アーカイブシリーズ
2022年5月16日 月曜日
アーカイブシリーズ リスザルのターバンヘッド(骨格壊血症)
こんにちは 院長の伊藤です。
ゴールデンウィークも終わり、祝祭日も診察している当院としてはホッとしている所です。
ゴールデンウィーク中に受診された飼主様におかれましては、3,4時間待ちと大変ご迷惑をおかけしました。
さて、本日は趣向を変えまして、霊長目オマキザル科のリスザルについての記事を載せます。
動物種によっては、栄養学的欠乏で大変な疾病に至る場合があります。
今回のリスザルもその一例です。
それでは、アーカイブシリーズをどうぞご覧下さい。
こんにちは 院長の伊藤です。
当院は基本的に霊長類の診察は行っていません。
それは、当院がショッピングモール内にありますので、何かの折に病院から逃走してモール内で捕り物沙汰になりますと責任問題となるからです。
それでも、治療が必要で性格がおとなしく、飼主様が確実に保定できる場合に限ってのみ診察します。
そんな霊長類のサルの中でも、新世界サルに分類されるリスザルについてコメントさせて頂きます。
リスザルの福君(3歳、雄)は、頭が大きく変形してきたとのことで来院されました。

頭部を確認しますと皮下に液体が貯留しています。
下写真黄色丸の様に頭が変形しているかのように腫大しています。

側面です。

上から見ると、額から後頭部にかけて腫大しているのがお分かり頂けると思います。

なぜ福君はこのような容貌になってしまったのでしょう。
この症状はリスザルでは比較的遭遇することの多いターバンヘッドと呼ばれる症状です。
サル類は旧世界ザルと新世界ザルに分かれ、リスザルは新世界ザルに属します。
新世界ザルはビタミンとカルシウムの要求量が多く、バランスの悪い食生活を背景にしたビタミン欠乏症は多いです。
犬や猫などは自身でビタミンCを合成する能力があるのですが、モルモットやサル、ヒトは合成できない動物です。
したがって、食餌にビタミンCが必ず入っていなければなりません。
このターバンヘッドはビタミンC欠乏により引き起こされます。
ビタミンCは血管の構造・機能の保持や類骨形成に重要なコラーゲン合成に関与しています。
特にリスザルではビタミンC欠乏で骨膜出血が引き起こされ、血腫が形成されます。
血腫は時として巨大化し、あたかもターバンを頭部に巻きつけたよな外貌(ターバンヘッド)を呈します。

頭部の骨の状態を確認するため、レントゲン撮影を実施しました。
下写真の黄色矢印は血腫で腫脹した頭部です。

下写真では一部骨膜が破たんして骨新生しています(黄色矢印)。

骨の表面を覆う骨膜は、骨折時に障害を受けてその部位の骨新生を促すといった機能を持ちます。
しかし、ターバンヘッドの場合は骨膜の血管が破たんして出血が起こり、血腫が形成されて、その圧迫で新たにあらぬ方向・部位に骨が形成されてしまいます。
結果として、頭部や顔面が変形していく場合がありますので、状況に応じて過剰に新生した骨組織を削って行ったり、整形処置が必要となるケースもあります。
頭部血腫が福君の場合、進行してましたので血腫対策として皮下から血液を吸引して抜くこととしました。





福君は性格が穏やかで興奮することなく、素直に処置を受け入れてくれました。
頭部血腫の吸引血液は25mlに及びました。
ただ体重が950gという軽量なので、これ以上吸引すると貧血をおこしたり、ショック状態に陥っては大変なので終了と終了としました。
下写真の血液吸引後の福君は、頭部がすっきりしたのがお分かり頂けると思います。
残念ながら、この3日後に頭部の血腫は同じくらいに貯留してしまいました。

治療法としては、アスコルビン酸(25mg/kg/day)を投薬します。
福君の場合、ショップにいる頃からドッグフードに多少の栄養分を添加したフードを与えられていたとのこと。
リスザルの場合は、30~60日間ビタミンC欠乏が続くとターバンヘッドが発症するとされています。
現在、福君はモンキーフードを給餌してもらい栄養学的な問題点は改善されました。
しばらくは、アスコルビン酸の投薬は続きます。
福君、しっかり治していきましょう。
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ゴールデンウィークも終わり、祝祭日も診察している当院としてはホッとしている所です。
ゴールデンウィーク中に受診された飼主様におかれましては、3,4時間待ちと大変ご迷惑をおかけしました。
さて、本日は趣向を変えまして、霊長目オマキザル科のリスザルについての記事を載せます。
動物種によっては、栄養学的欠乏で大変な疾病に至る場合があります。
今回のリスザルもその一例です。
それでは、アーカイブシリーズをどうぞご覧下さい。
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当院は基本的に霊長類の診察は行っていません。
それは、当院がショッピングモール内にありますので、何かの折に病院から逃走してモール内で捕り物沙汰になりますと責任問題となるからです。
それでも、治療が必要で性格がおとなしく、飼主様が確実に保定できる場合に限ってのみ診察します。
そんな霊長類のサルの中でも、新世界サルに分類されるリスザルについてコメントさせて頂きます。
リスザルの福君(3歳、雄)は、頭が大きく変形してきたとのことで来院されました。

