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犬の疾病

トイプードルの大腿骨頭切除手術


昨日をもちまして、今年の当院の診療は終了いたしました。

低血糖のショック状態の急患の仔猫や椎間板ヘルニアで後躯麻痺のダックスフント君など、相変わらずバタバタの中ですが無事終わりました。

当院のHPをいつも見て頂いてる皆様、今年も応援頂きありがとうございました。

来年も皆様の鑑賞に堪えうる内容のHPを作っていきますので宜しくお願い致します。




本日、ご紹介しますのはトイプードルの大腿骨頭切除についてです。

トイプードルのネコポ君(手術時11か月齢、体重3kg、雄)は1か月以上前くらいから右後肢を痛がって、拳上することが多くなったとのことで来院されました。



レントゲン撮影を実施しました。

下写真の黄色丸にありますように右の股関節部の大腿骨頭が骨端分離しています。

しかも姿勢を変えてレントゲン撮影しても、この分離している骨端と大腿骨頭は不自然な形でずれて癒合しています。





おそらく大腿骨頭骨端部が先に剥離骨折を起こし、時間が経過する中で癒合不全を起こしているものと考えられました。

大腿骨の骨端線がまだ閉鎖していない若齢犬では、大腿骨頭への血管供給を骨端血管のみに依存しています。

一旦、この骨端分離を起こすと大腿骨頚が融解を起こし始めます。

そのため、最善の治療法として大腿骨頭切除手術を実施することとしました。



下写真黄色矢印は、大腿部の筋肉を切開分離して、大腿骨頭を露出したところです。



電動鋸で大腿骨頚をなだらかにカットしていきます。







下写真はカットした大腿骨頭(黄色丸)です。





切除した大腿骨頭は不整形な形状を呈していました。





切除後の大腿骨頚が周囲の筋肉に大きく干渉しないように、ロンジュールを使用して切除部を円滑にトリミングします。

最後に切開した筋肉を丁寧に縫合して終了です。



手術後のレントゲン写真です。




大腿骨頭を切除するともう歩行できなくなるのではないかと心配される方が多いです。

この手術の目的は以下の2点です。


第1に大腿骨頭を大きく切除して寛骨臼と大腿骨頭との接触による疼痛を取り除くこと。

第2に大腿骨近位端とこれを取り囲む筋肉との間に線維組織による偽関節を形成させて正常歩行を可能にすること。


ヒトでは直立歩行であり、股関節にかかる荷重は大きいでしょうが、小型犬種にあってはそれほど問題となりません。

1~2か月運動制限して頂ければ正常の歩行は可能です。


手術後、4年経過したネコポ君です。







現在では、股関節の大腿骨頭切除したことを忘れてしまうほどに元気に駆け回っているそうです。





この大腿骨頭切除手術の適応となるのは、レッグペルテス(大腿骨頭壊死症)や整復固定が困難な大腿骨頭剥離骨折、陳旧性股関節脱臼などが対象となります。

あくまで根本治療でなく、最終手段として選択される手術法であることを認識下さい。






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投稿者 院長 | 記事URL

仔犬の低血糖(頑張れ!コムギちゃん)


