ハムスターなど小型げっ歯類の疾病
2013年8月28日 水曜日
ハムスターの皮下膿瘍・肉芽腫
キンクマハムスターのくろちゃんは、右脇腹に腫瘤が出来て大きくなってきているとのことで来院されました。
ハムスターの皮下腫瘍は非常に多いのですが、今回のくろちゃんの腫瘤は内部がチーズ様を呈しています。
おそらくこのチーズ様の部分は皮下膿瘍と思いますが、腫瘤すべてが膿瘍というわけでなく、他に腫瘍が控えているかもしれません。
細胞診の結果では、好中球が大部分を占め、これに多数の細菌が認められました。
下写真は低倍&高倍の顕微鏡写真です。
飼い主様のご意向も併せて、手術による摘出を実施することとしました。
下写真は患部を電気メスで切除しているところです。
患部を綺麗に洗浄しています。
特に大きな出血もなく患部摘出は完了しました。
患部をしっかり縫合して手術は終了です。
摘出した腫瘤は殆どが膿瘍で一部肉芽腫が認められました。
恐らくは、腋下の外傷から雑菌が入り込んで化膿し、その個所を修復するため肉芽組織が形成されたものと思われます。
術後のくろちゃんです。
術後2週間後に抜糸で来院されたくろちゃんです。
黄色丸の部分は一部瘡蓋(かさぶたが残っていますが、綺麗に皮膚は癒合しています。
膿瘍を針で穿刺して、洗浄消毒・抗生剤の投与という方法もあります。
おそらく犬猫ではその治療法を選択します。
しかし、小型齧歯類の場合は患部を自分で齧ってさらに傷を深くするケースが多いです。
手術で患部ごと摘出してしまう方が、結果的には短期間で患部を治癒させることが可能です。
しかし、患部がどんどん大きくなってから外科的に摘出するのは、動物自身に負担をかけますから、少しでも小さな腫瘤に気づいたら受診して下さいね。
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2013年6月26日 水曜日
ジャンガリアンハムスターの肥満細胞腫(その2)
ジャンガリアンハムスターの皮下腫瘍で、比較的短期間で腫瘍が増大するタイプに肥満細胞腫があります。
以前もこの肥満細胞腫についてはコメントさせて頂きました。
今回ご紹介するジャンガリアンハムスターのきなこちゃん(♀、1歳8か月)は頚腹部にしこりがあるとのことで来院されました。
一般的にハムスターの腫瘍は悪性であることが多く、短期間で増大することも多いです。
犬猫ならば、細胞診をしてどんな種類の腫瘍か検討してから手術なり、化学療法に入ります。
しかしながら、小型のハムスターですと細胞診と病理検査の結果が異なることが多いため、当院では本人の状態が良ければ先に外科手術を実施してから、病理検査に回すケースが多いです。
きなこちゃんの全身状態もよく、全身麻酔にも十分耐えてくれると判断し、早速手術を実施することとなりました。
腫瘍の周囲には栄養血管が何本も走行しており、電気メスで凝固しつつ腫瘍を摘出します。
若干の出血がありましたが、無事縫合も終了です。
ハムスターに点滴を行うのは不可能なので、出血で喪失した水分を補給するため、皮下輸液を施します。
腫瘍摘出部は下写真の通りです。
この腫瘍をスタンプ染色しました。
上写真の黄色丸は細胞質に微細な顆粒を含む肥満細胞腫です。
犬猫ではこの肥満細胞腫は悪性であり、フェレットでは良性腫瘍とされており、ハムスターは現時点では不明だそうです。
きなこちゃんが今後、再発がないことを祈念して経過観察させて頂きます。
以前もこの肥満細胞腫についてはコメントさせて頂きました。
今回ご紹介するジャンガリアンハムスターのきなこちゃん(♀、1歳8か月)は頚腹部にしこりがあるとのことで来院されました。
一般的にハムスターの腫瘍は悪性であることが多く、短期間で増大することも多いです。
