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鳥の疾病

セキセイインコの卵塞(全身麻酔下による解除)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、セキセイインコの卵塞(卵づまり)です。

小型愛玩鳥において卵づまりは、日常的に多く遭遇する疾病です。

セキセイインコのそらちゃん(5歳9か月齢、雌)は3週間ほど前から腹部が腫大してきました。

他院で手指による卵の圧迫排出をおこなったものの、卵管口から卵の排出が出来ないため、当院を紹介されて受診されました。

下腹部が腫れて体のバランスを取るのが辛そうです。



まずはレントゲン撮影を実施します。

卵が3個、卵管内に停留しています(下写真黄色矢印)。

うち1個は卵殻が潰れています。





総排泄腔から用手法で卵の圧迫排出を試みます(下写真)。

卵が総排泄腔粘膜を押し出して脱出しています。

原因は、卵管口が十分に開かないため、膣部が伸展して内部に卵がぶら下がっている状態です。



総排泄腔粘膜が卵と癒着しており、無理やり手指で圧迫すると粘膜ごと大きく破れてしまうため要注意です。



そらちゃんは暴れるため、全身麻酔を行い卵を排出することとしました。





麻酔導入が出来たところを確認して導入箱から出てもらいます。



そらちゃんを維持麻酔に切り替えます。







卵と総排泄腔粘膜との癒着は強く、強く把持すると粘膜が裂ける感じです。



脱出している総排泄腔粘膜に小切開を眼科鋏で加えます。





ピンセットで粘膜の切開部から卵を取り出します。



1個目の卵です。



次に2個目の潰れている卵を摘出します。



下写真の黒矢印が2個目の卵管内で潰れている卵です。

そして、黄色矢印が3個目の卵です。



3個目の卵を摘出します。



3個目の卵も卵殻が脆弱で、鉗子で触るだけで簡単に割れます。



最後に小切開した総排泄腔粘膜に1針縫合します。



患部に抗生剤を滴下しています。



総排泄腔粘膜を縫合したところ(下写真青丸)で、卵管に卵塞していた卵を解除したため、卵管脱が起こりました(黄色矢印)。



卵管脱は脱出した卵管を滅菌綿棒で元の位置に戻します。



その後、卵管脱は治まりましたので特に総排泄孔の端を縫合せずに処置は終了です。



麻酔から覚醒したそらちゃんです。

衰弱傾向が認められたので、無事覚醒出来て良かったです。



摘出した卵です。

左端が2番目に摘出した卵殻です。

非常に柔らかい性状です。

真ん中は最後(3番目)に摘出した卵ですが、こちらも卵殻が薄く柔らかいです。

そして、右端は一番初めに摘出した卵です。

こちらは卵殻はほぼ正常卵と変わりありません。

持続的に産卵する場合、初回の卵よりも、次に作られる卵になるほどカルシウムがいきわたらなく軟弱となります。



卵塞の発生要因は、持続的な発情による過産卵やビタミンD・カルシウムの不足等が原因とされます。

特に過産卵は組織内カルシウムを減少させ、卵管の収縮力を減少させて産卵が困難となります。

加えて、卵殻が軟弱で卵管内に停滞する傾向を持ちます。

卵が卵管内に長時間停滞すると、卵殻が卵管粘膜との癒着を引き起こします。

今回の事例は、まさに上記の条件がそろって発症した卵塞です。



下写真は、卵塞を解除した後のレントゲン像です。

そらちゃんの骨密度を見ますと白くなっている部分が骨髄内に認められ、まばらに白い斑点として現れます(下写真赤丸)。

これを多発性骨化過剰症といい、骨髄骨とも言われます。

骨髄骨は産卵中の雌に卵の卵殻形成に必要なカルシウムを供給するための貯蔵庫として使用されます。

骨髄骨が骨髄内腔に沈着し、しかも沈着に秩序なくデンシティーも均一ではありません。

このレントゲン像は、そらちゃんの過発情や軟卵などの異常卵産生といった繁殖疾患を裏付けてます。



多発性骨化過剰症のレントゲン所見から、持続発情が示唆されたそらちゃんですが、卵塞が再発しないよう経過観察が必要です。

状況によっては、発情抑制剤(クロルマジノン)の投薬も検討します。





翌日にそらちゃんは退院して頂きました。

そらちゃん、お疲れ様でした。




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投稿者 院長

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