頭部を確認しますと皮下に液体が貯留しています。
下写真黄色丸の様に頭が変形しているかのように腫大しています。

側面です。

上から見ると、額から後頭部にかけて腫大しているのがお分かり頂けると思います。

なぜ福君はこのような容貌になってしまったのでしょう。
この症状はリスザルでは比較的遭遇することの多いターバンヘッドと呼ばれる症状です。
サル類は旧世界ザルと新世界ザルに分かれ、リスザルは新世界ザルに属します。
新世界ザルはビタミンとカルシウムの要求量が多く、バランスの悪い食生活を背景にしたビタミン欠乏症は多いです。
犬や猫などは自身でビタミンCを合成する能力があるのですが、モルモットやサル、ヒトは合成できない動物です。
したがって、食餌にビタミンCが必ず入っていなければなりません。
このターバンヘッドはビタミンC欠乏により引き起こされます。
ビタミンCは血管の構造・機能の保持や類骨形成に重要なコラーゲン合成に関与しています。
特にリスザルではビタミンC欠乏で骨膜出血が引き起こされ、血腫が形成されます。
血腫は時として巨大化し、あたかもターバンを頭部に巻きつけたよな外貌(ターバンヘッド)を呈します。

頭部の骨の状態を確認するため、レントゲン撮影を実施しました。
下写真の黄色矢印は血腫で腫脹した頭部です。

下写真では一部骨膜が破たんして骨新生しています(黄色矢印)。

骨の表面を覆う骨膜は、骨折時に障害を受けてその部位の骨新生を促すといった機能を持ちます。
しかし、ターバンヘッドの場合は骨膜の血管が破たんして出血が起こり、血腫が形成されて、その圧迫で新たにあらぬ方向・部位に骨が形成されてしまいます。
結果として、頭部や顔面が変形していく場合がありますので、状況に応じて過剰に新生した骨組織を削って行ったり、整形処置が必要となるケースもあります。
頭部血腫が福君の場合、進行してましたので血腫対策として皮下から血液を吸引して抜くこととしました。





福君は性格が穏やかで興奮することなく、素直に処置を受け入れてくれました。
頭部血腫の吸引血液は25mlに及びました。
ただ体重が950gという軽量なので、これ以上吸引すると貧血をおこしたり、ショック状態に陥っては大変なので終了と終了としました。
下写真の血液吸引後の福君は、頭部がすっきりしたのがお分かり頂けると思います。
残念ながら、この3日後に頭部の血腫は同じくらいに貯留してしまいました。

治療法としては、アスコルビン酸(25mg/kg/day)を投薬します。
福君の場合、ショップにいる頃からドッグフードに多少の栄養分を添加したフードを与えられていたとのこと。
リスザルの場合は、30~60日間ビタミンC欠乏が続くとターバンヘッドが発症するとされています。
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しばらくは、アスコルビン酸の投薬は続きます。
福君、しっかり治していきましょう。
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2022年3月 1日 火曜日
アーカイブシリーズ ウサギの子宮腺癌(その7)
こんにちは 院長の伊藤です。
アーカイブシリーズ ウサギの子宮腺癌をご紹介します。
今回でシリーズ7回目となります。
子宮腺癌と言っても、7症例あれば7通りの発症の経過、子宮病変の相違があります。
ウサギのオーナー様の参考になれば幸いです。
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのはウサギの子宮腺癌です。
これまでにも多くの子宮腺癌の症例をご紹介させて頂きました。
これも、避妊手術を早期に実施することで回避することのできる疾病であることを、なるべく多くの飼主様に知って頂くために載せております。
ミニレッキスのミミちゃん(8歳、雌、体重3.0kg)は半年前から血尿が続くとのことで来院されました。


年齢からおそらくは子宮疾患が関与していると推察され、レントゲン撮影を行いました。
下写真の黄色丸の部位から子宮のマス(腫瘤)の存在が疑われます。
肺野には肺腺癌を疑う所見はありません。

半年間、血尿が不定期に出たり、治まったりを繰り返していたとのことです。
元気食欲はあるとのことで、手術に十分体力的にも耐えられると判断し、卵巣・子宮全摘出手術を勧めさせていただきました。
ミミちゃんをイソフルランによる維持麻酔で寝かせているところです。

患部の剃毛をします。

ウサギのような草食動物の場合は、手術台を平面のままでいますと胃腸の重さで横隔膜が圧迫されて、場合により心拍が停止することもあります。
それを防止する意味もあり、手術台を少し傾斜させて手術に臨みます。