血糖とは血液中のブドウ糖濃度のことを示します。

例えば、糖尿病は基準となる血糖値を上回る高血糖の状態が持続する疾病です。

一方、低血糖とは正常の血糖値が維持できなくて低下した状態を指します。

血糖は、つまるところ細胞にとってのエネルギー源です。

低血糖になるとエネルギー枯渇により、細胞活動が停止に追い込まれ、ひいては死につながる怖い状態です。




本日、ご紹介しますのは低血糖に陥った仔犬のお話です。

つい先日、チワワのコムギちゃん(3か月齢、雌)は起立不能になったとのことで来院されました。

既にショック状態になっており、心音も微弱で歯茎も真っ白です。



飼い主様が外出先から帰宅したら、コムギちゃんが倒れていたとのこと。

以前から、コムギちゃんは食が細かったという点から低血糖症を疑いました。

真っ先に血糖値を測定しました。

頸静脈からの採血も血圧低下のため、上手く血液が注射器に吸引されません。



十分な血液が採れなかったため、簡易型の血糖値測定器で測定したところ、Lo表示と出ました。

Lo表示は血糖値20mg/dl以下です。

いわゆる低血糖は犬では、60mg/dl以下を指します。



明らかな低血糖に陥ってますから、まずはブドウ糖を口へ直に流して飲ませます。





コムギちゃんはまったく嚥下することが出来ません。

誤嚥しては大変ですから、静脈からブドウ糖を点滴することとしました。

前肢の橈側皮静脈から留置針を試みましたが、ショック状態で不可能です。

頸静脈からアプローチします。



何とか留置には成功しました。

この状態でブドウ糖の点滴開始です。







ICUの入院室に入り、点滴開始から約5時間経過したところ、コムギちゃんが突然立ち上がりました。





流動食のミルクを注射器で口に持っていくと飲んでくれました。



このまま点滴を続けて、経過を見ていきます。




翌日になり、コムギちゃんは自分で歩行可能な状態まで回復してました。

声をかけると反応し、尻尾もちゃんと振れるようになりました。



邪魔な点滴も外すこととしました。




入院室に戻すと早速、流動食のミルクを飲んでいます。

血糖値も正常に戻り、安定した状態に戻りました。





低血糖後の神経症状(運動失調、てんかん様発作等)もなく、自然な歩行が出来ています。





新生児や幼若動物は、代謝系がまだ出来上がっていなくて、ブドウ糖を作り出す能力が未発達な状態です。

加えて肝臓のブドウ糖が集積されたグリコーゲン貯蔵も少ない状態です。

そのため、飢餓や低体温、輸送ストレス等で簡単に低血糖になってしまいます。

低血糖になるとまず、脳が一番に障害を受けます。

脳という組織はエネルギー源として多量のブドウ糖を必要とします。

他のエネルギー源をブドウ糖に変換して利用することもできません。

さらに脳組織はグリコーゲンをほんの少ししか貯蔵できません。

結局、低血糖のほとんどの症状は中枢神経系の機能障害に関連します。

つまり衰弱、虚脱、痙攣、運動失調という症状がおこります。

また上記の中枢神経系の症状に先立って、低血糖に対する反応として交感神経刺激による振戦(ふるえ)や神経過敏、興奮といった症状が出る場合もあります。


以上の点を踏まえて、もしご自宅の仔犬が低血糖と思しき症状を示したら、蜂蜜や砂糖水を仔犬の歯茎・舌下に塗り込んで糖分を吸収させて下さい。

これで数十分内に回復が認められたら大丈夫です。

今後は、食事回数を増やして一日4回くらいにして下さい。

あとは食餌と食事の間隔を開けないこと、空腹時に激しい遊びをさせないことを守って下さい。

もし、砂糖水を与えても症状が回復しないようなら、急いで最寄りの動物病院で診ていただくようお願い致します。


コムギちゃんは、入院翌日の夕方に無事、退院されました。

コムギちゃん、頑張ったね!




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投稿者 院長 | 記事URL

今でもマダニは狙っている!?



マダニの予防は、飼い主様の多くが、日常的に予防薬を投薬して実施されています。

基本は周年予防をお願いしていますが、それでも冬場のマダニ感染は必要ないとお考えの飼主様も少なからずみえます。

本日、ご紹介しますのはマダニ感染を受けたトイプードルのテスちゃん(2歳、雌)です。



山の中を散歩して自宅に帰ってきたら、ダニがたくさん付着しているとのこと。

ちなみにテスちゃんは定期的なマダニ予防はしてません。

マダニは基本的に毛があまり生えていない部位を狙ってきます。

テスちゃんの眼の周辺、鼻の上部、耳介内側面に良く見るとマダニが喰いついているのがお分かりでしょうか?

