犬の疾病
大型犬(ボルゾイ)の避妊手術
こんにんちは! 院長の伊藤です。
最近はチワワ、トイプードル等の小型犬が圧倒的多数を占める現在のペット市場ですが、勿論大型犬の愛好家の方々も少数派ながらみえます。
当院でも、体重60Kgを超えるニューファンドランドやバーニーズマウンテンドッグ、秋田犬、ホワイトシェパード等など個性的な子達を外来で診察しています。
そんな大型犬の中でもひときわ異彩を放つ犬種にボルゾイがいます。
ボルゾイはロシア原産の大型のサイトハウンドです。
走行速度が50kmと俊足です。
オオカミ狩りの猟犬としてロシアの貴族に飼育されていたという歴史もあるそうです。
本日は、そんなボルゾイの避妊手術の風景を載せます。
小型犬の子宮疾患、たとえば子宮蓄膿症などは当院のブログ記事にも頻出しますが、案外大型犬の手術模様は過去にもあまり載せていません。
常日頃、避妊去勢の必要性を説く立場にあっては、片手落ちと言うことで、どんな感じの手術かをご紹介させて頂きます。。
ボルゾイのセシルちゃん(3歳8か月、雌、25kg)は避妊手術を受けて頂くこととなりました。
ボルゾイの特徴である最大65cm近くになる体高の高さです。
診察台に乗りますと、これがなかなか高い位置に来まして、耳掃除で耳をマッサージするにも大変だったりします。
下写真はセシルちゃんの前足に点滴用の留置針を入れるための処置をしているところです。
ちなみに当院スタッフは踏み台の上に載って保定しています。
体は薄いけど、四肢は非常に長いので保定するにはコツが要ります。
この留置針プラグから麻酔前投薬を行い、セシルちゃんの筋肉が弛緩し始めたら気管チューブを挿管します。
イソフルランで吸入麻酔開始して側臥状態のセシルちゃんです。
手術台では頭一つ分飛び出してしまうため、段ボール箱を積んで頭部を支えてます。
患部を剃毛して消毒します。
肢が長すぎて手術台を跨ぐという感じです。
早速手術開始です。
卵巣動静脈をバイクランプでシーリングしているところです。
子宮頸管を縫合糸で結紮しているところです。
腹膜、腹筋、皮下組織、皮膚を縫合して終了です。
摘出した卵巣と子宮です。
体格にあった大きな臓器です。
吸入麻酔装置をオフにして、自発呼吸が出て来ましたら気管チューブを抜管します。
下写真は、意識レベルがだんだん戻ってきてしっかりしてきたセシルちゃんです。
一泊入院して頂き、翌日退院です。
患部からの出血もなく、足取りもしっかりしているセシルちゃんです。
セシルちゃんはボルゾイの中でもそれほど大きくはなく、標準サイズのケージを2ブロックつなげて何とか入院して頂けました。
ボルゾイは特殊な体型のため、規格外になります。
雄のボルゾイだと入院は厳しいかもしれません。
大型犬の飼主様にあっては、去勢や避妊は躊躇される方が小型犬に比べて多いように思います。
一般に寿命も大型犬の方が短いですし、それだけ若い年齢での疾病は多くなります。
未去勢、未避妊による疾病(前立腺肥大、会陰ヘルニア、乳腺腫瘍、子宮蓄膿症等など)を予防するためにも去勢・避妊をご検討されると良いと思います。
セシルちゃん、お疲れ様でした。
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投稿者 院長 | 記事URL
外耳炎によるフレンチブルドッグの耳血腫(その2)
こんにちは 院長の伊藤です。
以前、犬の耳血腫についてその外科的アプローチをご紹介させて頂きました。
詳細はこちらをクリックして下さい。
暑い日が続いています。
こんな時期は皮膚病について多いのが外耳炎です。
定期的に外耳道をクリーニングしているワンちゃんはあまり関係ないかもしれませんが、耳掃除の習慣が無かったり、暫くして無かったりすると外耳炎になりやすいです。
特に垂れ耳の傾向のワンちゃんに多い外耳炎ですが、痒みを強く伴いますので一生懸命に耳を引掻いたりすると、耳介軟骨内の血管が破たんして、耳血腫を発症します。