腹筋を切開します。


開腹直後に腹腔内現れたのは、暗赤色を呈した子宮です。

下写真黄色丸が右子宮角に発生した腫瘤です。
おそらく子宮腺癌と思われます。
かなり大きな腫瘤であることがお分かり頂けると思います。

拡大像です。

卵巣の動静脈をバイクランプを用いてシーリングします。


80℃の熱で変性した動静脈や脂肪をメスで離断していきます。

卵巣動静脈や子宮間膜からの出血は全くありません。

摘出した卵巣・子宮を体外に出した写真です。


うっ血色は子宮角内に血液が貯留してることを意味します。

子宮頚部を鉗子で挟んで外科鋏で離断します。


子宮頚部の離断端を縫合して卵巣・子宮全摘出は終了です。
下写真で縫合部の下部は膀胱です。

次いで、腹筋を吸収糸で縫合します。

皮膚をナイロン糸で縫合します。

全ての処置が終了して、イソフルランの流入を停止します。
なお、下写真でスタッフが肉垂(頚部のマフラーのような脂肪の溜まってる部位)をつまんでいるのは、肉垂の自重で気道が圧迫され呼吸不全を起こすのを防ぐためです。

麻酔導入時に鎮静化のため投薬したメデトミジンを中和するためにアチパメゾールを静脈から投薬します。

数分内に覚醒します。

体を起こすところまで意識が戻って来ました。

完全に覚醒したミミちゃんです。

ミミちゃんは3日ほど入院の後、退院されました。
手術後には血尿は止まり、また退院後も元気・食欲も良好です。
下写真は抜糸のため、2週間後に来院されたミミちゃんです。

バリカンで剃毛した跡は、既に下毛が生え始めています。

抜糸が完了しました。

さて、前出の手術中の写真で黄色の丸で囲んだ右子宮角の腫瘤状病変について病理検査を実施しました。
結果として、多発性子宮腺癌(子宮内膜癌)であることが判明しました。
下写真はその病変部を切開したところです。

断面は子宮壁が肥厚・膨隆して血管が密に走行しています。

子宮角の他の部位にも腫瘍性の腫瘤が形成されていました。

顕微鏡の所見です(低倍)。
子宮内膜はびまん性に過形成されています。

中拡大像です。

強拡大像です。
異型性の明らかな上皮細胞(癌細胞)の腺管状・乳頭状増殖が特徴です。

子宮腺癌は良く見られる自然発生性腫瘍です。
この腫瘍の発生率は加齢とともに上昇していきます。
2~3歳の雌ウサギの子宮腺癌発生率は4%前後ですが、5~6歳では発生率は80%前後に上昇したという報告があります。
いずれにせよ、なるべく早い時期(1歳位までに)に避妊手術を受けて頂き、子宮腺癌にならないよう気を付けて頂きたいと思います。
子宮腺癌から腫瘍が肺に転移する事例もあります。
今回、半年と言う長い期間の血尿とのことですから、腫瘍の腹腔内播種はなかったようで幸いでした。
ミミちゃん、お疲れ様でした!

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アーカイブシリーズ ウサギの子宮腺癌をご紹介します。
今回でシリーズ7回目となります。
子宮腺癌と言っても、7症例あれば7通りの発症の経過、子宮病変の相違があります。
ウサギのオーナー様の参考になれば幸いです。
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのはウサギの子宮腺癌です。
これまでにも多くの子宮腺癌の症例をご紹介させて頂きました。
これも、避妊手術を早期に実施することで回避することのできる疾病であることを、なるべく多くの飼主様に知って頂くために載せております。
ミニレッキスのミミちゃん(8歳、雌、体重3.0kg)は半年前から血尿が続くとのことで来院されました。


年齢からおそらくは子宮疾患が関与していると推察され、レントゲン撮影を行いました。
下写真の黄色丸の部位から子宮のマス(腫瘤)の存在が疑われます。
肺野には肺腺癌を疑う所見はありません。

半年間、血尿が不定期に出たり、治まったりを繰り返していたとのことです。
元気食欲はあるとのことで、手術に十分体力的にも耐えられると判断し、卵巣・子宮全摘出手術を勧めさせていただきました。
ミミちゃんをイソフルランによる維持麻酔で寝かせているところです。

患部の剃毛をします。

ウサギのような草食動物の場合は、手術台を平面のままでいますと胃腸の重さで横隔膜が圧迫されて、場合により心拍が停止することもあります。
それを防止する意味もあり、手術台を少し傾斜させて手術に臨みます。

