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ウサギの疾病

ウサギの角膜損傷

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ウサギの角膜損傷です。

ウサギは鼻が短く、大きな眼球は外に突出してます。

そのため眼球は、色々な障害物で外傷性の角膜損傷を受けます。



ライオンラビットのモカ君(雄、3か月齢、体重550g)は、左眼が開かないとのことで来院されました。



よくよく左眼を確認しますと、流涙は著しく、瞼は赤く腫大し、粘稠性の高い目ヤニが出ています。



さらに上瞼を持ち上げると何か異物(下写真黄色矢印)が認められました。



植物の葉と思われますが、瞼の内側に迷入しているのが判明しました。



角膜が損傷しているかもしれませんので、確認のためフルオレセインによる角膜検査を実施しました。

フルオレセイン試験紙に数滴の生理食塩水を滴下して、その後試験紙を眼球結膜に接触させ、染色液を眼表面に接触させます(下写真)。



次いで、生理食塩水で眼表面を洗浄してコバルトブルーフィルターの光源で観察します。

フルオレセインは、角膜上皮欠損部に表皮細胞層から細胞間隙へ浸透する特性を持ちます。

角膜上皮の軽度障害ならば点状染色として観察され、びらん・潰瘍などの病変では、びまん性染色(広範囲にわたる単一な染色)が認められます。

今回のモカ君の場合、角膜のびまん性染色が認められました(下写真黄色矢印)。



恐らくモカ君は、この植物の葉が眼の中に入り込み、掻痒感から直接的に眼球をこすって、角膜損傷に至ったものと推察されました。

治療法として、抗菌点眼剤や抗コラゲナーゼ剤の点眼をご自宅でして頂きます。

眼を気にして前足でこする個体については、エリザベスカラーで眼を保護する必要があります。




点眼を指示して、1週間後のモカ君の角膜染色検査です。



まだ下写真にあるように緑色に染色された角膜の損傷の部位が認められます。







受傷後2週目のモカ君です。



角膜染色試験を実施しました。

下写真にありますように、角膜にはフルオレセイン染色で染まる部分は認められません。



角膜損傷も無事完治したと判断して点眼処置は終了とさせて頂きました。



角膜は血管が走行していない部位なので、障害を受けますと点眼薬による治療が中心となります。

個体によっては、点眼が困難なケースもあります。

ご自宅手の点眼治療が中心となりますので、保定がある程度できるようにお願い致します。



モカ君、お疲れ様でした!




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投稿者 院長 | 記事URL

ウサギの膀胱結石(炭酸カルシウム結石)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ウサギの膀胱結石です。

以前、ウサギの尿砂粒症についてコメントさせて頂きました。

その詳細は、こちらをご覧ください。


ミニウサギのゆずちゃん(5歳、未避妊)は血尿が続くとのことで来院されました。





ペットシーツ上にゆずちゃんがした血尿です。



これまでにも避妊していない雌の場合、血尿が続けば子宮腫瘍を疑うことを強調してきました。

今回も子宮疾患を疑い、レントゲン撮影から始めました。

子宮腺癌のように腫大した子宮像は認められません。



むしろ、下写真黄色丸の膀胱内に3個の膀胱結石が認められました。



おそらくこの尿結石が原因で膀胱内の出血が起こったものと推察されました。

尿検査をしましたが、ウサギの尿中に一般的に認められる炭酸カルシウムが認められました(下写真)。

他にシュウ酸カルシウムの結晶は認められませんでした。

ウサギの場合は、正常な場合でも、尿中に結晶が認められることがありますので、この結晶イコール同じ組成の尿石症と判断は出来ません。




この膀胱結石は、レントゲン上で直径2~3mmでした。

状況によりこの程度であれば、排尿と同時に排出される可能性もあると考えられます。

今回は、止血剤と抗生剤の内服で経過観察としました。



その2週間後に飼主様からゆずちゃんが、排尿時に結石が出たとの報告を受けました。

下写真は、その出て来た結石です。



この尿石の組成は、炭酸カルシウムであることが判明しました。

ウサギの場合、10㎜未満の尿石であれば自然排泄される可能性が高いとされます。

今回のように軽度な尿石であれば、十分な水分補給と排尿を促すために水分豊富な野菜(ニンジン、ブロコッリー、キャベツ、チンゲンサイ、コマツナ等)を与えるように指導してます。

適切な食餌管理によって、今後尿石症が進行しないよう気を付けて頂きたいですね!





