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犬の疾病

犬の膀胱がん


本日、犬の膀胱がんについてコメントします。

シェルティのナイト君(14歳)は血尿が続くとのことで来院されました。



下写真のように毎回排尿時に血尿を伴います。



まずは膀胱内部のチェックのため、エコー検査を実施しました。

膀胱内部の膀胱三角と称される部位に下写真の様に腫瘤の存在が認められました。



これをカラードップラーで、血液の流れを合わせて確認したところが下写真の画像になりました。



上の写真は、青と赤で血流を表示します。

この腫瘤の内部には血管が存在していることになります。

この腫瘤は本来膀胱内に存在しない構造物であり、血管が多く分布している点から栄養を周囲から奪取しているだろうと予想されます。

つまり腫瘍の可能性があると考えられます。

尿を採取して、遠心分離にかけ、その沈渣を回収して、染色して顕微鏡で検査した結果が下写真です。





細胞診の結果は移行上皮癌と判明しました。

膀胱や尿道にできる原発腫瘍は、その9割方が上皮由来であって、そのほとんどが移行上皮癌に分類されます。

ポリープの様に腫瘍の部分だけが膀胱内壁に突出しているものなら、その部分だけを外科的に摘出すればOKです。

残念ながら、腫瘍は膀胱内壁まで浸潤してます。

膀胱を全摘出できればよいのですが、ヒトの様に腹部に導尿パックをぶら下げるようなことは、動物では不可能です。

結局、ナイト君の14歳という年齢を考慮すれば、内科的治療で経過を診ていくのがベストだと判断しました。

現在、ナイト君は化学療法を選択して頂き、治療中です。



化学療法に反応して、早く血尿が落ち着いてくれるのを期待します。

頑張っていきましょう!




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投稿者 院長 | 記事URL

会陰へルニア(内閉鎖筋を利用した整復)

会陰へルニアについて以前、コメントしました。

ヘルニアの整復にシリコンプレートを使用した例でしたが、今回は生体内組織(筋肉)を利用したケースをご紹介します。



マルチーズのチーズ君(未去勢、8歳)は排便時のいきみが気になり、かつ排便がスムーズにできないことで来院されました。

よくよく拝見しますと右側臀部が腫れあがっています。

直腸にバリウムを造影しますと下写真の黄色矢印にあるように右側にヘルニアの塊があり、直腸が圧迫されて蛇行しているのがお分かりになると思います。



チーズ君は、未去勢でありシニア世代であることから、会陰ヘルニアと診断し手術を実施することになりました。

会陰ヘルニアに加え去勢手術も行います。







肛門の右側傍ら全体が腫れているのがお分かり頂けるかと思います。



メスを入れたところ、いきなり大きな脂肪の塊が飛び出してきました。

いわゆるヘルニア内容物がこの脂肪の中に存在しています。

注意深くメスを進めますとヘルニア嚢の中は炎症が起こっており、透明な浸出液が溜まっており、膀胱の一部が突出していました。



ヘルニア内容を整理して、突出した膀胱を元の骨盤腔内へ戻しました。

指がしっかりヘルニア孔の中へ入ります。



ここでヘルニア孔の周辺の筋肉群をうまく縫合してこの穴を閉鎖してきます。

骨盤を構成する骨の中に坐骨があります。

この坐骨の内側に内閉鎖筋という筋肉が存在します。

この内閉鎖筋を坐骨から剥離して上に反転して、このヘルニア孔を閉鎖するという術式を今回実施しました。

下写真は、骨膜剥離する器具で坐骨から内閉鎖筋を剥がしているところです。





外肛門括約筋と肛門挙筋、仙結節靭帯を丁寧に縫合していきます。



最後に剥離した内閉鎖筋を外肛門括約筋・仙結節靭帯と縫合します。





術後のレントゲン撮影の写真が下です。

蛇行していた直腸がまっすぐになっています。



術後、2日間は排尿排便が疼痛でうまくできなかったチーズ君ですが、3日目にはしっかりできるようになりました。

会陰ヘルニアは再発率の高い疾病ですが、いかにヘルニア孔を確実に閉鎖するかにかかっています。

ヘルニア孔の補てん剤として、シリコンやポリエチレンメッシュ等の人工材料だと二次的な細菌感染が起こしやすいとも言われます。

私の経験では、人工材料での二次感染はありませんが、ヘルニア孔を閉鎖する筋肉のパワーが術後経過とともに弱くなっていくのを感じます。

生体の筋肉を利用した方がスムーズにヘルニア孔の閉鎖できるかもしれません。



チーズ君は無事、退院し排便できています。

会陰エルニアで排便を苦しんでるイヌ達を診るたびに、若い時に去勢をしていただければ、回避できたのにと残念に思います。



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投稿者 院長 | 記事URL

犬の異物誤飲(その8)吐いていただきます!