犬猫ならば、細胞診をしてどんな種類の腫瘍か検討してから手術なり、化学療法に入ります。
しかしながら、小型のハムスターですと細胞診と病理検査の結果が異なることが多いため、当院では本人の状態が良ければ先に外科手術を実施してから、病理検査に回すケースが多いです。
きなこちゃんの全身状態もよく、全身麻酔にも十分耐えてくれると判断し、早速手術を実施することとなりました。
腫瘍の周囲には栄養血管が何本も走行しており、電気メスで凝固しつつ腫瘍を摘出します。
若干の出血がありましたが、無事縫合も終了です。
ハムスターに点滴を行うのは不可能なので、出血で喪失した水分を補給するため、皮下輸液を施します。
腫瘍摘出部は下写真の通りです。
この腫瘍をスタンプ染色しました。
上写真の黄色丸は細胞質に微細な顆粒を含む肥満細胞腫です。
犬猫ではこの肥満細胞腫は悪性であり、フェレットでは良性腫瘍とされており、ハムスターは現時点では不明だそうです。
きなこちゃんが今後、再発がないことを祈念して経過観察させて頂きます。
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2013年3月28日 木曜日
ジャンガリアンハムスターの線維性組織球種
ドワーフ系ハムスター(小型ハムスター)の皮下腫瘍は相変わらず多いです。
今回、ご紹介するのはジャンガリアンハムスターのコロン君(雄、1歳4か月)です。
左側下腹部に腫瘤ができ、次第に大きくなってきたとのことで他院からのご紹介で来院されました。
拝見したところ、思いのほか大きな腫瘍です。
本人の全身状態も良好なので、早速全身麻酔をかけ腫瘍摘出手術を実施しました。
下写真の黄色丸にあります腫瘍がお分かり頂けるでしょうか?
電気メスで出来る限りマージンをとるように腫瘍を切除します。
大きな腫瘍なので、腫瘍に栄養を送る栄養血管もたくさん走行しています。
これらの血管を電気メスで凝固させつつ、摘出します。
切開したエリアは非常に大きいのですが、これを縫合していきます。
摘出した腫瘍です。
ガス麻酔を切って、5分後のコロン君です。
まだやっと立っていられるくらいの状態です。
30分後のコロン君です。
かなり動き回るようになり、カメラのフォーカスを合わせるのが大変です。
摘出した腫瘍をスタンプ染色したのが下写真です。
病理検査の結果、線維性組織球種であることが判明しました。
良性の腫瘍とのことで、このまま傷口が綺麗に治って再発しなければOKです。
コロン君は無事退院されました。
コロン君、お疲れ様でした!
今回、ご紹介するのはジャンガリアンハムスターのコロン君(雄、1歳4か月)です。
左側下腹部に腫瘤ができ、次第に大きくなってきたとのことで他院からのご紹介で来院されました。
拝見したところ、思いのほか大きな腫瘍です。
本人の全身状態も良好なので、早速全身麻酔をかけ腫瘍摘出手術を実施しました。
下写真の黄色丸にあります腫瘍がお分かり頂けるでしょうか?
電気メスで出来る限りマージンをとるように腫瘍を切除します。
大きな腫瘍なので、腫瘍に栄養を送る栄養血管もたくさん走行しています。
これらの血管を電気メスで凝固させつつ、摘出します。
切開したエリアは非常に大きいのですが、これを縫合していきます。
摘出した腫瘍です。
ガス麻酔を切って、5分後のコロン君です。
まだやっと立っていられるくらいの状態です。
30分後のコロン君です。
かなり動き回るようになり、カメラのフォーカスを合わせるのが大変です。
摘出した腫瘍をスタンプ染色したのが下写真です。
病理検査の結果、線維性組織球種であることが判明しました。
良性の腫瘍とのことで、このまま傷口が綺麗に治って再発しなければOKです。
コロン君は無事退院されました。
コロン君、お疲れ様でした!
