犬の疾病
犬の異物誤飲(その13 ボール)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日は久しぶりの異物誤飲の症例をご紹介します。
ラブラドルレトリバーのバル君(雄、2歳6か月、体重27kg)は遊んでいてボールを飲み込んでしまったとのことで来院されました。
飼い主様の見てる前での行動ですから、誤飲は間違いありません。
早速、レントゲン撮影をしました。
下写真の黄色丸がボールです。
柔軟性を持った柔らかな素材のボールのようです。
ボール内の空気が抜けてつぶれて胃の中に納まっています。
レントゲン画像からその大きさを測定すると約8cmの直径です。
バル君の体格で、柔らかな素材(ビニールやゴム)の場合であれば、催吐剤を使用して吐かせることは可能です。
嘔吐させるつもりが、食道あたりでボールが詰まってしまうと逆効果となります。
異物誤飲の場合は嘔吐剤で吐かせるか、あるいは胃切開で外科的に摘出するか、誤飲した異物の大きさと材質、犬の体格や気質などを総合的に判断して対応させて頂きます。
バル君に催吐剤を飲ませて、5分くらいでいきなり嘔吐が始まりました。
胃液と共にボールが出て来ました。
バル君は特に苦悶するわけでもなく、簡単にボールを吐き出すことに成功しました。
吐きだせなければ、最終的には胃を切開してボールを摘出しなくてはなりません。
スタッフ共々、ホッとしました。
バル君自身は異物を飲み込んだことに対する反省はなさそうです。
今回飲み込んだボールです。
大型犬になると10cm位の異物なら簡単に飲み込んでしまいます。
過去の患者様で、異物誤飲で3回胃切開や腸切開をして摘出手術をした症例があります。
犬自身は、異物誤飲の怖さを認識できません。
やはり、飼主様が犬の口の届く範囲に異物を置かないようご注意して頂くしかありません。
現在は、屋外よりも室内犬が圧倒的に多い飼育環境となってますから、なおのことです。
一度、異物誤飲した犬は2度、3度と繰り返すということをお忘れなきようお願い致します!
バル君は催吐剤の使用で胃の中が荒れることが予想されますので、胃粘膜保護剤を投薬させて頂きます。
すっきりした顔でご帰還のバル君でした。
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投稿者 院長 | 記事URL
チワワの脾臓摘出手術(結節性過形成)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日は腹腔内臓器摘出術の中でも、比較的高頻度に実施されている脾臓摘出術についてコメントさせて頂きます。
脾臓はリンパ系器官の中で最も大きな臓器です。
脾臓はどんな働きをしているかというと
1:血液の濾過
2:血液の貯蔵
3:免疫機能
4:造血
以上です。
そんな頑張っている脾臓ですが、全摘出術の適応となるのは原発性脾臓腫瘍や重度外傷による脾臓破裂です。
脾臓疾患の症状は、一般的にあいまいで脾臓疾患に特異的な症状はありません。
強いて挙げれば、突然の元気消失、嘔吐、体重減少、貧血です。
チワワのモカ君(11歳、雄)は突然の食欲不振、元気消失で来院されました。
血液検査ではCRP(炎症性蛋白)が4.3mg/dlと上昇している点が気になります。
他の血液検査項目は特に異常点はありません。
レントゲン検査を実施しました。
上の写真の黄色丸の箇所が円形に大きく腫大した腫瘤を表しています。
臓器の位置関係からすれば脾臓か、腸間膜リンパかといったところでしょうか。
その大きな腫瘤を超音波検査しました。
均一な微細斑点状の内部エコーを示す限界明瞭な低エコーの腫瘤が描出されました。
腫瘤エコーは脾臓エコーと連続性を持ち,脾臓の一部である画像所見が得られました。
恐らくこれは、脾臓の内部で出血をして腫大しているか、もしくは血管肉腫のように脾臓に生じる悪性腫瘍の可能性もあります。
この腫瘤が脾臓の腫瘍であった場合、脾臓全摘出して病理検査に出さないと悪性か良性かは不明です。
悪性であれば、血管肉腫や脾臓リンパ腫や内臓型肥満細胞腫であることが多いです。
腫瘍でなければ、結節性過形成の可能性もあります。
仮に結節性過形成であるとしても、腫瘤が大きくなれば腹腔内で破裂して死亡するケースもあります。
細胞診で患部を穿刺して確認する方法は、これが血管肉腫であった場合、禁忌とされます(出血が止まらなくなったり、腫瘍をばら
まくこととなる)ので、開腹して肉眼で確認する方法が確実です。