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投稿者 院長 | 記事URL

ウサギの卵巣嚢腫と子宮腺癌

こんにちは 院長の伊藤です。

本日は、ウサギの卵巣嚢腫及び子宮腺癌の合併症のケースをご紹介させて頂きます。



ミニウサギのミニーちゃん(雌、4歳)は以前から乳腺炎血尿があり、当院でもその都度治療を行ってきました。



血尿については、子宮腺癌の疑い少なからずあるため、避妊を勧めさせて頂いてきました。

その後、飼主様の避妊手術のご要望があり、実施したところ卵巣嚢腫と子宮腺癌が見つかりました。

本日はその詳細をご紹介させて頂きます。

いつものことながら、全身麻酔を施すウサギは最低でも数時間高酸素(40%)のICUに入ってもらいます。



全身麻酔に関わるリスクチェックのため、血液検査を実施します。

下写真は、ミニーちゃんの耳から採血しているところです。



血液検査結果は肝・腎機能共に正常で問題ありませんでした。

次いで、点滴のための留置針を前足に入れます。

不測の事態に備えるためにも、ライフラインとしての点滴は重要です。



ウサギの麻酔はガスマスクを被って実施します。

この時、息止めを防止するため局所麻酔の点鼻をします。



ガスマスクからイソフルランを流して、全身麻酔に移ります。



ミニーちゃんが寝たところで患部を剃毛します。



バリカンだけでは剃毛は不十分でカミソリで仕上げます。



準備が完了したところで、手術に移ります。



皮膚を切開します。

下写真黄色丸は腫脹している乳腺です。

ミニーちゃんは妊娠はしていませんが、偽妊娠と言われる想像妊娠状態にあり、乳腺を圧迫すると乳が出てきます。

経験的に偽妊娠が長く継続する個体は、子宮疾患が絡んでいるケースが多いです。



次に腹筋を切開します。

すると下写真黄色丸にある左側卵巣に液体が貯留した卵巣嚢腫が飛び出してきました。

加えて黄色矢印は、暗赤色を呈した表面が凸凹に腫大した子宮角です。



早速、いつも登場するバイクランプで卵巣動静脈や子宮間膜をシーリングしながら卵巣から子宮角までを切開していきます。







下写真は子宮頸管を残して摘出した卵巣と子宮角です。

卵巣嚢腫の大きさが際立っています。



子宮頸管を縫合糸で結紮してメスで離断しているところです。



腹筋を縫合しました。



皮膚はステープラーで縫合します。



これで手術は終了です。





イソフルランの吸入を停止しますと、ほどなくミニーちゃんは覚醒を始めます。



意識はほぼ戻りましたが、まだ足元がふらつく状態です。



下写真は摘出した卵巣と子宮です。



下写真の黄色矢印は卵巣です。

草色の矢印は卵巣に生じた嚢腫です。

その内容は漿液です。

この卵巣嚢腫は卵胞嚢腫と思われますが、持続発情によるホルモン分泌異常により卵胞内に水が溜まる疾病です。

卵巣嚢腫は放置すると次第に腫大した嚢腫が破裂する場合もあります。



次に子宮角部の腫瘤箇所です。



この部位を切開しました。



腫瘤部をさらに拡大したのが、黄色丸の部位です。



この部位をスライドガラスにスタンプして染色し、顕微鏡で見た画像が下写真になります。



ミニーちゃんは子宮腺癌(悪性腫瘍)になっていたことが判明しました。

ミニーちゃんの術後の回復は良好で、食欲もあり翌日退院して頂きました。

退院前のミニーちゃんです。



さらに2週間後の抜糸に来院されたミニーちゃんです。

傷口も綺麗に治り、これで邪魔なエリザベスカラーを外すことが出来ました。



毎回、ウサギの産科系疾患の代表格である子宮腺癌をご紹介させて頂いてます。

妊娠していないのに乳が出たり、血尿が出たりする事に加えて、年齢が4歳以上であった時は子宮腺癌を疑って下さい。

ミニーちゃん、お疲れ様でした!





