院長ブログ
2012年7月15日 日曜日
歯根膜剥離チップの使用感について
抜歯を実施する際にエレベーターという器具(下写真参照)を使用します。
このエレベーターの用途は歯根膜の線維を断裂し、歯根を歯槽骨から脱臼させるといった抜歯処置の中でも重要な工程を担っています。
抜歯を行う歯の種類によっても使用するエレベーターのサイズも変わりますし、エレベーターの動かし方も変化が必要となります。
確実に歯根膜を剥離しないと抜歯鉗子で抜歯したい歯を引き抜こうとしたところで、途中から歯が折れてしまうこともあります。
折れた歯根を残すことは後々、問題を起こしますので残根を引き抜くことは技術的にも大変です。
加えて、力を加えすぎて顎骨折を招いてしまう場合もあります。
今回、抜歯時のエレベーター処置を迅速・簡便に行うために歯石除去用の超音波スケーラーのチップ先に歯根膜剥離用チップなるものを装着し、その使用感についてコメントします。
黄色丸に示してあるチップが歯根膜剥離用チップです。
超音波の力を利用して歯根膜線維自体または歯根膜を歯根面から切離し、歯槽骨と歯根面の間に隙間を作ることができるチップだそうです。
遺残犬歯のトイプードルでこのチップを使用してみました。
遺残犬歯の歯根部に向けて、歯肉との隙間にチップをゆっくり入れていきます。
黄色の丸に示したようにチップが速やかに歯根部までスムーズに入っていきます。
歯根膜の剥離については、思っていたよりはスムーズな動きで剥離を完遂しました。
超音波による局所の温熱刺激を避けるため一定の位置に定めず、チップの先端部を上下左右にスライド移動させながら行うとよいそうです。
出来る限り15秒以内で使用せよと謳ってあります。
ただハンドルに装着しますので、一般のエレベーターと異なり、チップの可動域がどうしても限られる点が扱いにくく感じます。
歯根膜を剥離した後のエレベーターは容易に入れることが可能ですし、抜歯も確実にできそうに思いました。
ただ昔ながらのエレベーター操作が自分にはしっくりくるようです。
抜歯が手ごわそうな歯根部の深い歯を対象に、今後はこのチップを使用していくつもりでいます。
このエレベーターの用途は歯根膜の線維を断裂し、歯根を歯槽骨から脱臼させるといった抜歯処置の中でも重要な工程を担っています。
抜歯を行う歯の種類によっても使用するエレベーターのサイズも変わりますし、エレベーターの動かし方も変化が必要となります。
確実に歯根膜を剥離しないと抜歯鉗子で抜歯したい歯を引き抜こうとしたところで、途中から歯が折れてしまうこともあります。
折れた歯根を残すことは後々、問題を起こしますので残根を引き抜くことは技術的にも大変です。
加えて、力を加えすぎて顎骨折を招いてしまう場合もあります。
今回、抜歯時のエレベーター処置を迅速・簡便に行うために歯石除去用の超音波スケーラーのチップ先に歯根膜剥離用チップなるものを装着し、その使用感についてコメントします。
黄色丸に示してあるチップが歯根膜剥離用チップです。
超音波の力を利用して歯根膜線維自体または歯根膜を歯根面から切離し、歯槽骨と歯根面の間に隙間を作ることができるチップだそうです。
遺残犬歯のトイプードルでこのチップを使用してみました。
遺残犬歯の歯根部に向けて、歯肉との隙間にチップをゆっくり入れていきます。
黄色の丸に示したようにチップが速やかに歯根部までスムーズに入っていきます。
歯根膜の剥離については、思っていたよりはスムーズな動きで剥離を完遂しました。
超音波による局所の温熱刺激を避けるため一定の位置に定めず、チップの先端部を上下左右にスライド移動させながら行うとよいそうです。
出来る限り15秒以内で使用せよと謳ってあります。
ただハンドルに装着しますので、一般のエレベーターと異なり、チップの可動域がどうしても限られる点が扱いにくく感じます。
歯根膜を剥離した後のエレベーターは容易に入れることが可能ですし、抜歯も確実にできそうに思いました。
ただ昔ながらのエレベーター操作が自分にはしっくりくるようです。
抜歯が手ごわそうな歯根部の深い歯を対象に、今後はこのチップを使用していくつもりでいます。
抜歯のための色んな器具も考案されているんだな。
と感じられた方はこちらをクリック、宜しくお願い致します!!
投稿者 院長 | 記事URL
2012年7月13日 金曜日
歯をお大事に!!