いずれにせよ、試験的開腹を実施することとしました。
全身麻酔下のモカ君です。
皮膚、皮下組織、腹筋、腹膜にメスをいれて腹腔内が露出した時、大きな腫瘤が飛び出てきました(下写真)。
明らかに脾臓に形成された腫瘤です。
良く見ると2か所大きな腫瘤があり、腫瘍の可能性がありますし、部分的に切除しても境界面が不明瞭ですから全摘出することとしました。
脾臓は胃に沿って存在しており、摘出する場合は短胃動静脈、左胃大網動静脈、脾動静脈など多くの血管を縫合糸で結索して離断していきます。
非常に煩雑な手技となりますが、当院はバイクランプですべての血管をシーリングしていきます(下写真)。
これだけでも手術時間の短縮につながりますし、不整出血を防ぐこともできます。
すべて合わせて1時間以内に手術は終了しました。
覚醒時のモカ君です。
摘出した脾臓です。
下写真の黄色丸の部分が腫瘤です。
この腫瘤が腫瘍なのか確認するため、病理検査に出しました。
下写真は患部の顕微鏡写真(低倍率)です。
大小不整なリンパ濾胞と間質増生、うっ血、出血で構成されています。
下は高倍率の写真です。
リンパ濾胞を形成するリンパ球は多様で、単一系統の異型細胞の増殖は認められません。
つまり腫瘍細胞は認められません。
腫瘤部以外の脾臓には、うっ血と髄外造血が認められました(下写真)。
結論は、脾臓の結節性過形成と診断されました。
結節性過形成は老齢犬にしばしば認められる非腫瘍性の病変です。
しかし、放置すると過形成リンパ組織がさらに融合していき、より大きな腫瘤となって脾臓破裂の原因になります。
結局、脾臓全摘出がベストの選択肢であり、全摘出後の予後も良好とされます。
脾臓は全摘出して大丈夫なの?
よくその質問を受けます。
脾臓の機能は他の臓器で代償できるものが多く、脾臓が必ずしも存在しないと命の維持に問題が生じるかというとそうでもありません。
ただ免疫介在性疾患や寄生性疾患の反応で腫大している脾臓は内科的治療を選択すべきとされてます。
モカ君の術後の経過は良好で、術後に食欲は戻り、1週間後に無事退院されました。
退院時のモカ君です。
お腹もすっきりして良かったね!
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本日は腹腔内臓器摘出術の中でも、比較的高頻度に実施されている脾臓摘出術についてコメントさせて頂きます。
脾臓はリンパ系器官の中で最も大きな臓器です。
脾臓はどんな働きをしているかというと
1:血液の濾過
2:血液の貯蔵
3:免疫機能
4:造血
以上です。
そんな頑張っている脾臓ですが、全摘出術の適応となるのは原発性脾臓腫瘍や重度外傷による脾臓破裂です。
脾臓疾患の症状は、一般的にあいまいで脾臓疾患に特異的な症状はありません。
強いて挙げれば、突然の元気消失、嘔吐、体重減少、貧血です。
チワワのモカ君(11歳、雄)は突然の食欲不振、元気消失で来院されました。
血液検査ではCRP(炎症性蛋白)が4.3mg/dlと上昇している点が気になります。
他の血液検査項目は特に異常点はありません。
レントゲン検査を実施しました。
上の写真の黄色丸の箇所が円形に大きく腫大した腫瘤を表しています。
臓器の位置関係からすれば脾臓か、腸間膜リンパかといったところでしょうか。
その大きな腫瘤を超音波検査しました。
均一な微細斑点状の内部エコーを示す限界明瞭な低エコーの腫瘤が描出されました。
腫瘤エコーは脾臓エコーと連続性を持ち,脾臓の一部である画像所見が得られました。
恐らくこれは、脾臓の内部で出血をして腫大しているか、もしくは血管肉腫のように脾臓に生じる悪性腫瘍の可能性もあります。
この腫瘤が脾臓の腫瘍であった場合、脾臓全摘出して病理検査に出さないと悪性か良性かは不明です。
悪性であれば、血管肉腫や脾臓リンパ腫や内臓型肥満細胞腫であることが多いです。
腫瘍でなければ、結節性過形成の可能性もあります。
仮に結節性過形成であるとしても、腫瘤が大きくなれば腹腔内で破裂して死亡するケースもあります。
細胞診で患部を穿刺して確認する方法は、これが血管肉腫であった場合、禁忌とされます(出血が止まらなくなったり、腫瘍をばら
まくこととなる)ので、開腹して肉眼で確認する方法が確実です。
いずれにせよ、試験的開腹を実施することとしました。
全身麻酔下のモカ君です。
皮膚、皮下組織、腹筋、腹膜にメスをいれて腹腔内が露出した時、大きな腫瘤が飛び出てきました(下写真)。
