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産科系・生殖器系の疾患/うさぎ

2019年8月11日 日曜日

ウサギの子宮腺癌(その8 子宮水腫を伴う症例)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ウサギの子宮腺癌です。

雌のウサギは、5歳前後からの子宮疾患が非常に多く、腺癌の発症率がその大部分を占めます。

今回で子宮腺癌の症例報告も8例目になりますが、合併症で子宮水腫を認めたケースです。

当院での子宮腺癌に関わる記事に興味のある方はこちらをクリックして下さい。



雑種のくろちゃん(雌、4歳10か月齢、体重2.5kg)は腹部が大きく腫れてきたとの事で来院されました。

下写真黄色矢印が示すように腹部は腫大し、横にも膨満しているのがお分かり頂けると思います。





レントゲン撮影を実施しました。

レントゲン像の黄色矢印は内容物で高度に腫大した子宮を示します。



側臥の状態です。

黄色丸が内容物で腫大した子宮の側面を表しています。



エコーで患部を調べてみました。

下エコー像は子宮内に液体が多量に貯留しているのを示します。

黄色矢印は炎症で剥離しかけている子宮内膜や腫瘤と思われます。



レントゲンとエコーから子宮水腫の可能性が疑われました。

水腫以外にも何らかの産科疾患が隠れているかもしれません。

腫大した子宮が胃腸を圧迫するため、クロちゃんは元気・食欲が極端に落ちているとのことです。

飼い主様の了解を頂き、卵巣・子宮全摘出を実施することとしました。



点滴のラインをつなぎ、メデトミジン・ケタラールの麻酔前投薬処置を施し、イソフルランで維持麻酔を行っています。



下写真の剃毛部が大きく腫れている(黄色矢印)のがお分かり頂けると思います。





下腹部の正中線にメスを入れます。





腹筋の下に認められるのは、腫大した子宮です。



慎重に子宮を体外に出していきます。





左子宮角が捻転して右側に変位していました。



メスの柄の目盛で比較すると子宮角の大きさがイメージ出来ると思います。



卵巣子宮をこれから全摘出します。

バイクランプを使用して卵巣動静脈をシーリングします。



下写真黄色丸は腫大した左卵巣を示しています。

卵巣に病変があるのは明らかです。





卵巣動静脈、子宮間膜動静脈を順次シーリング、離断を展開していきます。





両側の卵巣動静脈をシーリングし、メスで離断した後に両側卵巣、子宮角、子宮頚部を体外に出したところです。



両側の卵巣は結節状に腫大(黄色丸)しており、左の子宮角は水腫(黄色矢印)を呈していました。



子宮頚部を結紮し、離断、断端部の縫合をして卵巣・子宮全摘出が完了します。









腹筋を縫合します。



最後に皮膚を縫合して終了です。



クロちゃんのお腹周りがスッキリしたのがお分かり頂けると思います。



全身麻酔から覚醒直後のクロちゃんです。



ほどなく意識はしっかり戻られました。



摘出した卵巣・子宮の重量は447gありました。

体重の5分の1にあたる重量です。

随分、お腹が重かったと思われます。



左子宮角はほぼ正常な太さを保っていますが、内出血を伴いうっ血色を呈しています。

左卵巣は正常卵巣の4~5倍の大きさを示しています。





右卵巣は大きく腫大した子宮角で隠れていますが、正常の大きさを保っています。





左卵巣に割を入れたところです。

割面は膨隆しています。



右子宮角を切開し、内容物を確認します。



明らかな子宮水腫で、内容物はさらっとした漿液です。

子宮水腫は黄体期を含めたすべての発情ステージで生じるため、発症要因としてのプロジェステロンをはじめとする性ホルモンの関わりは不明とされてます。



摘出した臓器を病理検査に出しました。

病理医からの診断は子宮腺癌(悪性腫瘍)でした。

左卵巣の低倍率像です。



下は中等度の倍像です。

左卵巣では、充実性の癌増殖巣が形性され、癌細胞群は腺管状の配列を呈しています。

一部、骨軟骨巣に転じている組織も認められます。



高倍率像です。

卵円形異型核を持つ内膜上皮様の癌細胞です。



左卵巣の病理像を載せましたが、両子宮角も同様に癌細胞が浸潤していました。

子宮内膜由来の子宮腺癌であり、左卵巣を巻き込んだ可能性が示唆されるとのことです。