今回、ご紹介するのはフレンチブルドッグのボス君(4歳10か月、去勢済)です。
左の耳が腫れているとのことで来院されました。
右耳は下写真のようにスッキリしています。
ところが、左耳はこのように腫れている(下写真黄色丸)のがお分かり頂けると思います。
側面を見ますと耳介が腫脹しています。
この状態は耳血腫という、耳介軟骨の血管が破たんして耳介に血腫が生じたものです。
よくよく外耳道を診ますとしっかり外耳炎になっており、外耳道はキャラメル状の耳垢と滲出液が貯留していました。
外耳炎の治療も耳血腫治療と並行して実施する必要があります。
以前、犬の耳血腫のコメントで耳血腫が高度に進行した場合の手術法を載せましたが、今回の耳血腫はまだ初期のステージです。
耳介内の貯留した血液を注射器で吸引することとします。
貯留していた血液は7mlほどでした。
耳はこれで一旦はスッキリしているように見えます。
一旦、貯留した血液を全量吸引できたとしても、数日内にまた血液は貯留します。
何度か血液吸引を繰り返して収束していくレベルと思われます。
耳介の中心部には耳介軟骨が存在します。
この耳介軟骨の内部には軟骨洞と呼ばれる微細な袋状があり、この洞内には毛細血管が密に走行しています。
耳介部に耳を引掻くとか、頭を振るといった物理的な振動が加えられると耳介軟骨に亀裂・分離が生じ、洞内血管が出血を来して血腫が形成されると考えられています。
血腫の程度が酷くなるほどに耳介軟骨は変形していき、耳介部がカリフラワー状になってしまうこともあります。
耳の変形はルックスに大きな影響を及ぼします。
立ち耳が垂れ耳になったりします。
血腫が出来たなと感じたら、速攻で受診して適切な治療を受けて下さい。
結局、ボス君は血液吸引を2,3日おきに4回繰り返して完治しました。
耳介部の変形も最小限にとどめることが出来、外耳炎も完治しました。
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以前、犬の耳血腫についてその外科的アプローチをご紹介させて頂きました。
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暑い日が続いています。
こんな時期は皮膚病について多いのが外耳炎です。
定期的に外耳道をクリーニングしているワンちゃんはあまり関係ないかもしれませんが、耳掃除の習慣が無かったり、暫くして無かったりすると外耳炎になりやすいです。
特に垂れ耳の傾向のワンちゃんに多い外耳炎ですが、痒みを強く伴いますので一生懸命に耳を引掻いたりすると、耳介軟骨内の血管が破たんして、耳血腫を発症します。
今回、ご紹介するのはフレンチブルドッグのボス君(4歳10か月、去勢済)です。
左の耳が腫れているとのことで来院されました。
右耳は下写真のようにスッキリしています。
ところが、左耳はこのように腫れている(下写真黄色丸)のがお分かり頂けると思います。
側面を見ますと耳介が腫脹しています。
この状態は耳血腫という、耳介軟骨の血管が破たんして耳介に血腫が生じたものです。
よくよく外耳道を診ますとしっかり外耳炎になっており、外耳道はキャラメル状の耳垢と滲出液が貯留していました。
外耳炎の治療も耳血腫治療と並行して実施する必要があります。
以前、犬の耳血腫のコメントで耳血腫が高度に進行した場合の手術法を載せましたが、今回の耳血腫はまだ初期のステージです。
耳介内の貯留した血液を注射器で吸引することとします。
貯留していた血液は7mlほどでした。
耳はこれで一旦はスッキリしているように見えます。
一旦、貯留した血液を全量吸引できたとしても、数日内にまた血液は貯留します。
何度か血液吸引を繰り返して収束していくレベルと思われます。
耳介の中心部には耳介軟骨が存在します。
この耳介軟骨の内部には軟骨洞と呼ばれる微細な袋状があり、この洞内には毛細血管が密に走行しています。
耳介部に耳を引掻くとか、頭を振るといった物理的な振動が加えられると耳介軟骨に亀裂・分離が生じ、洞内血管が出血を来して血腫が形成されると考えられています。
