ウサギの疾病
ウサギの舌下膿瘍
以前、ウサギの膿瘍で症例報告をしました。
ウサギの膿瘍は上顎部や下顎部に生じることが多く、その膿瘍の原因となるのは臼歯の歯根部が炎症を起こして、生じた膿瘍が排出する先がなくて皮下に腫瘤を形成するというものです。
今回は、直接歯根部の炎症には関与していなくて、下の付け根の外傷が原因となって生じた膿瘍です。
このウサギ君は、食欲はあるようだけど餌が食べられないとのことで来院されました。
開口器を使用して、口の中を覗いたところ、舌の付け根あたりに腫瘤(上写真の黄色の丸)が認められました。
この腫瘤は舌の付け根正面から形成されており、臼歯とは独立した位置に存在していることから、下の付け根あたりの外傷から雑菌が侵入して、膿んだように感じます。
明らかに外からみても、この腫瘤の内容物がクリーム色をした膿瘍であることが分かりましたので、患部を穿刺して、排膿しました。
ウサギの膿瘍はクリーム状の膿(上写真の黄色い矢印)が必ず出てきます。
今回はこの膿瘍部を洗浄・消毒し、抗生剤の投与を実施しました。
受傷した場所からして、チモシー(干し草)あたりを採食したときに下の付け根にチモシーの先端が突き刺さったのではないかと思います。
比較的、日常の診療では見かけない膿瘍でしたので載せてみました。
ウサギの膿瘍は上顎部や下顎部に生じることが多く、その膿瘍の原因となるのは臼歯の歯根部が炎症を起こして、生じた膿瘍が排出する先がなくて皮下に腫瘤を形成するというものです。
今回は、直接歯根部の炎症には関与していなくて、下の付け根の外傷が原因となって生じた膿瘍です。
このウサギ君は、食欲はあるようだけど餌が食べられないとのことで来院されました。
開口器を使用して、口の中を覗いたところ、舌の付け根あたりに腫瘤(上写真の黄色の丸)が認められました。
この腫瘤は舌の付け根正面から形成されており、臼歯とは独立した位置に存在していることから、下の付け根あたりの外傷から雑菌が侵入して、膿んだように感じます。
明らかに外からみても、この腫瘤の内容物がクリーム色をした膿瘍であることが分かりましたので、患部を穿刺して、排膿しました。
ウサギの膿瘍はクリーム状の膿(上写真の黄色い矢印)が必ず出てきます。
今回はこの膿瘍部を洗浄・消毒し、抗生剤の投与を実施しました。
受傷した場所からして、チモシー(干し草)あたりを採食したときに下の付け根にチモシーの先端が突き刺さったのではないかと思います。
比較的、日常の診療では見かけない膿瘍でしたので載せてみました。
ウサギの膿瘍もいろんな場所にできると思われた方は
こちらのクリック、していただけると嬉しいです。
投稿者 院長 | 記事URL
ウサギのマダニ感染症
この梅雨の時期は湿気も最大となり、外耳炎はじめとして皮膚病の動物が増える時期です。
そして、外部寄生虫の感染が増えるのもこの時期です。
本日ご紹介しますのは、ウサギのマダニ感染例です。
どこにマダニが喰い付いているかお分かりでしょうか?
実は下写真の黄色い丸の中にしっかり存在しています。
犬猫含めてマダニは被毛の薄い箇所を狙ってきます。
まぶたの周辺、口唇部周辺、耳介部周辺がよく寄生される部位です。
以前、ウサギのツメダニ感染症でその詳細をコメントいたしましたが、このマダニは若干異なります。
まぶたの皮膚を一部、口器が鋭く咬みついていました。
口器をちぎれないように取り除いたのが下の写真です。
このウサギ君ですが、屋外で散歩している間にどうやらマダニの感染を受けたようです。
マダニ類は幼ダニ、若ダニ、成ダニのいづれの時期においても吸血活動を営む節足動物です。
ツメダニなどのように顕微鏡で見ないとわからないダニと違って、大きさは数ミリに及ぶ大型のダニです。
加えて、刺咬症以外に吸血時にいろいろな病原体を媒介します。
日本ではキチマダニが野兎病を媒介することで知られています。
野兎病はヒトにも感染する人畜共通伝染病です。
治療法としては、口器を取り残さないように(要は頭部をちぎらないように)皮膚から引きはがします。
もっとも、今回のような単独の感染なら容易なことですが、多数寄生の場合は殺ダニ剤や滴下式駆虫薬を投与します。
一般的に流通している滴下式駆虫薬の中でもフィプロニル(フロントライン®)やセラメクチン(レボルーション®)ではマダニには効果がありません。
イミダクロプリド&イベルメクチン(アドバンテージハート®)やイミダクロプリド&ペルメトリン(フォートレオン®)を投与することで駆除します。
実際のところ、ウサギの外部寄生虫駆除薬は認可されたものは存在しません。
あくまで犬猫用に認可されたものを転用する形となります。
当然、間違った使用法ですと副作用を生じて死亡するケースもありますのでご注意お願いいたします。
そして、外部寄生虫の感染が増えるのもこの時期です。
本日ご紹介しますのは、ウサギのマダニ感染例です。
どこにマダニが喰い付いているかお分かりでしょうか?
