ハムスターなど小型げっ歯類の疾病
2013年1月22日 火曜日
ジャービルの耳垢腺癌
ジャービルはスナネズミの近縁種(ジャービル=スナネズミという説もあります。)の齧歯類です。
ハムスターやマウス等の小型齧歯類の中でも飼育のしやすさから、最近人気のある品種です。
本日ご紹介しますのは、そのジャービルのミカちゃんです。
ミカちゃんは、右耳周辺を気にして引掻くとのことで来院されました。
既に右耳介内部は出血を繰り返して痂皮(かさぶた)ができています。
この時点では、耳の中を洗浄して抗生剤を投与しました。
加えて耳腔内の出血巣周辺の細胞診を実施しました。
低倍率の画像です。
次に高倍率の画像です。
上写真の黄色矢印で示した細胞は、好塩基性の細胞質と著しい大小不同を呈する大型類円形核を有しています。
また核分裂像も高頻度に認められることから悪性度の高い腫瘍と思われます。
発生部位から耳垢腺癌が疑われます。
耳垢腺とは外耳道に分布する分泌腺であり、汗腺の一種であるアポクリン腺と組織的に同じ物です。
この分泌物がやがて耳垢となるわけです。
ミカちゃんはこの一か月後に患部がさらに腫大しました。
食餌も満足に取れなく、患部側の瞼も開けるのが辛いようです。
思い切り耳介部を引掻くため、出血も甚だしい状態です。
飼い主様のご希望もあり、外科的に摘出することとなりました。
腫瘍がかなり広範囲に飛んでいるようなので、完治を目指しての手術ではなく、腫瘍の増殖に伴う疼痛感や顎関節の機能障害を軽減するための手術となります。
黄色丸で示した部分は、腫瘍が増殖して腫れています。
肉眼で取りえる所まで頑張りました。
下写真は増殖した腫瘍の一部です。
耳介部の形状を損なわないよう縫合しました。
ミカちゃんは麻酔の覚醒も問題なく、手術は終了しました。
出血もあり、術後は痛々しい感じですが、顔面の腫れも小さくなりました。
ミカちゃん、よく頑張ってくれました。
残念ながらこの手術の11日後にミカちゃんは逝去されました。
手術を行うのは勿論、動物の延命を考慮してのことです。
11日という日数で延命効果と言えるか、返答に悩むところです。
エキゾチックの手術はいつも緊張して臨みますが、成功と失敗が表裏一体の感じが強いです。
犬猫クラスの大きさの動物であれば、ある程度の予測も可能ですが小型齧歯類は非常に難しいものがあります。
少なくとも手術をして、ミカちゃんが一時であれ、あの大きな腫瘍からのストレスから解放されたと感じてくれたら嬉しいです。
合掌
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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL
2013年1月11日 金曜日
デグーマウスの低血糖症
低血糖とは、血液中のブドウ糖の値(血糖値)が低下している状態をさします。
この低血糖の状態が続きますと、いろいろな症状が出てきます。
そもそもブドウ糖は生体本能のエネルギー源となりますので、ブドウ糖が少なくなれば正常の細胞反応が行われなくなってしまいます。
具体的には、虚脱状態といって眼は虚ろになって動けなくなり、神経系のエネルギー不足により振戦(体の震え)、てんかん様発作、運動失調が起こります。
今回ご紹介しますのは、デグーマウスのチャーミーちゃんです。
朝突然、動けなくなり振戦、てんかん様発作を起こしての来院です。
早速、血糖値を簡易型血糖値測定装置で測定しました。
もともと小型げっ歯類で採血量も微々たる量しか採血できませんので、日常使用する完全血球計算機では測定不可能です。
デグーマウスの採血は尻尾の尾静脈から行います。
血糖値の測定結果はLOと出ました。
このLo表示は、血糖値が20㎎/dlに満たないことを示します。
デグーマウスの正常血糖値は約70㎎/dlとして、不足分のブドウ糖を補給しなくてはなりません。
20%ブドウ糖シロップを強制的に飲ませます。
加えてショック状態を改善するためにプレドニゾロンを注射します。
ショック状態から低体温になっていますので、インキュベーターに入れて体を温めます。
ここで犬・猫であれば静脈を確保してブドウ糖の点滴を実施するのですが、残念ながらそれは小さなデグーにはできません。
飼い主様にチャ―ミーちゃんの容態が、厳しい状況であることをご理解して頂きました。
それでも、この処置で翌日のチャ―ミーちゃんは、体を少しずつ動かすこともできるようになり、自ら採食できるまでに回復しました。
2日間の入院でチャ―ミーちゃんは元気に退院することが出来ました。
以前、デグーマウスの白内障の記事で、デグーはインシュリンの分泌能・活性能が低くて、体内に入って来た糖を貯蔵すること
が苦手な齧歯類であることをお伝えしました。
つまりは、糖を過剰に摂取しすぎるとすぐに高血糖になり、ひいては糖尿病から白内障になるとの警告をいたしました。
飼い主様はその点を気にされ、非常に粗食な食生活を徹底されていたようです。
過ぎたるは及ばざるがごとし、と言うこともあります。
ある程度はバランスの取れた食生活は大切ですね。
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この低血糖の状態が続きますと、いろいろな症状が出てきます。
そもそもブドウ糖は生体本能のエネルギー源となりますので、ブドウ糖が少なくなれば正常の細胞反応が行われなくなってしまいます。
具体的には、虚脱状態といって眼は虚ろになって動けなくなり、神経系のエネルギー不足により振戦(体の震え)、てんかん様発作、運動失調が起こります。
今回ご紹介しますのは、デグーマウスのチャーミーちゃんです。
朝突然、動けなくなり振戦、てんかん様発作を起こしての来院です。
早速、血糖値を簡易型血糖値測定装置で測定しました。
もともと小型げっ歯類で採血量も微々たる量しか採血できませんので、日常使用する完全血球計算機では測定不可能です。
デグーマウスの採血は尻尾の尾静脈から行います。
血糖値の測定結果はLOと出ました。
このLo表示は、血糖値が20㎎/dlに満たないことを示します。
デグーマウスの正常血糖値は約70㎎/dlとして、不足分のブドウ糖を補給しなくてはなりません。
20%ブドウ糖シロップを強制的に飲ませます。
加えてショック状態を改善するためにプレドニゾロンを注射します。
ショック状態から低体温になっていますので、インキュベーターに入れて体を温めます。
ここで犬・猫であれば静脈を確保してブドウ糖の点滴を実施するのですが、残念ながらそれは小さなデグーにはできません。
飼い主様にチャ―ミーちゃんの容態が、厳しい状況であることをご理解して頂きました。
それでも、この処置で翌日のチャ―ミーちゃんは、体を少しずつ動かすこともできるようになり、自ら採食できるまでに回復しました。
2日間の入院でチャ―ミーちゃんは元気に退院することが出来ました。
以前、デグーマウスの白内障の記事で、デグーはインシュリンの分泌能・活性能が低くて、体内に入って来た糖を貯蔵すること
が苦手な齧歯類であることをお伝えしました。
つまりは、糖を過剰に摂取しすぎるとすぐに高血糖になり、ひいては糖尿病から白内障になるとの警告をいたしました。
飼い主様はその点を気にされ、非常に粗食な食生活を徹底されていたようです。
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