先日、ミニチュアダックス君の歯石除去の依頼がりました。
日常的にデンタルケアができるワンちゃんであれば、そんなに心配されることはありませんが、全く口の中を触らせてくれない子もいます。
ガムや硬いものを進んで咬む傾向のあるワンちゃんなら、比較的歯は綺麗と思いますが何年も全くデンタルケアをしていないとすれば、おそらく歯の大部分は歯石がこびりついてることと思います。
本日ご紹介するダックス君は、今年10歳になりますが一度もデンタルケアというものを施していなかったそうです。
口の中の匂いが強烈なのでまずは歯石の除去をお勧めしました。
加えて右の眼の下が腫れているとのことで、おそらくは第4前臼歯の根尖周囲病巣も絡んでいるのではと推察されました。
下の写真は全身麻酔をかけたところです。
口の中を拝見しますと黄色の矢印で示す部分に歯石がびっしりついています。
従来通りの超音波スケーラーで歯石を破砕していきますが、歯根部が腐ってグラグラになっている歯も認められました。
さらに第4前臼歯の根尖周囲病巣もレントゲンで事前に確認していましたので、こちらも歯根部を分割して抜歯します。
分割した歯根部から膿が出てきました。
ロンジュールを用いて抜歯窩周囲の骨をトリミングします。
この段階ですでに何本も抜歯を実施しており、抜歯窩が何ヶ所も認められます。
抜歯した後の歯肉を縫合糸で縫合します(黄色の丸で囲んだ部分)。
最終的に抜歯したのは、切歯、前臼歯など含めて18本に及びました。
歯石を除去することで、両隣りの歯に対してかすがいの様に支持していた歯石がなくなり、加えて歯根部は根尖周囲病巣でもあって、歯槽骨が融解するのを防ぐため、抜歯は避けられないこととなりました。
動物の場合、抜歯後は差し歯やブリッジ等の手法は採れませんので、ない歯はないままで今後、対応して頂くこととなります。
このダックス君にしてもまだ10歳であと何年も残った歯で頑張っていただかなくてはなりません。
歯の痛みは飼主様も案外気づかれずに何年も経過していることが多いです。
常日頃のデンタルケアの重要性をご理解いただけたら嬉しい限りです。
半年に一度は歯科健診を受けられることをお勧めします。
日常的にデンタルケアができるワンちゃんであれば、そんなに心配されることはありませんが、全く口の中を触らせてくれない子もいます。
ガムや硬いものを進んで咬む傾向のあるワンちゃんなら、比較的歯は綺麗と思いますが何年も全くデンタルケアをしていないとすれば、おそらく歯の大部分は歯石がこびりついてることと思います。
本日ご紹介するダックス君は、今年10歳になりますが一度もデンタルケアというものを施していなかったそうです。
口の中の匂いが強烈なのでまずは歯石の除去をお勧めしました。
加えて右の眼の下が腫れているとのことで、おそらくは第4前臼歯の根尖周囲病巣も絡んでいるのではと推察されました。
下の写真は全身麻酔をかけたところです。
口の中を拝見しますと黄色の矢印で示す部分に歯石がびっしりついています。
従来通りの超音波スケーラーで歯石を破砕していきますが、歯根部が腐ってグラグラになっている歯も認められました。
さらに第4前臼歯の根尖周囲病巣もレントゲンで事前に確認していましたので、こちらも歯根部を分割して抜歯します。
分割した歯根部から膿が出てきました。
ロンジュールを用いて抜歯窩周囲の骨をトリミングします。
この段階ですでに何本も抜歯を実施しており、抜歯窩が何ヶ所も認められます。
抜歯した後の歯肉を縫合糸で縫合します(黄色の丸で囲んだ部分)。
最終的に抜歯したのは、切歯、前臼歯など含めて18本に及びました。
歯石を除去することで、両隣りの歯に対してかすがいの様に支持していた歯石がなくなり、加えて歯根部は根尖周囲病巣でもあって、歯槽骨が融解するのを防ぐため、抜歯は避けられないこととなりました。
動物の場合、抜歯後は差し歯やブリッジ等の手法は採れませんので、ない歯はないままで今後、対応して頂くこととなります。
このダックス君にしてもまだ10歳であと何年も残った歯で頑張っていただかなくてはなりません。
歯の痛みは飼主様も案外気づかれずに何年も経過していることが多いです。
常日頃のデンタルケアの重要性をご理解いただけたら嬉しい限りです。
半年に一度は歯科健診を受けられることをお勧めします。
