鳥の疾病
トリヒゼンダニ感染症
この蒸し暑い季節は、寄生虫にとっては増殖・繁栄の最適期のようです。
本日、ご紹介しますのはトリヒゼンダニ感染症の2例です。
犬猫に留まらず、疥癬(ダニ)達は鳥類にも寄生します。
まずは下写真のセキセイインコ君は、嘴の周りを痒そうに止まり木にこすり付けているとのことで来院されました。
嘴とろう膜(鼻の周囲の膜)が粉をふいたようになっており、よくよく見ると小さな穴が開いているのがお分かり頂けると思います。
次のセキセイインコ君は、さらに重症で脚にまで病変が及んでいます。
ろう膜周辺部の細かな穴は、トリヒゼンダニによる角質層を穿孔した箇所です(赤丸)。
肢全体に凸凹に痂皮が形成されています(下写真赤丸)。
これらの患部をメスの刃で皮膚掻破して、顕微鏡で確認しますとトリヒゼンダニが多数認められました(下写真)。
さらに拡大しますと、下写真のダルマ様の形態が成ダニです。
トリヒゼンダニは脱皮を繰り返して、形態的に変化していきます。
次に下写真のダニは幼ダニです。
トリヒゼンダニは当院では、イベルメクチンの内服で対応させて頂いています。
今回の病変部も1~2週間で綺麗に回復します。
トリヒゼンダニの初期症状は、嘴や脚が白く粉を吹いたようになり、嘴を痒そうにケージの格子などにこすり付ける。
肢に感染すれば、止まり木で足踏みをするような仕草をします。
トリヒゼンダニの患部への深部感染を受けますと、嘴が非常に伸びるようになり、脆く偏平な形状になることがあります。
深部感染例では、完治後も嘴は伸び続けて定期的な嘴カットが必要となります。
脚に感染があれば、爪は過長し、最悪の場合、脱落します。
少なくとも、軽度の感染であれば上記のような状況に陥ることはないと思います。
初期症状で気づかれたら、速攻で受診して下さい。
本日、ご紹介しますのはトリヒゼンダニ感染症の2例です。
犬猫に留まらず、疥癬(ダニ)達は鳥類にも寄生します。
まずは下写真のセキセイインコ君は、嘴の周りを痒そうに止まり木にこすり付けているとのことで来院されました。
嘴とろう膜(鼻の周囲の膜)が粉をふいたようになっており、よくよく見ると小さな穴が開いているのがお分かり頂けると思います。
次のセキセイインコ君は、さらに重症で脚にまで病変が及んでいます。
ろう膜周辺部の細かな穴は、トリヒゼンダニによる角質層を穿孔した箇所です(赤丸)。
肢全体に凸凹に痂皮が形成されています(下写真赤丸)。
これらの患部をメスの刃で皮膚掻破して、顕微鏡で確認しますとトリヒゼンダニが多数認められました(下写真)。
さらに拡大しますと、下写真のダルマ様の形態が成ダニです。
トリヒゼンダニは脱皮を繰り返して、形態的に変化していきます。
次に下写真のダニは幼ダニです。
トリヒゼンダニは当院では、イベルメクチンの内服で対応させて頂いています。
今回の病変部も1~2週間で綺麗に回復します。
トリヒゼンダニの初期症状は、嘴や脚が白く粉を吹いたようになり、嘴を痒そうにケージの格子などにこすり付ける。
肢に感染すれば、止まり木で足踏みをするような仕草をします。
トリヒゼンダニの患部への深部感染を受けますと、嘴が非常に伸びるようになり、脆く偏平な形状になることがあります。
深部感染例では、完治後も嘴は伸び続けて定期的な嘴カットが必要となります。
脚に感染があれば、爪は過長し、最悪の場合、脱落します。
少なくとも、軽度の感染であれば上記のような状況に陥ることはないと思います。
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投稿者 院長 | 記事URL
サザナミインコの骨折
愛玩鳥の骨折は、日常的に遭遇することが多いです。
本日、ご紹介するのは骨折の部位が非常に悩ましい症例です。
サザナミインコのラムちゃんは肢を鳥かごのケージに引っ掛けてしまったようで、肢を拳上するとのことで来院されました。
よく診ますと、右足を床面に付けるのが辛いようでわずかに拳上していました。
骨折の可能性もあって、レントゲン撮影を実施しました。
上写真の黄色丸にありますように、大腿骨と脛骨を連結している靭帯が断裂し、加えて大腿骨遠位端が割れています。
一般には、脛骨骨折や中足骨骨折は発症率が高いのですが、ラムちゃんのようなケースは初めての経験です。
鳥の骨折は、注射針を骨髄ピンの代わりに用いて骨折部を固定する方法やあるいは副木とテーピングを併用して骨折部を固定する方法を採ることが多いです。
今回は大腿骨と脛骨を注射針で固定してしまうと、関節が不動化することで、健常な反対側との肢とのバランスが取れずに止まり木に停まった状態から餌を摂ることが出来なくなります。
止まり木に止まることもストレスになるかもしれません。
結局、患部に副木を当ててテーピングを行いました。
偽関節が形成され、将来ある程度の関節が稼働してくれたらと思います。
鳥は2本肢で全体重を支え、加えて止まり木に多くの時間停まっていますので、肢が使えなくなると言いうことは、場合によっては
死に結びつくこともあります。
今後の経過観察が重要なラムちゃんです。
本日、ご紹介するのは骨折の部位が非常に悩ましい症例です。
サザナミインコのラムちゃんは肢を鳥かごのケージに引っ掛けてしまったようで、肢を拳上するとのことで来院されました。
よく診ますと、右足を床面に付けるのが辛いようでわずかに拳上していました。
骨折の可能性もあって、レントゲン撮影を実施しました。
上写真の黄色丸にありますように、大腿骨と脛骨を連結している靭帯が断裂し、加えて大腿骨遠位端が割れています。
一般には、脛骨骨折や中足骨骨折は発症率が高いのですが、ラムちゃんのようなケースは初めての経験です。
鳥の骨折は、注射針を骨髄ピンの代わりに用いて骨折部を固定する方法やあるいは副木とテーピングを併用して骨折部を固定する方法を採ることが多いです。
今回は大腿骨と脛骨を注射針で固定してしまうと、関節が不動化することで、健常な反対側との肢とのバランスが取れずに止まり木に停まった状態から餌を摂ることが出来なくなります。
止まり木に止まることもストレスになるかもしれません。
結局、患部に副木を当ててテーピングを行いました。
偽関節が形成され、将来ある程度の関節が稼働してくれたらと思います。
鳥は2本肢で全体重を支え、加えて止まり木に多くの時間停まっていますので、肢が使えなくなると言いうことは、場合によっては
死に結びつくこともあります。
今後の経過観察が重要なラムちゃんです。
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投稿者 院長 | 記事URL
オカメインコの腹壁損傷
インコに比較的多い疾患に腹部ヘルニアがあります。
これは、何らかの原因で腹筋が裂けてしまい、腸腹膜や腸腹腔内容物が皮下に脱出して、袋状のヘルニア嚢ができる疾病です。
その状態は、腹部の中央部が下に向かって突出したように見えます。
本日ご紹介しますオカメインコのモカちゃんは、以前からこの腹部ヘルニアがあったのですが、どうも総排泄口から卵管が飛び出したとのことで来院されました。
よくよく見ますと卵管脱ではなくて、腹部の皮膚から腹筋が裂けて腸が脱出している状態です。
すぐに腹部を縫合しなくてはならない事態でした。
早速、全身麻酔を施します。
下写真の黄色丸が脱出してしまった腸です。
すでに色は黒ずんでおり、床面との干渉や自咬等の可能性もあります。
下写真の黄色丸が総排泄口(肛門)で赤矢印が脱出した腸です。
この脱出した腸の2か所が裂けており、そこから糞便が出ているのが判明しました。
この部分を吸収性縫合糸で縫合します(下写真黄色矢印)。
次に裂けている腹筋と脱出した腸とが癒着している部分がありましたので、薄皮を剥がすようなタッチで鉗子で剥離していきます。
剥離がうまくできた所で腸を綺麗に洗浄して、腹筋と皮膚を縫合します。
上写真が皮膚縫合が完了したところです。
見た目、腹部が突出しているのがお分かり頂けると思います。
今回の原因となった腹部ヘルニアは整復できませんでしたので、以前からの腹部下垂(突出)状態はそのままです。
可能であれば整復したかったのですが、腸の損傷もありヘルニア孔をトリミングできませんでした。
全身麻酔の覚醒も問題なく手術は完了しました。
あとは患部が床面との接触による干渉を防ぐために、床材を衛生的なテッシュペーパーやシーツで統一していただき、自咬に注意が必要となります。
これは、何らかの原因で腹筋が裂けてしまい、腸腹膜や腸腹腔内容物が皮下に脱出して、袋状のヘルニア嚢ができる疾病です。
その状態は、腹部の中央部が下に向かって突出したように見えます。
本日ご紹介しますオカメインコのモカちゃんは、以前からこの腹部ヘルニアがあったのですが、どうも総排泄口から卵管が飛び出したとのことで来院されました。
よくよく見ますと卵管脱ではなくて、腹部の皮膚から腹筋が裂けて腸が脱出している状態です。
すぐに腹部を縫合しなくてはならない事態でした。
早速、全身麻酔を施します。
下写真の黄色丸が脱出してしまった腸です。
すでに色は黒ずんでおり、床面との干渉や自咬等の可能性もあります。
下写真の黄色丸が総排泄口(肛門)で赤矢印が脱出した腸です。
この脱出した腸の2か所が裂けており、そこから糞便が出ているのが判明しました。
この部分を吸収性縫合糸で縫合します(下写真黄色矢印)。
次に裂けている腹筋と脱出した腸とが癒着している部分がありましたので、薄皮を剥がすようなタッチで鉗子で剥離していきます。
剥離がうまくできた所で腸を綺麗に洗浄して、腹筋と皮膚を縫合します。
上写真が皮膚縫合が完了したところです。
見た目、腹部が突出しているのがお分かり頂けると思います。
今回の原因となった腹部ヘルニアは整復できませんでしたので、以前からの腹部下垂(突出)状態はそのままです。
可能であれば整復したかったのですが、腸の損傷もありヘルニア孔をトリミングできませんでした。
全身麻酔の覚醒も問題なく手術は完了しました。
あとは患部が床面との接触による干渉を防ぐために、床材を衛生的なテッシュペーパーやシーツで統一していただき、自咬に注意が必要となります。
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投稿者 院長 | 記事URL
セキセイインコの腹水症
セキセイインコの腹水症について紹介させて頂きます。
腹水とは腹腔内に液体が溜まる現象を指します。
貯留する液体によって、炎症性と漏出性に分かれます。
液体の比重を測定することで判定します。
炎症性の液体は滲出液といい、卵性腹膜炎で多く生じます。
一方、漏出液は比重が低く、水の比重1.00に近い値を取り、心疾患や肝臓疾患に由来することが多いです。
セキセイインコのチーちゃんは、お腹に水が溜まったとのことで来院されました。
止まり木に止まるのも辛そうな感じです。
下写真の黄色丸をご覧ください。
鳥は犬猫と違って、腹水がたまりますと重力の関係で下腹部に大きな腫瘤ができます。
ここ最近まで、チーちゃんは連続して産卵をしていたそうです。
その後、短期間でこのように腹水が貯留したという経過です。
産科系(卵巣・卵管系)の問題かもしれないと考えられました。
全身状態も思わしくないため、積極的に腹部エコーを撮るのは控えました。
ただ腹水の量が多いため、本人の負担にならない範囲で腹水を吸引するすることとしました。
下腹部に検耳鏡のライトを当て腹水の貯留している部位を確認して、注射針で穿刺します。
下写真のように水が貯留している部位は、赤くライトで映し出されます。
上写真のように注射針から腹水が滴下してきました。(黄色矢印)
注射筒で吸引した方が速いのですが、急激に吸引しますと血圧低下によるショックを招くことが多いので、今回はゆっくり自重滴下で抜去していきます。
思いのほか貯留していた腹水は多く、約5mlほどありました。
さらに吸引することは可能でしたが、全体貯留量の半分ほどで留めました。
腹水の比重を測定したところ、1.008と低く漏出液であることが判明しました。
自分の予想では、卵胞嚢腫ではないかと考えられました。
卵胞内に多量の液体が貯留する疾患です。
エコーの確認をしてませんので確定はできませんが、心疾患・肝疾患も絡んでいるかもしれません。
いずれにせよ、多少チーちゃんは少し楽になったようです。
内服薬を処方して、1週間後に再診を受けていただきました。
下写真が1週間後のチーちゃんです。
元気な時と変わらない位、状態は良くなったとのことです。
下腹部は黄色丸にあるようにとてもスッキリしています。
この状態で腹水が溜まらなければ大丈夫ですが、確定診断できてませんので要経過観察です。
腹水とは腹腔内に液体が溜まる現象を指します。
貯留する液体によって、炎症性と漏出性に分かれます。
液体の比重を測定することで判定します。
炎症性の液体は滲出液といい、卵性腹膜炎で多く生じます。
一方、漏出液は比重が低く、水の比重1.00に近い値を取り、心疾患や肝臓疾患に由来することが多いです。
セキセイインコのチーちゃんは、お腹に水が溜まったとのことで来院されました。
止まり木に止まるのも辛そうな感じです。
下写真の黄色丸をご覧ください。
鳥は犬猫と違って、腹水がたまりますと重力の関係で下腹部に大きな腫瘤ができます。
ここ最近まで、チーちゃんは連続して産卵をしていたそうです。
その後、短期間でこのように腹水が貯留したという経過です。
産科系(卵巣・卵管系)の問題かもしれないと考えられました。
全身状態も思わしくないため、積極的に腹部エコーを撮るのは控えました。
ただ腹水の量が多いため、本人の負担にならない範囲で腹水を吸引するすることとしました。
下腹部に検耳鏡のライトを当て腹水の貯留している部位を確認して、注射針で穿刺します。
下写真のように水が貯留している部位は、赤くライトで映し出されます。
上写真のように注射針から腹水が滴下してきました。(黄色矢印)
注射筒で吸引した方が速いのですが、急激に吸引しますと血圧低下によるショックを招くことが多いので、今回はゆっくり自重滴下で抜去していきます。
思いのほか貯留していた腹水は多く、約5mlほどありました。
さらに吸引することは可能でしたが、全体貯留量の半分ほどで留めました。
腹水の比重を測定したところ、1.008と低く漏出液であることが判明しました。
自分の予想では、卵胞嚢腫ではないかと考えられました。
卵胞内に多量の液体が貯留する疾患です。
エコーの確認をしてませんので確定はできませんが、心疾患・肝疾患も絡んでいるかもしれません。
いずれにせよ、多少チーちゃんは少し楽になったようです。
内服薬を処方して、1週間後に再診を受けていただきました。
下写真が1週間後のチーちゃんです。
元気な時と変わらない位、状態は良くなったとのことです。
下腹部は黄色丸にあるようにとてもスッキリしています。
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オカメインコの卵管蓄卵材症
本日ご紹介しますのは、オカメインコの卵管蓄卵材症という舌を咬みそうな症状です。
もとより、鳥は排卵して卵管を卵が下りていく間に卵白や卵殻が形成され、産卵に至るというプロセスがあります。
卵が無事卵管から総排泄腔へとスムーズに降りてくれれば、以前ご紹介した卵塞にはならずに済みます。
今回の卵管蓄卵材症は、卵を形成すべき材料が異常に分泌され続け、これらが排泄されずに卵管内に蓄積した状態の疾病です。
オカメインコのほたるちゃんは、下腹部が異常に張ってきたということで来院されました。
上の写真の黄色丸で囲んだ部分が腫脹している下腹部です。
触診しますと指先に卵殻の硬い感じがありました。
まずは卵塞の可能性を考慮して、指先で優しく圧迫して総排泄孔から卵を出そうと試みました。
普通の卵塞ならば、そんなに苦労せずに卵が顔を出してくれるのですが、今回は厳しい感じです。
総排泄腔から卵管が脱出してきました。
早速、卵管の状態を把握するためにレントゲン撮影を実施しました。
この時点で、手術の必要性を感じてマスクをかけ、全身麻酔を施しました。
上の写真を局所的に拡大します。
黄緑色の矢印は脱出した卵管です。
黄色丸で示したのが形成が未熟なままの卵殻と卵材です。
ほたるちゃんはここのところ、発情が酷く産卵も集中していたとの事です。
まずは、脱出した卵管に切開を加えて卵材の摘出を試みました。
ゆで卵のような卵黄や卵白が出て来ました。
卵白と卵黄の混在物や卵殻の破片のようなものが色々出て来ました。
取れる限界まで卵材を回収して卵管を縫合します。
次に縫合した卵管を総排泄腔から中に戻します。
これで手術は終了です。
摘出した卵材の一部は下の通りです。
卵管内に蓄積する卵材は、卵黄・卵白・卵殻・卵殻膜等を原材料として、ゼリー状、液状、粘土状、砂状、結石状のものから完成形に近い卵状まで様々な形で存在するそうです。
この疾病は、犬猫で比較するならば子宮蓄膿症に匹敵するものです。
原因としては、卵材の異常分泌や卵材の排出不全が挙げられます。
この疾病に罹患した場合、何も処置せずに放置しておくと卵材が自然に吸収されることはなく、徐々に蓄積されていく傾向にあります。
長期にわたる卵材停滞の場合は、卵管炎から腹膜炎に至ることがあり、また卵材の慢性刺激により、卵管腫瘍が誘発されるケースもあります。
いずれにせよ、完治を目指すならば卵管の摘出がベストです。
今回のほたるちゃんの場合は全身状態も考慮して、開腹手術・卵管摘出手術は実施しませんでしたが、次に再発して全身状態が良好ならば、卵管摘出を考えるべきだと思います。
麻酔から覚醒したほたるちゃんです。
術後の覚醒も良好で、脱水を防ぐために水分補給と抗生剤を投薬してます。
今後の経過を注意して診ていきます。
翌日、ほたるちゃんは無事退院されました。
もとより、鳥は排卵して卵管を卵が下りていく間に卵白や卵殻が形成され、産卵に至るというプロセスがあります。
卵が無事卵管から総排泄腔へとスムーズに降りてくれれば、以前ご紹介した卵塞にはならずに済みます。
今回の卵管蓄卵材症は、卵を形成すべき材料が異常に分泌され続け、これらが排泄されずに卵管内に蓄積した状態の疾病です。
オカメインコのほたるちゃんは、下腹部が異常に張ってきたということで来院されました。
上の写真の黄色丸で囲んだ部分が腫脹している下腹部です。
触診しますと指先に卵殻の硬い感じがありました。
まずは卵塞の可能性を考慮して、指先で優しく圧迫して総排泄孔から卵を出そうと試みました。
普通の卵塞ならば、そんなに苦労せずに卵が顔を出してくれるのですが、今回は厳しい感じです。
総排泄腔から卵管が脱出してきました。
早速、卵管の状態を把握するためにレントゲン撮影を実施しました。
この時点で、手術の必要性を感じてマスクをかけ、全身麻酔を施しました。
上の写真を局所的に拡大します。
黄緑色の矢印は脱出した卵管です。
黄色丸で示したのが形成が未熟なままの卵殻と卵材です。
ほたるちゃんはここのところ、発情が酷く産卵も集中していたとの事です。
まずは、脱出した卵管に切開を加えて卵材の摘出を試みました。
ゆで卵のような卵黄や卵白が出て来ました。
卵白と卵黄の混在物や卵殻の破片のようなものが色々出て来ました。
取れる限界まで卵材を回収して卵管を縫合します。
次に縫合した卵管を総排泄腔から中に戻します。
これで手術は終了です。
摘出した卵材の一部は下の通りです。
卵管内に蓄積する卵材は、卵黄・卵白・卵殻・卵殻膜等を原材料として、ゼリー状、液状、粘土状、砂状、結石状のものから完成形に近い卵状まで様々な形で存在するそうです。
この疾病は、犬猫で比較するならば子宮蓄膿症に匹敵するものです。
原因としては、卵材の異常分泌や卵材の排出不全が挙げられます。
この疾病に罹患した場合、何も処置せずに放置しておくと卵材が自然に吸収されることはなく、徐々に蓄積されていく傾向にあります。
長期にわたる卵材停滞の場合は、卵管炎から腹膜炎に至ることがあり、また卵材の慢性刺激により、卵管腫瘍が誘発されるケースもあります。
いずれにせよ、完治を目指すならば卵管の摘出がベストです。
今回のほたるちゃんの場合は全身状態も考慮して、開腹手術・卵管摘出手術は実施しませんでしたが、次に再発して全身状態が良好ならば、卵管摘出を考えるべきだと思います。
麻酔から覚醒したほたるちゃんです。
術後の覚醒も良好で、脱水を防ぐために水分補給と抗生剤を投薬してます。
今後の経過を注意して診ていきます。
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