実は下写真の黄色い丸の中にしっかり存在しています。
犬猫含めてマダニは被毛の薄い箇所を狙ってきます。
まぶたの周辺、口唇部周辺、耳介部周辺がよく寄生される部位です。
以前、ウサギのツメダニ感染症でその詳細をコメントいたしましたが、このマダニは若干異なります。
まぶたの皮膚を一部、口器が鋭く咬みついていました。
口器をちぎれないように取り除いたのが下の写真です。
このウサギ君ですが、屋外で散歩している間にどうやらマダニの感染を受けたようです。
マダニ類は幼ダニ、若ダニ、成ダニのいづれの時期においても吸血活動を営む節足動物です。
ツメダニなどのように顕微鏡で見ないとわからないダニと違って、大きさは数ミリに及ぶ大型のダニです。
加えて、刺咬症以外に吸血時にいろいろな病原体を媒介します。
日本ではキチマダニが野兎病を媒介することで知られています。
野兎病はヒトにも感染する人畜共通伝染病です。
治療法としては、口器を取り残さないように(要は頭部をちぎらないように)皮膚から引きはがします。
もっとも、今回のような単独の感染なら容易なことですが、多数寄生の場合は殺ダニ剤や滴下式駆虫薬を投与します。
一般的に流通している滴下式駆虫薬の中でもフィプロニル(フロントライン®)やセラメクチン(レボルーション®)ではマダニには効果がありません。
イミダクロプリド&イベルメクチン(アドバンテージハート®)やイミダクロプリド&ペルメトリン(フォートレオン®)を投与することで駆除します。
実際のところ、ウサギの外部寄生虫駆除薬は認可されたものは存在しません。
あくまで犬猫用に認可されたものを転用する形となります。
当然、間違った使用法ですと副作用を生じて死亡するケースもありますのでご注意お願いいたします。
ウサギの外部寄生虫にも色んなタイプがいるのに驚かれた方は
こちらをクリックして頂けると嬉しいです。
投稿者 院長 | 記事URL
ウサギのコクシジウム症
コクシジウムはウサギでは好発する寄生虫症です。
コクシジウム(Eimeria属)はウサギの腸管に寄生するタイプは12種類あるそうで、多くが2種類以上のコクシジウムに混合感染しているといわれています。
加えて肝臓に寄生するコクシジウム(E.stiedai)というタイプもあります。
一般に成熟したウサギがコクシジウムに感染しても、多くは不顕性感染と言って症状は表向き何もないケースが多いようです。
しかし、これが幼弱の個体が感染しますと下痢や体重減少を引き起こし、重症例では死亡したりする場合もあります。
今回、ご紹介するのは3か月のウサギ君です。
水溶性下痢便が続くとのことで受診されました。
便は下の写真です。
早速、検便を実施しました。
顕微鏡下で以下のコクシジウムのオーシスト(卵)が見つかりました。
黄色い矢印が示しているのがコクシジウムのオーシストです。
治療法としては、サルファ剤やトリメトプリム・スルファジアジン合剤を投薬することで駆逐します。
問題となるのは、12種類あるコクシジウムの内、交叉免疫と言って1種類のコクシジウムに感染したからと言って残り11種類のコクシジウムには免疫ができたわけではありません。
いづれにしても幼弱個体ではこのコクシジウムは要注意ですね。
コクシジウム(Eimeria属)はウサギの腸管に寄生するタイプは12種類あるそうで、多くが2種類以上のコクシジウムに混合感染しているといわれています。
加えて肝臓に寄生するコクシジウム(E.stiedai)というタイプもあります。
一般に成熟したウサギがコクシジウムに感染しても、多くは不顕性感染と言って症状は表向き何もないケースが多いようです。
しかし、これが幼弱の個体が感染しますと下痢や体重減少を引き起こし、重症例では死亡したりする場合もあります。
