犬の疾病
犬の上顎第4前臼歯の根尖周囲病巣(その2)
以前に当院HP上で 犬の上顎第4前臼歯の根尖周囲病巣や 歯をお大事に!! で奥歯の抜歯についてコメントさせて頂きました。
今回もしつこく臼歯の抜歯についてご紹介したく思います。
当院の患者様もだんだんと高齢となり、歯科疾患は必然的に増加の傾向にあります。
その一方で、飼主様がしっかりとデンタルケアされているご家庭は少なく、私どもの飼主様への指導の足りなさを実感しております。
何度も申し上げていることですが、抜歯した歯を義歯で代用するという手法は、現在の獣医領域では採れませんので、永久歯を抜歯したら代わりの歯はないということを認識して下さい。
今回ご紹介するのはシェルティのマリーちゃん、10歳です。
左の眼の下あたりが非常に腫れあがってるとのことで来院されました。
口臭がきつく、口の中を拝見すると歯石が臼歯周りにしっかりこびり付いていました。
早速、レントゲン撮影を実施しました。
下写真をよくご覧に頂きますと、左上顎の一番大きな臼歯(第4前臼歯)の歯根部が骨吸収像(写真黄色丸)が認められます。
簡単に申し上げれば、歯石が溜まりすぎて歯根部が腐り始めて、歯槽骨が溶け始めている状態です。
抜歯を実施する以外方法がありませんので、マリーちゃんには全身麻酔で寝ていただき抜歯処置と相成りました。
開口しますと下写真の通り、歯石がしっかり固着しているのがお分かり頂けると思います。
反対側もこんな感じです。
左側の眼の下が腫れているのは上写真の第4前臼歯の根尖周囲病巣(黄色丸)が原因です。
この第4前臼歯の歯石を超音波スケーラーで破砕した後の写真が下です。
歯根部が歯槽骨から外れかかっているのがお分かりでしょうか?
早速、歯根部を分割して抜歯します。
結局、左第3,4前臼歯と第1,2後臼歯を抜歯することになりました。
痛々しいのですが、やむをえません。
加えてマリーちゃんは反対の右第1後臼歯も抜歯することになりました。
抜歯した後は穴が生じますので、歯槽骨をロンジュールでトリミングした後に歯肉を縫合します。
縫合した後の写真が下です。
大変な処置でしたが、マリーちゃんはしっかり耐えてくれました。
顔の腫れも1週間以内に治まりますし、口臭も改善し、残った歯でドッグフードもしっかり食べられると思います。
今後は飼主様が、しっかりデンタルケアに注意して頂きたいと思います。
今回もしつこく臼歯の抜歯についてご紹介したく思います。
当院の患者様もだんだんと高齢となり、歯科疾患は必然的に増加の傾向にあります。
その一方で、飼主様がしっかりとデンタルケアされているご家庭は少なく、私どもの飼主様への指導の足りなさを実感しております。
何度も申し上げていることですが、抜歯した歯を義歯で代用するという手法は、現在の獣医領域では採れませんので、永久歯を抜歯したら代わりの歯はないということを認識して下さい。
今回ご紹介するのはシェルティのマリーちゃん、10歳です。
左の眼の下あたりが非常に腫れあがってるとのことで来院されました。
口臭がきつく、口の中を拝見すると歯石が臼歯周りにしっかりこびり付いていました。
早速、レントゲン撮影を実施しました。
下写真をよくご覧に頂きますと、左上顎の一番大きな臼歯(第4前臼歯)の歯根部が骨吸収像(写真黄色丸)が認められます。
簡単に申し上げれば、歯石が溜まりすぎて歯根部が腐り始めて、歯槽骨が溶け始めている状態です。
抜歯を実施する以外方法がありませんので、マリーちゃんには全身麻酔で寝ていただき抜歯処置と相成りました。
開口しますと下写真の通り、歯石がしっかり固着しているのがお分かり頂けると思います。
反対側もこんな感じです。
左側の眼の下が腫れているのは上写真の第4前臼歯の根尖周囲病巣(黄色丸)が原因です。
この第4前臼歯の歯石を超音波スケーラーで破砕した後の写真が下です。
歯根部が歯槽骨から外れかかっているのがお分かりでしょうか?