腹筋を切開します。


開腹直後に腹腔内現れたのは、暗赤色を呈した子宮です。

下写真黄色丸が右子宮角に発生した腫瘤です。
おそらく子宮腺癌と思われます。
かなり大きな腫瘤であることがお分かり頂けると思います。

拡大像です。

卵巣の動静脈をバイクランプを用いてシーリングします。


80℃の熱で変性した動静脈や脂肪をメスで離断していきます。

卵巣動静脈や子宮間膜からの出血は全くありません。

摘出した卵巣・子宮を体外に出した写真です。


うっ血色は子宮角内に血液が貯留してることを意味します。

子宮頚部を鉗子で挟んで外科鋏で離断します。


子宮頚部の離断端を縫合して卵巣・子宮全摘出は終了です。
下写真で縫合部の下部は膀胱です。

次いで、腹筋を吸収糸で縫合します。

皮膚をナイロン糸で縫合します。

全ての処置が終了して、イソフルランの流入を停止します。
なお、下写真でスタッフが肉垂(頚部のマフラーのような脂肪の溜まってる部位)をつまんでいるのは、肉垂の自重で気道が圧迫され呼吸不全を起こすのを防ぐためです。

麻酔導入時に鎮静化のため投薬したメデトミジンを中和するためにアチパメゾールを静脈から投薬します。

数分内に覚醒します。

体を起こすところまで意識が戻って来ました。

完全に覚醒したミミちゃんです。

ミミちゃんは3日ほど入院の後、退院されました。
手術後には血尿は止まり、また退院後も元気・食欲も良好です。
下写真は抜糸のため、2週間後に来院されたミミちゃんです。

バリカンで剃毛した跡は、既に下毛が生え始めています。

抜糸が完了しました。

さて、前出の手術中の写真で黄色の丸で囲んだ右子宮角の腫瘤状病変について病理検査を実施しました。
結果として、多発性子宮腺癌(子宮内膜癌)であることが判明しました。
下写真はその病変部を切開したところです。

断面は子宮壁が肥厚・膨隆して血管が密に走行しています。

子宮角の他の部位にも腫瘍性の腫瘤が形成されていました。

顕微鏡の所見です(低倍)。
子宮内膜はびまん性に過形成されています。

中拡大像です。

強拡大像です。
異型性の明らかな上皮細胞(癌細胞)の腺管状・乳頭状増殖が特徴です。

子宮腺癌は良く見られる自然発生性腫瘍です。
この腫瘍の発生率は加齢とともに上昇していきます。
2~3歳の雌ウサギの子宮腺癌発生率は4%前後ですが、5~6歳では発生率は80%前後に上昇したという報告があります。
いずれにせよ、なるべく早い時期(1歳位までに)に避妊手術を受けて頂き、子宮腺癌にならないよう気を付けて頂きたいと思います。
子宮腺癌から腫瘍が肺に転移する事例もあります。
今回、半年と言う長い期間の血尿とのことですから、腫瘍の腹腔内播種はなかったようで幸いでした。
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2022年2月14日 月曜日
アーカイブシリーズ ウサギの子宮腺癌(その6)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日もウサギの子宮腺癌について、過去の記事から掲載させて頂きます。
ウサギの子宮腺癌というと血尿が真っ先に挙げられますが、小手先で止血剤や抗生剤で治まるということはありません。
他院でこれらの投薬を長期間された患者を診たことがありますが、残念ながら、その間に子宮腺癌が肺に転移し、肺腺癌を併発していました。
非常に残念な結末ですが、肺腺癌となると打つ手はありません。
犬猫なら放射線療法の選択肢もあるのでしょうが、私はウサギでの経験は残念ながらありません。
その点を鑑みながら、アーカイブシリーズをご覧いただければ幸いです。
こんにちは 院長の伊藤です。
ウサギの子宮疾患で死亡率が高いのは、子宮腺癌です。
子宮に腫瘍が出来ますと腺癌に侵された子宮内膜から出血が始まります。
多くのウサギは血尿から、飼主様が異常に気づくことが多いです。
ここで動物病院を受診して、幸いにも子宮腺癌と診断されて外科的に卵巣子宮摘出手術を成功されれば理想です。
現実には、他院で犬猫と同様に膀胱炎の診断をされ、抗生剤と止血剤の内服を長期にわたり継続して、腹腔が子宮腺癌で膨満した状態で、セカンドオピニオンとして当院を来院されるケースが多いです。
こうなると、待ったなしの外科手術になります。
少しでも、飼主様にウサギの子宮腺癌についての見識をお持ちいただけるよう子宮腺癌の症例をご紹介させて頂いてます。
今回、ご紹介しますのはモシャちゃん(8歳6か月)です。


モシャちゃんは福島で震災に遭い、飼い主様のご実家である名古屋に戻られたという経験を持つウサギです。
去年の12月から血尿が続くとのことで他院を受診したそうですが、子宮疾患の疑いはないと否定されたそうです。
セカンドオピニオンで当院を受診された時には、出血の量も多くなっていました。
下写真はモシャちゃんをお預かりしてすぐに出た血尿です。

