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鳥の疾病

文鳥のペローシス


院長の伊藤です。

本日は、セキセイインコや文鳥の雛鳥・若鶏で発症することの多いペローシス(腱はずれ)についてご紹介させて頂きます。

文鳥のももこちゃん(生後約7~8週齢、雌)は両肢が開脚して姿勢が維持できず、歩行も上手くできないとのことで来院されました。





下写真のように両脚が外方に開脚し、閉じることができません。





これはペローシス(腱はずれ)という疾病に特有の症状です。

原因はマンガン、パントテン酸、ピリドキシン、ビオチン、コリン等の栄養不足による先天性奇形とされています。

その一方で、栄養不足を改善しても発生するし、同じ親から発生することも多い点から遺伝疾患とも考えられています。


ペローシスの症状は、片脚もしくは両脚の大腿骨が内転し、脛足根骨が外転することで生じる開脚です。

脚に荷重をかけられないため、胸で全体重を支えて雛鳥から成長していくために胸骨の変形や胸郭が浅くなります。

胸郭が浅くなることで慢性的な呼吸不全、呼吸速迫が認められるケースもあります。


治療法としては、成長期の幼鳥であればテーピング固定を実施します。

趾部を自着生伸縮包帯を用いて肩幅に合わせて固定します。

下写真の黄色矢印の方向にテーピングをします。



このテーピングは慎重に行っても幼鳥の精神的ストレスや関節への負担で、食欲不振や関節の脱臼などが生じる可能性があります。

またテーピングが適用されるのは、せいぜい生後4週齢以内です。

それ以降になると関節部に仮関節が形成され正常な位置に脚を戻せない場合は、テーピングは不可能となります。

ももこちゃんの場合、残念ながら既に仮関節が形成されテーピングはできない状態です。





また別の症例ですが、文鳥のめぐ君(4歳、雄)は開脚姿勢が幼鳥期から続いてるとのことで来院されました。



下写真の黄色矢印の方向に開脚しているのがお分かり頂けると思います。



それでもめぐ君は止まり木に止まったり、飛ぶこともできます。

しかしながら、止まり木に止まる姿勢は下写真の通りです。



めぐ君の場合は既に関節も変形しており、適切な治療を施すことは残念ながらできません。

骨切りピンニングといって大腿骨を炭酸レーザーで切断して、ピンニングで大腿骨のねじれを矯正する手術で対応する方法もあります。

飼い主様の意向に合わせて、このままめぐ君は飼育環境を整備することで脚を傷めないよう気を付けて頂くこととしました。



上記2症例の様にペローシスをテーピングで整復治療できる週齢を過ぎてしまった個体には、積極的な治療は望めません。

残念です。

むしろ雛鳥・幼鳥時に開脚姿勢をとっているようであれば、早急に鳥の診察が出来る動物病院を受診して下さい。

早期に発見できれば、ペローシスは治療できる疾病です。






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投稿者 院長 | 記事URL

衝突事故(ヒヨドリの受難)