病巣は切除した組織断端に露出しておらず、完全切除であるとの診断です。

手術前のレントゲン撮影では、肺野の癌転移は認められませんでしたが、クロちゃんは腫瘍細胞の播種性転移やリンパ節転移については今後のモニターリングが必要です。


クロちゃんは3日間の入院後、元気に退院して頂きました。



2週間後に抜糸で来院されたクロちゃんです。





毎回、子宮腺癌の報告例で申し上げておりますが、雌のウサギは1歳前後には避妊手術をお勧めします。

早期の避妊手術で子宮腺癌の発症を抑えることが可能です。

今回のクロちゃんも大変な思いをして手術を受けられたと思いますが、開腹した時点で主要臓器に腫瘍が転移しているケースもあります。

クロちゃん、お疲れ様でした!




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2018年11月15日 木曜日

ウサギの乳腺単純癌

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのはウサギの乳腺腫瘍です。

ウサギの乳腺腫瘍は、犬のように病理学的分類の整理はされていません。

犬の乳腺腫瘍分類上の悪性腫瘍である乳腺単純癌に類似しているウサギの症例報告をさせて頂きます。


ネザーランドドワーフのラッキーちゃん(雌、2歳4か月、体重1.5kg)は、数週間前から下腹部に出来た腫瘤が次第に大きくなったので来院されました。



腫瘤を確認しますとかなりの大きさです。

腫瘤の位置から尾側乳腺の腫瘍と思われます。

腫瘤の内部を確認するためにエコー検査を実施しました。



腫瘤の内部には液体(漿液か血液か膿かは判断できません)が貯留しています。

下写真がエコー像です。

黄色矢印が腫瘤内の液体(黒い領域)を示します。



エコー検査の結果から乳腺腫瘍であることは間違いなく、飼主様の了解を頂き摘出手術を実施することとなりました。

手術前にレントゲン撮影を行い、肺野に乳腺腫瘍が転移していないことを確認しました。


さて、ラッキーちゃんにイソフルランによる全身麻酔をかけます。



患部の剃毛処置をします。



剃毛をすると腫瘍の大きさが把握できると思います。





下写真黄色矢印で示しているのが乳腺腫瘍です。





慎重に患部を切皮していきます。



乳腺は血管が多数走行してますので、電気メス(バイポーラ)で止血と同時に患部を切開して行きます。



少しづつ腫瘍の全容が現れて来ました。



乳腺に走行している太い血管については、バイクランプでシーリング処置をします。



腫瘍は2つの乳腺(右第2,3乳房)に跨る形で発生しており、乳腺下の筋肉層までの浸潤は認められませんでした。









乳腺ごとまとめて腫瘍の摘出が完了しました。



少しドレープをずらして、患部を撮影しました。

腫瘍自体が大きいこととある程度のマージンを取った点で、皮膚欠損は大きなエリアを占めているのがお分かり頂けると思います。



患部の皮膚には、テンションをかけての縫合が必要となりました。



皮膚縫合は無事終了しました。



全身麻酔から覚醒したばかりのラッキーちゃんです。



覚醒も無事出来て、ひとまず安心です。





下写真は摘出した乳腺腫瘍です。

長軸は7㎝ちかくの大きさがありました。



短軸は4.5㎝あります。



右第2、3乳房の乳首が認められます(黄色丸)。

第2と3乳房間に生じた乳腺腫瘍です。



エコー像ではこの内部に液体が貯留しているのが分かっていましたので、メスで割を入れてみました。

下写真のように内部からは、大量の滲出液が出て来ました。





病理検査の写真(中等倍率)です。

内部が空洞状になった腫瘤は、異型性の明らかな上皮細胞の胞巣状・索状の管状増殖で構成されていました。



高倍率写真です。

腫瘍細胞(乳腺の分泌上皮細胞)は分裂頻度が非常に高く、悪性度の高い腫瘍と病理医からの診断でした。

局所的にここまで増大している点と周辺の脈管内に腫瘍細胞の浸潤が認められない点から、遠隔転移の可能性は低いそうです。

今後は定期的に健診が必要です。



術後、抜糸に来院されたラッキーちゃんです。

術後の経過も良好です。



ウサギも犬同様、早い時期(1歳未満)に避妊手術を受けることで乳腺腫瘍を高率に回避出来ます。

肺に転移するケースもありますので、未避妊ウサギは要注意です。



ラッキーちゃん、お疲れ様でした!




