ハムスターなど小型げっ歯類の疾病
2012年12月26日 水曜日
ジャンガリアンハムスターの眼球突出
ハムスターの眼球を受け止めている眼窩は非常に浅いため、ちょっとした衝撃で眼球は眼窩からはずれて突出してしまう事があります。
この症状を眼球突出と言います。
日常診療で遭遇する機会の多い眼疾患のひとつです。
すぐに眼球突出に飼主様が気づかれた場合、眼窩に戻して整復することも可能です。
しかし、気づかれずに時間が経過した場合、ハムスターが突出した眼球を引掻いたり、床材との摩擦で眼球は外傷を受けます。
加えて、眼球は乾燥して失明してしまう事もあります。
本日ご紹介しますのは、ジャンガリアンハムスターのピッキーちゃんです。
飼い主様が気づかれた時には、ピッキーちゃんの左眼球は突出して角膜は乾燥し、損傷を受けていました(下写真の黄色丸)。
残念ながら、すでにピッキーちゃんの視力はなく、無理に眼球を元に戻そうとすると眼球内からの出血を引き起こしてしまいます。
結果として、眼球摘出の手術を実施することとなりました。
ハムスターとは言え、眼球摘出は瞬間的に出血量が多いので慎重に対応します。
まずは全身麻酔です。
イソフルランでしっかり寝ていただきます。
すでに失明している眼球を5‐0の縫合糸で牽引して、眼球と眼窩部との靭帯、動静脈をバイポーラで凝固・切断します。
眼球を摘出した後は、瞼を縫合して終了です。
無事手術も終了して、3か月後のピッキーちゃんです。
瞼は上下とも癒合して、以前は存在していた左眼の位置もわからないくらい体毛が生えそろっています。
ピッキーちゃんは、眼球摘出後の日常生活は特に何の不自由もなく送れているそうです。
ハムスターを飼育する上でご注意いただきたいのは、いろんな遊具をケージ内に置かないことです。
うんてい遊びや滑り台で落ちたりして、頭部を強打して眼球突出した症例も多いです。
眼球突出の場合は最悪の場合、今回の様に摘出手術が必要となります。
眼球突出で瞼が閉じなくなる場合は、物理的衝撃以外にも結膜炎や眼球腫瘍が背景にあったりする場合もあります。
いずれにせよ、眼球突出したら、眼球を乾燥させないよう生理食塩水で濡らして早く受診して下さい。
この症状を眼球突出と言います。
日常診療で遭遇する機会の多い眼疾患のひとつです。
すぐに眼球突出に飼主様が気づかれた場合、眼窩に戻して整復することも可能です。
しかし、気づかれずに時間が経過した場合、ハムスターが突出した眼球を引掻いたり、床材との摩擦で眼球は外傷を受けます。
加えて、眼球は乾燥して失明してしまう事もあります。
本日ご紹介しますのは、ジャンガリアンハムスターのピッキーちゃんです。
飼い主様が気づかれた時には、ピッキーちゃんの左眼球は突出して角膜は乾燥し、損傷を受けていました(下写真の黄色丸)。
残念ながら、すでにピッキーちゃんの視力はなく、無理に眼球を元に戻そうとすると眼球内からの出血を引き起こしてしまいます。
結果として、眼球摘出の手術を実施することとなりました。
ハムスターとは言え、眼球摘出は瞬間的に出血量が多いので慎重に対応します。
まずは全身麻酔です。
イソフルランでしっかり寝ていただきます。
すでに失明している眼球を5‐0の縫合糸で牽引して、眼球と眼窩部との靭帯、動静脈をバイポーラで凝固・切断します。
眼球を摘出した後は、瞼を縫合して終了です。
無事手術も終了して、3か月後のピッキーちゃんです。
瞼は上下とも癒合して、以前は存在していた左眼の位置もわからないくらい体毛が生えそろっています。
ピッキーちゃんは、眼球摘出後の日常生活は特に何の不自由もなく送れているそうです。
ハムスターを飼育する上でご注意いただきたいのは、いろんな遊具をケージ内に置かないことです。
うんてい遊びや滑り台で落ちたりして、頭部を強打して眼球突出した症例も多いです。