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2013年2月 3日 日曜日
ファットテール・ジャービルの臼歯根尖膿瘍
ハムスターやスナネズミ、マウス等、小型齧歯類の歯の特徴は、切歯(前歯)と後臼歯(奥歯)しかありません。
つまり犬猫には普通に存在する犬歯と前臼歯は彼らにはありません。
そして切歯と臼歯を合わせても16本しかありません。
ちなみにウサギは28本です。
ハムスターの切歯は歯根の開いた生涯伸び続ける常生歯です。
切歯が過長となれば、カットして咬合調整します。
一方、ハムスターの臼歯は伸びることはありません。
ウサギの臼歯は常生歯で過長症で悩むことが多いのですが、小型齧歯類の臼歯はその心配はないようですね。
さて、本日ご紹介しますのはファットテール・ジャービルのきなこちゃんです。
右眼の下の皮膚が少し腫れてきたとのことで来院されました。
当初は右眼がうまく開けられない感じ(角膜損傷)を認め、加えて臼歯の歯根部炎症が疑われたため、点眼薬と抗生剤の投薬を指示しました。
3週間ほど自宅での投薬中で、さらに眼下の腫脹が酷くなったとのことで来院されました。
下写真の黄色矢印が腫れている部位です。
口腔内を診ますと右第1後臼歯茎が赤く腫れ上がっています。
3週間前よりも腫脹が著しいため、患部を穿刺して排膿することとしました。
針を刺した瞬間から膿が弾ける感じで出て来ます。
大量の膿が溜まっていました。
きなこちゃん自身も貯留してる膿が気になって、一生懸命眼を引掻いたため、さらに角膜損傷が酷くなり、高度の蓄膿のため瞼を閉めることが出来なくて、角膜が乾燥してしまい、残念ながら失明していました。
臼歯の歯根部は抜歯できるほどグラつきはありません。
犬猫であればここで歯根をダイアモンドバーで分割して抜歯の手順できるのですが、小型齧歯類は非常にデリケートで積極的な抜歯はできません。
歯根部の炎症が沈静化するまで、あるいは歯槽骨が融解して臼歯がグラつくまで抗生剤の内服を継続して頂くこととしました。
排膿処置後は眼下の腫脹は落ち着きました。
問題は高度に受傷した眼球です。
その後のきなこちゃんの眼球です。
今後の右眼の状況いかんでは、眼球摘出が必要になる場合も考えなければなりません。
瞼を閉じることが出来ないため、眼球が乾燥しがちです。
疼痛感から角膜炎からブドウ膜炎へと症状が進行しています。
点眼薬を継続して頂くこととしました。
要経過観察です。
つまり犬猫には普通に存在する犬歯と前臼歯は彼らにはありません。
そして切歯と臼歯を合わせても16本しかありません。
ちなみにウサギは28本です。
ハムスターの切歯は歯根の開いた生涯伸び続ける常生歯です。
切歯が過長となれば、カットして咬合調整します。
一方、ハムスターの臼歯は伸びることはありません。
ウサギの臼歯は常生歯で過長症で悩むことが多いのですが、小型齧歯類の臼歯はその心配はないようですね。
さて、本日ご紹介しますのはファットテール・ジャービルのきなこちゃんです。
右眼の下の皮膚が少し腫れてきたとのことで来院されました。
当初は右眼がうまく開けられない感じ(角膜損傷)を認め、加えて臼歯の歯根部炎症が疑われたため、点眼薬と抗生剤の投薬を指示しました。
3週間ほど自宅での投薬中で、さらに眼下の腫脹が酷くなったとのことで来院されました。
下写真の黄色矢印が腫れている部位です。
口腔内を診ますと右第1後臼歯茎が赤く腫れ上がっています。
3週間前よりも腫脹が著しいため、患部を穿刺して排膿することとしました。
針を刺した瞬間から膿が弾ける感じで出て来ます。
大量の膿が溜まっていました。
