犬の疾病
犬の脾臓全摘手術(組織球性肉腫)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、犬の脾臓を全摘出した症例です。
何らかの原因で脾臓が著しく腫大した場合、腹腔内の脾臓破裂を防ぐために全摘出を選択する場合があります。
その詳細については、過去の記事でチワワの脾臓摘出手術(結節性過形成)で載せてありますので参考にして下さい。
ゴールデンレトリバーの雑種であるレオン君(12歳10か月齢、体重23.5kg、去勢済)は食欲不振、嘔吐、下腹部の腫れが主徴で来院されました。
血液検査を行い、白血球数が21,800/μl及びCRP(炎症性蛋白)が7.0㎎/dlオーバーと明らかに体内で炎症が起こっているのが判明しました。
ちなみに赤血球数、ヘモグロビン値、ヘマトクリット値は正常値であり、貧血を疑う所見はありませんでした。
触診で左側下腹部の腫れが気になりましたのでレントゲン撮影を実施しました。
黄色丸で囲んである部位が大きく腫大していおり、明らかに異常です。
該当する臓器は脾臓であると思われます。
引き続き、エコー検査をしました。
エコー像では無エコーと低エコーの領域で占められる病変部が脾臓に認められました。
脾臓をエコー下で針生検して細胞診を行いました。
検査センターの病理医に調べて頂き、結果が1週間後に通知されました。
結果は、高悪性度のリンパ腫や赤血球貪食性組織球肉腫の疑いはない、つまり悪性腫瘍の疑いは低いとのことでした。
いつものことながら、細胞診と実際に摘出した臓器の病理学的診断は違うことが多いです。
細胞診の結果を待っている1週間で、レオン君の全身状態は次第に悪化してきました。
試験的に開腹し、私の肉眼的判断で脾臓を摘出するべきか否かを判断させて頂くこととしました。
脾臓を摘出するにしても、少しでも全身状態の良好な早期に取るべきであると思います。
レオン君に全身麻酔を施します。
開腹を行います。
腹筋を切開したところで非常に大きな塊(黄色矢印)が顔を出しました。
思っていた以上に脾臓が大きく腫大しています。
手荒に扱うと内部で大出血しますので、慎重に体外へ持ち上げます。
最初に顔を出したのは脾臓表面に突出した隆起の一部であることが判明しました。
その隆起の下部に腫大した脾臓が控えていました。
下写真は腫大した脾臓の全容です。
脾臓に大網(脂肪組織)が絡まっており、残念ながら脾臓の高度腫大は、写真では伝わらないかと思います。
この脾臓の状態を診て、全摘出することにしました。
脾臓は胃と複数の血管で繋がっています。
短胃動脈、左胃大網動静脈、脾動静脈の3本の血管をバイクランプ(下黄色矢印)でシーリングしていきます。
従来は縫合糸で血管をまとめて結紮し、血管を離断していたのですが、バイクランプを使用することで確実な血管シーリングが可能となりました。
脾臓摘出にかかる時間も大幅に短縮することが出来ます。
このようにして脾臓の全摘出は終了です。
脾臓摘出後、他の腹腔内臓器・リンパ節等に腫瘍の伝播を確認しましたが、明らかな転移巣は認められませんでした。
高度に腫大した脾臓を摘出することで、レオン君のお腹は随分スッキリ、細くなりました。
出血も最小限に留めることが出来、手術は無事終了しました。
レオン君、お疲れ様でした!
摘出した脾臓です。
高度に腫大(特に縦方向)した脾臓であることが分かります。
脾臓の重量は2kgありました。
腫瘍であることは疑いなく、メスで患部を切開したところです。
この組織片を病理検査に出しました。
病理検査の結果では、異型性を示す紡錘形・多角形細胞が分裂している像(下黄色丸)が多く認められます。
病理検査では組織球性肉腫という診断でした。
組織球性肉腫は間質樹状細胞由来の悪性腫瘍とされます。
脾臓以外にもリンパ節、肝臓、肺、関節周囲などにも発生することが多いです。
この組織球肉腫の好発犬種として、レトリーバー、ウェルシュコーギー、バーニーズマウンテンドッグなどが挙げられます。
レオン君は開腹して確認した限りでは、腹腔内の腫瘍は認められませんが、顕微鏡レベルでは何とも言えません。
念のため、内科的にも抗がん剤の投薬をさせて頂き、経過を診ていく予定です。
術後3日目のレオン君です。
食欲も戻り、表情も良くなってきました。
レオン君は1週間の入院の後、元気に退院することが出来ました。
ベティ(写真中央)と避妊手術で入院中のマリリンちゃん(青色☆)とレオン君(黄色☆)のスリーショットです。
みんなでレオン君の退院を祝っての一コマです。
レオン君は今後、組織球性肉腫がどんな挙動を示すか、経過観察していく必要があります。
レオン君、頑張っていきましょう!
