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感染症/うさぎ

2012年1月27日 金曜日

ウサギのエンセファリトゾーン症

当院の外来患者でウサギの占める割合は犬についで高く、昨今のウサギブームを確実に反映している感があります。
最近、そのウサギの疾患の中でも斜頚という症状で来院されるウサギが増えています。

斜頚とは首を斜めに曲げて、その状態が続くものを言います。
当然のことながら、姿勢を維持するのが困難で、倒れてしまうウサギもいます。
さらに悪化すると体を回転する(ローリング)する個体もいます。

この斜頚は病名ではなく、症状を現しています。
正しくはウサギの前庭疾患と呼称されます。
この前庭疾患は末梢性(パスツレラ菌等の細菌感染によるもの)と中枢性のものとあります。
中枢性前庭疾患で特に注意するべき疾患にエンセファリトゾーン症(Ez)があります。

Ez症はEncephalitozoon cuniculi という微胞子虫が引き起こす疾病です。
Ezは中枢神経系や腎臓に感染し、以下に挙げるような症状を示します。

1:斜頸(眼球振とう)
2:四肢不全麻痺、起立困難
3:旋回(ローリング)、転倒
4:ブドウ膜炎


Ezの診断の確定診断は死後の病理組織検査です。
しかし、それでは治療に結びつきません。
確定診断とならない場合もありますが、血清学的検査(IgG抗体検査)は有用とされています。
抗体価が320倍なら感染であり、40倍以下なら非感染と診断診断されます。
ところが、実際はその中間である40~160倍のグレーゾーンであることが非常に多くて、診断に悩むところです。
結局,Ez(中枢性前庭疾患)と他の細菌感染(末梢性前庭疾患)も考慮して治療を進めることが多いです。


Ez治療法としては、フェンベンダゾール(FBZ)を投薬します。
EZ感染の初期ステージであれば、斜頚や眼振は1週間で完治する場合もあれば、半年以上を要する場合もあります。

下の写真は、軽度の斜頚で来院されたウサギです。
外耳炎・中耳炎の既往歴もなく、末梢性前庭疾患の可能性は低く感じました。





次に眼を良く診てみますと前眼部の肉芽腫性ブドウ膜炎が認められました。
この点はEz症を裏付ける所見です。




このウサギ君は、数週間のFBZ投薬で斜頚も完治しました。
場合によっては、斜頚が後遺症として残るケースも多いです。


さらに別件のウサギ君ですが、重度の斜頚および回転を認める症状です。
来院された段階で食餌も自分で食べることができなくて、流動食による強制給餌が必要でした。
FBZを始めとする内科的治療も長期戦に及ぶことになります。
問題は、ウサギ君自身がそのストレスに耐えられるのかという問題があります。
飼い主様もウサギ君の介護指導が必要です。
特に一日中寝てばかりですから、床ずれ対策や排泄物による感染予防も必要です。
回転運動が酷い場合は、多くは眼球を傷つけ角膜炎を併発します。
残念ながらこのウサギ君は治療の甲斐なく亡くなられました。





EZの感染経路は母ウサギからの胎盤感染もあるとされていますが、感染個体の腎臓から尿中に排出されるスポアという病原体を摂取することで感染が成立します。
スポアは乾燥に強く、1~2ヶ月間環境中で感染力を持つようです。
もし、多頭飼育されている中で斜頚のある個体が出たら、消毒や飼育環境の衛生管理をしっかりしないと全頭に感染が及ぶ恐れがあります。
いづれにしても、このEz症は不治の病ではありません。
先に述べた症状で疑わしいと感じたなら早期に病院で受診され、治療を開始して頂きたく思います。




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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

2011年9月26日 月曜日

ウサギの梅毒

皆様は梅毒という病気をご存知でしょうか?
ヒトでは大昔からの代表的な性病に挙げられています。
一方、ウサギには、このヒト梅毒の病原体であるTreponema pallidumと類似したTreponema paraluiscuniculiによって起こるウサギ梅毒(ウサギスピロヘータ病)という疾患があります。
家畜や犬・猫にはない疾病だけに見過ごされがちな病気です。
ヒトにウサギから感染することはありません。
あくまでウサギの間での感染とお考えください。

このウサギ梅毒は交尾によって感染が成立します。
しかし、性的に成熟していない若年ウサギでも感染が起こります。
これは、母ウサギがすでに梅毒の感染を受けており、胎児の時に母子感染を受けたものです。
当院ではほとんどの罹患ウサギは母子感染による若齢ウサギです。
子ウサギの本症の発病は生後2.5~3.0カ月齢に集中するとされます。


症状は皮膚粘膜部である鼻孔周囲、口唇周囲、眼瞼周囲、包皮・陰唇、肛門に皮膚病変として現れます。
病変部には、潰瘍・びらん、水抱、紅斑、かさぶたが認められます。
特に鼻孔周囲の炎症が強ければ、頻繁にくしゃみをします。
以下の写真は、まだ生後3カ月齢の子ウサギですが、梅毒の感染を受け当院で治療中です。
鼻孔周囲と陰部のびらん・潰瘍が認められます。









治療法としては、クロラムフェニコールという抗生剤を数週間投薬します。
ヒトではペニシリンが特効薬とされていますが、ウサギのような草食獣ではペニシリンは腸内細菌にダメージをあたえることが多く、加えてクロストリジウムという芽胞菌を増殖させ、腸性毒血症を招くため投薬は禁忌です。
投薬により、皮膚病変が完治しても、さらにあと2週間は投薬を続けます。
これによって、さらに何年かのちに梅毒の再発を未然に防ぐことが出来ます。

投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

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