眼球突出の場合は最悪の場合、今回の様に摘出手術が必要となります。
眼球突出で瞼が閉じなくなる場合は、物理的衝撃以外にも結膜炎や眼球腫瘍が背景にあったりする場合もあります。
いずれにせよ、眼球突出したら、眼球を乾燥させないよう生理食塩水で濡らして早く受診して下さい。
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2012年12月19日 水曜日
ジャンガリアンハムスターの肥満細胞腫
ジャンガリアンハムスターの体表腫瘍は色んな種類のものがあります。
今回ご紹介しますのは、皮下組織に発生した肥満細胞腫のジャンガリアンハムスターです。
ジャンガリアンハムスターのモコちゃん(1歳10か月)は、左肩に大きな腫瘍が生じ、他院からのご紹介で来院されました。
黄色矢印で示した部分が腫瘍です。
既に腫瘍が大きすぎて前肢の可動にも支障が出てきています。
いつもなら細胞診から入るところですが、全身状態は良好で、早速手術して摘出することにしました。
いつも悩まされるのは、小型げっ歯類は体表部が小さいが故、腫瘍摘出時のマージンが十分に取れなくて摘出部位によっては、術後に再発するケースもあります。
腫瘍に分布している栄養血管をバイポーラで凝血・離断していきます。
黄色矢印で示した大きな球体上の腫瘍でした。
出血も最小限にとどめることが出来ました。
患部を縫合しました。
まだ麻酔が覚めきっていない状態です。
術後30分のモコちゃんです。
随分動き回ることが出来るようになりました。
術後に皮下にリンゲル液を輸液し、抗生剤を投薬しました。
摘出した腫瘍をスタンプ染色しました。
黄色丸と矢印で示した細胞が肥満細胞であり、今回の腫瘍は肥満細胞腫と診断いたしました。
肥満細胞腫は犬の場合は悪性腫瘍で、周辺に好酸球が浸潤することが多いのですが、ハムスター(特にドワーフ系)の場合は好酸球の浸潤を伴わないケースが多いです。
またハムスターの肥満細胞腫は悪性度がどの程度なのか、現時点では不明のようです。
今後の再発、転移については要経過観察です。
今回ご紹介しますのは、皮下組織に発生した肥満細胞腫のジャンガリアンハムスターです。
ジャンガリアンハムスターのモコちゃん(1歳10か月)は、左肩に大きな腫瘍が生じ、他院からのご紹介で来院されました。
黄色矢印で示した部分が腫瘍です。
既に腫瘍が大きすぎて前肢の可動にも支障が出てきています。
いつもなら細胞診から入るところですが、全身状態は良好で、早速手術して摘出することにしました。
いつも悩まされるのは、小型げっ歯類は体表部が小さいが故、腫瘍摘出時のマージンが十分に取れなくて摘出部位によっては、術後に再発するケースもあります。
腫瘍に分布している栄養血管をバイポーラで凝血・離断していきます。
黄色矢印で示した大きな球体上の腫瘍でした。
出血も最小限にとどめることが出来ました。
患部を縫合しました。
まだ麻酔が覚めきっていない状態です。
術後30分のモコちゃんです。
随分動き回ることが出来るようになりました。
術後に皮下にリンゲル液を輸液し、抗生剤を投薬しました。
摘出した腫瘍をスタンプ染色しました。
黄色丸と矢印で示した細胞が肥満細胞であり、今回の腫瘍は肥満細胞腫と診断いたしました。
肥満細胞腫は犬の場合は悪性腫瘍で、周辺に好酸球が浸潤することが多いのですが、ハムスター(特にドワーフ系)の場合は好酸球の浸潤を伴わないケースが多いです。
またハムスターの肥満細胞腫は悪性度がどの程度なのか、現時点では不明のようです。
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2012年12月14日 金曜日
ジャンガリアンハムスターの扁平上皮癌
