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犬の疾病

犬の線維性付属器過誤腫

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは犬の線維性付属器過誤腫という皮膚に出来た腫瘤です。

この腫瘤は腫瘍ではありません。

いわゆるしこりとも表現されるものです。

この病名は漢字がやたら並んで怪しげな雰囲気を醸していますが、全く心配ありません。


ジャックラッセルテリアのロビンちゃん(12歳9か月、避妊済、体重4.9kg)は右の前足の指の付け根に腫瘤が出来て大きくなっているとのことで来院されました。



下写真の黄色丸がその腫瘤です。



触診して分かるのですが、硬い感じの腫瘤です。

まず最初に細胞診を実施しましたが、患部の硬結状態が進んでおり注射針で穿刺しても上手く細胞を吸引することが出来ません。

膿瘍でもなさそうですが、細菌感染による炎症の可能性もあり、抗生剤を内服して頂きました。

しかしながら、一定期間の内服にも効果がないため、先に患部を外科的に摘出し、病理検査をすることとしました。

腫瘍であれば場所が場所だけに、このまま患部が大きくなって摘出時にマージンが取れないと困りますので、早めに対応する方が賢明と考えました。



ロビンちゃんに全身麻酔を施します。





患部の剃毛をします。

案外、この指先を綺麗に剃毛するのは大変難しいです。





ロビンちゃんは完全に寝ています。





指のように細やかな動きを一日にそれこそ何百回も可動する部位は、腫瘤を摘出するまでは良いのですが、患部の皮膚が適切に癒合するように縫合するのに技術が要ります。

下写真の腫瘤を船形にメスで切開して摘出します。





加えてこの指先は血管や神経、靭帯が狭い空間に密接して走行していますから注意が必要です。

ほんの少し皮膚にメスを入れただけで出血が始まります。



皮膚をなるべく上方にテンションをかけて牽引して、切開ラインを慎重に広げていきます。



バイポーラ(電気メス)で止血してます。







腫瘍を離断しました。



ここからがさらに大変です。

皮膚と皮下組織を鈍性に剥離して、なるべく十分な縫いしろを確保できるように皮膚を弛緩させます。

下写真の黄色矢印は皮膚を皮下組織から矢印方向に剥離しているところです。





このようにして皮膚にゆとりを持たせます。



縫合部にかかる緊張を分散させるために埋没縫合で皮膚の裏側を合成吸収糸で縫合します。







埋没縫合完了です。



仕上げに5-0ナイロン糸で皮膚を縫合します。



これで手術は終了です。





患部が綺麗に癒合するまでガーゼ包帯で保護します。





ロビンちゃんは麻酔から無事覚醒しました。




下写真は今回摘出した腫瘤です。







病理検査に出して、最初に申し上げた線維性付属器過誤腫という診断結果が病理医から出されました。

線維性付属器過誤腫は歪んだ皮膚付属器、脂肪、コラーゲン線維等の非腫瘍性・良性増殖です。

簡単にまとめれば皮膚を構成する毛包、皮脂腺、汗腺などの皮膚付属器が正常な組織構造を維持しながら増数、増大する非腫瘍性の増殖病変です。

この腫瘤は外科的切除により良好な結果が得られます。

放置しておくと炎症、増大を繰り返しながら大きくなってしまうことがありますので、早期発見・早期摘出が最善です。



下写真は、今回の病理標本の顕微鏡写真です。

異型性を示さない多数の皮脂腺とその間に散在する毛包によって構成されています。

腫瘍細胞は認められません。






ロビンちゃん、お疲れ様でした!




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投稿者 院長

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