お腹の膨満感はありませんが、歯茎等の可視粘膜は貧血色を呈しています。
直ぐにエコーをしました。
下のエコー像の黄色丸で囲んだ部位が腫脹している子宮です。
かなり、膨大しており周囲の腸を圧迫しています。


この段階で子宮腺癌の確定診断は出来ましたので、そのまま手術で摘出することにしました。
貧血が酷い場合は、ある程度内科的治療を施して、体力が手術に耐えられるまで回復を待つこともあります。
モシャちゃんの場合は、これ以上内科的治療を継続することでの回復は望めないと判断しての手術です。
いつものことながら、静脈確保のための留置針処置です。

イソフルランで麻酔導入します。

モシャちゃんは長毛種で下腹部を剃毛するのが大変です。


正中切開でメスを入れます。

腹膜を切開したところで、すでに腫大した子宮が外からでも認識できます。

腺癌で腫大した子宮です。

健常な子宮の6~7倍くらい腫大しています。

卵巣動静脈も子宮間膜の血管も怒張しており、これもいつもの通りバイクランプのシーリングでほとんど無出血で両側卵巣を離断します。


最後に子宮頚部を縫合糸で結紮して子宮を摘出します。

あとは腹膜・腹筋・皮膚と縫合して終了です。




モシャちゃんは手術にしっかり耐えてくれました。
麻酔の覚醒も速やかです。

無事、手術は終了しました。

今回摘出した卵巣と子宮です。

右側子宮角です。

左側子宮角です。

子宮壁を切開してました。
腺癌が子宮内膜へ浸潤しており、子宮壁の一部は炎症から変性壊死してます。


この病変部をスタンプ染色しました。
腺癌の腫瘍細胞が認められます。

術後のモシャちゃんの経過は良好で3日後には退院して頂きました。
下写真は2週間後のモシャちゃんです。
抜糸のため来院されました。
首に付けたエリザベスカラーが邪魔みたいですが、傷口の保護のためには止むを得ません。

剃毛部した部位は既に下毛が生えてきています。

皮膚も綺麗に癒合してます。
抜糸後の皮膚です。

モシャちゃんは術後食欲が見違えるほどに旺盛になり、活動的になったそうです。
また血尿も術後はありません。

毎回、このウサギの子宮腺癌の紹介の文末に記載してますが、5歳以降の血尿は子宮疾患を疑って下さい。
そして速やかに、ウサギを診て頂ける動物病院を受診して下さい。
モシャちゃんの飼主様は5歳以降の避妊手術は危険でできないと思い込んでみえました。
モシャちゃんは8歳を過ぎた高齢でしたが、手術は可能でした。
救える命は、頑張って救ってあげたいと思います。
そして、できるなら1歳位には雌ウサギには避妊手術を受けさせてあげて下さい。
モシャちゃん、お疲れ様でした!

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本日もウサギの子宮腺癌について、過去の記事から掲載させて頂きます。
ウサギの子宮腺癌というと血尿が真っ先に挙げられますが、小手先で止血剤や抗生剤で治まるということはありません。
他院でこれらの投薬を長期間された患者を診たことがありますが、残念ながら、その間に子宮腺癌が肺に転移し、肺腺癌を併発していました。
非常に残念な結末ですが、肺腺癌となると打つ手はありません。
犬猫なら放射線療法の選択肢もあるのでしょうが、私はウサギでの経験は残念ながらありません。
その点を鑑みながら、アーカイブシリーズをご覧いただければ幸いです。
こんにちは 院長の伊藤です。
ウサギの子宮疾患で死亡率が高いのは、子宮腺癌です。
子宮に腫瘍が出来ますと腺癌に侵された子宮内膜から出血が始まります。
多くのウサギは血尿から、飼主様が異常に気づくことが多いです。
ここで動物病院を受診して、幸いにも子宮腺癌と診断されて外科的に卵巣子宮摘出手術を成功されれば理想です。
現実には、他院で犬猫と同様に膀胱炎の診断をされ、抗生剤と止血剤の内服を長期にわたり継続して、腹腔が子宮腺癌で膨満した状態で、セカンドオピニオンとして当院を来院されるケースが多いです。
こうなると、待ったなしの外科手術になります。
少しでも、飼主様にウサギの子宮腺癌についての見識をお持ちいただけるよう子宮腺癌の症例をご紹介させて頂いてます。
今回、ご紹介しますのはモシャちゃん(8歳6か月)です。


モシャちゃんは福島で震災に遭い、飼い主様のご実家である名古屋に戻られたという経験を持つウサギです。
去年の12月から血尿が続くとのことで他院を受診したそうですが、子宮疾患の疑いはないと否定されたそうです。
セカンドオピニオンで当院を受診された時には、出血の量も多くなっていました。
下写真はモシャちゃんをお預かりしてすぐに出た血尿です。

