犬の疾病
ポメラニアンの橈骨遠位端骨折の外副子固定について
本日のテーマは前腕骨の橈骨が骨折した場合、スプリントと言われる外副子で骨折をしっかり治癒させることが出来るかというものです。
患者様は隣のペットショップのポメラニアン君です。
成体販売の仔犬なのでまだ名前はありません。
ポメ君と呼ばせて頂きます。
ポメ君はまだ生後1.5か月足らずのちびっ子です。
前足をくじいて、びっこを引いているとのことでの来院です。
疼痛が酷いようで泣き叫んでいます。
早速、レントゲンを撮ってみました。
上写真の黄色丸で囲んだ箇所が骨折しています。
橈骨遠位端骨折です。
小型犬種の前腕骨骨折の中でも良く発生する骨折パターンです。
手術が失敗すると骨癒合不全を起こす、難易度の高い骨折と言えます。
以前、トイプードル(生後1歳)の橈骨遠位端骨折をプレート内固定法で治療しました。
その経緯を興味ある方は、こちらをクリックして下さい。
また別件でポメラニアン(生後2.5歳)の同じく橈骨遠位端骨折を創外固定法で治療しました。
その経緯はこちらをクリックして下さい。
上記の2件については、共に生後1年以上経過した大人の犬です。
今回は、まだ生後1.5か月齢の仔犬です。
橈骨の太さは1.2㎜足らずです。
しかも骨自体は強度もなく、ウェハスのごとく脆弱です。
このようなケース事例では、私はギプス固定かスプリント固定で肘からつま先までを外固定して対応するようにしています。
生後数か月は非常に骨成長が著しく、内固定法や創外固定をして患部をがっちり固めるよりも、骨折部位を外固定で包み込むように持って行った方が綺麗な骨癒合を導きます。
下写真はこのポメ君にスプリント固定(黄色矢印)を施したものです。
スプリントとは、プラスチックで肘から下が入るように成型されたもので、粘着テープを使用して骨折患部を外固定します。
勿論、ポメ君からすれば重いし、肘から下は思うに任せて稼働できないし、迷惑千万といったところでしょう。
スプリント固定をした当日から、ポメ君はスプリント破壊に情熱を傾け始めました。
最低、1か月の装着は必要と思いましたが、実際1か月経過するまでにスプリントの再装着を5.6回ほどさせて頂きました。
色々ありましたが、本日、スプリント装着からちょうど1か月経過しました。
ポメ君も邪魔なスプリントと1か月格闘している間に、体は大きくなりました。
このスプリントとお別れできるか否かをレントゲンで判定します。
スプリントを装着したままでレントゲン撮影しました。
上写真の黄色丸は1か月前に骨折していた橈骨遠位端が仮骨が形成され、若干こぶのようになっていますが、いい感じで癒合しています。
念のため、あと1週間ほどはポメ君にまだスプリントを我慢してもらい、その後は外す予定です。
小さな仔犬の骨折は管理が非常に大変です。
しかし、スプリント等の外副子で固定がきちんとできていれば成長が早い分、綺麗に治ります。
ただ高齢犬になるほど、外副子固定での治療は時間がかかるし患者のストレスも大きいと言えます。
ポメ君、早く骨がくっついてよかったね!
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投稿者 院長 | 記事URL
犬の肛門嚢破裂(肛門嚢炎)
犬の肛門を正面にとらえて時計方向で、4時と8時方向に肛門嚢という袋が存在します。
この部位は肛門腺、臭腺などと呼ばれています。
肛門腺は分泌液を分泌します。
この分泌液はかなり匂いがきつく、ジュータンや畳にこの分泌液をこすり付けられると匂いを取るのに苦労します。
今回はこの肛門腺が炎症を起こし、肛門嚢が破裂してしまった症例です。
ミックス犬のメメちゃん(6歳、雌)はお尻から血が出ているとのことで来院されました。
下写真黄色丸の部分から血膿が出ています。
見るからに痛々しい状態です。
メメちゃんもお尻を気にして、患部を舐めようとしたり床にお尻をこすり付けてます。
破裂した肛門嚢は汚臭を放ち、炎症の進行を物語ってます。
まずは肛門嚢を絞って、おそらく貯留しているであろう反対側の分泌物を出します。
汚泥状の異臭を放つ分泌液と出血が認められます。
早速、破裂した肛門嚢を洗浄消毒します。
しっかり洗浄したところで、患部は縫合して閉じたりせず、解放創のまま自然に癒合するのを待ちます。
初期のステージであれば、問題なく破裂した肛門腺は再生します。
その間は抗生剤をしっかり内服してもらいます。
しかし、しっかり治療しておかないと何度もこの後、再発を繰り返してしまいます。
状況によっては、外科的に摘出する場合があります。
以前に外科的に摘出した症例を載せましたので、興味のある方は こちらをクリック して下さい。
肛門腺から続く導管が肛門括約筋の左右につながって肛門内側に開口しています。
大型犬はこの導管が太く、排便時に便と共に排出されます。
しかしながら、導管の細い小型犬では簡単に排出することは不可能です。
加えて、ストレス・加齢・肥満などの要因が分泌液の性状をより粘度の高いものにし、肛門嚢に過剰に貯留していきます。
この状態が長引くと細菌が導管から、肛門嚢内に侵入して肛門嚢炎を引き起こします。
犬自身からすれば、肛門周囲が非常にむず痒くなるため、何とかして患部をこすったり、舐めたりします。
結果、今回のメメちゃんのように肛門嚢が破裂して皮膚に穴が開いてしまうのです。
重要なポイントは、日常の肛門腺のチェックです。
月に一回は肛門腺を絞って貯留した分泌液を出すようにして下さい。
飼い主様自らできると良いのですが、難しい場合は病院で絞ってもらうようにして下さい。
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投稿者 院長 | 記事URL