早速、歯根部を分割して抜歯します。
結局、左第3,4前臼歯と第1,2後臼歯を抜歯することになりました。
痛々しいのですが、やむをえません。
加えてマリーちゃんは反対の右第1後臼歯も抜歯することになりました。
抜歯した後は穴が生じますので、歯槽骨をロンジュールでトリミングした後に歯肉を縫合します。
縫合した後の写真が下です。
大変な処置でしたが、マリーちゃんはしっかり耐えてくれました。
顔の腫れも1週間以内に治まりますし、口臭も改善し、残った歯でドッグフードもしっかり食べられると思います。
今後は飼主様が、しっかりデンタルケアに注意して頂きたいと思います。
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投稿者 院長 | 記事URL
犬の異物誤飲(その7 鳥の骨)
犬の異物誤飲のご紹介も本日で7症例となります。
柴犬の三四郎君(10歳)は、お散歩中にどうやら鳥の骨らしきものを飲み込んだと来院されました。
しっかり骨をかみ砕いて飲み込んでくれればよいのですが、散歩中ですと飼主様から奪われるのが嫌で速攻、飲み込んでしまう確信犯的な犬が多いのも事実です。
早速、レントゲン撮影を実施しました。
お分かりいただけたでしょうか?
胃の周辺部を拡大してみます。
上の黄色丸・矢印で示したように、はっきりと鳥の骨の形状が確認できます。
胃の中を骨が突っ張り棒のごとく入り込んでいます。
これでは嘔吐させて回収するjことはできませんし、胃の幽門部から十二指腸まで送り込まれることも不可能でしょう。
この鳥の骨の全長をコンピューターで測定したところ、10㎝もあることが判明しました。
結局、胃を切開することとなりました。
いつものごとく全身麻酔です。
開創器で胃を露出して、メスで切開を加えるところです。
メスを入れたところ、すぐに胃を押しやるかのように下から鳥の骨が顔を出しました!
早期の回復を考慮して、胃の切開部は2cm以内に留めました。
あとは胃を縫合していきます。
次に腹膜・腹筋を縫合します。
最後に皮膚縫合で終了です。
手術は1時間以内で終了して、三四郎君も無事麻酔から覚醒し始めました。
三四郎君は1週間ほど入院して頂き、その間流動食も含め、胃に優しい食生活を送ってもらいました。
柴犬は比較的、異物誤飲が多い犬種です。
特に散歩中に、瞬間的に何でもお気に入りの物を見つけたら、何も考えずに口の中に入れる傾向が強いように思います。
飼い主様から、その時点で注意を受けようものなら、取られるくらいなら飲み込んでしまえ、とばかりに異物誤飲に至ります。
お散歩中にはくれぐれもご注意ください。
最後に入院中にちょっとダイエットした三四郎君です。
無事退院できてよかったです。
柴犬の三四郎君(10歳)は、お散歩中にどうやら鳥の骨らしきものを飲み込んだと来院されました。
しっかり骨をかみ砕いて飲み込んでくれればよいのですが、散歩中ですと飼主様から奪われるのが嫌で速攻、飲み込んでしまう確信犯的な犬が多いのも事実です。
早速、レントゲン撮影を実施しました。
お分かりいただけたでしょうか?
胃の周辺部を拡大してみます。
上の黄色丸・矢印で示したように、はっきりと鳥の骨の形状が確認できます。
胃の中を骨が突っ張り棒のごとく入り込んでいます。
これでは嘔吐させて回収するjことはできませんし、胃の幽門部から十二指腸まで送り込まれることも不可能でしょう。
この鳥の骨の全長をコンピューターで測定したところ、10㎝もあることが判明しました。
結局、胃を切開することとなりました。
いつものごとく全身麻酔です。
開創器で胃を露出して、メスで切開を加えるところです。
メスを入れたところ、すぐに胃を押しやるかのように下から鳥の骨が顔を出しました!