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投稿者 院長 | 記事URL

ウサギの精巣腫瘍(その3)超高齢ウサギの全身麻酔

こんにちは 院長の伊藤です。

雄のウサギは5歳以降になりますと精巣の腫瘍が多く認められます。

以前にもウサギの精巣腫瘍についてコメントさせて頂きました。

その詳細はこちらこちらをクリックして下さい!

高齢になるほどに、ウサギに限らず全身麻酔のリスクも高くなります。

手術の難易度以前に、いかに安全な全身麻酔が実施できるかがポイントです。

本日はそんな麻酔のリスクとの戦いをご紹介します。



ミニウサギのクッキー君(雄、12歳)は左側の精巣が大きくなってきたとのことで来院されました。




確かに左側精巣が大きく腫大しており、精巣腫瘍の疑いが高いです。

クッキー君の全身状態は良好なのですが、精巣腫瘍を外科的に摘出となると全身麻酔に果たして耐えてくれるのか、非常に心配です。

何しろウサギの12歳という年齢は、ヒトの年齢の換算すると110歳から120歳に匹敵します。

ウサギは特に麻酔の難しさが強調されがちですが、クッキー君のような超高齢ウサギになりますと手術中、予測不能な麻酔事故が起こる可能性が高いということを飼主様にお伝えしました。

