院長ブログ
2020年10月30日 金曜日
アーカイブシリーズ 猫の異物誤飲(ウレタン)
こんにちは 院長の伊藤です。
先回の記事でアーカイブシリーズ 犬の異物誤飲シリーズは終了させて頂きます。
今回は、猫の異物誤飲をアーカイブで載せます。
猫は犬のように、無節操に異物を誤飲はしませんが、それでも嗜好性はあり、大きさや形状的に好む異物は存在します。
それではご覧ください。
こんにちは 院長の伊藤です。
犬と比べて猫の異物誤飲は少ないのですが、今回は椅子のクッション材としてのウレタンを誤飲した猫の話です。
ラグドールのしずくちゃん(7か月齢 雌 体重3.1kg)は朝から嘔吐を頻発、食欲廃絶、血便とのことで来院されました。
しずくちゃんはどことなく沈鬱な表情に見えます。
レントゲン撮影を実施しました。
下写真の黄色丸の箇所が気になります。
異物を誤飲した際に腸で閉塞が生じますと閉塞部位周辺にガスが貯留します。
そしてガスとのコントラストで異物の所在が明らかになる場合もあります。
患部を拡大した写真です。
白く映し出された球状の物体が気になります。
飼い主様は特にしずくちゃんが異物誤飲をする心当たりはないとのことでした。
猫は毛糸などの線状異物の誤飲が多いのですが、今回は数センチの固形異物のようです。
5日前から血便が出ているとのことですから、ひょっとしたら1週間前には異物誤飲している可能性があります。
状況に応じて、異物誤飲の場合は消化管造影したりしますが、時間の経過を考慮して試験的開腹をすぐに行いました。
麻酔前投薬を橈側皮静脈から注入します。
気管挿管してイソフルランガスを流し維持麻酔します。
メスを入れる箇所の周辺を剃毛・消毒します。
ドレープをかけてこれから試験的開腹手術を実施します。
腹筋を正中線に沿って切開して行きます。
空回腸を指先で丹念に異物がないか調べて行きます。
下写真黄色矢印の部位が空回腸に何か詰まっています。
腸内はこの異物(下写真黄色丸)により完全閉塞しています。
つまり腸内容の流動が異物によりストップしています。
腸蠕動運動に伴い、腸内容物が流動して腸内環境・腸内細菌は安定します。
異物により腸蠕動停止すると腸内細菌が過剰に増殖し、毒素やガスを産生します。
加えて腸の血行障害から腸壊死に至ることもあります。
しずくちゃんの腸管は異物閉塞部位の上流・下流共に変色もなく、壊死は認められません。
閉塞部位に直接メスを入れ、異物を摘出します。
弾力性のあるウレタンの異物が摘出されました。
定法通り、腸を単純結紮法によりモノフィラメント吸収糸で縫合して行きます。
若干漏出して縫合部に付着した腸内容を洗浄します。
縫合部に抗生剤を滴下します。
縫合部は1cmほどに納めました。
腸全体でみるとほんのわずかのエリアです。
腸管や周辺の組織との癒着を防ぐために大網と呼ばれる脂肪組織を縫合部にかぶせて閉腹します。
これで手術は終了です。
麻酔覚醒直後のしずくちゃんです。
心なし、すっきりした表情にも見えます。
手術翌日のしずくちゃんです。
腸を切開していますので、しばらく消化に良い流動食から食餌管理します。
下写真は腸内の異物です。
素材はウレタンのようです。
飼い主様に確認したところ、椅子の背もたれ内部のクッション材を、爪とぎの時にほじり出していたようです。
柔らかな素材ですから、衝動的に口にしてしまったのでしょうか。
術後6日目にしずくちゃんは退院されました。
今回の様に飼主様が気づかれていない内に異物誤飲すると色々な検査が必要になったり、腸が壊死を起こしたり大変なケースが多いです。
レントゲン写真でたまたま異物を思わせる所見がありましたから、即手術で大事に至らなくて良かったです。
しずくちゃん、お疲れ様でした!