土地柄もあるのか、野鳥を保護して治療を依頼されるケースがよくあります。

本日ご紹介しますのは、ヒヨドリの成鳥です。

よくあるケースですが、ガラスに正面衝突して意識障害で治療することとなりました。

連れてこられた時は、ぐったりしており眼も虚ろで、当然自力で起立も不可能でした。



体をまずは温めるためインキュベーター(恒温槽)にいれ、ショック状態から低体温症になっている体を温めます。

少し、体を動かせるようになったので全身チェックします。

左眼がおそらく衝突時の衝撃で眼球内出血を起こしています。



翼の骨折・脱臼を確認します。







幸いなことに翼も肢の関節も可動域に問題はなく、骨折・脱臼はしていません。

ショック状態を改善させるためにステロイドの注射を施しました。



再度、インキュベーターに戻して経過を観察します。

そのうち、意識レベルも正常に戻り暴れ始めます。







衝突事故からの立ち直りの速さは、さすが野鳥だなと思います。

血便を多量にし始めました。



骨格の問題はクリアできていても内臓を強打したかもしれません。

抗生剤と止血剤を投薬しました。

そのうちにこのヒヨドリ君は元気が出てきて、インキュベーター内で大暴れし始めます。

羽ばたきも正常なので、いつまでも保護するよりは早く自然に戻した方が良いと判断して外に出します。

ベティとのお別れのツーショットです。



ヒヨドリ君は何事もなっかたの様に、自然に飛んで電線に止まり、その後空に向かって羽ばたいていきました。




ガラスが非常にきれいだったりすると勘違いして突っ込んでくる野鳥は意外と多いです。

高度をとって飛んでいたりすると突入速度が半端じゃなく、頸椎骨折や翼・肢の骨折・脱臼に簡単になってしまいます。

愛玩鳥のようにしっかりと時間をかけ治療を施せると良いのですが、ストレスや給餌の問題が複雑に絡んできますので、ポイントを押さえた治療を心がけています。

治療の対象が野鳥なので、治療して自然に戻してあげられれば良いのですが、治療不可能なケースの場合はやむなく安楽死処置が必要となります。

今回のヒヨドリ君は無事戻せて良かったです。





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投稿者 院長 | 記事URL

オカメインコの自咬症


本来なら自由に空を飛ぶはずなのに、ヒトの都合で鳥かごに入れられた愛玩鳥は色んなストレスにさらされます。

ストレスに対する直接的な反応としては、自らの毛引き・自咬が圧倒的に多いです。

本日は、自咬症のオカメインコをご紹介します。


オカメインコのムギちゃん(5歳、雄)は全身の羽根が抜けてきたとのことで来院されました。

下写真の黄色丸で囲んだ部位は脱羽が著しいです。





まずは、疥癬などの外部寄生虫の可能性を考えて、皮膚の掻爬検査をしましたが陰性でした。

加えて真菌培養の検査を実施しましたが、後日結果は陰性でした。

自傷行為としては、毛引きに始まって嘴で届く範囲の皮膚を突っつきます。

場合によっては、嘴で皮膚を裂くケースもあります。

翼の付け根の太い血管を傷つけると思いのほか大出血になり、緊急処置となるケースもあります。

まずは、自作のエリザベスカラーを装着してこれ以上の自傷行為をさせないようにします。

加えて皮膚の炎症を取り除く抗生剤や消炎剤が必要になってきます。



ムギちゃんからすれば、カラーは邪魔なだけの存在です。

むきになって取ろうとします。



当院で装着しているカラーは、自咬症防止のために後ろ向きになって嘴で突っつけないようにしてあります。

鳥にとっては、カラー装着はその個体の性格にもよりますが、拒食になって致命的な結果をたどる場合もあります。

このフリース地のカラーは軽量で、加えて視界が平常時と同様に確保できますので、食事も飲水もストレスなく可能です。

しばらくこのカラーで皮膚の障害を治療していく予定です。



自傷行為の原因は皮膚疾患(感染症に由来する)とストレスです。

ストレスには身体的ストレスと精神的ストレスがあります。

身体的ストレスには飼育環境(温度湿度・照度・騒音など)、食餌のバランス、運動不足、発情などが挙げられます。

精神的ストレスは、個々の家庭環境で異なりますが、飼主への過度の愛情欲求を発端とする分離不安症であったり、同居鳥とのコミュニケーションがうまくできなかったり等などです。

以上のストレスを回避するよう飼主様が体調管理や環境管理して頂くこととなります。

鳥は鳥の思う所があると思いますが、ヒトとのコミュニケーションは犬猫のようにはいかないデリケートな動物ですから要注意ですね。



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投稿者 院長 | 記事URL

ウミネコの受難

年の瀬も押し迫ってきました。

当院も毎年のことですが、急患やら休日診療でバタバタする時期です。


ところで皆様はウミネコをご存知ですか?

