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産科系・生殖器系の疾患/うさぎ

2022年1月25日 火曜日

アーカイブシリーズ ウサギの子宮腺癌・子宮水腫(その3)

こんにちは 院長の伊藤です。

アーカイブシリーズ ウサギの産科疾患の第3弾目をご紹介します。

本日は子宮腺癌に加えて、子宮水腫が合併症で起こった症例となります。






ウサギは繁殖に特化した動物です。

自然界では肉食獣に捕食される立場にありますから、種の保存のためにも繁殖能力は秀でている必要があるわけです。

野生のウサギは年間5~6回出産するとされます。

一方、家庭でペットとして飼育されている妊娠させないウサギの子宮は1年中、過剰量の女性ホルモン(エストロジェン)に暴露されます。

ウサギの子宮疾患が多発する原因は上記の点にあります。

以前、ウサギの子宮腺癌ウサギの子宮腺癌(その2)にもその詳細を記載しました。

興味のある方は上記下線部をクリックして下さい。



前置きが長くなりました。

本日ご紹介しますのは、ウサギの子宮腺癌の第3弾です。

今回は子宮水腫も伴う症例です。

ロップイヤーのタックちゃん(6歳10か月齢、雌)はわずかながら陰部からの出血がしばらく続くとのことで来院されました。



タックちゃんの年齢から推察すると、子宮疾患を持っている可能性は高いように思われました。

飼い主様が避妊手術を希望されたこともあり、またタックちゃんの全身状態も良好なため一般の避妊手術としてお受けすることになりました。

手術を受けて頂くためには、犬猫以上にデリケートな動物なので入念な準備が必要です。

換気不全に陥らないようにICUの部屋(下写真)で高濃度の酸素を吸入させ、肺を酸素化します。



もし手術中に呼吸停止したとしても、わずか1~2分でもこの酸素化処置が効果を示し、緊急処置に対応できる場合があります。

次に血液検査を実施して、全身麻酔に耐えられるかチェックします。



次に前足の橈側皮静脈に点滴のラインを確保するため、留置針を入れます。



麻酔導入薬を投与した後、ガス麻酔でしっかり寝ていただきます。



これから手術に移ります。





腹部正中線に沿ってメスを入れます。



腹筋を切開したところで、腫大した子宮が外に出て来ました。

下写真黄色丸が子宮腺癌と思われる箇所で、黄色矢印は子宮水腫です。



子宮全体を入念に観察して、この部位以外に腫瘍と思しきものはないことを確認します。

卵巣動静脈をバイクランプでシーリングします。



7歳近くなると腹腔内も内臓脂肪も多くなり、脂肪組織内に潜んでいる血管を傷つけないよう卵巣と子宮の摘出を進めていきます。





最後に子宮頚部を離断します。



摘出した子宮です。



子宮腺癌と思われる部位を切開した断面です。



この断面をスタンプ染色した結果が下写真です。

炎症細胞と腫瘍細胞が認められます。



水腫の箇所を切開しました。

下写真にありますように子宮粘膜が炎症を起こし、一部出血・腐敗が始まっています。

これらの箇所から持続的にタックちゃんは出血があったものと思われます。



特に出血もなく無事卵巣・子宮を摘出し、閉腹します。

ウサギは術後、患部を齧ることが多いためステープルで縫合することが多いです。



縫合後の患部です。



手術直後のタックちゃんです。



ウサギの場合、術後にチモシー(乾草)を食べてくれるか否かで予後が分かります。

タックちゃんは術後しばらくしてチモシーを採食し始めました。

ウサギの手術後でホッとする瞬間です。

翌日のタックちゃんです。



水も飲み、ICU内で動き回れるようになっています。

無事タックちゃんは、元気に退院となりました。


4歳以降の未避妊雌の陰部出血は子宮疾患の可能性が高いとされます。

先に述べたとおり、ホルモンバランスの問題を雌ウサギは抱えています。

毎回、同じことを書いていますが、1歳になるまでに避妊手術を受けられることをお勧めします。

タックちゃんのように、子宮腺癌がまだ子宮全体に広がる前であれば予後良好ですが、子宮腺癌の末期ステージでは肺にも癌が転移するケースも多く、術後の生存率は低くなります。