歯根部が腐ってしまうと抜歯しなくてはならない事実をご理解いただけた方は
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投稿者 院長 | 記事URL
2012年7月 6日 金曜日
キンカジューの皮膚糸状菌症
今年の3月に院長ブログで キンカジュー現る! とコメントしたキンカジューのリンちゃんが先日、来院されました。
一番最初に来院されたときは、まだ飼主様に慣れていなくて緊張してる感じでしたが、今回はしっかり飼主様に抱っこされて馴染んでいる感じです。
尻尾の背面に円形の脱毛があるとのことです。
細菌感染による膿皮症、アカラス、マラセチアなど原因をさぐりましたが結局、真菌症であることが判明しました。
患部としてはまだ小さくてまだ感染の初期のステージと思われますが、時節柄あっという間に脱毛エリアが拡大されても心配です。
加えて、ヒトにも感染しますのでしっかり治療して頂きたいところです。
以前、 デグーマウスの皮膚糸状菌症 でもこの皮膚糸状菌についてのコメントをしましたが、感染先については本当に節操がないというか、哺乳類にとどまらず、鳥類、爬虫類に至るまで感染してしまうという事実に驚かされます。
特に長雨の続くこの時期は、円形の脱毛が認められたら要注意です。
一番最初に来院されたときは、まだ飼主様に慣れていなくて緊張してる感じでしたが、今回はしっかり飼主様に抱っこされて馴染んでいる感じです。
尻尾の背面に円形の脱毛があるとのことです。
細菌感染による膿皮症、アカラス、マラセチアなど原因をさぐりましたが結局、真菌症であることが判明しました。
患部としてはまだ小さくてまだ感染の初期のステージと思われますが、時節柄あっという間に脱毛エリアが拡大されても心配です。
加えて、ヒトにも感染しますのでしっかり治療して頂きたいところです。
以前、 デグーマウスの皮膚糸状菌症 でもこの皮膚糸状菌についてのコメントをしましたが、感染先については本当に節操がないというか、哺乳類にとどまらず、鳥類、爬虫類に至るまで感染してしまうという事実に驚かされます。
特に長雨の続くこの時期は、円形の脱毛が認められたら要注意です。
キンカジューもカビの感染を受けることを初めて知った方は
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投稿者 院長 | 記事URL
2012年7月 1日 日曜日
800gへの挑戦
以前から当院では、ウサギの避妊手術の依頼があり対応させていただいています。
犬猫の避妊手術と比較して麻酔・手術手技的に非常にデリケートな部分が多く、毎回苦心させられること度々です。
ウサギは生態系では被捕食者であり、ストレスに非常に弱いため、手術のような強いストレスでショックを起こすこともあります。
麻酔の基本である気管挿管が非常に難しく、ガスマスクによる自己の呼吸に維持麻酔を委ねざる得ないこともあります。
当然、ガス麻酔(イソフルラン)は臭いので息を止めたりします。
よってなかなか麻酔の安定までに時間がかかります。
雌ウサギに特有な肉垂(ちょうどマフラーのように首周囲に存在しています)が気道を圧迫して呼吸停止を招く場合もあります。
麻酔時の死亡率を統計的に%で表したものを麻酔関連偶発死亡率といいます。
論文等で報告されているのは、犬で0.17%、ウサギで1.39%です。
なんと犬の約10倍近い麻酔事故がウサギにはついて回るようです。
さて長々と前ふりを書き連ねて参りましたが、本日ご紹介するのはドワーフホトのパフちゃんです。
飼主様が雌は将来的に産科の疾患で死亡するケースが多いことから避妊手術をご希望されました。
問題は体重が800gしかない小型のウサギであることです(下の写真参照)。
術前には十分な酸素化を必要としますのでICUに入ってもらい、40%の酸素分圧下で酸素を補給します。
もし何らかの原因で呼吸停止した場合、酸素化してあれば蘇生が数分であれ余裕を持って挑むことが出来ます。
先に述べた様々な要因を考慮しつつ、手術を実施しました。
上写真が子宮です。
黄色い矢印は卵巣です。
緑色の矢印はバイクランプで卵巣動静脈をシーリングしているところです。
ウサギの卵巣周りは非常に脆弱な組織で注意をしないと裂けてしまいますので、このバイクランプは非常に効率的に手術を進行できます。