ウミネコはチドリ目カモメ科カモメ属に分類される鳥類です。

ロシア、中国、台湾、朝鮮、日本と分布しており日本で棲息するウミネコは日本に周年生息(留鳥)します。

冬季に移動するのは、北海道や本州北部で繁殖する個体のみです。

集団繁殖地(コロニー)を形成することで有名です。

当院の開業している地域が海に近い所もあって野鳥、特に海鳥がらみの急患があります。



本日、ご紹介しますのはおそらく交通事故に遭遇したと思われるウミネコです。

たまたま道端でうずくまっているこのウミネコ君を見つけた方が当院を受診されました。



余談になりますが、ウミネコとカモメの違いをご存知ですか?

ウミネコは嘴が黄色で先端部が黒、さらに最先端部には赤斑があります。

カモメの嘴は同じ黄色ですが、下嘴の先端部のみが赤斑です。

ミャーミャーと甲高い猫を思わせる鳴き声がウミネコの特徴です。


このウミネコ君を詳しく身体検査をしたところ、嘴が割れ、左翼骨折、左脛骨骨折が認められました。

野鳥であることからまずは応急処置をほどこし、保護された方に県の野鳥管理事務所を紹介させて頂きました。

体幹部の左側に強い力が加わっての受傷ですから、おそらくは車にはねられたのでしょう。


嘴です。

黄色丸の箇所が割れています。



左翼です。

触診しますと左橈骨が骨折しています。



左脛骨が骨折しており、体を荷重することが出来ません。



まずは翼(橈骨)をテーピングして胸部と固定させます。

呼吸は安定しているのでテーピングによる呼吸抑制はないと判断しました。

ウミネコ君は疼痛のため、大暴れします。

まだ若い個体と思われますが、力は思いのほか強く、スタッフにしっかり保定させての処置となりました。







次に左脛骨ですが、熱可塑性キャスト剤のレナサームで外固定することとしました。

羽がギプス固定の邪魔をしますので剃毛します。



熱湯で加熱して5分もするとレナサーム(黄色丸)は硬化し始めます。









処置はこれで終了です。

抗生剤と鎮痛剤を注射しました。

あくまで応急処置ですが、この状態で経過をみて野鳥管理事務所へお連れ頂くこととしました。

残念ながらこのウミネコ君は3日後に急逝されたとの連絡を受けました。

受傷後の野鳥の保護管理の難しさを改めて感じました。




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投稿者 院長 | 記事URL

ウズラの卵塞(卵詰まり・Egg binding)

鳥類の雌における繁殖関連疾患に中で、取り分け多いのが卵塞で、卵詰まりとも卵秘とも呼びます。

卵塞は、卵が一定の時間を経過しても膣部や子宮部から産出されない状態を指します。

一般的な鳥では、排卵後24時間以内に産卵が行われます。

そのため腹部に卵の形状が触知されてから24時間以内に産卵されない場合、卵塞と考えるべきです。

卵塞の原因については、前回ボタンインコの卵塞症でコメントしましたので、詳細はこちらをご覧ください。



ウズラのふゆちゃんは、このところ連続して産卵していたのが、産卵しなくなってぐったりしているとのことで来院されました。

明らかにショック状態に陥っています。



肛門周囲(総排泄腔)を触診しますと、卵と思われる硬い塊があります。

ふゆちゃんは、卵塞になっているようです。

卵はすぐ膣部まで降りかかっていますので、圧迫排出法で介助することとしました。















卵の圧迫排出は1,2分で完了しました。

問題はショック状態のふゆちゃんの治療です。

卵塞の原因の一つに低Ca血症による卵管収縮不全が挙げられます。

連続した産卵のため、産卵にCaを多量に消費しての低Ca血症です。

卵による臓器や坐骨神経の圧迫、腹圧をかけた怒責による疼痛もあると思います。

それらが、複合的に合わさってショック症状になっています。

CaやビタミンD、ステロイド剤の投薬と保温に努めていただくこととしました。



ふゆちゃん、早く回復して下さい。


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