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犬の疾病

犬の尿石症(シュウ酸カルシウム尿石)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日は、犬の尿石症についてコメントさせて頂きます。

以前、リン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト)尿石について、症例報告しましたのでご興味のある方はこちらを参照下さい。


さて、犬の尿路結石には、ストルバイト、シュウ酸カルシウム、尿酸塩、リン酸カルシウム,シスチンなどがあります。

尿石症は、尿路である腎臓、尿管、膀胱、尿道などに先に挙げた結石が形成されることによる疾患です。

結石の大きさは様々ですが、物理的な刺激により尿路の炎症を起こしたり、尿管や尿道に大きな結石がつまることにより尿が排

出できなくなって、尿毒症や膀胱破裂など重篤な病気に発展する場合があります。

尿石症の好発犬種は存在し、ミニチュア・シュナウザーやシーズー、ダルメシアン、ヨークシャー・テリアなどが挙げられます。



本日ご紹介しますのは、シュウ酸カルシウムの尿石症です。

シーズーのマロン君(12歳4か月、去勢済)は8年ほど前にストルバイト尿石症に罹患しているのが判明しました。

その後、療法食を継続して頂き、尿石症に関する問題は落ち着いているかに見えました。

今回、マロン君は排尿困難でトイレで辛そうにいきんでるとのことで来院されました。



尿石症の確認を含めて、レントゲン撮影を実施しました。

下のレントゲン写真にあるように黄色丸が膀胱石です。

そして尿道内へと降りてきた尿道結石が赤丸で囲んであります。



膀胱内に10個の尿石が認められ、骨盤腔から下に降りてきた尿道に1個尿石が認められます。

膀胱内尿石は直径が4㎜ほどの均一な大きさです。

おそらくマロン君が排尿困難になっているのは、尿道に降りてきた赤丸で囲んである1個の尿道結石が原因と思われます。



実はマロン君は、今回来院のひと月前に後足の跛行で来院されています。

その時撮影したレントゲン写真と比較してみましょう。

下のひと月前の写真では、膀胱内に11個の尿石が認められてます。



つまり、膀胱内尿石11個のうちの1個が、1か月の間に尿道に降り始めてしまったようです。

このひと月前の診察時に、尿石が問題を起こす前に外科的に摘出することをお勧めしてました。


今回は実際、尿道に降りてきた尿石が原因となって排尿障害を起こしていますから、この尿石を含めて11個の尿石を摘出することになりました。

翌日にマロン君の膀胱結石摘出を実施することとし、手術当日に尿道カテーテルを入れてみました。

膀胱まで容易にカテーテルがすんなりと入りました。

下は、その時のレントゲン写真です。



10個の尿石が膀胱内に依然、存在していますが、尿道へ降りていた結石が見当たりません。

どうやら、手術直前に排尿した時に一緒に結石が外に排出されたようです。

尿道内に降りてきて、尿道内閉塞すると尿道結石を解除するのが非常に難しくなります。

この点は不幸中の幸いです。


マロン君に全身麻酔をかけます。





正中切開で開腹します。



雄の場合、陰茎骨が正中部に位置してますので、その脇を切開します。



下写真は腹部から支持糸で牽引した膀胱です。



膀胱内の圧を下げるため、尿を注射器で吸引しましたところ、こげ茶色の血尿が採れました。

膀胱内結石により、膀胱炎が起こり血尿が生じています。



膀胱壁にメスで切開を加えます。



膀胱内部に存在する結石を一つずつ取り出していきます。

麻酔時に入れた尿道カテーテルから生理食塩水をフラッシュして膀胱内の結石を外部へ排出します。





結石を一つずつ確認して摘出します。



摘出した結石10個と小さな破片が摘出されました。



最終的に取り残しの結石は無いか、確認のためにレントゲンを撮りました。

黄色丸の部位は尿道カテーテルが入っている膀胱です。

結石は、膀胱内及び尿道内に存在していないのが確認できました。



切開した膀胱を縫合します。





縫合部から漏れがないか、生理食塩水を注射器より注入して確認します。



特に漏れもないので、膀胱を腹腔内に納め閉腹します。



膀胱に蓄尿による内圧をかけないために尿道カテーテルを留置します。

しばらくはマロン君は尿道カテーテルから排尿して頂きます。





麻酔から覚醒したマロン君です。





術中にサンプリングした尿を顕微鏡で見たところ、シュウ酸カルシウムの1水和物が見つかりました(下写真黄色丸)。



下写真が今回摘出した結石です。

検査センターでどんなタイプの結石か調べてもらったところ、98%以上がシュウ酸カルシウムから構成されている尿石であることが判明しました。



シュウ酸カルシウム結石は、ヒトで良く見られる結石であり、ヒトの尿石の80%近くを占めるそうです。

一方、犬の尿石はアメリカでは80年代はストラバイトが80%でシュウ酸カルシウムは5%であるとの報告があります。

その後、90年代になるとストラバイトが34%、シュウ酸カルシウムが55%と増加傾向をしています。

食生活の変化もあってのことでしょう。

恐らく、日本でもアメリカと同様の傾向があると思われます。

ストラバイトを溶解する療法食の普及が、ストラバイト尿石の基となるマグネシウムの制限に一役買っているのかもしれません。

またシュウ酸カルシウム結石は、ストラバイトの様に療法食で容易に溶解できないため、外科的に摘出するしか摘出する方法がありません。

尿石は前述したようにストラバイトやシュウ酸カルシウムが単独で形成される場合もあれば、両方が混在する混合型も存在します。

マロン君はこの混合型であったようです。

今後は、混合型対応の療法食を継続して頂きます。

入院中も排尿は問題なくできるようになりました。



退院時のマロン君です。

飼い主様とのツーショットを最後に載せさせて頂きます。

マロン君、お疲れ様でした!





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投稿者 院長

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