にほんブログ村ランキングにエントリーしています。
宜しかったら、こちらをクリックして頂けるとブログ更新の励みとなります。
本日ご紹介しますのは、犬の脾臓を全摘出した症例です。
何らかの原因で脾臓が著しく腫大した場合、腹腔内の脾臓破裂を防ぐために全摘出を選択する場合があります。
その詳細については、過去の記事でチワワの脾臓摘出手術(結節性過形成)で載せてありますので参考にして下さい。
ゴールデンレトリバーの雑種であるレオン君(12歳10か月齢、体重23.5kg、去勢済)は食欲不振、嘔吐、下腹部の腫れが主徴で来院されました。
血液検査を行い、白血球数が21,800/μl及びCRP(炎症性蛋白)が7.0㎎/dlオーバーと明らかに体内で炎症が起こっているのが判明しました。
ちなみに赤血球数、ヘモグロビン値、ヘマトクリット値は正常値であり、貧血を疑う所見はありませんでした。
触診で左側下腹部の腫れが気になりましたのでレントゲン撮影を実施しました。
黄色丸で囲んである部位が大きく腫大していおり、明らかに異常です。
該当する臓器は脾臓であると思われます。
引き続き、エコー検査をしました。
エコー像では無エコーと低エコーの領域で占められる病変部が脾臓に認められました。
脾臓をエコー下で針生検して細胞診を行いました。
検査センターの病理医に調べて頂き、結果が1週間後に通知されました。
結果は、高悪性度のリンパ腫や赤血球貪食性組織球肉腫の疑いはない、つまり悪性腫瘍の疑いは低いとのことでした。
いつものことながら、細胞診と実際に摘出した臓器の病理学的診断は違うことが多いです。
細胞診の結果を待っている1週間で、レオン君の全身状態は次第に悪化してきました。
試験的に開腹し、私の肉眼的判断で脾臓を摘出するべきか否かを判断させて頂くこととしました。
脾臓を摘出するにしても、少しでも全身状態の良好な早期に取るべきであると思います。
レオン君に全身麻酔を施します。
開腹を行います。
腹筋を切開したところで非常に大きな塊(黄色矢印)が顔を出しました。
思っていた以上に脾臓が大きく腫大しています。
手荒に扱うと内部で大出血しますので、慎重に体外へ持ち上げます。
最初に顔を出したのは脾臓表面に突出した隆起の一部であることが判明しました。
その隆起の下部に腫大した脾臓が控えていました。
下写真は腫大した脾臓の全容です。
脾臓に大網(脂肪組織)が絡まっており、残念ながら脾臓の高度腫大は、写真では伝わらないかと思います。
この脾臓の状態を診て、全摘出することにしました。
脾臓は胃と複数の血管で繋がっています。
短胃動脈、左胃大網動静脈、脾動静脈の3本の血管をバイクランプ(下黄色矢印)でシーリングしていきます。
従来は縫合糸で血管をまとめて結紮し、血管を離断していたのですが、バイクランプを使用することで確実な血管シーリングが可能となりました。
脾臓摘出にかかる時間も大幅に短縮することが出来ます。
このようにして脾臓の全摘出は終了です。
脾臓摘出後、他の腹腔内臓器・リンパ節等に腫瘍の伝播を確認しましたが、明らかな転移巣は認められませんでした。
高度に腫大した脾臓を摘出することで、レオン君のお腹は随分スッキリ、細くなりました。
出血も最小限に留めることが出来、手術は無事終了しました。
レオン君、お疲れ様でした!
摘出した脾臓です。
高度に腫大(特に縦方向)した脾臓であることが分かります。
脾臓の重量は2kgありました。
腫瘍であることは疑いなく、メスで患部を切開したところです。
この組織片を病理検査に出しました。
病理検査の結果では、異型性を示す紡錘形・多角形細胞が分裂している像(下黄色丸)が多く認められます。
病理検査では組織球性肉腫という診断でした。
組織球性肉腫は間質樹状細胞由来の悪性腫瘍とされます。
脾臓以外にもリンパ節、肝臓、肺、関節周囲などにも発生することが多いです。
この組織球肉腫の好発犬種として、レトリーバー、ウェルシュコーギー、バーニーズマウンテンドッグなどが挙げられます。
レオン君は開腹して確認した限りでは、腹腔内の腫瘍は認められませんが、顕微鏡レベルでは何とも言えません。
念のため、内科的にも抗がん剤の投薬をさせて頂き、経過を診ていく予定です。
術後3日目のレオン君です。
食欲も戻り、表情も良くなってきました。
レオン君は1週間の入院の後、元気に退院することが出来ました。
ベティ(写真中央)と避妊手術で入院中のマリリンちゃん(青色☆)とレオン君(黄色☆)のスリーショットです。
みんなでレオン君の退院を祝っての一コマです。
レオン君は今後、組織球性肉腫がどんな挙動を示すか、経過観察していく必要があります。
レオン君、頑張っていきましょう!