まず右上瞼ですがマダニが5匹ほどいます(黄色丸)。



次に左瞼(下黄色丸)です。

4匹ほどいます。



次に耳介内側面です。



鼻部上部です。




マダニはノミの様にジャンプして犬に寄生することはできません。

丈のある草に登って行き、前脚(ハラ―氏器官)を触角のごとく広げて近くを通る動物を感知して寄生します。

マダニは寄生すると吸血しやすい場所(皮膚の薄い所)に移動していきます。

吸血する際には、くちばしを差し込んで、さらに唾液中のセメント状物質を出して、自分の体を固定します。

これは、吸血中に簡単に体が離れないようにするためです。

マダニは、吸血と同時に唾液を犬の体内に吐き出します。

この唾液によって、疾病が媒介されていきます。


マダニ感染症で有名なのは、犬バベシア症です。

バベシアは犬の赤血球に寄生する原虫で、赤血球を破壊することで極度の貧血を引き起こします。

重症例では3~4週間で死亡することもある疾病です。



下写真は、テスちゃんの体から取れたマダニ(フタトゲチマダニ)です。






今年はこのマダニ媒介性の新興感染症で重症熱性血小板減少症候群(SFTS)が話題となりました。

日本では今年だけでこのSFTSウィルスによって、9名の死亡者が出ています。

このSFTSは中国での感染例では致命率が6~30%とされているそうです。

唯一のSFTS対策はマダニに咬まれないことと言われています。

犬に寄生しているマダニにヒトが咬まれれば、SFTS感染の危険はあります。

犬のマダニ対策は各社から予防薬が出ていますから、定期的に投薬していけば愛犬のマダニ感染症は恐れることはありません。

ヒト用のマダニ予防薬はありませんから、アウトドア志向の方は自己防衛しなければなりません。



マダニ予防薬のフロントラインをスポットオンして、帰宅して頂いたテスちゃんです。

冬とはいえ、マダニは活動をしている品種もいますからご注意ください!!




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投稿者 院長 | 記事URL

犬の異物誤飲(その11 多量の飴玉)



今回、ご紹介させて頂きますのはフレンチブルドッグのブル夫君(1歳、去勢済)です。

飼い主様の申告では、飴玉が入っている袋ごと漁って、中身の飴玉を食べてしまったとのこと。

飴玉は1つずつ包装されており、数十個は大袋に入っていたそうです。

包装紙は消化不可能な素材でできており、もし数十個も誤飲されたら腸閉塞になる可能性があります。

ブル夫君には可哀そうだけど胃を切開して飴玉の包装紙を全部回収することとしました。

まずはブル夫君を全身麻酔します。



胃にメスを入れます。



胃を切開しますと、飴玉の香料が胃内にむせ返るほどに充満していました。

胃内は胃液で一杯になっており、バキュームで胃液を吸引することとしました。





胃内に鉗子を入れますと、飴玉の包装紙が一杯入っているのが分かります。





下写真黄色丸が包装紙です。



包装紙の取り残しが無いように丁寧に回収していきます。











結局、なんだかんだで包装紙を集めたところ、20枚近く胃に入っていました。

胃の中に包装紙の取り残しがないことを確認してから、胃を縫合します(下写真黄色丸)。





裸の飴玉だけであれば、胃切開など必要ありませんでした。

ブル夫君の胃液で飴玉はきれいに消化されてしまったでしょうから。

この包装紙がくせもので、腸に降りてから腸閉塞を起こされるよりは胃の中にあるうちに一掃した方が賢明です。


犬からすれば、飼主様が口にしているものは旨いにせよ、不味いにせよ、興味津々です。

飼い主様と同じものを口にしたいという潜在的欲求を持っています。

眼を離した隙に犬におやつを食べられてしまった等と言う話は、毎日のように耳にします。

くれぐれも、あなたの傍らに座っておやつの強奪計画を練っている犬にご注意ください!



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