早期の回復を考慮して、胃の切開部は2cm以内に留めました。
あとは胃を縫合していきます。
次に腹膜・腹筋を縫合します。
最後に皮膚縫合で終了です。
手術は1時間以内で終了して、三四郎君も無事麻酔から覚醒し始めました。
三四郎君は1週間ほど入院して頂き、その間流動食も含め、胃に優しい食生活を送ってもらいました。
柴犬は比較的、異物誤飲が多い犬種です。
特に散歩中に、瞬間的に何でもお気に入りの物を見つけたら、何も考えずに口の中に入れる傾向が強いように思います。
飼い主様から、その時点で注意を受けようものなら、取られるくらいなら飲み込んでしまえ、とばかりに異物誤飲に至ります。
お散歩中にはくれぐれもご注意ください。
最後に入院中にちょっとダイエットした三四郎君です。
無事退院できてよかったです。
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犬の異物誤飲(その6 靴下 不思議な症例)
本日、ご紹介するのは異物誤飲の症例で、その6となります。
いつも健診で診ている黒パグの まろ君ですが、その日の午前中に来院されました。
まろ君は、3週間前に自分の靴下を飼い主様の目の前で飲み込まれたそうです。
その後、飼主様は毎日、まろ君の便をチェックされていたのですが、まだ靴下は出てこないとのことです。
3週間という長い期間、そのままで飼い主様が、経過観察されていたことにも驚きました。
誤飲した直後ならば、まだ吐かせたりすることも可能な場合が多いです。
いかに外科手術が好きな私でも、無節操に切りたくはありません。
まずはレントゲン撮影を実施しました。
よく見ますと胃内に均一な物体があります。
下写真に黄色丸で示しました。
その異物と思しき物体の大きさを計測しますと20×50㎜ほどです。
これは靴下の大きさに非常に近いとのことで、何とかしなければなりません。
飼い主様の意向も尊重してできうる限り、お腹は開けずに嘔吐させて、それで出てくれれば万事OKという方針にしました。
嘔吐促進させるため過酸化水素水を飲んでいただき、経過をみました。
まろ君はえづいて、胃内のドッグフードを嘔吐しましたが、残念ながら靴下は出てきません。
3週間もの間、嘔吐して吐き出すこともなかった靴下ですから、今になってスムーズに嘔吐が出来るかは疑問です。
しばらく嘔吐処置を続行しましたが、靴下を吐かせることはできませんでした。
結局、飼主様のご了解を得て試験的開腹をすることとなりました。
すぐに手術出来ればよかったのですが、外来の診察が長引いて、メスを入れることになったのは19時でした。
時間をかけて丹念に胃内を探査するのですが、残念ながら靴下は胃内には存在しません。
レントゲン上では存在していると思っていたので、頭を抱えてしまいました。
本来なら1時間内で終了するはずが、事は簡単に終わりそうにありません。
開けた胃を縫合して、十二指腸から下流の腸を確認して行きます。
空回腸から下行結腸は殆ど空の状態です。
調べられる範囲での探査では異物と思しき物体は存在しませんでした。
納得のいかない状況ですが、やむを得ず閉腹しました。
その後、まろ君の麻酔覚醒に時間がかかり、心配した面もありましたが無事手術は終了しました。
その翌日、スタッフがまろ君が硬い便をしているのを発見しました。
便の中に布のようなものが入っているようで、洗ってみると。
なんと糞便中に昨晩、必死になって探していた靴下が見つかりました!
まろ君といえば、すっきりした顔で安堵の表情を浮かべているかのようです。
今回の1件、もう一度思い起こしてみれば、前日の午前中に嘔吐処置をおこなって、激しくえづいた結果が靴下を口へ吐出することが出来ずに(噴門部と靴下の大きさの関係で)、幽門部から十二指腸へ送り出してしまったのではないか?
加えて、7時間以上の時間が経過してからの試験的切開であったため、靴下はすでに骨盤下の直腸近くまで下りてしまったのではないだろうか?