にほんブログ村ランキングにエントリーしています。
宜しかったら、こちらをクリックして頂けるとブログ更新の励みとなります。
投稿者 院長 | 記事URL
犬の尿石症(シュウ酸カルシウム尿石)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日は、犬の尿石症についてコメントさせて頂きます。
以前、リン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト)尿石について、症例報告しましたのでご興味のある方はこちらを参照下さい。
さて、犬の尿路結石には、ストルバイト、シュウ酸カルシウム、尿酸塩、リン酸カルシウム,シスチンなどがあります。
尿石症は、尿路である腎臓、尿管、膀胱、尿道などに先に挙げた結石が形成されることによる疾患です。
結石の大きさは様々ですが、物理的な刺激により尿路の炎症を起こしたり、尿管や尿道に大きな結石がつまることにより尿が排
出できなくなって、尿毒症や膀胱破裂など重篤な病気に発展する場合があります。
尿石症の好発犬種は存在し、ミニチュア・シュナウザーやシーズー、ダルメシアン、ヨークシャー・テリアなどが挙げられます。
本日ご紹介しますのは、シュウ酸カルシウムの尿石症です。
シーズーのマロン君(12歳4か月、去勢済)は8年ほど前にストルバイト尿石症に罹患しているのが判明しました。
その後、療法食を継続して頂き、尿石症に関する問題は落ち着いているかに見えました。
今回、マロン君は排尿困難でトイレで辛そうにいきんでるとのことで来院されました。
尿石症の確認を含めて、レントゲン撮影を実施しました。
下のレントゲン写真にあるように黄色丸が膀胱石です。
そして尿道内へと降りてきた尿道結石が赤丸で囲んであります。
膀胱内に10個の尿石が認められ、骨盤腔から下に降りてきた尿道に1個尿石が認められます。
膀胱内尿石は直径が4㎜ほどの均一な大きさです。
おそらくマロン君が排尿困難になっているのは、尿道に降りてきた赤丸で囲んである1個の尿道結石が原因と思われます。
実はマロン君は、今回来院のひと月前に後足の跛行で来院されています。
その時撮影したレントゲン写真と比較してみましょう。
下のひと月前の写真では、膀胱内に11個の尿石が認められてます。
つまり、膀胱内尿石11個のうちの1個が、1か月の間に尿道に降り始めてしまったようです。
このひと月前の診察時に、尿石が問題を起こす前に外科的に摘出することをお勧めしてました。
今回は実際、尿道に降りてきた尿石が原因となって排尿障害を起こしていますから、この尿石を含めて11個の尿石を摘出することになりました。
翌日にマロン君の膀胱結石摘出を実施することとし、手術当日に尿道カテーテルを入れてみました。
膀胱まで容易にカテーテルがすんなりと入りました。
下は、その時のレントゲン写真です。
10個の尿石が膀胱内に依然、存在していますが、尿道へ降りていた結石が見当たりません。
どうやら、手術直前に排尿した時に一緒に結石が外に排出されたようです。
尿道内に降りてきて、尿道内閉塞すると尿道結石を解除するのが非常に難しくなります。
この点は不幸中の幸いです。
マロン君に全身麻酔をかけます。
正中切開で開腹します。
雄の場合、陰茎骨が正中部に位置してますので、その脇を切開します。
下写真は腹部から支持糸で牽引した膀胱です。
膀胱内の圧を下げるため、尿を注射器で吸引しましたところ、こげ茶色の血尿が採れました。
膀胱内結石により、膀胱炎が起こり血尿が生じています。
膀胱壁にメスで切開を加えます。
膀胱内部に存在する結石を一つずつ取り出していきます。
麻酔時に入れた尿道カテーテルから生理食塩水をフラッシュして膀胱内の結石を外部へ排出します。
結石を一つずつ確認して摘出します。
摘出した結石10個と小さな破片が摘出されました。
最終的に取り残しの結石は無いか、確認のためにレントゲンを撮りました。
黄色丸の部位は尿道カテーテルが入っている膀胱です。
結石は、膀胱内及び尿道内に存在していないのが確認できました。
切開した膀胱を縫合します。
縫合部から漏れがないか、生理食塩水を注射器より注入して確認します。
特に漏れもないので、膀胱を腹腔内に納め閉腹します。
膀胱に蓄尿による内圧をかけないために尿道カテーテルを留置します。
しばらくはマロン君は尿道カテーテルから排尿して頂きます。
麻酔から覚醒したマロン君です。
術中にサンプリングした尿を顕微鏡で見たところ、シュウ酸カルシウムの1水和物が見つかりました(下写真黄色丸)。
下写真が今回摘出した結石です。
検査センターでどんなタイプの結石か調べてもらったところ、98%以上がシュウ酸カルシウムから構成されている尿石であることが判明しました。
シュウ酸カルシウム結石は、ヒトで良く見られる結石であり、ヒトの尿石の80%近くを占めるそうです。
一方、犬の尿石はアメリカでは80年代はストラバイトが80%でシュウ酸カルシウムは5%であるとの報告があります。
その後、90年代になるとストラバイトが34%、シュウ酸カルシウムが55%と増加傾向をしています。
食生活の変化もあってのことでしょう。
恐らく、日本でもアメリカと同様の傾向があると思われます。
ストラバイトを溶解する療法食の普及が、ストラバイト尿石の基となるマグネシウムの制限に一役買っているのかもしれません。
またシュウ酸カルシウム結石は、ストラバイトの様に療法食で容易に溶解できないため、外科的に摘出するしか摘出する方法がありません。
尿石は前述したようにストラバイトやシュウ酸カルシウムが単独で形成される場合もあれば、両方が混在する混合型も存在します。
マロン君はこの混合型であったようです。
今後は、混合型対応の療法食を継続して頂きます。
入院中も排尿は問題なくできるようになりました。
退院時のマロン君です。
飼い主様とのツーショットを最後に載せさせて頂きます。
マロン君、お疲れ様でした!