今回、ご紹介するのは3か月のウサギ君です。
水溶性下痢便が続くとのことで受診されました。
便は下の写真です。
早速、検便を実施しました。
顕微鏡下で以下のコクシジウムのオーシスト(卵)が見つかりました。
黄色い矢印が示しているのがコクシジウムのオーシストです。
治療法としては、サルファ剤やトリメトプリム・スルファジアジン合剤を投薬することで駆逐します。
問題となるのは、12種類あるコクシジウムの内、交叉免疫と言って1種類のコクシジウムに感染したからと言って残り11種類のコクシジウムには免疫ができたわけではありません。
いづれにしても幼弱個体ではこのコクシジウムは要注意ですね。
コクシジウムのオーシストを初めて見たという方は
こちらをクリックして頂けると励みになります。
投稿者 院長 | 記事URL
ウサギの毛芽腫
ウサギの体表部に認められる腫瘤(しこり)には、皮下膿瘍や水腫、肉芽腫に代表される非腫瘍性病変と表皮、毛包由来、皮脂腺
由来等の腫瘍性病変に分けられます。
今回、毛包由来の毛芽腫(Trichoblastoma)という腫瘍について報告します。
ご紹介するのはウサギのいちごちゃん(5歳)です。
左の大腿部外側面に親指大の腫瘤が一か月ほどの間にできたとのことで来院されました。
ひとまず、どういう細胞なのかを知るために細胞診を実施しました。
下は患部を細胞診した写真です。
上皮性の腫瘍細胞が認められましたので、早速外科的に切除をすることになりました。
黄色の丸で囲んだのが腫瘍の患部です。
思いのほか大きな腫瘍でしたので、患部への発達した栄養血管も考慮して、バイポーラの電気メスで切除しました。
ほとんど出血がなく、綺麗に切除は完了しました。
わずか15分くらいの手術でしたので、本人はいたって何事もなかったかのような風情です。
下が切除した腫瘍です。
次は切除した腫瘍の割面です。
切除患部のスタンプ標本は以下の通りです。
一般にウサギの皮膚腫瘍は少ないとされていますが、その中でも今回の毛芽腫は発生が多い腫瘍です。
幸いなことに毛芽腫は良性の腫瘍です。
外科切除も容易であり、予後も良好で再発例も少ないと言われます。
発生部位によっては、患部が自壊をきたして細菌感染をしたり出血を伴ったりしますので、手術適応な状態ならば早期の外科手
術をお勧めします。
由来等の腫瘍性病変に分けられます。
今回、毛包由来の毛芽腫(Trichoblastoma)という腫瘍について報告します。
ご紹介するのはウサギのいちごちゃん(5歳)です。
左の大腿部外側面に親指大の腫瘤が一か月ほどの間にできたとのことで来院されました。
ひとまず、どういう細胞なのかを知るために細胞診を実施しました。
下は患部を細胞診した写真です。
上皮性の腫瘍細胞が認められましたので、早速外科的に切除をすることになりました。
黄色の丸で囲んだのが腫瘍の患部です。
思いのほか大きな腫瘍でしたので、患部への発達した栄養血管も考慮して、バイポーラの電気メスで切除しました。
ほとんど出血がなく、綺麗に切除は完了しました。
わずか15分くらいの手術でしたので、本人はいたって何事もなかったかのような風情です。
下が切除した腫瘍です。
次は切除した腫瘍の割面です。
切除患部のスタンプ標本は以下の通りです。
一般にウサギの皮膚腫瘍は少ないとされていますが、その中でも今回の毛芽腫は発生が多い腫瘍です。
幸いなことに毛芽腫は良性の腫瘍です。
外科切除も容易であり、予後も良好で再発例も少ないと言われます。
発生部位によっては、患部が自壊をきたして細菌感染をしたり出血を伴ったりしますので、手術適応な状態ならば早期の外科手
術をお勧めします。
ウサギの毛芽腫なんなのか知りません!