お腹の膨満感はありませんが、歯茎等の可視粘膜は貧血色を呈しています。
直ぐにエコーをしました。
下のエコー像の黄色丸で囲んだ部位が腫脹している子宮です。
かなり、膨大しており周囲の腸を圧迫しています。


この段階で子宮腺癌の確定診断は出来ましたので、そのまま手術で摘出することにしました。
貧血が酷い場合は、ある程度内科的治療を施して、体力が手術に耐えられるまで回復を待つこともあります。
モシャちゃんの場合は、これ以上内科的治療を継続することでの回復は望めないと判断しての手術です。
いつものことながら、静脈確保のための留置針処置です。

イソフルランで麻酔導入します。

モシャちゃんは長毛種で下腹部を剃毛するのが大変です。


正中切開でメスを入れます。

腹膜を切開したところで、すでに腫大した子宮が外からでも認識できます。

腺癌で腫大した子宮です。

健常な子宮の6~7倍くらい腫大しています。

卵巣動静脈も子宮間膜の血管も怒張しており、これもいつもの通りバイクランプのシーリングでほとんど無出血で両側卵巣を離断します。


最後に子宮頚部を縫合糸で結紮して子宮を摘出します。

あとは腹膜・腹筋・皮膚と縫合して終了です。




モシャちゃんは手術にしっかり耐えてくれました。
麻酔の覚醒も速やかです。

無事、手術は終了しました。

今回摘出した卵巣と子宮です。

右側子宮角です。

左側子宮角です。

子宮壁を切開してました。
腺癌が子宮内膜へ浸潤しており、子宮壁の一部は炎症から変性壊死してます。


この病変部をスタンプ染色しました。
腺癌の腫瘍細胞が認められます。

術後のモシャちゃんの経過は良好で3日後には退院して頂きました。
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首に付けたエリザベスカラーが邪魔みたいですが、傷口の保護のためには止むを得ません。

剃毛部した部位は既に下毛が生えてきています。

皮膚も綺麗に癒合してます。
抜糸後の皮膚です。

モシャちゃんは術後食欲が見違えるほどに旺盛になり、活動的になったそうです。
また血尿も術後はありません。

毎回、このウサギの子宮腺癌の紹介の文末に記載してますが、5歳以降の血尿は子宮疾患を疑って下さい。
そして速やかに、ウサギを診て頂ける動物病院を受診して下さい。
モシャちゃんの飼主様は5歳以降の避妊手術は危険でできないと思い込んでみえました。
モシャちゃんは8歳を過ぎた高齢でしたが、手術は可能でした。
救える命は、頑張って救ってあげたいと思います。
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2022年1月31日 月曜日
アーカイブシリーズ ウサギの子宮腺癌(その4)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日も引き続き、アーカイブシリーズ ウサギの子宮腺癌をご紹介させて頂きます。
ウサギは自然界では、肉食獣の食糧源でもあり、生態系を維持するためにも被捕食者としての絶対数が必要となります。
結果、繁殖がウサギにとっては、重要な能力であり、周年発情というスタイルを取ります。
周年発情とは、一旦アダルトになると死ぬまで発情し続け、繁殖を繰り返すことを意味します(発情期自体がありません)。
自然界では、意義のあることでもペットとして飼育される場合、繁殖は基本的には必要ありません。
そのため、1歳を過ぎれば卵巣・子宮に負担をかける生活を送ることになり、4歳以降になると子宮腺癌の発症率が80%以上となります。
実際、臨床の現場でどのように子宮腺癌に対応しているかを皆様にご覧いただけたらと思います。
こんにちは 院長の伊藤です。
ウサギの子宮腺癌は過去にも何例もご紹介してきました。
今回は事前の検査(エコー・レントゲン)でも見つけられなかった症例です。
ネザーランド・ドワーフのてんちゃん(雌、5歳、1.2kg)は床に出血跡があり、どこか異常があるのではと受診されました。

4,5歳以降の血尿は子宮疾患が絡んでいるといつも申し上げています。
今回もその疑いで検査を進めさせていただきました。
まず尿検査では潜血反応は陰性、顕微鏡所見でも尿路結石の結晶や子宮腺癌の細胞は陰性となりました。
エコーでは膀胱内の結石はなく、子宮自体の腫大も認められません。
レントゲン所見は以下の通りです。


ただ子宮疾患でも初期のステージであれば、子宮腫大もなく、かつ不定期に出血が尿中に認められることはあります。
止血剤と抗生剤の投薬でしばし、経過観察としました。
その1か月後、てんちゃんの経過は良好ですが飼い主様の要望もあり、避妊手術を実施することとなりました。
いつものごとく、点滴の留置針を入れます。