にほんブログ村ランキングにエントリーしています。
宜しかったら、こちらをクリックして頂けるとブログ更新の励みとなります。
本日は、犬の尿石症についてコメントさせて頂きます。
以前、リン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト)尿石について、症例報告しましたのでご興味のある方はこちらを参照下さい。
さて、犬の尿路結石には、ストルバイト、シュウ酸カルシウム、尿酸塩、リン酸カルシウム,シスチンなどがあります。
尿石症は、尿路である腎臓、尿管、膀胱、尿道などに先に挙げた結石が形成されることによる疾患です。
結石の大きさは様々ですが、物理的な刺激により尿路の炎症を起こしたり、尿管や尿道に大きな結石がつまることにより尿が排
出できなくなって、尿毒症や膀胱破裂など重篤な病気に発展する場合があります。
尿石症の好発犬種は存在し、ミニチュア・シュナウザーやシーズー、ダルメシアン、ヨークシャー・テリアなどが挙げられます。
本日ご紹介しますのは、シュウ酸カルシウムの尿石症です。
シーズーのマロン君(12歳4か月、去勢済)は8年ほど前にストルバイト尿石症に罹患しているのが判明しました。
その後、療法食を継続して頂き、尿石症に関する問題は落ち着いているかに見えました。
今回、マロン君は排尿困難でトイレで辛そうにいきんでるとのことで来院されました。
尿石症の確認を含めて、レントゲン撮影を実施しました。
下のレントゲン写真にあるように黄色丸が膀胱石です。
そして尿道内へと降りてきた尿道結石が赤丸で囲んであります。
膀胱内に10個の尿石が認められ、骨盤腔から下に降りてきた尿道に1個尿石が認められます。
膀胱内尿石は直径が4㎜ほどの均一な大きさです。
おそらくマロン君が排尿困難になっているのは、尿道に降りてきた赤丸で囲んである1個の尿道結石が原因と思われます。
実はマロン君は、今回来院のひと月前に後足の跛行で来院されています。
その時撮影したレントゲン写真と比較してみましょう。
下のひと月前の写真では、膀胱内に11個の尿石が認められてます。
つまり、膀胱内尿石11個のうちの1個が、1か月の間に尿道に降り始めてしまったようです。
このひと月前の診察時に、尿石が問題を起こす前に外科的に摘出することをお勧めしてました。
今回は実際、尿道に降りてきた尿石が原因となって排尿障害を起こしていますから、この尿石を含めて11個の尿石を摘出することになりました。
翌日にマロン君の膀胱結石摘出を実施することとし、手術当日に尿道カテーテルを入れてみました。
膀胱まで容易にカテーテルがすんなりと入りました。
下は、その時のレントゲン写真です。
10個の尿石が膀胱内に依然、存在していますが、尿道へ降りていた結石が見当たりません。
どうやら、手術直前に排尿した時に一緒に結石が外に排出されたようです。
尿道内に降りてきて、尿道内閉塞すると尿道結石を解除するのが非常に難しくなります。
この点は不幸中の幸いです。
マロン君に全身麻酔をかけます。
正中切開で開腹します。
雄の場合、陰茎骨が正中部に位置してますので、その脇を切開します。
下写真は腹部から支持糸で牽引した膀胱です。
膀胱内の圧を下げるため、尿を注射器で吸引しましたところ、こげ茶色の血尿が採れました。
膀胱内結石により、膀胱炎が起こり血尿が生じています。
膀胱壁にメスで切開を加えます。
膀胱内部に存在する結石を一つずつ取り出していきます。
麻酔時に入れた尿道カテーテルから生理食塩水をフラッシュして膀胱内の結石を外部へ排出します。
結石を一つずつ確認して摘出します。
摘出した結石10個と小さな破片が摘出されました。
最終的に取り残しの結石は無いか、確認のためにレントゲンを撮りました。
黄色丸の部位は尿道カテーテルが入っている膀胱です。
結石は、膀胱内及び尿道内に存在していないのが確認できました。
切開した膀胱を縫合します。
縫合部から漏れがないか、生理食塩水を注射器より注入して確認します。
特に漏れもないので、膀胱を腹腔内に納め閉腹します。
膀胱に蓄尿による内圧をかけないために尿道カテーテルを留置します。
しばらくはマロン君は尿道カテーテルから排尿して頂きます。
麻酔から覚醒したマロン君です。
術中にサンプリングした尿を顕微鏡で見たところ、シュウ酸カルシウムの1水和物が見つかりました(下写真黄色丸)。
下写真が今回摘出した結石です。
検査センターでどんなタイプの結石か調べてもらったところ、98%以上がシュウ酸カルシウムから構成されている尿石であることが判明しました。