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2018年7月 4日 水曜日

ウサギの子宮腺癌(その7)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのはウサギの子宮腺癌です。

これまでにも多くの子宮腺癌の症例をご紹介させて頂きました。

これも、避妊手術を早期に実施することで回避することのできる疾病であることを、なるべく多くの飼主様に知って頂くために載せております。


ミニレッキスのミミちゃん(8歳、雌、体重3.0kg)は半年前から血尿が続くとのことで来院されました。





年齢からおそらくは子宮疾患が関与していると推察され、レントゲン撮影を行いました。

下写真の黄色丸の部位から子宮のマス(腫瘤)の存在が疑われます。

肺野には肺腺癌を疑う所見はありません。



半年間、血尿が不定期に出たり、治まったりを繰り返していたとのことです。

元気食欲はあるとのことで、手術に十分体力的にも耐えられると判断し、卵巣・子宮全摘出手術を勧めさせていただきました。


ミミちゃんをイソフルランによる維持麻酔で寝かせているところです。



患部の剃毛をします。



ウサギのような草食動物の場合は、手術台を平面のままでいますと胃腸の重さで横隔膜が圧迫されて、場合により心拍が停止することもあります。

それを防止する意味もあり、手術台を少し傾斜させて手術に臨みます。



腹筋を切開します。





開腹直後に腹腔内現れたのは、暗赤色を呈した子宮です。



下写真黄色丸が右子宮角に発生した腫瘤です。

おそらく子宮腺癌と思われます。

かなり大きな腫瘤であることがお分かり頂けると思います。



拡大像です。



卵巣の動静脈をバイクランプを用いてシーリングします。





80℃の熱で変性した動静脈や脂肪をメスで離断していきます。



卵巣動静脈や子宮間膜からの出血は全くありません。



摘出した卵巣・子宮を体外に出した写真です。





うっ血色は子宮角内に血液が貯留してることを意味します。



子宮頚部を鉗子で挟んで外科鋏で離断します。





子宮頚部の離断端を縫合して卵巣・子宮全摘出は終了です。

下写真で縫合部の下部は膀胱です。



次いで、腹筋を吸収糸で縫合します。



皮膚をナイロン糸で縫合します。



全ての処置が終了して、イソフルランの流入を停止します。

なお、下写真でスタッフが肉垂(頚部のマフラーのような脂肪の溜まってる部位)をつまんでいるのは、肉垂の自重で気道が圧迫され呼吸不全を起こすのを防ぐためです。



麻酔導入時に鎮静化のため投薬したメデトミジンを中和するためにアチパメゾールを静脈から投薬します。



数分内に覚醒します。



体を起こすところまで意識が戻って来ました。



完全に覚醒したミミちゃんです。



ミミちゃんは3日ほど入院の後、退院されました。

手術後には血尿は止まり、また退院後も元気・食欲も良好です。



下写真は抜糸のため、2週間後に来院されたミミちゃんです。



バリカンで剃毛した跡は、既に下毛が生え始めています。



抜糸が完了しました。





さて、前出の手術中の写真で黄色の丸で囲んだ右子宮角の腫瘤状病変について病理検査を実施しました。

結果として、多発性子宮腺癌(子宮内膜癌)であることが判明しました。

下写真はその病変部を切開したところです。



断面は子宮壁が肥厚・膨隆して血管が密に走行しています。



子宮角の他の部位にも腫瘍性の腫瘤が形成されていました。



顕微鏡の所見です(低倍)。

子宮内膜はびまん性に過形成されています。



中拡大像です。



強拡大像です。

異型性の明らかな上皮細胞(癌細胞)の腺管状・乳頭状増殖が特徴です。




子宮腺癌は良く見られる自然発生性腫瘍です。

この腫瘍の発生率は加齢とともに上昇していきます。

2~3歳の雌ウサギの子宮腺癌発生率は4%前後ですが、5~6歳では発生率は80%前後に上昇したという報告があります。

いずれにせよ、なるべく早い時期(1歳位までに)に避妊手術を受けて頂き、子宮腺癌にならないよう気を付けて頂きたいと思います。

子宮腺癌から腫瘍が肺に転移する事例もあります。

今回、半年と言う長い期間の血尿とのことですから、腫瘍の腹腔内播種はなかったようで幸いでした。

ミミちゃん、お疲れ様でした!