という方は、こちらをクリックして頂けると幸いです。
投稿者 院長 | 記事URL
ウサギのソアホック(足底皮膚炎)
ウサギには犬猫のように足の裏に肉球がありません。
足裏の被毛がクッションの代わりを果たしています。
加えて、多くの哺乳類と異なって足首の関節から下を床面に着けて全体重を支えるという特徴があります。
通常、野生のウサギは地面で生活をしており、適度な運動を行うことで足裏にかかる圧力は随時変化します。
一方、ペットとして飼育されているウサギは、室内ケージの平坦で硬い床材の上で一日の大半を過ごすこととなります。
当然、ウサギの足裏は床面の圧迫を受けて、足底面の皮膚と骨組織との間に血行の循環不全を招きます。
その結果、最悪の場合、足裏が虚血性壊死を起こしてしまいます。
この症状を称して、ウサギのソアホック(足底皮膚炎)と言います。
下の写真は、両側の足裏がソアホックになっているウサギ君です。
黄色の円で示している部分が、足底部の皮膚炎を起こしています。
通常、足裏の脱毛に始まり皮膚病変は紅斑、びらん、潰瘍へと進行します。
上の写真は別件のウサギ君です。
本人も患部を気にして後ろ足を拳上したり、前足に体重をかけるしぐさをしていました。
次の写真は、さらにソアホックが進行した症例です。
患部の潰瘍に加えて、細菌感染が深部に及び膿瘍を形成しています。
さらに進行しますと骨髄炎や滑膜炎となり、浅指屈筋腱が機能しなくなると歩行すらできなくなります。
治療としては、患部の徹底した洗浄と湿潤療法を実施します。
特に患部の創傷管理のためにドレッシングを行います。
潰瘍部に肉芽組織増殖促進するクリームを塗布し、ドレッシング材としてハイドロサイトやメロリン等で被覆した後、弾性粘着テープでガードします。
ソアホックはそのステージによりますが、治療には1か月から数か月に及ぶことも多いです。
患部の治療だけでなく、飼育環境の改善が重要です。
凹凸のある床材や低反発マットあるいはウサギ用に考案された足底皮膚炎予防マットを利用し、足裏にかかる圧力を拡散・低減させてください。
加えて、運動不足で肥満のウサギはダイエットも考慮してください。
足裏の被毛がクッションの代わりを果たしています。
加えて、多くの哺乳類と異なって足首の関節から下を床面に着けて全体重を支えるという特徴があります。
通常、野生のウサギは地面で生活をしており、適度な運動を行うことで足裏にかかる圧力は随時変化します。
一方、ペットとして飼育されているウサギは、室内ケージの平坦で硬い床材の上で一日の大半を過ごすこととなります。
当然、ウサギの足裏は床面の圧迫を受けて、足底面の皮膚と骨組織との間に血行の循環不全を招きます。
その結果、最悪の場合、足裏が虚血性壊死を起こしてしまいます。
この症状を称して、ウサギのソアホック(足底皮膚炎)と言います。
下の写真は、両側の足裏がソアホックになっているウサギ君です。
黄色の円で示している部分が、足底部の皮膚炎を起こしています。
通常、足裏の脱毛に始まり皮膚病変は紅斑、びらん、潰瘍へと進行します。
上の写真は別件のウサギ君です。
本人も患部を気にして後ろ足を拳上したり、前足に体重をかけるしぐさをしていました。
次の写真は、さらにソアホックが進行した症例です。
患部の潰瘍に加えて、細菌感染が深部に及び膿瘍を形成しています。
さらに進行しますと骨髄炎や滑膜炎となり、浅指屈筋腱が機能しなくなると歩行すらできなくなります。
治療としては、患部の徹底した洗浄と湿潤療法を実施します。
特に患部の創傷管理のためにドレッシングを行います。
潰瘍部に肉芽組織増殖促進するクリームを塗布し、ドレッシング材としてハイドロサイトやメロリン等で被覆した後、弾性粘着テープでガードします。
ソアホックはそのステージによりますが、治療には1か月から数か月に及ぶことも多いです。
患部の治療だけでなく、飼育環境の改善が重要です。
凹凸のある床材や低反発マットあるいはウサギ用に考案された足底皮膚炎予防マットを利用し、足裏にかかる圧力を拡散・低減させてください。
加えて、運動不足で肥満のウサギはダイエットも考慮してください。
ウサギのソアホックに関心を持たれた方は
こちら をクリック、宜しくお願い致します!
投稿者 院長 | 記事URL