シュウ酸カルシウム結石は、ヒトで良く見られる結石であり、ヒトの尿石の80%近くを占めるそうです。
一方、犬の尿石はアメリカでは80年代はストラバイトが80%でシュウ酸カルシウムは5%であるとの報告があります。
その後、90年代になるとストラバイトが34%、シュウ酸カルシウムが55%と増加傾向をしています。
食生活の変化もあってのことでしょう。
恐らく、日本でもアメリカと同様の傾向があると思われます。
ストラバイトを溶解する療法食の普及が、ストラバイト尿石の基となるマグネシウムの制限に一役買っているのかもしれません。
またシュウ酸カルシウム結石は、ストラバイトの様に療法食で容易に溶解できないため、外科的に摘出するしか摘出する方法がありません。
尿石は前述したようにストラバイトやシュウ酸カルシウムが単独で形成される場合もあれば、両方が混在する混合型も存在します。
マロン君はこの混合型であったようです。
今後は、混合型対応の療法食を継続して頂きます。
入院中も排尿は問題なくできるようになりました。
退院時のマロン君です。
飼い主様とのツーショットを最後に載せさせて頂きます。
マロン君、お疲れ様でした!
にほんブログ村ランキングにエントリーしています。
宜しかったら、こちらをクリックして頂けるとブログ更新の励みとなります。
投稿者 院長 | 記事URL
チワワのレッグペルテス病
こんにちは 院長の伊藤です。
本日はチワワのレッグペルテス病についてコメントさせて頂きます。
以前、トイプードルのレッグペルテスについて載せました。
その詳細はこちらをご覧ください。
レッグペルテスは成長期の小型犬に見られる疾患です。
平均生後6,7か月齢から後足の跛行(引きずる)が認められ、次第に悪化していくケースが多いです。
チワワのエイト君(1歳、去勢済)は左後足の跛行が気になるとのことで来院されました。
下写真のようにエイト君は左後足を拳上して、3本足で歩行しています。
まずはレントゲン撮影を実施しました。
エイト君が4か月前(当時8か月齢)の時、当院で別件でレントゲン撮影を行った時の写真です。
左の股関節(下写真黄色丸)は特に異常な所見が認められませんでした。
ところが、今回の写真は下の通りです。
下写真の左大腿骨頭が変形して、陰影が薄くなり、所どころ虫食い状態になっています(下写真黄色丸)。
反対側の健常な右大腿骨頭と比較して頂けるとその違いが明らかです。
エイト君は4か月の間に大腿骨骨頭部の変性が進行したことになります。
おそらく大腿骨頭が剥離骨折しているようです。
レッグペルテス病と診断し、治療法として大腿骨頭切除手術を実施することになりました。
これは大腿骨頚部を切除して、偽関節を形成させて歩行を可能にさせる手術です。
以下の手術の流れは、以前のコメントしたトイプードルのレッグペルテス病とほぼ同一です。
前足の留置針から麻酔導入剤を注入します。
気管挿管し、イソフルランで維持麻酔を行います。
エイト君の左臀部周辺を剃毛・消毒します。
大腿骨頭にアプローチするために皮膚切開から開始します。
大腿部から臀部には多くの筋肉層があり、これらのいくつかの筋肉(外側広筋、大腿筋膜、深殿筋など)を切開して、大腿骨頭にアプローチします。
下写真の黄色丸が脱臼した大腿骨頭です。
骨頭がすでに剥離骨折しています。
今回は残念ながら、鮮明な患部写真が取れませんでした。
術式の詳細な患部写真は、トイプードルのレッグペルテス病を参照にして下さい。
大腿骨頚部を振動鋸で切除します。
骨頚部を切除した跡の凸凹をラウンドバーで綺麗に研磨します(下写真黄色丸)。
最後に切離した各筋肉を縫合して終了となります。
下写真は、術後の患部(黄色丸)です。
麻酔覚醒直後のエイト君です。
切除した大腿骨頭頚部の離断面(赤矢印)です。
切除時に既に変性壊死して剥離した大腿骨頭(黄色矢印)です。
レッグペルテス病になると、大腿骨頭の血流が阻害されるため、大腿骨骨端の崩壊が生じます。
大腿骨近位の骨端線が閉鎖していない幼若犬では、大腿骨頭への血管供給を骨端血管のみに
依存しています。
この骨端血管の血流をレッグペルテス病は阻害するため、結果、大腿骨頭は無菌性壊死を起こします。
今回、エイト君は手術時には、既に大腿骨頭の壊死が進行していたと思われます。
退院直前のエイト君です。
エイト君は多少の患部をかばう感じは残っていますが、術後の経過は良好で歩行も普通にできます。
術後5か月のエイト君です。
左後足は問題なく日常生活を送ってます。
エイト君は油性脂漏症で、アトピーである点が今後の問題です。
エイト君、頑張って行きましょう!