ジャンガリアンハムスターは体表部の腫瘍が多いとされます。
当院でも多くの皮膚・皮下組織腫瘍の摘出手術を実施しています。
摘出のし易い背部や下腹部であれば、その個所を摘出すればそれで終了ですが、発生した場所によってはそんな簡単なものではありません。
犬猫同様に術後の生活がしっかり送れるものか、検討してから手術を実施させて頂いています。
今回、ご紹介しますのはジャンガリアンハムスターのアキちゃんです。
アキちゃんは左手根関節(手首の関節)から腫瘤が生じて、次第に大きくなったとのことで来院されました。
黄色丸で記した個所ですが、かなり大きくなっています。
アキちゃんは餌を左の前足で捕捉できなくて食生活にも苦労をしているそうです。
まずは患部が腫瘍なのか否かを判定するため、細胞診を行いました。
下が細胞診の顕微鏡写真です。
細菌感染も起こしており、白血球が多く認められる一方で、扁平上皮癌細胞も認められるとの検査センターの報告です。
飼い主様は術後、いつも通りの生活が送れるのか非常に心配されていましたが、悪性の腫瘍を放置して全身に転移することのデメリットも考慮して、断脚に踏み切られました。
手術の模様です。
太い血管を縫合糸で結紮して、前腕骨(橈骨)を少し短めに断脚し、皮膚で橈骨断端部を包みこむように縫合しました(黄色丸)。
麻酔から覚醒したアキちゃんは患部を気にして齧ろうとしています。
出血量も最小に留め、アキちゃんは翌日元気に退院されました。
9日後にアキちゃんは抜糸のため来院されました。
傷口(黄色丸)は下の写真にありますように綺麗に癒合しています。
驚かされたのは、この左前肢を上手に使用して、健常な右前肢とで餌を持って食べているとのことです。
残念ながら回し車で疾走することはできなくなったそうですが。
アキちゃんのケース以外にも何件も断脚手術は実施してきました。
腫瘍や粉砕骨折などが断脚の対象です。
飼い主様的にも、断脚は非常に悲観的に捉えられる方が多いのですが、ハムスターの大部分は、術後に飼育環境に上手に適応しています。
小さいけれど、我々が思っている以上にハムスターは、たくましく生き抜いています!
当院でも多くの皮膚・皮下組織腫瘍の摘出手術を実施しています。
摘出のし易い背部や下腹部であれば、その個所を摘出すればそれで終了ですが、発生した場所によってはそんな簡単なものではありません。
犬猫同様に術後の生活がしっかり送れるものか、検討してから手術を実施させて頂いています。
今回、ご紹介しますのはジャンガリアンハムスターのアキちゃんです。
アキちゃんは左手根関節(手首の関節)から腫瘤が生じて、次第に大きくなったとのことで来院されました。
黄色丸で記した個所ですが、かなり大きくなっています。
アキちゃんは餌を左の前足で捕捉できなくて食生活にも苦労をしているそうです。
まずは患部が腫瘍なのか否かを判定するため、細胞診を行いました。
下が細胞診の顕微鏡写真です。
細菌感染も起こしており、白血球が多く認められる一方で、扁平上皮癌細胞も認められるとの検査センターの報告です。
飼い主様は術後、いつも通りの生活が送れるのか非常に心配されていましたが、悪性の腫瘍を放置して全身に転移することのデメリットも考慮して、断脚に踏み切られました。
手術の模様です。
太い血管を縫合糸で結紮して、前腕骨(橈骨)を少し短めに断脚し、皮膚で橈骨断端部を包みこむように縫合しました(黄色丸)。
麻酔から覚醒したアキちゃんは患部を気にして齧ろうとしています。
出血量も最小に留め、アキちゃんは翌日元気に退院されました。
9日後にアキちゃんは抜糸のため来院されました。
傷口(黄色丸)は下の写真にありますように綺麗に癒合しています。
驚かされたのは、この左前肢を上手に使用して、健常な右前肢とで餌を持って食べているとのことです。