雌ウサギを雄同様に長生きさせるためにも、避妊手術の必要性を感じます。









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2019年9月11日 水曜日

ウサギの乳腺腺癌

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ウサギの乳腺腺癌です。

ウサギの乳腺は腫瘤が形成されるケースは多く、高齢になるにつれ乳腺腫瘍の発生率は高くなります。



ホーランドロップのハナちゃん(雌、7歳、体重1.25kg)は左腋下に大きな腫瘤があるとのことで来院されました。

肉眼所見では第1,2乳房周辺の乳腺腫瘍と思われました。






7歳と言う年齢もあり、乳腺腫瘍が肺野に転移していないか、レントゲン撮影を実施しました。

下写真の黄色丸が乳腺腫瘍を表します。

大きな腫瘍であることがお分かり頂けると思います。



ハナちゃんの胸部写真では、肺への腫瘍転移は認められません。

今回は下腹部のレントゲン写真を載せていませんが、子宮の腫大はなく子宮腺癌の可能性は低いと思われます。

飼い主様の了解を頂き、このまま乳腺腫瘍を外科的に摘出することとしました。



イソフルランで維持麻酔をしているハナちゃんです。



患部周辺を剃毛した患部です。

黄色矢印で示しているのが乳腺腫瘍です。

切除するラインを黒マジックで示してます。



患部の拡大写真です。





左前脚の拳上状態を維持するためにテープで固定をします。







左前足を上方へ牽引して、腫瘍の切除を進めます。







皮膚を硬性メスで切皮し、腋下の動静脈を回避しながら腫瘍を剥がしていきます。



電気メス(バイポーラ)で患部の止血と切開を行います。





皮膚切開して、直下に乳腺腫瘍が確認できます。



乳腺に分布している血管をバイクランプでシーリングします。

乳腺に走行している血管は多く、電気メスで止血・切開を繰り返します。



乳腺腫瘍を傷つけないように鉗子でさらに剥離をします。





ハナちゃんの乳腺腫瘍は2つの腫瘤で構成されていました。





ほぼ摘出を終了しかけている状態(黄色丸)です。

全体像から見て大きな腫瘍であるのが分かります。





腫瘍摘出は完了しました。





皮膚欠損部が大きいため、皮膚が綺麗に癒合できるよう皮膚と皮下組織を鈍性に剥離して、皮膚を伸展しやすいようにします。

その上で、縫合を細やかに行います。





術部が、腋下部に当たりますから、前足を駆動するたびに縫合部にテンションがかかります。

縫合部の皮膚が伸張し、自然な前足の動きに戻るまで、一か月はかかると思われます。



皮膚縫合は完了です。



麻酔から覚醒したハナちゃんです。





全身麻酔から覚醒した後にICUの部屋に入院して頂きました。

覚醒後の食欲も認められましたのでホッとしました。



摘出した乳腺腫瘍です。





腫瘍にメスで割を入れました。

一部、石灰化して硬い組織が確認されました。



病理標本です。

低倍率の画像ですが、乳腺組織と近接して真皮表層に及んで広がるがん病巣が形成され、皮膚面は一部で自壊しています。



中等度の拡大像です。

病巣内では、異型乳腺上皮細胞が不整に重層化する腺管状から胞巣状で増殖しています。



高拡大像です。

一部の癌細胞は扁平上皮で分化しています。

細胞異型性は中等度からやや高度とのことです。

また癌細胞のリンパ管浸潤像が散見されました。



今回、腺癌に相当する上皮性の悪性腫瘍が認められ、発生部位から乳腺癌との病理医からの診断でした。

切除断端部には癌細胞は認められず、標本上は完全切除されているとのことです。

しかしながら、リンパ管に癌細胞が浸潤している所見があるため、再発や領域リンパ節・肺への転移が今後起こる可能性があります。



退院時のハナちゃんです。

元気に退院して頂きました。




退院後の抜糸時の模様です。





乳腺腫瘍は飼主様が気づかれた時点で、既に腫瘍が肺に転移しているケースが多いです。

犬や猫と比較して、ウサギはスキンシップが密でないため、患部の腫大に気づいていない飼主様が非常に多いのも事実です。

毎回申しあげていますが、早期に避妊手術を行うことで、子宮腺癌も乳腺腫瘍も防ぐことが出来ます。

シニア世代になってから、辛い思いをさせないよう、ウサギにも避妊手術を受けさせてあげて下さい。



ハナちゃん、お疲れ様でした!





