鳥の疾病
アイガモの直腸脱
こんにちは 院長の伊藤です。
鳥類は排尿、排便、産卵と一つのお尻の穴で対応します。
この穴を総排泄腔と呼びます。
この総排泄腔から、何らかの原因で直腸が脱出することを直腸脱と言います。
これまでにも各種動物の直腸脱は報告させて頂きました。
今回はアイガモの直腸脱についてコメントさせて頂きます。
アイガモのピーちゃん(雌、3歳)はお尻から何か飛び出して、排便がしにくそうであるとのことで来院されました。
下写真の黄色丸が総排泄腔から直腸が脱出している部分です。
患部に尿酸や便が付いてます。
数日前から軟便・下痢便が続いていたとのことで、お腹に力を込めて排便していたのでしょう。
それが原因で直腸脱に至ったと思われます。
患部を洗浄・消毒します。
赤矢印で示したのが、脱出した直腸です。
黄色丸で囲んであるのが、脱出した直腸壁の一部が外部環境との干渉(摩擦など)で炎症・肥厚した部位です。
脱出した直腸を整復するため、シリンジポンプを用いて直腸をゆっくりと下写真の様に押し戻していきます。
直腸はしっかりと押し戻すことが出来ましたが、このままでまた腹圧をかけて排便をしますと再脱出の可能性が高いです。
そのため、総排泄腔の端に1針縫合して排泄腔を絞り込んで脱出を抑制します。
下写真の黄色矢印は縫合しているところです。
総排泄腔を縫合糸で締結しているところです。
こんな感じで総排泄腔を絞ります。
お尻を縫われたことでピーちゃんは興奮しています。
この状態でピーちゃんにおとなしく1週間過ごして頂き、縫合糸をカットして再脱出が認められなければ治療終了です。
さて処置後9日経過して、再診されたピーちゃんです。
ピーちゃんの総排泄腔は、下写真のように直腸の再脱出もなく安定していましたので抜糸しました。
その後の経過もピーちゃんは問題なく排便・排尿出来ています。
最後に飼主様とのツーショットです!
毎日使用する器官なので、命に関わる場合もあります。
直腸脱が認められたら、大至急受診するようにお願い致します。
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鳥類は排尿、排便、産卵と一つのお尻の穴で対応します。
この穴を総排泄腔と呼びます。
この総排泄腔から、何らかの原因で直腸が脱出することを直腸脱と言います。
これまでにも各種動物の直腸脱は報告させて頂きました。
今回はアイガモの直腸脱についてコメントさせて頂きます。
アイガモのピーちゃん(雌、3歳)はお尻から何か飛び出して、排便がしにくそうであるとのことで来院されました。
下写真の黄色丸が総排泄腔から直腸が脱出している部分です。
患部に尿酸や便が付いてます。
数日前から軟便・下痢便が続いていたとのことで、お腹に力を込めて排便していたのでしょう。
それが原因で直腸脱に至ったと思われます。
患部を洗浄・消毒します。
赤矢印で示したのが、脱出した直腸です。
黄色丸で囲んであるのが、脱出した直腸壁の一部が外部環境との干渉(摩擦など)で炎症・肥厚した部位です。
脱出した直腸を整復するため、シリンジポンプを用いて直腸をゆっくりと下写真の様に押し戻していきます。
直腸はしっかりと押し戻すことが出来ましたが、このままでまた腹圧をかけて排便をしますと再脱出の可能性が高いです。
そのため、総排泄腔の端に1針縫合して排泄腔を絞り込んで脱出を抑制します。
下写真の黄色矢印は縫合しているところです。
総排泄腔を縫合糸で締結しているところです。
こんな感じで総排泄腔を絞ります。
お尻を縫われたことでピーちゃんは興奮しています。
この状態でピーちゃんにおとなしく1週間過ごして頂き、縫合糸をカットして再脱出が認められなければ治療終了です。
さて処置後9日経過して、再診されたピーちゃんです。
ピーちゃんの総排泄腔は、下写真のように直腸の再脱出もなく安定していましたので抜糸しました。
その後の経過もピーちゃんは問題なく排便・排尿出来ています。
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投稿者 院長 | 記事URL
ハシボソカラスの嘴骨折
こんにちは 院長の伊藤です。
当院では愛玩鳥の治療を行っておりますが、その一方で保護された野鳥の治療を依頼されることもあります。
勿論、野鳥の場合は県の保護条例に則り、自然に戻す前提で治療をします。
今回ご紹介しますのは、ハシボソカラスの嘴を骨折した症例です。
このハシボソカラスですが、道端にうずくまっていたところを保護され、当院を受診されました。
よく街中で目にするカラスですが、一般にハシブトカラスが多いです。
今回のハシボソカラスは田園地帯や農耕地・河川などの開けた場所に棲息するとされています。
ハシブトカラスは嘴と額の間に段差あり、福助の様におでこが出ているのが特徴です。
その一方で、ハシボソカラスは額がなだらかで頭部はなめらかに見えます。
さてこのハシボソカラスですが、嘴から出血と共に何か出ているとの保護者からの指摘がありまして、詳しくチェックさせて頂きました。
下写真黄色矢印にあるように口腔内に突起物が認められます。