血腫の程度が酷くなるほどに耳介軟骨は変形していき、耳介部がカリフラワー状になってしまうこともあります。
耳の変形はルックスに大きな影響を及ぼします。
立ち耳が垂れ耳になったりします。
血腫が出来たなと感じたら、速攻で受診して適切な治療を受けて下さい。
結局、ボス君は血液吸引を2,3日おきに4回繰り返して完治しました。
耳介部の変形も最小限にとどめることが出来、外耳炎も完治しました。
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投稿者 院長 | 記事URL
トイ・プードルのクロストリジウム下痢
こんにちは 院長の伊藤です。
毎日、暑い日が続いています。
このひと月の間、下痢をして来院されるワンちゃん達が増えています。
夏は細菌性下痢の発症例が多いです。
本日は細菌性下痢の中でも一般的に多いクロストリジウム下痢についてコメントさせて頂きます。
トイ・プードルのキイナちゃん(5歳、避妊済)は先日から水溶性下痢・血便が続くとのことで来院されました。
腹痛も伴っているようで、触診しますと腹筋をしぼって下腹部を硬直させています。
お持ちいただいた便は血便(下写真黄色丸)を伴った下痢便です。
ゼリー状の粘膜も便と共に排出されています。
お食事中の読者の方は申し訳ありません。
早速検便をしました。
検便をすることで糞便中の腸内細菌の動向が確認できます。
細菌性下痢であれば、その原因が判明することも可能です。
下写真は低倍率です。
よくよく見ますと特徴的な細菌が出ています。
下は高倍率の写真です。
黄色丸で囲んであるのは芽胞菌といわれるクロストリジウム菌(Clostridium perfringens)です。
クロストリジウムは桿菌と呼ばれる、さおのような棒状の細菌です。
このさおの端の部分に丸い気泡のようなものが付いています。
これが芽胞と称される菌体を保護するカプセルのようなものです。
芽胞菌で有名な菌に破傷風菌があります。
土壌中に芽胞菌は存在することが多く、菌体を取り巻く栄養状態が悪い時は、この芽胞が菌全体を包み込んで休眠状態に入ります。
破傷風菌は数十年にわたる休眠が可能とされます。
そして、自己増殖出来るほどに環境の栄養条件が整うと、芽胞は小さく菌体の端あるいは中央部に収納され、活動開始するというシステムです。
クロストリジウム(Clostridium perfringens)は大型の嫌気性グラム陽性菌でほとんどの犬・猫の腸管内に正常に存在します。
そしてこのクロストリジウムはトキシンA、トキシンB、バイナリートキシンという毒素などを産生します。
この毒素により腸粘膜が破壊され、急性出血性下痢が引き起こされます。
検便時に顕微鏡下(油浸レンズ)で1視野中にクロストリジウムが5個以上確認されたら、クロストリジウムに起因する腸毒素原性下痢と診断されます。
キイナちゃんはこのクロストリジウムによる下痢であることが判明しました。
クロストリジウム下痢は、アンピシリンやアモキシシリン・クラブラン酸などの内服1週間ほどで治療できます。
また脱水を防ぐために十分な水分補給と高繊維の食餌で対応します。
早くクロストリジウムを叩いてお腹の痛みが無くなりますよう、内服頑張っていきましょうね!
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投稿者 院長 | 記事URL
乳腺腫瘍切除手術(どこまで取ればよいの?)
こんにちは 院長の伊藤です。
ワンちゃんの世界も高齢化社会と言われて久しいです。
高齢犬で問題となる疾病の一つに乳腺腫瘍があります。
飼い主の皆様も乳腺腫瘍の手術となりますと麻酔を心配される方が多いです。
腫瘍の部位や数によりますが、手術時間は比較的長時間に及ぶ場合もあります。
加えて、出血量も多い手術です。
乳腺腫瘍が発見された場合、腫瘍を含めて乳腺は何個切除すれば再発が防げるの?