きなこちゃん自身も貯留してる膿が気になって、一生懸命眼を引掻いたため、さらに角膜損傷が酷くなり、高度の蓄膿のため瞼を閉めることが出来なくて、角膜が乾燥してしまい、残念ながら失明していました。
臼歯の歯根部は抜歯できるほどグラつきはありません。
犬猫であればここで歯根をダイアモンドバーで分割して抜歯の手順できるのですが、小型齧歯類は非常にデリケートで積極的な抜歯はできません。
歯根部の炎症が沈静化するまで、あるいは歯槽骨が融解して臼歯がグラつくまで抗生剤の内服を継続して頂くこととしました。
排膿処置後は眼下の腫脹は落ち着きました。
問題は高度に受傷した眼球です。
その後のきなこちゃんの眼球です。
今後の右眼の状況いかんでは、眼球摘出が必要になる場合も考えなければなりません。
瞼を閉じることが出来ないため、眼球が乾燥しがちです。
疼痛感から角膜炎からブドウ膜炎へと症状が進行しています。
点眼薬を継続して頂くこととしました。
要経過観察です。
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2013年1月22日 火曜日
ジャービルの耳垢腺癌
ジャービルはスナネズミの近縁種(ジャービル=スナネズミという説もあります。)の齧歯類です。
ハムスターやマウス等の小型齧歯類の中でも飼育のしやすさから、最近人気のある品種です。
本日ご紹介しますのは、そのジャービルのミカちゃんです。
ミカちゃんは、右耳周辺を気にして引掻くとのことで来院されました。
既に右耳介内部は出血を繰り返して痂皮(かさぶた)ができています。
この時点では、耳の中を洗浄して抗生剤を投与しました。
加えて耳腔内の出血巣周辺の細胞診を実施しました。
低倍率の画像です。
次に高倍率の画像です。
上写真の黄色矢印で示した細胞は、好塩基性の細胞質と著しい大小不同を呈する大型類円形核を有しています。
また核分裂像も高頻度に認められることから悪性度の高い腫瘍と思われます。
発生部位から耳垢腺癌が疑われます。
耳垢腺とは外耳道に分布する分泌腺であり、汗腺の一種であるアポクリン腺と組織的に同じ物です。
この分泌物がやがて耳垢となるわけです。
ミカちゃんはこの一か月後に患部がさらに腫大しました。
食餌も満足に取れなく、患部側の瞼も開けるのが辛いようです。
思い切り耳介部を引掻くため、出血も甚だしい状態です。
飼い主様のご希望もあり、外科的に摘出することとなりました。
腫瘍がかなり広範囲に飛んでいるようなので、完治を目指しての手術ではなく、腫瘍の増殖に伴う疼痛感や顎関節の機能障害を軽減するための手術となります。
黄色丸で示した部分は、腫瘍が増殖して腫れています。
肉眼で取りえる所まで頑張りました。
下写真は増殖した腫瘍の一部です。
耳介部の形状を損なわないよう縫合しました。
ミカちゃんは麻酔の覚醒も問題なく、手術は終了しました。
出血もあり、術後は痛々しい感じですが、顔面の腫れも小さくなりました。
ミカちゃん、よく頑張ってくれました。
残念ながらこの手術の11日後にミカちゃんは逝去されました。
手術を行うのは勿論、動物の延命を考慮してのことです。
11日という日数で延命効果と言えるか、返答に悩むところです。
エキゾチックの手術はいつも緊張して臨みますが、成功と失敗が表裏一体の感じが強いです。
犬猫クラスの大きさの動物であれば、ある程度の予測も可能ですが小型齧歯類は非常に難しいものがあります。
少なくとも手術をして、ミカちゃんが一時であれ、あの大きな腫瘍からのストレスから解放されたと感じてくれたら嬉しいです。
合掌
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