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2017年4月28日 金曜日

ウサギの陰嚢ヘルニア

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのはウサギの陰嚢ヘルニアです。



陰嚢ヘルニアとは精巣の精管・精巣動静脈が腹腔内へ入っていく孔を鼠径輪(そけいりん)と呼びます。

イラストで説明しますと下図のようになります。




この鼠径輪に何らかの原因で腹圧が上昇して、鼠径輪が広がり膀胱等の腹腔内臓器が脱出し、陰嚢内に納まる状態を陰嚢ヘルニアと呼びます。



脱出した臓器が膀胱であると会陰ヘルニア同様、排尿障害がおこり尿毒症に至る場合も考えられ、緊急処置が必要になることがあります。



ホーランドロップのラテ君(7歳、雄、体重2.6kg)は1週間くらい前から排尿がスムーズに出来ない、陰嚢が大きく腫大してきた、ということで来院されました。

下写真の黄色丸が陰嚢ヘルニアと思われる部位です。



さらにこの部位を拡大した写真です。

黄色丸の陰嚢が腫大した部位と赤矢印の右側陰嚢です。

右側陰嚢は床面との干渉か、ラテ君の自咬によるものか、炎症を起こして排膿しているのが分かります。



陰嚢をまずはレントゲンで撮影しました。

下写真の黄色丸は膀胱です。

下2枚共に膀胱が腹腔内に存在していなくて皮下、いわゆる陰嚢内に存在しているのが分かります。

膀胱内が白く描出されているのは、尿中に炭酸カルシウムなどの結晶が大量に排出されているためです。





加えてエコーの検査を実施しました。

下に白く描出されている高エコーの膀胱内容物(黄色矢印)は高カルシウムの結晶が尿中に排出され、あたかも汚泥のように膀胱内に沈渣(スラッジ)してるのが分かります。



膀胱内スラッジの場合、汚泥の量が多ければ当然排尿困難になり、腹圧をかけて排尿するようになります。

いきんで排尿を重ねるごとに鼠径輪から膀胱が飛び出して、陰嚢ヘルニアになったものと考えられます。


ラテちゃんの全身状態は今のところ問題はありませんが、すでに排尿障害が認められますから陰嚢ヘルニアを整復手術することにしました。

ラテちゃんに全身麻酔を施します。



ずいぶんと左陰嚢が腫大しているのがお分かり頂けると思います。



尿道内にカテーテルを挿入して尿を吸引してみたのですが、尿の粘稠度が高く吸引することが出来ません。

さらに膀胱内の炎症が伴っているようでカテーテル内に出血が吸引されました(黄色矢印)。





まず先に去勢を実施します。



左右の精巣を摘出します。





次に左側の陰嚢に切開を加えます。



弾力性のある陰嚢内の物体を皮膚切開部に向けて圧迫します。



圧迫して出て来た物は思った通りの膀胱でした。



膀胱の外側から見ても膀胱内には黄土色の粘稠性の高い尿が詰まっています。



膀胱を圧迫している間に汚泥尿(スラッジ)が外陰部から排尿されています(黄色丸)。



次に膀胱を切開して、内容物を排出して膀胱内洗浄を行います。



膀胱を圧迫すると汚泥尿がゆっくりと排出されます。



大量の汚泥尿が出て来ます。



汚泥尿の殆どを圧排した後に膀胱切開部から生理食塩水を注入して洗浄します。







切開した膀胱を縫合します。





次に膀胱を鼠径輪から腹腔内へ戻します。

下写真の黄色丸が拡張した鼠径輪です。



膀胱を指先で腹腔内へ押し戻しました。



再脱出を防ぐために鼠径輪を縫合します。



これで陰嚢ヘルニア整復手術は終了です。



皮膚縫合の後が生々しいですが、膀胱が再脱出しなければ、今後排尿障害の心配はありません。





手術後のラテ君です。

まだ麻酔からの半覚醒状態です。



手術翌日のラテ君です。

動き回ることも出来るようになりました。







退院当日(術後4日目)のラテ君です。

床面との干渉もあり、縫合部が若干腫れています。



ラテ君は術後、排尿もスムーズに出来るようになりました。

スラッジ(汚泥状尿結晶)の生成を防ぐためには、イネ科乾草を中心の食生活を維持して頂きたいと思います。

ラテ君お疲れ様でした!