そんな質問をよく受けます。
そこで本日は、乳腺腫瘍手術法の選択およびメリット・デメリットについて述べていきたいと思います。
そもそも犬の乳頭は通常5対あります。
つまり左右で10個乳頭は存在します。
第1から第3乳頭は腋窩リンパ節(腋の下のリンパ節)へ、第4から第5乳頭は浅鼠径リンパ節(内股の付根のリンパ節)へとリンパ管が続いています。
そして、犬の場合は第3乳頭と第4乳頭の間にリンパ管が連結していることが多いとされてます。
犬の乳腺腫瘍は50%が良性腫瘍、50%が悪性腫瘍と言われます。
一方、猫の乳腺腫瘍は70~90%が悪性腫瘍とされ、猫の場合は基本、全乳腺切除手術が推奨されます。
さて、あなたの大事なワンちゃんが乳腺腫瘍になられたとして手術で摘出する場合、一般的には以下の手術法が現在選択されているように思います。
1:腫瘍のみの切除
これは他に基礎疾患があり、麻酔のリスクが高い場合に選択されます。腫瘍の大きさは5㎜以下の限局性で癒着がないのものが対象です。
支配領域のリンパ節(腋窩リンパ節や浅鼠径リンパ節)の郭清をしないことと、腫瘍存在下の乳腺はそのままと言う点で腫瘍再発の可能性がかなり高いと思います。
2:単一乳腺切除手術
1cmより大きく境界不明瞭な腫瘍が、1個の乳腺に限局して存在する時に選択します。
腫瘍に侵された乳腺のみを切除する方法です。
高齢犬で麻酔のリスクが高い場合に選択されます。
該当する乳腺を確実に摘出できずに取り残すと腫瘍再発の可能性ありです。
3:部分乳腺切除手術
1cmより大きい腫瘍が1個の乳腺に限局して存在している。あるいは複数の小さな腫瘍が片側の頭側(第1~3乳頭)か尾側(第4~5乳頭)に限局して存在しているときに選択します。
腫瘍を含む第1~3乳頭領域または第3~5乳頭領域の乳腺をひとまとめにして切除します。
第3乳頭に生じた腫瘍については、先に述べた第3と第4乳頭間がリンパ管で連結していることもあるので、片側の乳腺を全て切除することが推奨されます。
ちなみに私はこの方法をしばしば選択します。先の2つの手術法より再発率は低いです。
4:片側全乳腺切除術
片側の複数の乳腺に腫瘍が存在している場合、あるいは両側の乳腺に腫瘍が存在しているが両側摘出が不可能な場合に選択される手術法です。
両側に腫瘍があるけど皮膚の張力の関係で、一度に全部の乳腺が切除できない場合、約2~3週間後に残りの片側を切除します。
この手術法を選択する症例が当院では多いです。
5:両側全乳腺切除手術
両側の全ての乳腺を一度に切除する方法です。
乳腺組織が無くなりますので、再発の可能性は低いです。
その一方で、広範囲にわたる皮膚切除により、術後の皮膚癒合が困難であったり、術後に呼吸不全になったりする場合もあり、現在は必ずしも推奨される方法とは評価されていません。
以上、長々と手術法の紹介にお付き合いいただいて恐縮です。
現時点での文献的な結論を申し上げると、術後の生存期間は、先に述べたどの手術法をもってしても変わらないそうです。
ただ再発までの期間が手術法により有意に延長したという報告(例えば部分乳腺切除術より全乳腺切術)はあります。
結局、正しい手術法を選択することで、術後のワンちゃん達の生活の質の向上につながれば良いのではないでしょうか。
乳腺腫瘍手術の実例紹介です。
ミニチュア・シュナウザーのめいちゃん(13歳、未避妊雌)は乳腺腫瘍に気づかれて来院されました。
触診をしましたところ、左側第2、4、5乳頭付近に乳腺腫瘍を認めました。
このケースでは、前述した分類に準じて、左側全乳腺切除を選択しました。
めいちゃんは13歳という高齢犬ですが、全身状態は良好で血液検査でも主要臓器の機能障害は認められません。
早速、全身麻酔を施し、左側全乳腺切除を実施します。
皮下脂肪の中に動脈が潜んでいますので、慎重に血管を結紮しながら乳腺を切除していきます。
下写真は切除した左側乳腺(黄色矢印)です。