明らかに脾臓に形成された腫瘤です。
良く見ると2か所大きな腫瘤があり、腫瘍の可能性がありますし、部分的に切除しても境界面が不明瞭ですから全摘出することとしました。
脾臓は胃に沿って存在しており、摘出する場合は短胃動静脈、左胃大網動静脈、脾動静脈など多くの血管を縫合糸で結索して離断していきます。
非常に煩雑な手技となりますが、当院はバイクランプですべての血管をシーリングしていきます(下写真)。
これだけでも手術時間の短縮につながりますし、不整出血を防ぐこともできます。
すべて合わせて1時間以内に手術は終了しました。
覚醒時のモカ君です。
摘出した脾臓です。
下写真の黄色丸の部分が腫瘤です。
この腫瘤が腫瘍なのか確認するため、病理検査に出しました。
下写真は患部の顕微鏡写真(低倍率)です。
大小不整なリンパ濾胞と間質増生、うっ血、出血で構成されています。
下は高倍率の写真です。
リンパ濾胞を形成するリンパ球は多様で、単一系統の異型細胞の増殖は認められません。
つまり腫瘍細胞は認められません。
腫瘤部以外の脾臓には、うっ血と髄外造血が認められました(下写真)。
結論は、脾臓の結節性過形成と診断されました。
結節性過形成は老齢犬にしばしば認められる非腫瘍性の病変です。
しかし、放置すると過形成リンパ組織がさらに融合していき、より大きな腫瘤となって脾臓破裂の原因になります。
結局、脾臓全摘出がベストの選択肢であり、全摘出後の予後も良好とされます。
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脾臓の機能は他の臓器で代償できるものが多く、脾臓が必ずしも存在しないと命の維持に問題が生じるかというとそうでもありません。
ただ免疫介在性疾患や寄生性疾患の反応で腫大している脾臓は内科的治療を選択すべきとされてます。
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フレンチブルドッグの発情行動(ペニスについて)
こんにちは 院長の伊藤です。
犬の発情に伴う行動は雄雌様々です。
当院では特に雄の発情行動でご質問を受けるケースも多く、本日症例を参考に説明させて頂きます。
フレンチブルドッグのぼん君(1歳2か月、雄)はもう一匹同居犬(フレンチブルドッグ、2歳、去勢済)に対してマウンティングの姿勢をとり、ペニスが露出し戻らなくなって困っているとのことで来院されました。
下写真の黄色丸の部分が怒張したペニスになります。
犬のペニスはヒトと異なり、陰茎骨というペニスの中に骨が存在します。
陰茎骨の役目は,雄犬の勃起していない陰茎を導きながら雌犬の外陰部に向けることにあります。
下写真の黄色丸の部分は、亀頭球といいます。
雄が雌の陰部に挿入されると直ちにこの亀頭球が充血を開始します。
亀頭球は平常時の3~5倍に腫大するとされます。
射精している間は、亀頭球は雌の陰部に入って、腫大して栓のような働きをします。
つまり精液が漏れないようにしっかりロックしてしまうわけです。
犬の交配の結合時間は、通常1~2分ですが、場合によっては30~40分持続します。
交配の結合時間は1時間以内であれば正常です。
1時間を超えるようだと何らかの問題が生じたと考えるべきです。
実際にぼん君の場合は、交配しているのでなく同居犬の背中にマウンティングして、その刺激でペニスが怒張しているだけです。
多くの場合は、放置しておいても腫脹した亀頭球が委縮して、ペニスも包皮内に戻ります。
ぼん君は1時間ほどパニスは怒張を続け、収まる気配がありません。
以前、犬の陥頓包茎で詳細をコメントさせて頂きました。
詳しくはこちらをご覧ください。
陥頓包茎に至ると心配なので、ペニスを包皮に戻す処置をしました。
オイルを塗った亀頭球を優しく包皮内に押し戻していきます。
鉗子をてこ代わりにして戻します。
特に問題なくペニスは包皮に納まり、暫く様子をみましたが突出することはありません。
性的に興奮することでペニスが怒張することは自然な生理的現象です。
ただ亀頭球のようにヒトでは存在しない箇所が腫大して、またペニスの長時間にわたる怒張は飼主様からすると異常事態と思われるようです。
射精中(最大1時間くらい)は亀頭球は腫大してます。
包皮から亀頭球が飛び出してから1時間経っても、ペニスが戻らなければ受診して下さい。
ぼん君、お疲れ様でした!
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