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2019年8月11日 日曜日

ウサギの子宮腺癌(その8 子宮水腫を伴う症例)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ウサギの子宮腺癌です。

雌のウサギは、5歳前後からの子宮疾患が非常に多く、腺癌の発症率がその大部分を占めます。

今回で子宮腺癌の症例報告も8例目になりますが、合併症で子宮水腫を認めたケースです。

当院での子宮腺癌に関わる記事に興味のある方はこちらをクリックして下さい。



雑種のくろちゃん(雌、4歳10か月齢、体重2.5kg)は腹部が大きく腫れてきたとの事で来院されました。

下写真黄色矢印が示すように腹部は腫大し、横にも膨満しているのがお分かり頂けると思います。





レントゲン撮影を実施しました。

レントゲン像の黄色矢印は内容物で高度に腫大した子宮を示します。



側臥の状態です。

黄色丸が内容物で腫大した子宮の側面を表しています。



エコーで患部を調べてみました。

下エコー像は子宮内に液体が多量に貯留しているのを示します。

黄色矢印は炎症で剥離しかけている子宮内膜や腫瘤と思われます。



レントゲンとエコーから子宮水腫の可能性が疑われました。

水腫以外にも何らかの産科疾患が隠れているかもしれません。

腫大した子宮が胃腸を圧迫するため、クロちゃんは元気・食欲が極端に落ちているとのことです。

飼い主様の了解を頂き、卵巣・子宮全摘出を実施することとしました。



点滴のラインをつなぎ、メデトミジン・ケタラールの麻酔前投薬処置を施し、イソフルランで維持麻酔を行っています。



下写真の剃毛部が大きく腫れている(黄色矢印)のがお分かり頂けると思います。





下腹部の正中線にメスを入れます。





腹筋の下に認められるのは、腫大した子宮です。



慎重に子宮を体外に出していきます。





左子宮角が捻転して右側に変位していました。



メスの柄の目盛で比較すると子宮角の大きさがイメージ出来ると思います。



卵巣子宮をこれから全摘出します。

バイクランプを使用して卵巣動静脈をシーリングします。



下写真黄色丸は腫大した左卵巣を示しています。

卵巣に病変があるのは明らかです。





卵巣動静脈、子宮間膜動静脈を順次シーリング、離断を展開していきます。





両側の卵巣動静脈をシーリングし、メスで離断した後に両側卵巣、子宮角、子宮頚部を体外に出したところです。



両側の卵巣は結節状に腫大(黄色丸)しており、左の子宮角は水腫(黄色矢印)を呈していました。



子宮頚部を結紮し、離断、断端部の縫合をして卵巣・子宮全摘出が完了します。









腹筋を縫合します。



最後に皮膚を縫合して終了です。



クロちゃんのお腹周りがスッキリしたのがお分かり頂けると思います。



全身麻酔から覚醒直後のクロちゃんです。



ほどなく意識はしっかり戻られました。



摘出した卵巣・子宮の重量は447gありました。

体重の5分の1にあたる重量です。

随分、お腹が重かったと思われます。



左子宮角はほぼ正常な太さを保っていますが、内出血を伴いうっ血色を呈しています。

左卵巣は正常卵巣の4~5倍の大きさを示しています。





右卵巣は大きく腫大した子宮角で隠れていますが、正常の大きさを保っています。





左卵巣に割を入れたところです。

割面は膨隆しています。



右子宮角を切開し、内容物を確認します。



明らかな子宮水腫で、内容物はさらっとした漿液です。

子宮水腫は黄体期を含めたすべての発情ステージで生じるため、発症要因としてのプロジェステロンをはじめとする性ホルモンの関わりは不明とされてます。



摘出した臓器を病理検査に出しました。

病理医からの診断は子宮腺癌(悪性腫瘍)でした。

左卵巣の低倍率像です。



下は中等度の倍像です。

左卵巣では、充実性の癌増殖巣が形性され、癌細胞群は腺管状の配列を呈しています。

一部、骨軟骨巣に転じている組織も認められます。



高倍率像です。

卵円形異型核を持つ内膜上皮様の癌細胞です。



左卵巣の病理像を載せましたが、両子宮角も同様に癌細胞が浸潤していました。

子宮内膜由来の子宮腺癌であり、左卵巣を巻き込んだ可能性が示唆されるとのことです。