乳腺を左側全部切除し、皮下脂肪を縫合して、残すところ皮膚縫合のみとなっためいちゃんです。
下写真は拡大したものですが、片側全乳腺切除となると、思いのほか広範囲にわたる切除であることがご理解頂けると思います。
皮膚縫合後の状態です。
今回の手術は腫瘍自体の直径が小さいため、皮膚切除もそんなに広範囲に及ぶレベルではありません。
それでも、乳腺腫瘍手術はこのように見た目痛々しいものです。
しばしの入院後、元気に退院されためいちゃんです。
乳腺腫瘍手術の度に早期の避妊手術をお勧めしています。
初回発情以前、2回目発情以前、2回目の発情以降の避妊手術を実施した犬の乳腺腫瘍発生率はそれぞれ0.05%、8%、26%と報告されています。
早ければ早いほど、乳腺腫瘍発生率は抑えられます。
しかしながら、4回目の発情以降の避妊手術による乳腺腫瘍発生の予防効果はないとされています。
したがって、避妊手術は1歳までに済ませるのが理想です。
私が過去に乳腺腫瘍手術を行った症例は、殆どが避妊していないシニア世代のワンちゃん達です。
出来ることなら、多くの方たちに早期避妊手術の重要性をご理解いただきたく思います。
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投稿者 院長 | 記事URL
犬の尿石症(ストルバイト尿石症)
こんにちは 院長の伊藤です。
猫やハムスター、フクロモモンガ等のストルバイト尿石症についてはコメントさせて頂いてるのですが、肝心の犬のストルバイト尿石症については掲載するのを忘れていました。
そんなわけで本日は犬のストルバイト尿石症のお話です。
ミニチュア・シュナウザーのアリスちゃん(2歳6か月、雌)は頻尿・血尿を主徴に来院されました。
早速、尿検査をすると、尿pHは8、潜血反応は陽性、そして下写真のストルバイト結晶が認められました。
ミニチュア・シュナウザーはストルバイト尿石症の好発品種です。
低倍です。
高倍です。
ストルバイト結晶の特徴は4~6面体の西洋棺蓋状あるいはプリズム状を呈する形状です。
次いで膀胱内の状況を把握するため、エコー検査をしました。
下写真の黄色丸が結石と思われます。
全長約10㎜以上ありそうです。
加えてレントゲン撮影を実施しました。
腹背像です。
上写真の黄色丸が結石を示します。
結石を拡大します。
加えて側臥像です。
患部を拡大します。
この結石をそのままして置くわけにはいきません。
さらにこの結石が核になって大きくなっていく可能性があります。
結局、外科的に摘出することとしました。
下写真はアリスちゃんの膀胱です。
メスを入れます。
膀胱切開し、膀胱を圧迫しますと内部から結石が顔を出しました。
下写真黄色丸が摘出した結石です。
切開した部位から生理食塩水で膀胱内部をしっかり洗浄します。
場合によっては、エコーやレントゲン像で見落としている細かな砂粒状の結石もあるかもしれません。
次に膀胱をしっかりと縫合します。
絶えず尿が溜まる臓器なので、縫合部から漏れがあってはなりません。
縫合終了後は生理食塩水を膀胱内に注入して、縫合部からの漏出がないかを確認します。
あとは膀胱を腹腔内に戻して閉腹して終了です。
下写真は、今回摘出したストルバイト結石です。
しばしの入院生活の後、退院当日のアリスちゃんです。
排尿もスムーズにできるようになりました。
排尿障害に陥った場合、最悪尿毒症になって命に関わる場合もあります。
アリスちゃんは、しばらくストルバイト溶解食(s/d)を食べてもらい、ストルバイトが認められなくなったら尿酸性維持食に変更していきます。
お水もしっかり飲んでたくさん排尿するようにしていただきたいところです。
ストルバイト結石の生成原因や症状は猫のストルバイト尿石症の記事を参考にして下さい。
最後に退院でお迎えいただいた飼主様とのツーショットです。
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投稿者 院長 | 記事URL