この推察が正しければ、私が靴下を探している時には、すでに靴下は便と共に排便の時を待ち構えていたということです。
過酸化水素水で嘔吐処置を実施せず、速やかに胃切開を行っていたら靴下を胃内で捕まえることが出来たかもしれません。
手術中は、いくつかの要因が積み重なって、思いもよらぬ結果を招くことがあります。
結果として、3週間、まろ君のお腹の中に留まっていた靴下は体外に出ましたし、将来的に異物誤飲による消化器障害にならずに済みました。
とはいえ、正攻法で異物摘出が出来なくて、まろ君にも飼主様にも申し訳なく思います。
まろ君は5日間の入院で元気に退院されました。
いつも健診で診ている黒パグの まろ君ですが、その日の午前中に来院されました。
まろ君は、3週間前に自分の靴下を飼い主様の目の前で飲み込まれたそうです。
その後、飼主様は毎日、まろ君の便をチェックされていたのですが、まだ靴下は出てこないとのことです。
3週間という長い期間、そのままで飼い主様が、経過観察されていたことにも驚きました。
誤飲した直後ならば、まだ吐かせたりすることも可能な場合が多いです。
いかに外科手術が好きな私でも、無節操に切りたくはありません。
まずはレントゲン撮影を実施しました。
よく見ますと胃内に均一な物体があります。
下写真に黄色丸で示しました。
その異物と思しき物体の大きさを計測しますと20×50㎜ほどです。
これは靴下の大きさに非常に近いとのことで、何とかしなければなりません。
飼い主様の意向も尊重してできうる限り、お腹は開けずに嘔吐させて、それで出てくれれば万事OKという方針にしました。
嘔吐促進させるため過酸化水素水を飲んでいただき、経過をみました。
まろ君はえづいて、胃内のドッグフードを嘔吐しましたが、残念ながら靴下は出てきません。
3週間もの間、嘔吐して吐き出すこともなかった靴下ですから、今になってスムーズに嘔吐が出来るかは疑問です。
しばらく嘔吐処置を続行しましたが、靴下を吐かせることはできませんでした。
結局、飼主様のご了解を得て試験的開腹をすることとなりました。
すぐに手術出来ればよかったのですが、外来の診察が長引いて、メスを入れることになったのは19時でした。
時間をかけて丹念に胃内を探査するのですが、残念ながら靴下は胃内には存在しません。
レントゲン上では存在していると思っていたので、頭を抱えてしまいました。
本来なら1時間内で終了するはずが、事は簡単に終わりそうにありません。
開けた胃を縫合して、十二指腸から下流の腸を確認して行きます。
空回腸から下行結腸は殆ど空の状態です。
調べられる範囲での探査では異物と思しき物体は存在しませんでした。
納得のいかない状況ですが、やむを得ず閉腹しました。
その後、まろ君の麻酔覚醒に時間がかかり、心配した面もありましたが無事手術は終了しました。
その翌日、スタッフがまろ君が硬い便をしているのを発見しました。
便の中に布のようなものが入っているようで、洗ってみると。
なんと糞便中に昨晩、必死になって探していた靴下が見つかりました!
まろ君といえば、すっきりした顔で安堵の表情を浮かべているかのようです。
今回の1件、もう一度思い起こしてみれば、前日の午前中に嘔吐処置をおこなって、激しくえづいた結果が靴下を口へ吐出することが出来ずに(噴門部と靴下の大きさの関係で)、幽門部から十二指腸へ送り出してしまったのではないか?
加えて、7時間以上の時間が経過してからの試験的切開であったため、靴下はすでに骨盤下の直腸近くまで下りてしまったのではないだろうか?
この推察が正しければ、私が靴下を探している時には、すでに靴下は便と共に排便の時を待ち構えていたということです。
過酸化水素水で嘔吐処置を実施せず、速やかに胃切開を行っていたら靴下を胃内で捕まえることが出来たかもしれません。
手術中は、いくつかの要因が積み重なって、思いもよらぬ結果を招くことがあります。
結果として、3週間、まろ君のお腹の中に留まっていた靴下は体外に出ましたし、将来的に異物誤飲による消化器障害にならずに済みました。
とはいえ、正攻法で異物摘出が出来なくて、まろ君にも飼主様にも申し訳なく思います。
まろ君は5日間の入院で元気に退院されました。
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