緑の矢印はバイクランプでシールされた卵巣動静脈です。
綺麗に熱変性されています。
シーリングされた箇所をメスでカットします。
反対側の卵巣も同じくシーリングし、子宮間膜を縫合糸で結紮します。
ウサギの子宮間膜は脂肪で覆われていますので、その中にある血管に十分な注意が必要です。
加えて子宮頚部を結紮して、卵巣子宮の全摘出(下写真)を終了しました。
麻酔から無事覚醒し、呼吸も安定するまで油断が出来ません。
覚醒後は高濃度の酸素を供給できるICUに移動しました。
ウサギの場合、手術前も後もしっかり食餌が取れるようにしておきます。
術後の疼痛もあり、神妙な面持ちのパフちゃんです。
翌日のパフちゃんですが、しっかり水も食餌も取れるまでに回復しました。
飼主様がお迎えに見えて、無事お返しすることが出来ホッとしました。
私はこれまで避妊手術を施したウサギの中ではこのパフちゃんは最軽量です。
小さすぎて血管を確保することが出来ませんでしたし、メデトミジン、ケタラールによる麻酔導入とイソフルランの麻酔維持で乗り切ることが出来ました。
ウサギの手術は犬のそれと比較して倍以上の気を配って対応させて頂いてます。
犬猫の避妊手術と比較して麻酔・手術手技的に非常にデリケートな部分が多く、毎回苦心させられること度々です。
ウサギは生態系では被捕食者であり、ストレスに非常に弱いため、手術のような強いストレスでショックを起こすこともあります。
麻酔の基本である気管挿管が非常に難しく、ガスマスクによる自己の呼吸に維持麻酔を委ねざる得ないこともあります。
当然、ガス麻酔(イソフルラン)は臭いので息を止めたりします。
よってなかなか麻酔の安定までに時間がかかります。
雌ウサギに特有な肉垂(ちょうどマフラーのように首周囲に存在しています)が気道を圧迫して呼吸停止を招く場合もあります。
麻酔時の死亡率を統計的に%で表したものを麻酔関連偶発死亡率といいます。
論文等で報告されているのは、犬で0.17%、ウサギで1.39%です。
なんと犬の約10倍近い麻酔事故がウサギにはついて回るようです。
さて長々と前ふりを書き連ねて参りましたが、本日ご紹介するのはドワーフホトのパフちゃんです。
飼主様が雌は将来的に産科の疾患で死亡するケースが多いことから避妊手術をご希望されました。
問題は体重が800gしかない小型のウサギであることです(下の写真参照)。
術前には十分な酸素化を必要としますのでICUに入ってもらい、40%の酸素分圧下で酸素を補給します。
もし何らかの原因で呼吸停止した場合、酸素化してあれば蘇生が数分であれ余裕を持って挑むことが出来ます。
先に述べた様々な要因を考慮しつつ、手術を実施しました。
上写真が子宮です。
黄色い矢印は卵巣です。
緑色の矢印はバイクランプで卵巣動静脈をシーリングしているところです。
ウサギの卵巣周りは非常に脆弱な組織で注意をしないと裂けてしまいますので、このバイクランプは非常に効率的に手術を進行できます。
緑の矢印はバイクランプでシールされた卵巣動静脈です。
綺麗に熱変性されています。
シーリングされた箇所をメスでカットします。
反対側の卵巣も同じくシーリングし、子宮間膜を縫合糸で結紮します。
ウサギの子宮間膜は脂肪で覆われていますので、その中にある血管に十分な注意が必要です。
加えて子宮頚部を結紮して、卵巣子宮の全摘出(下写真)を終了しました。
麻酔から無事覚醒し、呼吸も安定するまで油断が出来ません。
覚醒後は高濃度の酸素を供給できるICUに移動しました。
ウサギの場合、手術前も後もしっかり食餌が取れるようにしておきます。
術後の疼痛もあり、神妙な面持ちのパフちゃんです。
翌日のパフちゃんですが、しっかり水も食餌も取れるまでに回復しました。
飼主様がお迎えに見えて、無事お返しすることが出来ホッとしました。
私はこれまで避妊手術を施したウサギの中ではこのパフちゃんは最軽量です。
小さすぎて血管を確保することが出来ませんでしたし、メデトミジン、ケタラールによる麻酔導入とイソフルランの麻酔維持で乗り切ることが出来ました。
ウサギの手術は犬のそれと比較して倍以上の気を配って対応させて頂いてます。
ウサギの手術って結構、大変なんだと
感じられた方はこちらをクリックして頂けると嬉しいです。
投稿者 院長 | 記事URL