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ハムスターなど小型げっ歯類の疾病

2013年12月11日 水曜日

レミングの耳垢腺癌(集団自殺説を含む)

レミングという動物をご存知でしょうか?

レミングはカナダ北部や北欧のツンドラ地方に棲息する小型齧歯類です。

体長は7~15㎝で体重は30~112gと報告されています。

冬眠はせず、越冬します。

体重の1.5倍の餌を毎日食べる大食漢だそうです。



このレミングは一定の周期で大量発生します。

不思議なことに大量発生の翌年には個体数が激減します。

こうしたレミングの極端な個体数の激増と激減は3~4年周期で起こるそうです。

大増殖した結果、レミングは新たな住処と餌を求めて集団移住をします。

その集団移住時に一部の個体が海に落ちて溺れ死ぬことがあり、この事象を以てしてレミングの集団自殺説が広がっています。

集団で川を渡ったり、崖から海に落ちる個体がいたりで絵的にはハメルーンの笛吹き男を彷彿とさせます。

加えてレミングの集団自殺説に拍車をかけたのがウォルト・ディズニーのドキュメンタリー(白い荒野)でレミングが崖から落ちるシーンや溺れ死んだ大量のレミングのシーンを上映したそうです。

実際は、自殺説は関係者の思惑による捏造で、あくまで集団移住時の事故であるとの見解が現在はなされています。


前説が長くなって申し訳ありません。

そんなレミングですが、本日ご紹介しますのは琥太郎君(3歳、雄)です。



琥太郎君は右頬が潰瘍になって肉がむき出しになっているとのことで来院されました。

下写真にありますように痛々しい状態です。



写真では撮影していないのですが、外耳道の末端部が潰瘍上になっており皮膚を穿孔して頬まで炎症が拡大しているようです。

患部を早速、細胞診しました。



上写真の黄色丸で囲んだ細胞群は、好塩基性の細胞質と著しい大小不同を呈する大型類円形核を有しています。

これは、以前同じく小型齧歯類のジャービルの腫瘍症例で報告した細胞と非常に似ています。

興味のある方はこちらをご覧ください。

腫瘍の発生部位から耳垢腺癌と診断いたしました。



この時点で琥太郎君は全身状態は良好で、お持ちいただいたケージ内の回し車で遊んだり出来ていました。





外科的な処置は不可能なので、内科的治療で経過を見ていくこととしました。

抗癌作用のあるD-フラクションや抗生剤の投薬を処方しました。

この5日後に残念ながら、琥太郎君は急逝されました。

レミングもジャービルも発症する腫瘍は同じであることを再確認させられました。

いろんな伝説と誤解の中で翻弄されてきたレミングですが、私からみると愛くるしい1小型齧歯類です。





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2013年10月15日 火曜日

ハムスターの尿石症(ストルバイト尿石)

犬猫では尿石症は一般に認められる疾病の一つです。

その診断・治療法も確立されており、療法食は各社から多数販売されています。

その一方で、エキゾッチクアニマルの尿石症は疾病として存在しているのですが、特に治療法については療法食も存在せず、ちょっと困ってしまう事も度々です。


今回ご紹介させて頂きますのは、ハムスターの尿石症です。


ハムスターは高カルシウム食を好みます。

ヒマワリ、くるみなどの種子が良い例です。

また尿中へのカルシウムを大量に排泄する傾向があります。

犬猫はカルシウムの尿中排泄が2%なのにウサギ・ハムスターは45~60%と言われてます。

加えて、水を多量に飲む動物でないため排尿量が少ないです。

以上の理由から、ハムスターはカルシウムを主成分とするシュウ酸カルシウム尿石ができやすいのです。

ところが、今回ご紹介させて頂く症例はシュウ酸カルシウム尿石ではなく、マグネシウムを主成分とするストルバイト尿石症のケースです。


ゴールデンハムスターのハムリボンちゃん(1.5歳、雌)は血尿をするとのことで来院されました。



下写真は巣箱にした血尿です。



採尿してみたところ、尿石を顕微鏡下に認めました。





この尿石は検査に出したわけではありませんが、結晶の形態からしてストルバイト尿石と思われます。

このガラスの破片のような尿石が、膀胱内に貯留した尿の波動と共に膀胱壁を傷つけ、結果として出血を招きます。

尿のpHがアルカリとなるとリン酸アンモニウムマグネシウム(以下ストルバイト)の結晶化がおこります。

ハムスターの正常尿pHは7.0~8.5とアルカリ尿です。

したがって、ストルバイトはできやすい環境なんですが、それでもカルシウム排泄量が非常に多く、酸性食品(種子等)を好むからシュウ酸カルシウム尿石が圧倒的にできやすいようです。