病巣は切除した組織断端に露出しておらず、完全切除であるとの診断です。

手術前のレントゲン撮影では、肺野の癌転移は認められませんでしたが、クロちゃんは腫瘍細胞の播種性転移やリンパ節転移については今後のモニターリングが必要です。


クロちゃんは3日間の入院後、元気に退院して頂きました。



2週間後に抜糸で来院されたクロちゃんです。





毎回、子宮腺癌の報告例で申し上げておりますが、雌のウサギは1歳前後には避妊手術をお勧めします。

早期の避妊手術で子宮腺癌の発症を抑えることが可能です。

今回のクロちゃんも大変な思いをして手術を受けられたと思いますが、開腹した時点で主要臓器に腫瘍が転移しているケースもあります。

クロちゃん、お疲れ様でした!




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2018年11月15日 木曜日

ウサギの乳腺単純癌

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのはウサギの乳腺腫瘍です。

ウサギの乳腺腫瘍は、犬のように病理学的分類の整理はされていません。

犬の乳腺腫瘍分類上の悪性腫瘍である乳腺単純癌に類似しているウサギの症例報告をさせて頂きます。


ネザーランドドワーフのラッキーちゃん(雌、2歳4か月、体重1.5kg)は、数週間前から下腹部に出来た腫瘤が次第に大きくなったので来院されました。



腫瘤を確認しますとかなりの大きさです。

腫瘤の位置から尾側乳腺の腫瘍と思われます。

腫瘤の内部を確認するためにエコー検査を実施しました。



腫瘤の内部には液体(漿液か血液か膿かは判断できません)が貯留しています。

下写真がエコー像です。

黄色矢印が腫瘤内の液体(黒い領域)を示します。



エコー検査の結果から乳腺腫瘍であることは間違いなく、飼主様の了解を頂き摘出手術を実施することとなりました。

手術前にレントゲン撮影を行い、肺野に乳腺腫瘍が転移していないことを確認しました。


さて、ラッキーちゃんにイソフルランによる全身麻酔をかけます。



患部の剃毛処置をします。



剃毛をすると腫瘍の大きさが把握できると思います。





下写真黄色矢印で示しているのが乳腺腫瘍です。





慎重に患部を切皮していきます。



乳腺は血管が多数走行してますので、電気メス(バイポーラ)で止血と同時に患部を切開して行きます。



少しづつ腫瘍の全容が現れて来ました。



乳腺に走行している太い血管については、バイクランプでシーリング処置をします。



腫瘍は2つの乳腺(右第2,3乳房)に跨る形で発生しており、乳腺下の筋肉層までの浸潤は認められませんでした。









乳腺ごとまとめて腫瘍の摘出が完了しました。



少しドレープをずらして、患部を撮影しました。

腫瘍自体が大きいこととある程度のマージンを取った点で、皮膚欠損は大きなエリアを占めているのがお分かり頂けると思います。



患部の皮膚には、テンションをかけての縫合が必要となりました。



皮膚縫合は無事終了しました。



全身麻酔から覚醒したばかりのラッキーちゃんです。



覚醒も無事出来て、ひとまず安心です。





下写真は摘出した乳腺腫瘍です。

長軸は7㎝ちかくの大きさがありました。



短軸は4.5㎝あります。



右第2、3乳房の乳首が認められます(黄色丸)。

第2と3乳房間に生じた乳腺腫瘍です。



エコー像ではこの内部に液体が貯留しているのが分かっていましたので、メスで割を入れてみました。

下写真のように内部からは、大量の滲出液が出て来ました。





病理検査の写真(中等倍率)です。

内部が空洞状になった腫瘤は、異型性の明らかな上皮細胞の胞巣状・索状の管状増殖で構成されていました。



高倍率写真です。

腫瘍細胞(乳腺の分泌上皮細胞)は分裂頻度が非常に高く、悪性度の高い腫瘍と病理医からの診断でした。

局所的にここまで増大している点と周辺の脈管内に腫瘍細胞の浸潤が認められない点から、遠隔転移の可能性は低いそうです。

今後は定期的に健診が必要です。



術後、抜糸に来院されたラッキーちゃんです。

術後の経過も良好です。



ウサギも犬同様、早い時期(1歳未満)に避妊手術を受けることで乳腺腫瘍を高率に回避出来ます。

肺に転移するケースもありますので、未避妊ウサギは要注意です。



ラッキーちゃん、お疲れ様でした!