詳細を確認しますと、どうやら嘴の下顎骨が骨折して、嘴外皮を突き破っていることが判明しました。
上の写真と同じものですが、骨折して飛び出ている下顎骨を鉗子で摘出したのが下写真黄色丸です。
そして嘴の正中線にしたがってく嘴の先端から亀裂が走っているのが確認されました(下写真黄色矢印)。
このままでは、強度的に嘴で餌を捕食するのは厳しいと思われました。
嘴の骨折の場合、私が好んで採る方法で嘴の側面にピンホールの穴を開け、ワイヤーで締結する術式で嘴の固定を図りました。
まずピンドリルで、下写真の様に穴を開けます。
開けたピンホールに注射針を挿入します。
この注射針にワイヤーを通します(下写真黄色矢印)。
対側に出ている注射針にワイヤーを出し、ワイヤーを鉗子で把持します。
その後、注射針を引き抜いてワイヤーだけを下嘴に残します。
ワイヤーで下嘴を締結します。
同じ要領で骨折部の前後にワイヤーで締結します。
ついで破れた嘴外皮を綺麗に縫合して修復します。
骨折部の前後をワイヤー締結と外皮の縫合(下写真黄色丸)で治療は終了です。
恐らく欠損部の嘴の骨はある程度の修復は期待できると思います。
最低1か月は経過観察が必要かもしれません。
その間、保護された方がお世話をすることとなります。
野鳥ですから、世話をするのは並大抵のことではありません。
保護された方の情熱には脱帽致します。
3週間後のハシボソカラスです。
まだ嘴の欠損部は骨形成されていません。
締結したワイヤーは残っています。
外皮は綺麗に修復され、抜糸しました。
まだ練り餌などで保護された方が給餌している状態です。
ついで術後50日目のハシボソカラスです。
嘴の骨折して欠損した部位は、新たな骨組織で不完全な形状ながら再構築されており、既に自身で採食は可能な状態にまで回復しました。
どうしてもカラスには怖い、ずるがしこい等のネガティブなイメージが付いて回ります。
非常に利発な鳥で、ヒトにも慣れます。
この後、ハシボソカラスは野に放たれました。
しっかり、自身で生き抜いて欲しいと思います。
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このハシボソカラスですが、道端にうずくまっていたところを保護され、当院を受診されました。
よく街中で目にするカラスですが、一般にハシブトカラスが多いです。
今回のハシボソカラスは田園地帯や農耕地・河川などの開けた場所に棲息するとされています。
ハシブトカラスは嘴と額の間に段差あり、福助の様におでこが出ているのが特徴です。
その一方で、ハシボソカラスは額がなだらかで頭部はなめらかに見えます。
さてこのハシボソカラスですが、嘴から出血と共に何か出ているとの保護者からの指摘がありまして、詳しくチェックさせて頂きました。
下写真黄色矢印にあるように口腔内に突起物が認められます。
詳細を確認しますと、どうやら嘴の下顎骨が骨折して、嘴外皮を突き破っていることが判明しました。
上の写真と同じものですが、骨折して飛び出ている下顎骨を鉗子で摘出したのが下写真黄色丸です。
そして嘴の正中線にしたがってく嘴の先端から亀裂が走っているのが確認されました(下写真黄色矢印)。
このままでは、強度的に嘴で餌を捕食するのは厳しいと思われました。
嘴の骨折の場合、私が好んで採る方法で嘴の側面にピンホールの穴を開け、ワイヤーで締結する術式で嘴の固定を図りました。
まずピンドリルで、下写真の様に穴を開けます。
開けたピンホールに注射針を挿入します。
この注射針にワイヤーを通します(下写真黄色矢印)。
対側に出ている注射針にワイヤーを出し、ワイヤーを鉗子で把持します。
その後、注射針を引き抜いてワイヤーだけを下嘴に残します。
ワイヤーで下嘴を締結します。
同じ要領で骨折部の前後にワイヤーで締結します。
ついで破れた嘴外皮を綺麗に縫合して修復します。
骨折部の前後をワイヤー締結と外皮の縫合(下写真黄色丸)で治療は終了です。
恐らく欠損部の嘴の骨はある程度の修復は期待できると思います。
最低1か月は経過観察が必要かもしれません。
その間、保護された方がお世話をすることとなります。
野鳥ですから、世話をするのは並大抵のことではありません。
保護された方の情熱には脱帽致します。
3週間後のハシボソカラスです。
まだ嘴の欠損部は骨形成されていません。
締結したワイヤーは残っています。
外皮は綺麗に修復され、抜糸しました。
まだ練り餌などで保護された方が給餌している状態です。
ついで術後50日目のハシボソカラスです。
嘴の骨折して欠損した部位は、新たな骨組織で不完全な形状ながら再構築されており、既に自身で採食は可能な状態にまで回復しました。
どうしてもカラスには怖い、ずるがしこい等のネガティブなイメージが付いて回ります。
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この後、ハシボソカラスは野に放たれました。
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