチック製の芯棒とのことです。
早速、レントゲン撮影を実施しました。
レントゲン写真の黄色丸が胃を示します。

特に下写真の側臥像で胃内(黄色丸)の横に波線の入った異物が存在しているのがお分かり頂けると思います。

今回、誤飲したと申告のあった異物の形状に非常に酷似してます。
異物の大きさから恐らくは十二指腸まで降りることは不可能です。
結局、胃を切開して異物を摘出することとなりました。
豆太君を全身麻酔します。


剣状突起直後から臍までをメスで正中切開します。

切開線直下に胃が垣間見えます。

胃を牽引したところです。
胃内には硬い異物が触知できます。

下写真のとおりに胃の漿膜面(外側部)に異物の波状の横線が浮かび上がって描出されています。

レントゲンで撮影した通りの長軸が4㎝位の異物です。

胃体部で血管走行の少ない部位にメスを入れます。

メスを入れた部位から外科鋏で胃の漿膜・筋層・粘膜面(全層)をカットしていきます。

胃の創面部を鉗子で優しく把持し広げます。

胃内に黄色を帯びた異物が認められます。

当初、簡単に摘出できると見積もっていたのですが、胃の粘膜面に異物のヒダが食い込んで、思うように摘出が出来ません。

なるべく胃の切開ラインは広げることなく異物を取り出したいのですが、力を加えて牽引すると胃が裂けそうな感じです。


時間を掛けながら、慎重に少しづつ異物を胃内から引き出しました。

やっと摘出出来ました。

次に胃の閉鎖を行います。
胃切開した部位は二重縫合で閉鎖します。
私の場合、まず第一層目は単純連続縫合を行います。
下写真がその単純連続縫合です。
漿膜、筋層、粘膜下織まで全層貫通して針を入れます。


単純連続縫合が終了したところです。

次に第二層目は、結節レンベルト縫合を実施します。
漿膜・筋層までに針を入れて縫合します。



これで胃の閉鎖は終了です。
二重縫合法は創部の止血・漿膜の接着に優れているとされます。

合成吸収糸で腹膜・筋肉層を縫合します。

最後に皮膚をナイロン糸で縫合します。

これで豆太君の手術は終了です。

全身麻酔から覚醒したばかりの豆太君です。


スティックに塗布するペーストがおいしくて、スティックの先端部をまるごと噛み切って誤飲したようです。
この異物のヒダ状の形状もあって、胃の粘膜面にしっかり食い込んでいました。
早急に胃切開で摘出できて良かったと思われます。

下写真が摘出した異物です。

綺麗に洗浄した後の異物です。

豆太君は経過良好で1週間後に退院されました。
術後2週間目に抜糸で来院された豆太君です。

異物誤飲は飼主様の責任です。
異物をペットの口の届く場所の置かないこと、摂食する機会をなくすことを心がけて下さい。
当院の患者様で、異物誤飲で3回摘出手術を実施したケースがあります。

豆太君、お疲れ様でした!
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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL