ハムスターなど小型げっ歯類の疾病
2012年4月11日 水曜日
ハムスターの頬袋脱出
ハムスターは頬袋を持っており、この頬袋に食料を入れて巣に運び貯蔵するという習性を持っています。
この袋は伸展性に富んでおり、食料を詰め込むと肩甲骨に達するところまで伸びることもあります。
単独生活をするゴールデンハムスター等は、頬袋に食料を入れたままにしておくことはありません。
しかし、集団で生活するジャンガリアンハムスターは袋に食料を貯め込む傾向が強いといわれます。
まして、ペットとして飼育される場合、おやつ等嗜好性の高い食料を与えますと、他のハムスターに取られたくなくて長期にわたって袋に食料が入れっぱなしということがあります。
そんな頬袋ですが、たくさん食料を詰め込んで吐き出す際に頬袋が反転して外に脱出してしまう事があります。
これを頬袋脱出(頬袋の反転)と呼びます。
頬袋脱出の発見・治療が早期であれば、綿棒などを用いて元の頬の内側へ戻すことが可能です。
上の写真で黄色の円で囲った部分が頬袋です。
まだ脱出したばかりで、袋の傷もありません。
袋自体が脱出することで血行障害を起こしている場合もあり、袋の組織に水が溜まる(浮腫)があれば、20%ブドウ糖で浮腫を取り除きます。
次に綿棒を用いて元の位置に袋を戻しました。
赤の矢印の方向に綿棒で袋を押し込みます。
結果として、きれいに袋は整復しました。
その後の再脱出もありません。
次に別のジャンガリアンハムスターですが、頬袋脱出してから時間がたっており、袋自体にも傷があり、炎症・壊死が認められる状態ですと対応が変わってきます。
黄色い丸の頬袋は長期脱出により、袋の炎症、硬化がおこっていました。
整復処置の効果もないと判断し、外科的に切除することとします。
切除後の頬袋はまた再生されて、機能します。
口の中から何か飛び出していると気づかれましたら、お早めに受診下さい。
小さな動物ですから、できうる限り体に負担のかからない対応をしたいですね。
この袋は伸展性に富んでおり、食料を詰め込むと肩甲骨に達するところまで伸びることもあります。
単独生活をするゴールデンハムスター等は、頬袋に食料を入れたままにしておくことはありません。
しかし、集団で生活するジャンガリアンハムスターは袋に食料を貯め込む傾向が強いといわれます。
まして、ペットとして飼育される場合、おやつ等嗜好性の高い食料を与えますと、他のハムスターに取られたくなくて長期にわたって袋に食料が入れっぱなしということがあります。
そんな頬袋ですが、たくさん食料を詰め込んで吐き出す際に頬袋が反転して外に脱出してしまう事があります。
これを頬袋脱出(頬袋の反転)と呼びます。
頬袋脱出の発見・治療が早期であれば、綿棒などを用いて元の頬の内側へ戻すことが可能です。
上の写真で黄色の円で囲った部分が頬袋です。
まだ脱出したばかりで、袋の傷もありません。
袋自体が脱出することで血行障害を起こしている場合もあり、袋の組織に水が溜まる(浮腫)があれば、20%ブドウ糖で浮腫を取り除きます。
次に綿棒を用いて元の位置に袋を戻しました。
赤の矢印の方向に綿棒で袋を押し込みます。
結果として、きれいに袋は整復しました。
その後の再脱出もありません。
次に別のジャンガリアンハムスターですが、頬袋脱出してから時間がたっており、袋自体にも傷があり、炎症・壊死が認められる状態ですと対応が変わってきます。
黄色い丸の頬袋は長期脱出により、袋の炎症、硬化がおこっていました。
整復処置の効果もないと判断し、外科的に切除することとします。
切除後の頬袋はまた再生されて、機能します。
口の中から何か飛び出していると気づかれましたら、お早めに受診下さい。
小さな動物ですから、できうる限り体に負担のかからない対応をしたいですね。
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2012年2月22日 水曜日
キンクマハムスターの悪性リンパ腫摘出手術
キンクマハムスターは個人的に一番好きな品種です。
性格も温厚で今まで飼育してきて、ハズレ(?)たことがありません。
今回ご紹介するのはキンクマハムスターのチップ君です。
頚腹部に3cmあまりもの巨大な腫瘍ができまして、他院からの紹介で受診されました。
抗がん作用のあるサプリメント等で対応していたのですが、腫瘍がいよいよ大きくなり、外科手術でいくか、このまま内科的治療で行くか、飼い主様が悩まれてのことでした。
かかりつけの病院では腫瘍の細胞診では形質細胞腫とのことでした。
この形質細胞腫は良性腫瘍ですが、増大の進行が早く日常生活に支障があるとのことです。
チップ君の全身状態は良好で手術にも十分耐えられると判断し、手術を実施しました。
写真でお分かりのようにかなり大きな腫瘍です。
ハムスターの手術でいつも気にするのは麻酔の時間です。
犬に比べてその肺活量は微々たるもので、換気不全に陥ればあっという間に死んでしまいます。
したがって手術時間は15~20分内に終了するように心がけています。
加えて腫瘍摘出時は出血が伴いますので、極力止血を優先しながらの手術となります。
今回は、久々の大きな腫瘍でしたが、チップ君の回復も良好で術後の出血もありませんでした。
下の写真は術後30分のものです。
摘出した腫瘍は病理検査したところ、悪性のリンパ腫であることが判明しました。
細胞診と病理検査では結果が異なり、この悪性リンパ腫とチップ君は今後も戦っていかなくてはなりません。
今回は顎下腺から下顎リンパ節、腋下リンパ節にかけて増殖した悪性リンパ腫の合体したものです。
将来的に他のリンパ節への病巣拡大の可能性もあります。
形質細胞腫であれば、これでスッキリできたところですが再発がないことを祈りつつ、抗がん作用のサプリメントを続行していただく予定です。
最後にチップ君の病理標本像(弱拡大&強拡大)を載せます。
大小不同のリンパ芽球(青く染まった細胞)が増殖しています。
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性格も温厚で今まで飼育してきて、ハズレ(?)たことがありません。
今回ご紹介するのはキンクマハムスターのチップ君です。
頚腹部に3cmあまりもの巨大な腫瘍ができまして、他院からの紹介で受診されました。
抗がん作用のあるサプリメント等で対応していたのですが、腫瘍がいよいよ大きくなり、外科手術でいくか、このまま内科的治療で行くか、飼い主様が悩まれてのことでした。
かかりつけの病院では腫瘍の細胞診では形質細胞腫とのことでした。
この形質細胞腫は良性腫瘍ですが、増大の進行が早く日常生活に支障があるとのことです。
チップ君の全身状態は良好で手術にも十分耐えられると判断し、手術を実施しました。
写真でお分かりのようにかなり大きな腫瘍です。
ハムスターの手術でいつも気にするのは麻酔の時間です。
犬に比べてその肺活量は微々たるもので、換気不全に陥ればあっという間に死んでしまいます。
したがって手術時間は15~20分内に終了するように心がけています。
加えて腫瘍摘出時は出血が伴いますので、極力止血を優先しながらの手術となります。
今回は、久々の大きな腫瘍でしたが、チップ君の回復も良好で術後の出血もありませんでした。
下の写真は術後30分のものです。
摘出した腫瘍は病理検査したところ、悪性のリンパ腫であることが判明しました。
細胞診と病理検査では結果が異なり、この悪性リンパ腫とチップ君は今後も戦っていかなくてはなりません。
今回は顎下腺から下顎リンパ節、腋下リンパ節にかけて増殖した悪性リンパ腫の合体したものです。
将来的に他のリンパ節への病巣拡大の可能性もあります。
形質細胞腫であれば、これでスッキリできたところですが再発がないことを祈りつつ、抗がん作用のサプリメントを続行していただく予定です。
最後にチップ君の病理標本像(弱拡大&強拡大)を載せます。
大小不同のリンパ芽球(青く染まった細胞)が増殖しています。
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2011年10月21日 金曜日
小型げっ歯類の爪切り・切歯調整
げっ歯類の飼育でまずご注意頂きたいのは、常生歯と呼ばれる歯を彼らは持っているため、常に硬いものを咬ませて歯を摩耗させる必要があるということです。
齧り木も硬さの違うものを何種類か用意されると良いです。
切歯(前歯)が過長になると硬いものが齧れなくなります。
過長の原因は以下の通りです。
1:顎関節が生まれつきずれていて上下の切歯が上手くかみ合っていない。
2:齧り木を含め齧る対象物が飼育環境中にない。
3:嗜好性の問題で固いものを好んで食べようとしない。
当院では比較的短期間(約1カ月)で切歯が伸びて食欲が落ち、切歯の調整を受けられる小型げっ歯類が多いです。
下の写真は毎月切歯調整で来院されるキャンベルハムスターのリン君です。
専用の切歯カット用ニッパーで長さを調整してカットしています。
小型げっ歯類は比較的おとなしい子が多いので、一瞬で終わります。
次の写真はサハラ砂漠に生息するファットテールジャービルの大福君です。
大福君は私の手の中でも暴れることなく、非常におとなしい優等生です。
同じく切歯のカットをしています。
加えて、小型げっ歯類で気をつけたいのは爪の過長です。
前足で餌をもち食事をしますので、爪が長いと眼を傷つけてしまいます。
眼が開かないといって来院される場合、多くが爪の過長による角膜損傷です。
大福君の爪のカット写真も載せておきます。
最後にパキスタン・アフガニスタン地方に生息するピグミージェルボアの小雪ちゃんです。
体の全長が500円玉位の珍しいげっ歯類です。
小さすぎて聴診器をあてて聴診することができません。
齧り木も硬さの違うものを何種類か用意されると良いです。
切歯(前歯)が過長になると硬いものが齧れなくなります。
過長の原因は以下の通りです。
1:顎関節が生まれつきずれていて上下の切歯が上手くかみ合っていない。
2:齧り木を含め齧る対象物が飼育環境中にない。
3:嗜好性の問題で固いものを好んで食べようとしない。
当院では比較的短期間(約1カ月)で切歯が伸びて食欲が落ち、切歯の調整を受けられる小型げっ歯類が多いです。
下の写真は毎月切歯調整で来院されるキャンベルハムスターのリン君です。
専用の切歯カット用ニッパーで長さを調整してカットしています。
小型げっ歯類は比較的おとなしい子が多いので、一瞬で終わります。
次の写真はサハラ砂漠に生息するファットテールジャービルの大福君です。
大福君は私の手の中でも暴れることなく、非常におとなしい優等生です。
同じく切歯のカットをしています。
加えて、小型げっ歯類で気をつけたいのは爪の過長です。
前足で餌をもち食事をしますので、爪が長いと眼を傷つけてしまいます。
眼が開かないといって来院される場合、多くが爪の過長による角膜損傷です。
大福君の爪のカット写真も載せておきます。
最後にパキスタン・アフガニスタン地方に生息するピグミージェルボアの小雪ちゃんです。
体の全長が500円玉位の珍しいげっ歯類です。
小さすぎて聴診器をあてて聴診することができません。
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2011年10月14日 金曜日
デグーマウスの尻尾損傷
マウスの中でもデグーマウスは性格が温順で飼育のしやすさから人気が高いです。
デグーマウスについては、以前から骨折の手術であったり、ストレスからの自咬症の皮膚縫合を実施してますが、今回は手術が結構手ごわかったりする尻尾損傷をコメントさせて頂きます。
室内で放ったりすると、足元にまとわりついたりして飼い主様が踏みつけてしまうこともありますし、飼育ゲージの扉に尻尾を誤って挟んでしまうアクシデントは案外、多いものです。
デグーマウスの場合、尻尾を挟んでしまいその損傷が大きいと簡単にストローを取り出す時に包装の紙を破るかのごとく、するっと尻尾の皮膚が取れてしまいます。
下の写真は、今回取り上げるデグーマウス君の損傷した尻尾と取れてしまった尻尾の皮膚の部分です。(黒い毛虫のように見えてます。)
早速、全身麻酔を施しむき出しになった患部を洗浄・消毒します。
露出している患部を保護することはできませんので、このまま放置しておくと壊死を招くことになります。
結局、可哀そうですが患部を外科的に切断します。
尻尾は思いのほか、太い血管が走行していますので外側面から糸で縛って血行を一時遮断します。
切断面は止血のため、電気メスで止血します。
皮膚を縫合して終了です。
このままおとなしくしてくれれば良いのですが、自咬症が心配で粘着テープで保護します。
デグーマウスについては、以前から骨折の手術であったり、ストレスからの自咬症の皮膚縫合を実施してますが、今回は手術が結構手ごわかったりする尻尾損傷をコメントさせて頂きます。
室内で放ったりすると、足元にまとわりついたりして飼い主様が踏みつけてしまうこともありますし、飼育ゲージの扉に尻尾を誤って挟んでしまうアクシデントは案外、多いものです。
デグーマウスの場合、尻尾を挟んでしまいその損傷が大きいと簡単にストローを取り出す時に包装の紙を破るかのごとく、するっと尻尾の皮膚が取れてしまいます。
下の写真は、今回取り上げるデグーマウス君の損傷した尻尾と取れてしまった尻尾の皮膚の部分です。(黒い毛虫のように見えてます。)
早速、全身麻酔を施しむき出しになった患部を洗浄・消毒します。
露出している患部を保護することはできませんので、このまま放置しておくと壊死を招くことになります。
結局、可哀そうですが患部を外科的に切断します。
尻尾は思いのほか、太い血管が走行していますので外側面から糸で縛って血行を一時遮断します。
切断面は止血のため、電気メスで止血します。
皮膚を縫合して終了です。
このままおとなしくしてくれれば良いのですが、自咬症が心配で粘着テープで保護します。
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2011年8月 1日 月曜日
ハムスターの皮下腫瘍
ハムスターは皮下に腫瘍ができるケースがとても多いです。
当院でのエキゾチックアニマルの外科手術例で約20%がハムスターに代表される小型げっ歯類の皮下腫瘍摘出手術です。
あまりに症例が多いことと、画像で載せるには生理的に生々しく大きな腫瘍症例が多いので、今回はスッキリした腫瘍を載せます。
この症例は瞼上部にできた腫瘍です。
いつものごとくガス麻酔を実施して、電気メスで皮膚を切開し、腫瘍を取り巻く栄養血管を縫合糸で結紮して摘出します。
この腫瘍は病理検査で繊維肉腫と判明しました。
当院でのエキゾチックアニマルの外科手術例で約20%がハムスターに代表される小型げっ歯類の皮下腫瘍摘出手術です。
あまりに症例が多いことと、画像で載せるには生理的に生々しく大きな腫瘍症例が多いので、今回はスッキリした腫瘍を載せます。
この症例は瞼上部にできた腫瘍です。
いつものごとくガス麻酔を実施して、電気メスで皮膚を切開し、腫瘍を取り巻く栄養血管を縫合糸で結紮して摘出します。
この腫瘍は病理検査で繊維肉腫と判明しました。
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