にほんブログ村ランキングにエントリーしています。
宜しかったら、こちらをクリックして頂けるとブログ更新の励みとなります。
本日はチワワのレッグペルテス病についてコメントさせて頂きます。
以前、トイプードルのレッグペルテスについて載せました。
その詳細はこちらをご覧ください。
レッグペルテスは成長期の小型犬に見られる疾患です。
平均生後6,7か月齢から後足の跛行(引きずる)が認められ、次第に悪化していくケースが多いです。
チワワのエイト君(1歳、去勢済)は左後足の跛行が気になるとのことで来院されました。
下写真のようにエイト君は左後足を拳上して、3本足で歩行しています。
まずはレントゲン撮影を実施しました。
エイト君が4か月前(当時8か月齢)の時、当院で別件でレントゲン撮影を行った時の写真です。
左の股関節(下写真黄色丸)は特に異常な所見が認められませんでした。
ところが、今回の写真は下の通りです。
下写真の左大腿骨頭が変形して、陰影が薄くなり、所どころ虫食い状態になっています(下写真黄色丸)。
反対側の健常な右大腿骨頭と比較して頂けるとその違いが明らかです。
エイト君は4か月の間に大腿骨骨頭部の変性が進行したことになります。
おそらく大腿骨頭が剥離骨折しているようです。
レッグペルテス病と診断し、治療法として大腿骨頭切除手術を実施することになりました。
これは大腿骨頚部を切除して、偽関節を形成させて歩行を可能にさせる手術です。
以下の手術の流れは、以前のコメントしたトイプードルのレッグペルテス病とほぼ同一です。
前足の留置針から麻酔導入剤を注入します。
気管挿管し、イソフルランで維持麻酔を行います。
エイト君の左臀部周辺を剃毛・消毒します。
大腿骨頭にアプローチするために皮膚切開から開始します。
大腿部から臀部には多くの筋肉層があり、これらのいくつかの筋肉(外側広筋、大腿筋膜、深殿筋など)を切開して、大腿骨頭にアプローチします。
下写真の黄色丸が脱臼した大腿骨頭です。
骨頭がすでに剥離骨折しています。
今回は残念ながら、鮮明な患部写真が取れませんでした。
術式の詳細な患部写真は、トイプードルのレッグペルテス病を参照にして下さい。
大腿骨頚部を振動鋸で切除します。
骨頚部を切除した跡の凸凹をラウンドバーで綺麗に研磨します(下写真黄色丸)。
最後に切離した各筋肉を縫合して終了となります。
下写真は、術後の患部(黄色丸)です。
麻酔覚醒直後のエイト君です。
切除した大腿骨頭頚部の離断面(赤矢印)です。
切除時に既に変性壊死して剥離した大腿骨頭(黄色矢印)です。
レッグペルテス病になると、大腿骨頭の血流が阻害されるため、大腿骨骨端の崩壊が生じます。
大腿骨近位の骨端線が閉鎖していない幼若犬では、大腿骨頭への血管供給を骨端血管のみに
依存しています。
この骨端血管の血流をレッグペルテス病は阻害するため、結果、大腿骨頭は無菌性壊死を起こします。
今回、エイト君は手術時には、既に大腿骨頭の壊死が進行していたと思われます。
退院直前のエイト君です。
エイト君は多少の患部をかばう感じは残っていますが、術後の経過は良好で歩行も普通にできます。
術後5か月のエイト君です。
左後足は問題なく日常生活を送ってます。
エイト君は油性脂漏症で、アトピーである点が今後の問題です。
エイト君、頑張って行きましょう!
にほんブログ村ランキングにエントリーしています。
宜しかったら、こちらをクリックして頂けるとブログ更新の励みとなります。
投稿者 院長 | 記事URL
イングリッシュコッカースパニエルとルアー
こんにちは 院長の伊藤です。
いよいよ、当院も今年の診療は昨日で終了となりました。
一年を振り返ると、私はほぼ毎日手術をしていました。
手術で治って元気になられた子もいれば、力及ばず亡くなられた子もいます。
全ての動物たちが元気に過ごせるよう祈念いたします。
さて、本日ご紹介しますのは痛いお話です。
釣りのルアーをみなさんご存知でしょうか?