異物誤飲については、これまで犬の疾病のコーナーでいくつかの症例を上げてコメントさせて頂きました。

そのほとんどが、誤飲した異物の外科的摘出をテーマとしたものです。


でも実際、当院では外科的摘出は最終手段であり、でき得る限り催吐処置をして自力で吐けるものは吐いていただいています

勿論、どんなケースでも異物誤飲であれば嘔吐させればよいというものではありません。

以下の4点を満たしている時に催吐処置を実施します。

1:異物を摂取したことが明らかであること。

2:異物誤飲から1時間以内であること。

3:異物の大きさが、嘔吐させたときに食道を閉塞するような大きさでなく、十分に小さいものであること。

4:全身状態が良好であること。




催吐剤(嘔吐をさせる薬)としては、一般家庭でも用意できるのがオキシドール(過酸化水素水)と飽和食塩水です。

飽和食塩水は、食塩中毒を起こす可能性があるため、お勧めできません。

オキシドールは薬局で購入することが可能で、傷口消毒用3%前後のもので良いです。

犬の体重1kgあたり1~2 mlの原液を飲ませます。

このオキシドールにしても安全というわけではなく、胃粘膜障害や催吐作用による循環器系への抑制が見られることがあります。

ですから、夜中と外出先とかで緊急処置で必要な場合を除いては、動物病院で催吐処置を受けられることを強くお勧めします。


本日、ご紹介するのはのトイプードルのカレンちゃん(8か月令)です。



飼い主様の化粧用パフを30分ほど前に誤飲したとのことで来院されました。

早速、オキシドールを飲んでいただきました。

飲んでほんの数分で嘔吐が始まりました。









激しい嘔吐と共にパフ(黄色矢印)がしっかり出て来ました。

お食事中の方、申し訳ありません。

白い泡の胃液と黄色の胆汁を合わせて出てきたパフです。



オキシドールは胃内で発泡して嘔吐を促しますので、この処置後には胃粘膜保護剤を投薬するようにしています。





ちょっとだけスッキリしたような表情のカレンちゃんでした。

異物誤飲は100%飼主様の責任であることを認識して下さい。

数度にわたって、催吐処置をしても嘔吐できなければ外科的に摘出するしかありません。

一度、異物誤飲した子は何度も繰り返すケースが多いのも事実です。

よくよくご注意のほどお願いします!




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投稿者 院長 | 記事URL

犬の海綿状血管腫

血管腫という腫瘍があります。

これは、血管を構成する組織が増殖することで起こる腫瘍です。

ヒトでは、頭頸部や体幹、四肢によくみられる良性腫瘍ですが、犬でも体表部にできることが多いとされます。

本日、ご紹介する海綿状血管腫とは血管腫の仲間ですが、古い血腫と異常に拡張した中小の血管が集まってできたものです。

どちらかというと腫瘍というより、血管の奇形とされる良性の病変です。


ミニュチュア・ダックスのマイちゃんは、半年前に右後肢に腫瘤ができて来院されました。

下写真の黄色丸の箇所がその腫瘤です。

黒い弾力性のある組織です。



患部の細胞診では、血液混入ということで腫瘍細胞は認められないとの診断でした。

患部に物理的な圧迫があり、血腫が生じたものではないかと思われ、暫く経過観察としました。

その後、半年の間に腫瘤は大きく増大し始め、飼い主様の希望もあり、今回外科的に摘出をすることとなりました。

マイちゃんに全身麻酔を施します。





この腫瘤を出来るだけマージンを含めて切除します。









思いのほか、出血が多くバイポーラ(電気メス)で止血を施します。





しっかり縫合して終了です。



摘出した腫瘍です。





上写真の組織から病理標本を作成します。

下写真は顕微鏡で見た低倍率像です。

皮下組織内に海綿状の血管増殖像が認められます。



下写真は高倍率の画像です。

血管を構成する内皮細胞は扁平で悪性の所見は認められません。



マイちゃんは今後、この海綿状血管腫の再発があるか否かは不明ですが、少なくとも良性の病変であり経過を見ていきたいと思います。




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投稿者 院長 | 記事URL

犬のアカラス(その2)

犬のアカラス(毛包虫)は以前、ご紹介させて頂きました。

なぜアカラスの感染が起きるのか、どんな症状で治療法はどうするか等、詳細はこちらをご覧ください。


ウェルシュ・コーギーの そらちゃんは、左まぶたの上が酷く痒くなり初め、脱毛が著しいとのことで来院されました。



黄色丸で囲んだ部分が脱毛して痒い部分です。

患部の発赤がお分かり頂けると思います。



アカラスは顔面から前肢によく患部が認められますので、早速皮膚をメスの刃でスクラッチして顕微鏡で検査しました。

その結果、アカラスがしっかり多数寄生しているのが確認されました。(下写真の黄色矢印)



拡大すると芋虫のような感じです。





そらちゃんは5歳3か月になり、立派な成犬です。

生後数か月から発症する幼年性アカラスであれば、早ければ数か月で消失してしまいますが、成年性となると終生にわたってこのアカラスと付き合っていかなければいけない場合も多いです。

この成犬性アカラスは多くが基礎疾患(腫瘍、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症等)を持っていることが多いとされます。

そらちゃんは、この数年生理が来ていないそうです。

体質的な問題(産科系疾患など)も若干絡んでいそうです。

今回、ドラメクチンという駆虫薬を注射して経過をみました。

加えてそらちゃんは、まぶたを後肢で引掻いたときに角膜を傷つけてしまい、その治療も必要となりました。

下写真は、2週間後のそらちゃんです。





皮膚検査でもアカラスは陰性で、痒みもなく落ち着いたそうです。

被毛が薄かったまぶたも少しづつ発毛が認められます(黄色矢印)。



エリザベスカラーをつけているのは、角膜を保護するためです。

せっかく角膜の受傷が回復の兆しをみせても、自ら引掻いて治療をやり直すケースも多いので本人はストレスになるかもしれませんが、エリザベスカラー生活をお願いしています。

今後、そらちゃんの基礎疾患の有無を確認して、アカラスとの対応を考慮していきたいと考えています。





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投稿者 院長 | 記事URL

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