残念ながら回し車で疾走することはできなくなったそうですが。
アキちゃんのケース以外にも何件も断脚手術は実施してきました。
腫瘍や粉砕骨折などが断脚の対象です。
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2012年12月 4日 火曜日
キンクマハムスターの脊椎損傷(前庭器障害含む)
以前、ジャンガリアンハムスターの後躯不全麻痺についてコメントさせて頂きました。
今回は、数か月前から後躯不全麻痺がおこり、次第に神経症状が併発・体を回転させる(ローリング運動)ようになったとのことで来院されたキンクマハムスター君です。
このハムスター君、じっとしていることが出来ないくらい頻繁に移動しローリングをします。
写真も上手く撮れない状態です。
後躯不全麻痺があり、後肢はピンと硬直伸展した状態が続いており、前肢を使って回転運動を絶え間なくしています。
レントゲン撮影を実施しました。
第5腰椎が変形しています。
患部を拡大した写真をご覧いただきます。
黄色矢印で示した第5腰椎が逆くの字の形状を呈しています。
恐らく強い外力によって変形したか、あるいは骨折があり、後に癒合したのかいづれかでしょう。
キンクマハムスター君の硬直した後肢はこの点が原因ではないかと思われます。
ローリング運動については、末梢性か中枢性の前庭器障害が原因と考えます。
レントゲン上では耳の奥の鼓室胞の石灰化(細菌性外耳炎・中耳炎による)が明瞭に認められないため、中枢性の前庭器障害の可能性が強いと思います。
この点は脊椎損傷と直接の関係はないと思います。
ステロイドと抗生剤の投薬を支持して経過観察することとなりました。
ただこのローリング運動が激しいため、体力の消耗が著しいです。
犬や猫ならば、鎮静剤等を投薬して対応しますが、ハムスターのような小動物では簡単に投薬はできません。
結局、1週間ほどの後に残念ですがこのハムスター君は亡くなられました。
犬猫の比べてスケールの小さな動物の場合、検査・治療は限界があることを感じます。
今回は、数か月前から後躯不全麻痺がおこり、次第に神経症状が併発・体を回転させる(ローリング運動)ようになったとのことで来院されたキンクマハムスター君です。
このハムスター君、じっとしていることが出来ないくらい頻繁に移動しローリングをします。
写真も上手く撮れない状態です。
後躯不全麻痺があり、後肢はピンと硬直伸展した状態が続いており、前肢を使って回転運動を絶え間なくしています。
レントゲン撮影を実施しました。
第5腰椎が変形しています。
患部を拡大した写真をご覧いただきます。
黄色矢印で示した第5腰椎が逆くの字の形状を呈しています。
恐らく強い外力によって変形したか、あるいは骨折があり、後に癒合したのかいづれかでしょう。
キンクマハムスター君の硬直した後肢はこの点が原因ではないかと思われます。
ローリング運動については、末梢性か中枢性の前庭器障害が原因と考えます。
レントゲン上では耳の奥の鼓室胞の石灰化(細菌性外耳炎・中耳炎による)が明瞭に認められないため、中枢性の前庭器障害の可能性が強いと思います。
この点は脊椎損傷と直接の関係はないと思います。
ステロイドと抗生剤の投薬を支持して経過観察することとなりました。
ただこのローリング運動が激しいため、体力の消耗が著しいです。
犬や猫ならば、鎮静剤等を投薬して対応しますが、ハムスターのような小動物では簡単に投薬はできません。
結局、1週間ほどの後に残念ですがこのハムスター君は亡くなられました。
犬猫の比べてスケールの小さな動物の場合、検査・治療は限界があることを感じます。
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