ルアーは、ルアーフィッシングでの釣りに使用する道具のひとつで、針が付いていて、動きや色、匂い、味などで、直接魚を誘う物の事を言います。
このルアーに興味を持って匂いを嗅いだりして、鼻や口に針が刺さったらどんな状況になるか、想像しただけでも怖いですね。
イングリッシュ・コッカ―スパニエルのえるちゃん(雌、5か月)はルアーの針が鼻に刺さったとのことで来院されました。
下写真の黄色矢印がルアーの針が鼻を貫通している部位です。
患部を拡大した写真です。
まずルアーの自重で針の返しが鼻に食い込みますので、針とルアー本体を離断します。
釣り針は返しが付いています。
この返しの部分が、魚の口などに食い込んだ時に針が外れぬよう工夫されています。
この時、無理に針を外そうとすると大きく組織を損傷します。
今回の様に鼻に刺さってしまうと無理に外そうとすれば、返しの部分で鼻腔内を傷つけ、予想外の出血を招きます。
そのため、刺入位置よりもさらに針を奥に突き刺して、返しの部分を鼻の外に突き出します(下写真)。
そして、返しの位置より針の付根に近い位置をニッパーでカットします。
下写真はニッパーでカットしたものです。
鼻腔内に刺入している針2か所をカットしますと後はすんなり針は下に引けば取れます。
下写真は針が抜けた瞬間です。
えるちゃんは患部からの出血はなく、思いのほか痛みも最小で済んだようです。
処置後、抗生剤と鎮痛剤を処方しました。
診察開始から5分で終了した処置ですが、生理的に痛々しいアクシデントでした。
えるちゃんは我慢強く、穏やかな性格であったのが幸いしました。
気が強い個体ですと麻酔処置が必要になったりしますが、それはそれで大変です。
取り出したルアーとその針です。
下写真黄色丸の針が鼻腔内に刺入しており、返しから上の部位をカットしました(黄色丸)。
最後に飼主様とのツーショットです。
えるちゃん、お疲れ様でした。
にほんブログ村ランキングにエントリーしています。
宜しかったら、こちらをクリックして頂けるとブログ更新の励みとなります。
投稿者 院長 | 記事URL
犬の口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日、ご紹介しますのは犬の口腔内に生じた悪性黒色腫の話です。
以前にもウサギの悪性黒色腫についてコメントさせて頂きました。
詳細はこちらをクリックして下さい。
犬の口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)は、最も良く見られる口腔内悪性腫瘍とされます。
通常、メラニンを伴う著しい色素沈着が見られる腫瘍です。
皮膚に発生するメラノーマは良性であることが多い一方で、口腔内メラノーマは大部分が悪性腫瘍と言われます。
メラノーマの発生年齢の平均は約11歳と報告され、高齢犬の疾患とされています。
メラノーマは高率で歯肉に発生します。
多くの飼主様は持続的な口臭や口腔内からの出血、嚥下困難を理由に来院されます。
ミックス犬のあずきちゃん(年齢不明、未避妊)は、口腔内に黒いできものがあり、次第に大きくなってきたとのことで来院されました。
あずきちゃんは迷い犬で、たまたま飼主様宅に迷い込んできたそうです。
そのため、実年齢は定かではありませんが、おそらく10歳は超えているでしょう。
下写真黄色丸が口の横にできた腫瘍です。
メラノーマによる悪臭があずきちゃんの口腔内から漂っています。
この腫瘍はどのようなタイプか細胞診を実施しました。
結果は口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)との病理医からの診断でした。
他の部位への転移がないか、各リンパ節を初め胸腔内のレントゲン撮影を実施しましたが、特に転移は認められませんでした。
口腔内メラノーマは転移率が高い一方で、外科手術を初期のステージから施せば苦痛の緩和のみでなく、生存期間を延長させることも可能です。
あずきちゃんは、外科的にこの口腔内メラノーマの摘出手術を受けられることになりました。
メラノーマに加えて、乳腺腫瘍もあり(下写真黄色丸)、これらの腫瘍を一度に摘出することになりました。
患部の拡大写真です。
乳腺腫瘍については、本来腫瘍の近傍の乳房も合わせて摘出するのが常なんですが、飼主様の希望もあり局所の腫瘍のみ摘出することとなりました。
強い力で患部を牽引すると千切れて出血が予想されましたので、バイクランプを使用して摘出することとしました。
大きな腫瘍ですので、栄養血管も腫瘍内に太いものが入り込んでいるため、バイクランプの80℃の過熱で血管をシーリングして短時間で摘出する予定です。
可能な限り健常な口腔粘膜とメラノーマの境界面をバイクランプでシーリングを実施して行きます。
バイクランプの過熱で、手術室は独特な焦げ臭い匂いで充満します。
さらに細かな止血・切開作業はバイポーラの電気メスで進めます。
メラノーマ(下写真黄色丸)を摘出しました。
さらに歯肉表面に浸潤していると思しき箇所には、半導体レーザーで焼烙します。
これで処置は終了です。
乳腺腫瘍も部分摘出完了です。
麻酔から覚醒したあずきちゃんです。
摘出したメラノーマです。
切開した断面です。
腫瘍の内部までメラニン色素が浸潤しています。
この断面をスタンプ染色して顕微鏡で確認しました。
強拡大像です。
腫瘍細胞の細胞質は色素顆粒が認められます(黄色矢印)。
今回の手術は口腔内ということもあり、場合によっては腫瘍が歯槽骨まで浸潤している可能もあります。
マージンを十分に確保して摘出することができない部位でもあり、今後再発する可能性も考えなくてはなりません。
あずきちゃんは外科手術の補助として、化学療法のうち内服薬でしばらくバックアップしていく予定です。
大変な手術でしたが、良く頑張ってくれました。
あずきちゃん、お疲れ様でした!