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2016年4月21日 木曜日

ウサギの子宮水腫(その2・著しき高度水腫)

こんにちは 院長の伊藤です。


この時期は動物病院は繁忙期になります。

狂犬病ワクチン接種やフィラリア予防等などで飼主の皆様には、長時間御待ち頂きご迷惑をおかけしてます。

私自身も連日の手術でブログを更新することが出来ずにいます。

読者の皆様にしばらく新作をお届けできなくてすみませんでした。

本日、やっと載せることが出来ます。

ご紹介させて頂きますのはウサギの子宮水腫です。

かなり進行して、よくこれだけのものが腹腔に納まっていたなという高度の子宮水腫です。



ミニウサギのハナちゃん(雌、7歳)は突然、倒れるとのことで来院されました。



診察中、陰部から出血が認められた(下写真)ので子宮疾患を疑いました。



まずはエコーで腹部をチェックします。

下のエコー写真で、黄色矢印は子宮の中に水が貯留しているのを示します。

加えて黄色丸は子宮内の腫瘤を示します。



いずれにせよ、ハナちゃんは子宮疾患、特に高度の子宮水腫に罹患してます。

かなり子宮が腫れているため、血流の循環障害で失神が起きたのかもしれません。

手術に耐えられるか、血液検査(下写真)を実施して問題なかったので外科的に卵巣子宮を摘出することとしました。



いつも通り、橈側皮静脈に点滴用の留置針を入れます。



腹部が腫大しているため、あまり全身状態は良好とは言えません。



麻酔前投薬としてメデトミジン・ケタラールを投薬し、その後イソフルランで維持麻酔します。



麻酔が安定してきましたので、早速手術に移ります。





腹筋を切開したところで大きな子宮が顔を表しました。





卵巣動静脈(下写真黄色丸)をいつものごとくバイクランプでシーリングします。







シーリングした卵巣動静脈は縫合糸で結紮することなく、メスで離断でき出血はありません。





両側の卵巣を離断して、子宮角から子宮体までを体外に出したところです。

子宮自体がすでにうっ血色を呈しています。



ついに子宮頚部を縫合糸で結紮してメスで離断します。



腹筋・皮膚を縫合して、手術は終了です。



摘出した子宮とハナちゃんを並べて比較しました。

ハナちゃんの体重が1.5kgで子宮の重さは250gでした。

いかに子宮水腫が大きいものであるか、お分かり頂けると思います。



イソフルランを切りますと、ハナちゃんはほどなく覚醒を始めました。



覚醒直後のハナちゃんです。

お腹がかなりスッキリしましたね。

ただあれだけの大きな子宮水腫ということは、循環血流量も一挙に減少することを意味しますので、これからが要注意です。

ショック死することもあり得ます。



術後3時間のハナちゃんです。

活動性も出て来ました。





さて摘出した子宮です。



子宮角の内容は血漿を主体とした血液成分から構成されてます(下写真青矢印)。

そして変性壊死した子宮内膜が膨隆(下写真黄色矢印)しています。



一部、子宮内膜に腺癌も認められました。



病変部をスタンプ染色しました。

子宮内膜の腫瘍細胞が認められます。



子宮内膜細胞がすでに壊死・融解を起こしてます。



ハナちゃんは術後5日目に退院して頂きました。

食欲も十分あり、排便排尿も問題ありません。

我々に対する威嚇・攻撃性も出て来ました。

退院当日のハナちゃんです。



退院10日後に抜糸のため、来院されたハナちゃんです。

傷口も綺麗に癒合してます。





元気に回復されて、ハナちゃん本当に良かったです。

多くの子宮水腫摘出手術を経験してきましたが、今回はトップクラスの子宮腫大でした。

最後に雌のウサギはシニア世代になると今回の様に産科疾患が多発します。

1歳までに避妊手術を受けられることをお奨めします。


ハナちゃん、お疲れ様でした!




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