腹筋を切開して開腹します。

下写真黄色丸が子宮です。
見た感じはきれいな正常な子宮に見えます。

バイクランプで卵巣動脈をシーリングしてます。

左右の子宮角もバランスが取れています。

子宮頚部を結紮します。

腹腔内に出血がないか、他の臓器に異常がないかを最後に確認します。
特に異常な所見は認められませんでした。

ステープラーで皮膚縫合します。


これにて避妊手術は終了です。
覚醒直前のてんちゃんです。

次に摘出した子宮を検査します。
よく注意して触診していくと、わずかですが小さな腫瘤が認められました(下黄色丸)。

側面からのアングルです。

この気になる腫瘤にメスを入れて(黄色矢印)、スタンプ染色しました。

下写真は低倍率の顕微鏡写真です。

次は高倍率写真です。
青紫に染まっているのが子宮腺癌の細胞です。

当初、床に出血跡が認められる程度の所見で、その後は出血がなかったというのは、まだ子宮腺癌が初期のステージであったということです。
これから、どんどん腺癌が増殖していくステージに移行したことでしょう。
この段階で早めに子宮を全摘出できて良かったと思います。
腫瘍の存在を摘出してから気付くというケースもあることを忘れないで下さい。
翌日、てんちゃんは無事退院されました。


4.5歳以降の血尿は子宮疾患を疑って下さい。
そして、可能な限り1歳までに雌ウサギは避妊手術を受けて下さい。
それが子宮疾患、特に子宮腺癌に罹患しないで済む唯一の選択肢です。
てんちゃん、お疲れ様でした!
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本日も引き続き、アーカイブシリーズ ウサギの子宮腺癌をご紹介させて頂きます。
ウサギは自然界では、肉食獣の食糧源でもあり、生態系を維持するためにも被捕食者としての絶対数が必要となります。
結果、繁殖がウサギにとっては、重要な能力であり、周年発情というスタイルを取ります。
周年発情とは、一旦アダルトになると死ぬまで発情し続け、繁殖を繰り返すことを意味します(発情期自体がありません)。
自然界では、意義のあることでもペットとして飼育される場合、繁殖は基本的には必要ありません。
そのため、1歳を過ぎれば卵巣・子宮に負担をかける生活を送ることになり、4歳以降になると子宮腺癌の発症率が80%以上となります。
実際、臨床の現場でどのように子宮腺癌に対応しているかを皆様にご覧いただけたらと思います。
こんにちは 院長の伊藤です。
ウサギの子宮腺癌は過去にも何例もご紹介してきました。
今回は事前の検査(エコー・レントゲン)でも見つけられなかった症例です。
ネザーランド・ドワーフのてんちゃん(雌、5歳、1.2kg)は床に出血跡があり、どこか異常があるのではと受診されました。

4,5歳以降の血尿は子宮疾患が絡んでいるといつも申し上げています。
今回もその疑いで検査を進めさせていただきました。
まず尿検査では潜血反応は陰性、顕微鏡所見でも尿路結石の結晶や子宮腺癌の細胞は陰性となりました。
エコーでは膀胱内の結石はなく、子宮自体の腫大も認められません。
レントゲン所見は以下の通りです。


ただ子宮疾患でも初期のステージであれば、子宮腫大もなく、かつ不定期に出血が尿中に認められることはあります。
止血剤と抗生剤の投薬でしばし、経過観察としました。
その1か月後、てんちゃんの経過は良好ですが飼い主様の要望もあり、避妊手術を実施することとなりました。
いつものごとく、点滴の留置針を入れます。


腹筋を切開して開腹します。

下写真黄色丸が子宮です。
見た感じはきれいな正常な子宮に見えます。

バイクランプで卵巣動脈をシーリングしてます。

左右の子宮角もバランスが取れています。

子宮頚部を結紮します。

腹腔内に出血がないか、他の臓器に異常がないかを最後に確認します。
特に異常な所見は認められませんでした。

ステープラーで皮膚縫合します。


これにて避妊手術は終了です。
覚醒直前のてんちゃんです。

次に摘出した子宮を検査します。
よく注意して触診していくと、わずかですが小さな腫瘤が認められました(下黄色丸)。

側面からのアングルです。

この気になる腫瘤にメスを入れて(黄色矢印)、スタンプ染色しました。

下写真は低倍率の顕微鏡写真です。

次は高倍率写真です。
青紫に染まっているのが子宮腺癌の細胞です。

当初、床に出血跡が認められる程度の所見で、その後は出血がなかったというのは、まだ子宮腺癌が初期のステージであったということです。
これから、どんどん腺癌が増殖していくステージに移行したことでしょう。
この段階で早めに子宮を全摘出できて良かったと思います。
腫瘍の存在を摘出してから気付くというケースもあることを忘れないで下さい。
翌日、てんちゃんは無事退院されました。