最後に飼主のお姉ちゃんたちとのショットです。
にほんブログ村にエントリーしています。
宜しかったら、こちらをクリックして頂けるとブログ更新の励みとなります。
本日、ご紹介しますのは犬の口腔内に生じた悪性黒色腫の話です。
以前にもウサギの悪性黒色腫についてコメントさせて頂きました。
詳細はこちらをクリックして下さい。
犬の口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)は、最も良く見られる口腔内悪性腫瘍とされます。
通常、メラニンを伴う著しい色素沈着が見られる腫瘍です。
皮膚に発生するメラノーマは良性であることが多い一方で、口腔内メラノーマは大部分が悪性腫瘍と言われます。
メラノーマの発生年齢の平均は約11歳と報告され、高齢犬の疾患とされています。
メラノーマは高率で歯肉に発生します。
多くの飼主様は持続的な口臭や口腔内からの出血、嚥下困難を理由に来院されます。
ミックス犬のあずきちゃん(年齢不明、未避妊)は、口腔内に黒いできものがあり、次第に大きくなってきたとのことで来院されました。
あずきちゃんは迷い犬で、たまたま飼主様宅に迷い込んできたそうです。
そのため、実年齢は定かではありませんが、おそらく10歳は超えているでしょう。
下写真黄色丸が口の横にできた腫瘍です。
メラノーマによる悪臭があずきちゃんの口腔内から漂っています。
この腫瘍はどのようなタイプか細胞診を実施しました。
結果は口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)との病理医からの診断でした。
他の部位への転移がないか、各リンパ節を初め胸腔内のレントゲン撮影を実施しましたが、特に転移は認められませんでした。
口腔内メラノーマは転移率が高い一方で、外科手術を初期のステージから施せば苦痛の緩和のみでなく、生存期間を延長させることも可能です。
あずきちゃんは、外科的にこの口腔内メラノーマの摘出手術を受けられることになりました。
メラノーマに加えて、乳腺腫瘍もあり(下写真黄色丸)、これらの腫瘍を一度に摘出することになりました。
患部の拡大写真です。
乳腺腫瘍については、本来腫瘍の近傍の乳房も合わせて摘出するのが常なんですが、飼主様の希望もあり局所の腫瘍のみ摘出することとなりました。
強い力で患部を牽引すると千切れて出血が予想されましたので、バイクランプを使用して摘出することとしました。
大きな腫瘍ですので、栄養血管も腫瘍内に太いものが入り込んでいるため、バイクランプの80℃の過熱で血管をシーリングして短時間で摘出する予定です。
可能な限り健常な口腔粘膜とメラノーマの境界面をバイクランプでシーリングを実施して行きます。
バイクランプの過熱で、手術室は独特な焦げ臭い匂いで充満します。
さらに細かな止血・切開作業はバイポーラの電気メスで進めます。
メラノーマ(下写真黄色丸)を摘出しました。
さらに歯肉表面に浸潤していると思しき箇所には、半導体レーザーで焼烙します。
これで処置は終了です。
乳腺腫瘍も部分摘出完了です。
麻酔から覚醒したあずきちゃんです。
摘出したメラノーマです。
切開した断面です。
腫瘍の内部までメラニン色素が浸潤しています。
この断面をスタンプ染色して顕微鏡で確認しました。
強拡大像です。
腫瘍細胞の細胞質は色素顆粒が認められます(黄色矢印)。
今回の手術は口腔内ということもあり、場合によっては腫瘍が歯槽骨まで浸潤している可能もあります。
マージンを十分に確保して摘出することができない部位でもあり、今後再発する可能性も考えなくてはなりません。
あずきちゃんは外科手術の補助として、化学療法のうち内服薬でしばらくバックアップしていく予定です。
大変な手術でしたが、良く頑張ってくれました。
あずきちゃん、お疲れ様でした!
最後に飼主のお姉ちゃんたちとのショットです。
にほんブログ村にエントリーしています。
宜しかったら、こちらをクリックして頂けるとブログ更新の励みとなります。
投稿者 院長 | 記事URL