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2018年7月 4日 水曜日

ウサギの子宮腺癌(その7)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのはウサギの子宮腺癌です。

これまでにも多くの子宮腺癌の症例をご紹介させて頂きました。

これも、避妊手術を早期に実施することで回避することのできる疾病であることを、なるべく多くの飼主様に知って頂くために載せております。


ミニレッキスのミミちゃん(8歳、雌、体重3.0kg)は半年前から血尿が続くとのことで来院されました。





年齢からおそらくは子宮疾患が関与していると推察され、レントゲン撮影を行いました。

下写真の黄色丸の部位から子宮のマス(腫瘤)の存在が疑われます。

肺野には肺腺癌を疑う所見はありません。



半年間、血尿が不定期に出たり、治まったりを繰り返していたとのことです。

元気食欲はあるとのことで、手術に十分体力的にも耐えられると判断し、卵巣・子宮全摘出手術を勧めさせていただきました。


ミミちゃんをイソフルランによる維持麻酔で寝かせているところです。



患部の剃毛をします。



ウサギのような草食動物の場合は、手術台を平面のままでいますと胃腸の重さで横隔膜が圧迫されて、場合により心拍が停止することもあります。

それを防止する意味もあり、手術台を少し傾斜させて手術に臨みます。



腹筋を切開します。





開腹直後に腹腔内現れたのは、暗赤色を呈した子宮です。



下写真黄色丸が右子宮角に発生した腫瘤です。

おそらく子宮腺癌と思われます。

かなり大きな腫瘤であることがお分かり頂けると思います。



拡大像です。



卵巣の動静脈をバイクランプを用いてシーリングします。





80℃の熱で変性した動静脈や脂肪をメスで離断していきます。



卵巣動静脈や子宮間膜からの出血は全くありません。



摘出した卵巣・子宮を体外に出した写真です。





うっ血色は子宮角内に血液が貯留してることを意味します。



子宮頚部を鉗子で挟んで外科鋏で離断します。





子宮頚部の離断端を縫合して卵巣・子宮全摘出は終了です。

下写真で縫合部の下部は膀胱です。



次いで、腹筋を吸収糸で縫合します。



皮膚をナイロン糸で縫合します。



全ての処置が終了して、イソフルランの流入を停止します。

なお、下写真でスタッフが肉垂(頚部のマフラーのような脂肪の溜まってる部位)をつまんでいるのは、肉垂の自重で気道が圧迫され呼吸不全を起こすのを防ぐためです。



麻酔導入時に鎮静化のため投薬したメデトミジンを中和するためにアチパメゾールを静脈から投薬します。



数分内に覚醒します。



体を起こすところまで意識が戻って来ました。



完全に覚醒したミミちゃんです。



ミミちゃんは3日ほど入院の後、退院されました。

手術後には血尿は止まり、また退院後も元気・食欲も良好です。



下写真は抜糸のため、2週間後に来院されたミミちゃんです。



バリカンで剃毛した跡は、既に下毛が生え始めています。



抜糸が完了しました。





さて、前出の手術中の写真で黄色の丸で囲んだ右子宮角の腫瘤状病変について病理検査を実施しました。

結果として、多発性子宮腺癌(子宮内膜癌)であることが判明しました。

下写真はその病変部を切開したところです。



断面は子宮壁が肥厚・膨隆して血管が密に走行しています。



子宮角の他の部位にも腫瘍性の腫瘤が形成されていました。



顕微鏡の所見です(低倍)。

子宮内膜はびまん性に過形成されています。



中拡大像です。



強拡大像です。

異型性の明らかな上皮細胞(癌細胞)の腺管状・乳頭状増殖が特徴です。




子宮腺癌は良く見られる自然発生性腫瘍です。

この腫瘍の発生率は加齢とともに上昇していきます。

2~3歳の雌ウサギの子宮腺癌発生率は4%前後ですが、5~6歳では発生率は80%前後に上昇したという報告があります。

いずれにせよ、なるべく早い時期(1歳位までに)に避妊手術を受けて頂き、子宮腺癌にならないよう気を付けて頂きたいと思います。

子宮腺癌から腫瘍が肺に転移する事例もあります。

今回、半年と言う長い期間の血尿とのことですから、腫瘍の腹腔内播種はなかったようで幸いでした。

ミミちゃん、お疲れ様でした!







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