4.5歳以降の血尿は子宮疾患を疑って下さい。
そして、可能な限り1歳までに雌ウサギは避妊手術を受けて下さい。
それが子宮疾患、特に子宮腺癌に罹患しないで済む唯一の選択肢です。
てんちゃん、お疲れ様でした!
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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL
2022年1月21日 金曜日
アーカイブシリーズ ウサギの子宮腺癌(その2)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日も引き続き、ウサギの子宮腺癌についてアーカイブから掲載させて頂きます。
雌ウサギはシニア世代(4~5歳)になると子宮疾患が絡んでくることが多いです。
日常的にも遭遇する産科症例ですが、飼主様の目線からこんな症状が見受けられたら、早めの受診お願い致します。
ウサギの子宮疾患は色々な症状を示します。
発病初期は陰部からの出血例が70%位を示すと言われています。
来院される時は多くの飼主様が血尿が出ると申告されるケースが多いです。
血尿というとどうしても膀胱炎や尿石症をイメージしてしまいますが、4歳以降の雌ウサギであればむしろ子宮疾患を疑って欲しいと思います。
本日ご紹介するのは、ライオンラビットのらんちゃんです。
らんちゃんは数週間前から、血尿が出ているとのことで来院されました。

尿検査では潜血反応は陰性でした。
膀胱を早速エコー検査したところ、特に結石もなく出血の形跡もありません。
むしろ5歳を過ぎた雌と言いうことで、子宮疾患を疑って子宮を入念に検査しました。
結果は下の通りです。
黄色丸で示した部分が子宮の断面を描出しています。
子宮角に実質性の腫瘤があるようです。

腫瘍の可能性が大とみて手術に移ります。


黄色矢印の部分は子宮角にあたりますが、ここに非常に硬い結節が認められました。


卵巣動静脈をバイクランプでシールします。
ついで子宮頚部をシールしてメスでカットします。


子宮頚部の切断面をしっかり縫合します。


手術は無事終了しました。
摘出した卵巣と子宮が下の写真です。

緑の矢印が卵巣で黄色丸が子宮角のうち腫瘤を呈した部分です。摘出子宮全体がどす黒い色をしています。
この腫瘤をカットした写真です。

この部位をスタンプ染色しました。


結局、子宮内膜の過形成と子宮腺腫癌であることが判明しました。
らんちゃんの術後の経過は良好で、血尿も止まり食欲も回復しました。
退院当日のらんちゃんです。


毎回申し上げていますが、4,5歳以降になると子宮疾患のウサギが増えます。
犬猫と同様、できる限り早い年齢(1歳未満くらい)で避妊手術を受けられることをお勧めいたします。
本日も引き続き、ウサギの子宮腺癌についてアーカイブから掲載させて頂きます。
雌ウサギはシニア世代(4~5歳)になると子宮疾患が絡んでくることが多いです。
日常的にも遭遇する産科症例ですが、飼主様の目線からこんな症状が見受けられたら、早めの受診お願い致します。
ウサギの子宮疾患は色々な症状を示します。
発病初期は陰部からの出血例が70%位を示すと言われています。
来院される時は多くの飼主様が血尿が出ると申告されるケースが多いです。
血尿というとどうしても膀胱炎や尿石症をイメージしてしまいますが、4歳以降の雌ウサギであればむしろ子宮疾患を疑って欲しいと思います。
本日ご紹介するのは、ライオンラビットのらんちゃんです。
らんちゃんは数週間前から、血尿が出ているとのことで来院されました。

尿検査では潜血反応は陰性でした。
膀胱を早速エコー検査したところ、特に結石もなく出血の形跡もありません。
むしろ5歳を過ぎた雌と言いうことで、子宮疾患を疑って子宮を入念に検査しました。
結果は下の通りです。
黄色丸で示した部分が子宮の断面を描出しています。
子宮角に実質性の腫瘤があるようです。

腫瘍の可能性が大とみて手術に移ります。


黄色矢印の部分は子宮角にあたりますが、ここに非常に硬い結節が認められました。


卵巣動静脈をバイクランプでシールします。
ついで子宮頚部をシールしてメスでカットします。


子宮頚部の切断面をしっかり縫合します。


手術は無事終了しました。
摘出した卵巣と子宮が下の写真です。

緑の矢印が卵巣で黄色丸が子宮角のうち腫瘤を呈した部分です。摘出子宮全体がどす黒い色をしています。
この腫瘤をカットした写真です。

この部位をスタンプ染色しました。


結局、子宮内膜の過形成と子宮腺腫癌であることが判明しました。
らんちゃんの術後の経過は良好で、血尿も止まり食欲も回復しました。
退院当日のらんちゃんです。


毎回申し上げていますが、4,5歳以降になると子宮疾患のウサギが増えます。
犬猫と同様、できる限り早い年齢(1歳未満くらい)で避妊手術を受けられることをお勧めいたします。
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