それでも何とかして取ってほしいということ。

私も覚悟を決めて手術に臨むこととしました。

本来なら術前に採血をして、腎臓や肝機能を確認して手術に臨むのですが、血圧も低めで採血も十分量が取れません。

麻酔時間を最短で実施すること。

当院では、ハムスターの皮膚腫瘍摘出やフクロモモンガの去勢手術に要する手術時間が10分ほどですが、これに準じた手術時間でいけたら、生還率は高くなると思われました。



午前中は酸素室にはいってもらい、肺を酸素化します。

次に鼻に局所麻酔薬を点鼻します。

これでクッキー君の息止めを防ぎます。

ガスマスクで導入麻酔を実施しますので、息止めをされると麻酔深度を安定させるのに苦労します。



ガスマスクでイソフルランを吸入させます。

突発的にキックをしたりしますので、股関節脱臼したり脊椎損傷しないように毛布で包んで保護します。



タイムリミットは10分ですから、速やかにメスを進めていきます。









精巣を総称膜から出して、精巣動静脈・精管を縫合糸で結紮しますが、その時間も短縮するためにバイクランプ(下写真)でシーリングして処置します。



シーリング完了後はメスでカットして終了です。

その間、約1分。



この処置を両精巣に施します。

下写真は正常な右側精巣です。



止血が完全なのを確認して縫合します。

縫合数も最短で済ませます。



ガス麻酔はバイクランプでシーリング直後には吸入をオフにして、酸素吸入のみで安全な覚醒に努めます。



皮下にリンゲル液を輸液します。



少し眼を開け始めました。



クッキー君はほどなく覚醒し、立ち上がることが出来ました。





摘出した精巣です。

向かって左が精巣腫瘍で右が正常な精巣です。

大きさの差が明らかに違いますね。



厚さの差です。



細胞診を実施しました。

低倍率の画像です。

注射針で精巣を穿刺したのですが、高濃度で腫瘍細胞が青く染色されて認められます。



高倍率の写真です。

細胞質に小空胞を入れた腫瘍細胞が集塊を形成しています。



細胞診でセルトリ―細胞腫であることが判明しました。

良性の腫瘍でありますが、この腫瘍細胞がエストロジェンを産生するためエストロジェン過剰症になり脱毛、対側精巣の委縮や骨髄抑制が認められることがあります。

手術は11分で終了し、クッキー君の麻酔覚醒はそれでもトータル30分近くを要しました。

無事、意識も戻り呼吸も安定してきましたので一安心です。





クッキー君はその日のうちに退院して頂きました。

その後の経過も良好です。

シニア世代になってから、精巣腫瘍になるウサギは多いです。

高齢になるほど麻酔の管理は困難になり、麻酔事故は起こります。

寧ろ、若い時期に手術を受けて頂ければ麻酔に関わる心配はほんのわずかに抑えられることでしょう。

犬猫同様、ウサギも1歳未満で去勢手術を受けられることをお勧めします。



クッキー君には、さらに長寿の記録を伸ばしていただきたく思います。

クッキー君、お疲れ様でした!





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投稿者 院長 | 記事URL

ウサギの浸潤性乳腺癌

こんにちは 院長の伊藤です。

ウサギは子宮腺癌が多いということは、以前からお伝えしているところです。

それ以外にも乳腺に腫瘍が生じるケースもあります。

今回は、高齢であっても乳腺腫瘍、特に悪性度の高い浸潤性の乳腺癌の手術の模様を報告させて頂きます。



ウサギのせきねちゃん(10歳5か月齢、雌)は右の腋下に大きな腫瘤が出来たとのことで来院されました。



下写真尾黄色丸が腫瘤です。

腫瘤はかなり巨大で、床面との接触で出血を繰り返して痂皮が形成されています。



患部を細胞診したところ、腫瘍細胞が認められました。

おそらく、乳房の近くに生じた腫瘍なので乳腺腫瘍の可能性が高いと考えられます。

さすがに10歳を超えたウサギなので、麻酔のリスクはかなり高いと言えます。

ヒトで言えば、90歳から100歳の年齢です。

飼い主様の強い要望もあり、短時間で外科的摘出を試みることとしました。

まずは、静脈に確実に留置針を入れ、輸液のラインを確保します。



せきねちゃんには十分に酸素を吸入してもらい(酸素化)、イソフルランによるガス麻酔を開始します。

患部をバリカンで剃毛します。



剃毛の仕上げは、カミソリで行います。





準備は完了です。



執刀します。



バイポーラ(電気メス)で確実に止血しながらメスを進めていきます。









何ヶ所か太い栄養血管も走行していましたので、バイクランプでシーリングしていきます。



胸筋にも腫瘍は浸潤していましたので、筋肉層も切除します。





大きな出血もなく、無事に腫瘍は摘出完了しました。

下写真は腫瘍浸潤のため、切除した筋肉の欠損部です。



欠損部を縫合します。



最後に皮膚縫合します。



たくさん縫合しなくてはなりませんでした。



麻酔中の問題も特になく、無事せきねちゃんは覚醒し始めています。



高齢であっても、しっかり手術に耐えてくれました!



手術翌日のせきねちゃんです。

足取りもしっかりしています。

右前肢の運行も問題ありません。



下写真は摘出した腫瘍です。





腫瘍の割面です。



病理標本の写真です。

下写真は低倍率です。

腫瘍性上皮細胞(癌細胞)の浸潤性増殖が広範囲に観察されます。



次に高倍率です。

一部の腫瘍性腺腔内に好酸性分泌部が検出され、浸潤性乳腺癌との病理医からの診断が出ました。

悪性度が高く、増殖性に浸潤傾向があるため今後の挙動には注意が必要とのことです。





術後経過は良好で、入院3日目に退院して頂くこととなりました。

退院時のせきねちゃんです。





その後、2週間が経過しました。

下写真は、抜糸のため来院されたせきねちゃんです。

腋下部を少し齧って、痂皮ができていますが患部の吻開もなく落ち着いています。



抜歯後のせきねちゃんです。



これまで私が外科手術したウサギの中で、せきねちゃんは一番の高齢者です。

腫瘍再発の可能性はまだあり、経過観察が必要です。

しかし、さらにウサギの長寿記録を目指して、さらに長生きして頂きたく思います。

せきねちゃん、お疲れ様でした!




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