今回の様にストルバイトが生じた場合、まずこのスツルバイト結晶を溶かす必要があります。

犬・猫用のストルバイト尿石溶解のためにヒルズ社のS/dを処方することが当院では多いのですが、試験的に猫用S/dを食べていただくことにしました。

栄養学的な問題がありますので、従来のハムスター用ペレットに加えてという形にしました。

細菌性膀胱炎も起こしていますので、止血剤と抗生剤を合わせて処方しました。

実はハムリボンちゃんは約1年前にもこの血尿の症状があり、尿検査の結果ストルバイト尿石が疑われ、今回の治療を1か月行いました。

その後は血尿は1年近くなくて経過良好とみていました。





この1週間後に血尿は治まり、1か月後にはストルバイト結晶は陰性となりました。

しかし、これですべてOKというわけにはいきません。

さらに3か月後の先日、ハムリボンちゃんは再び血尿をして来院されました。

尿検査をしてストルバイト尿石が認められました。



療法食で今後も対応するべきかは悩ましいところです。

栄養学的に猫用の療法食は望ましくありません。

今後はフマル酸やDLメチオニンなどの薬を用いた治療を考慮していきたいと思っています。

状況によっては、膀胱結石や尿道結石も考えられますのでレントゲン撮影も必要となります。

ハムスターのシュウ酸カルシウム尿石症治療の報告は散見されますが、ストルバイト尿石治療はほとんどないようです。

食餌管理が一番の課題になりそうです。

経過は追って報告します。


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2013年10月 6日 日曜日

ジャンガリアンハムスターの線維肉腫

ジャンガリアンハムスターの皮下腫瘍をご紹介します。

ジャンガリアンハムスターの腫瘍は色んなタイプが認められます。

腫瘍の外貌から、自分のハムスターはこの症例に近いなとか、ある程度の参考になればと考え、掲載していこうと思います。



今回ご紹介しますのは、ジャンガリアンハムスターのぶっちゃん(1.5歳、雌)です。



他院からのご紹介で来院されました。

右腋下周辺に大きな腫瘤を認めます。



まずは細胞診を実施しました。



黄色丸で囲んだ細胞群は線維肉腫です。

加えて下写真・黄色丸の部分には膿瘍が認められます。



悪性の腫瘍ということもあり、早速外科的に摘出することとしました。



近くで見ると、腫瘍に栄養を供給している怒張した太い栄養血管が認められます。



小さな動物なので、最小限の出血に留めるために電気メスで切開をします。





動脈を確実に止血するためにバイポーラで凝固させます。



切開部を細かく縫合して終了です。

出血は殆どなく終わりました。



麻酔の覚醒と同時に大暴れするぶっちゃんです。



摘出した腫瘍です。



割を入れましたところ、黄色矢印の示す部位に膿瘍が認められました。

細菌感染も合併していた模様です(色調が暗くてすみません)。



ぶっちゃんは経過も良好です。



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2013年9月 6日 金曜日

ゴールデンハムスターの角膜損傷

ハムスターは眼球を傷つけて瞼が開かなくなるケースが非常に多いです。

本日ご紹介しますのは、ゴールデンハムスターのくろちゃん(3か月齢、雄)です。

くろちゃんは、左瞼が開かないとのことで来院されました。

目ヤニで瞼がふさがっており、涙も多く出ています。







くろ君の角膜の状態を診ますと角膜上皮の損傷が認められ、その疼痛でさらに自身で眼をこすって酷くなっています。

グレードⅠの表在性角膜潰瘍です。

目ヤニが多量に出てきてますので、生理食塩水で眼球を洗浄します。





眼瞼内に貯留していた目ヤニを洗浄した後は、多少左眼もぱっちりしてきました。



感染性の角膜損傷のため、くろちゃんは暫く抗生剤の点眼が必要となります。

ハムスターの角膜損傷の原因は、爪の過長(特に前足)が多いようです。

次いで、チップのように断端がギザギザの形状をした床材に眼球を当てて受傷するケースも多いです。

今回、くろ君の爪は伸びていませんでした。

しかし、チップを床材として使用していました(下写真)。



しばらくは、チップの使用は中止して頂き、ティシュペーパーを代用して頂くこととしました。

ハムスターの点眼は、案外難しいです。

点眼を飼主様にしっかり頑張って頂きます。



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2013年9月 4日 水曜日

ゴールデンハムスターの悪性リンパ腫

本日、ご紹介しますのはゴールデンハムスターの悪性リンパ腫です。

ゴールデン系のハムスターはこの悪性リンパ腫が比較的多いです。

特に腫瘍の大きさは短期間に大きいくなることが多く、1~2週間で米粒大から場合によってはキンカン位の大きさに腫大します。


ゴールデンハムスターのポンズ君(2歳、雄)は約1か月位の間に、左腋の腫瘤が大きくなってきたとのことで来院されました。



飼い主様の意向に合わせて、急遽外科的に摘出手術を実施することとなりました。

いつものごとく、ガス麻酔でセンサーを装着してモニターで心拍数・酸素分圧を確認します。



下写真の黄色丸に腫瘍が存在しています。



電気メスで皮膚を切開したところです。

腋下にかけて深い位置に腫瘍が入り込んでいます。





腋下は神経叢や太い動静脈が存在していますので、摘出は慎重に行う必要があります。



動静脈と神経の走行を確認して、これからバイクランプを用いて動脈をシーリングします。



バイクランプのメリットは確実に血管を熱変性させシーリングが完了できることです。

従来は、縫合糸で結紮していましたが場合によっては、結紮部が外れてしまう事があります。

それが、太い動脈であれば致命的になります。

短時間で手術を終了させるためには、このバイクランプは非常に有用です。



熱変性したシーリング箇所を電気メスで離断します。



摘出した腫瘍です。

15㎜ほどの大きさでした。



皮膚をしっかり縫合します。






静脈から犬猫のように点滴はできませんので、皮下にリンゲル液を輸液します。



麻酔から覚醒し始めたポンズ君です。



足取りはふらついていますが、意識は戻っています。





さて摘出した腫瘍ですが、スタンプ染色した顕微鏡写真(低倍・高倍)を下に載せます。





結果として、悪性リンパ腫であることが判明いたしました。

本来、細胞診を実施して腫瘍にどう対処するかを決めるべきなのですが、過去の経緯から術前の細胞診と術後の病理検査との結果が食い違うことがあまりに多く、経験的に外科手術を優先した方が良いと判断したケースは積極的に摘出させて頂いています。

術後の経過も良好で、ポンズ君は現在D-フラクションという抗腫瘍効果の高い栄養補助剤を内服していただいています。

悪性リンパ腫の場合、予後不良となるケースが多いため、今後の経過観察が必要です。

ポンズ君、頑張っていきましょう!




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