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先回の記事でアーカイブシリーズ 犬の異物誤飲シリーズは終了させて頂きます。
今回は、猫の異物誤飲をアーカイブで載せます。
猫は犬のように、無節操に異物を誤飲はしませんが、それでも嗜好性はあり、大きさや形状的に好む異物は存在します。
それではご覧ください。
こんにちは 院長の伊藤です。
犬と比べて猫の異物誤飲は少ないのですが、今回は椅子のクッション材としてのウレタンを誤飲した猫の話です。
ラグドールのしずくちゃん(7か月齢 雌 体重3.1kg)は朝から嘔吐を頻発、食欲廃絶、血便とのことで来院されました。
しずくちゃんはどことなく沈鬱な表情に見えます。
レントゲン撮影を実施しました。
下写真の黄色丸の箇所が気になります。
異物を誤飲した際に腸で閉塞が生じますと閉塞部位周辺にガスが貯留します。
そしてガスとのコントラストで異物の所在が明らかになる場合もあります。
患部を拡大した写真です。
白く映し出された球状の物体が気になります。
飼い主様は特にしずくちゃんが異物誤飲をする心当たりはないとのことでした。
猫は毛糸などの線状異物の誤飲が多いのですが、今回は数センチの固形異物のようです。
5日前から血便が出ているとのことですから、ひょっとしたら1週間前には異物誤飲している可能性があります。
状況に応じて、異物誤飲の場合は消化管造影したりしますが、時間の経過を考慮して試験的開腹をすぐに行いました。
麻酔前投薬を橈側皮静脈から注入します。
気管挿管してイソフルランガスを流し維持麻酔します。
メスを入れる箇所の周辺を剃毛・消毒します。
ドレープをかけてこれから試験的開腹手術を実施します。
腹筋を正中線に沿って切開して行きます。
空回腸を指先で丹念に異物がないか調べて行きます。
下写真黄色矢印の部位が空回腸に何か詰まっています。
腸内はこの異物(下写真黄色丸)により完全閉塞しています。
つまり腸内容の流動が異物によりストップしています。
腸蠕動運動に伴い、腸内容物が流動して腸内環境・腸内細菌は安定します。
異物により腸蠕動停止すると腸内細菌が過剰に増殖し、毒素やガスを産生します。
加えて腸の血行障害から腸壊死に至ることもあります。
しずくちゃんの腸管は異物閉塞部位の上流・下流共に変色もなく、壊死は認められません。
閉塞部位に直接メスを入れ、異物を摘出します。
弾力性のあるウレタンの異物が摘出されました。
定法通り、腸を単純結紮法によりモノフィラメント吸収糸で縫合して行きます。
若干漏出して縫合部に付着した腸内容を洗浄します。
縫合部に抗生剤を滴下します。
縫合部は1cmほどに納めました。
腸全体でみるとほんのわずかのエリアです。
腸管や周辺の組織との癒着を防ぐために大網と呼ばれる脂肪組織を縫合部にかぶせて閉腹します。
これで手術は終了です。
麻酔覚醒直後のしずくちゃんです。
心なし、すっきりした表情にも見えます。
手術翌日のしずくちゃんです。
腸を切開していますので、しばらく消化に良い流動食から食餌管理します。
下写真は腸内の異物です。
素材はウレタンのようです。
飼い主様に確認したところ、椅子の背もたれ内部のクッション材を、爪とぎの時にほじり出していたようです。
柔らかな素材ですから、衝動的に口にしてしまったのでしょうか。
術後6日目にしずくちゃんは退院されました。
今回の様に飼主様が気づかれていない内に異物誤飲すると色々な検査が必要になったり、腸が壊死を起こしたり大変なケースが多いです。
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投稿者 院長 | 記事URL
2020年10月23日 金曜日
アーカイブシリーズ 犬の異物誤飲(おやつ用スティック)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日もアーカイブシリーズを載せます。
今回は、ペースト状の犬用おやつを塗りつけるスティックを誤飲した柴犬の症例です。
犬用おやつは昔から各種タイプが市販されています。
おやつである以上、嗜好性が高く夢中でおやつ自体を丸呑みこみしてしまうケースは多いです。
しかしながら、備品としておやつと同時に梱包されてるスティックを誤飲してしまうことはメーカー側も予想していなかったのでしょうか?
今回はそんなお話です。
こんにちは 院長の伊藤です。
当院のHP上に犬の疾病で異物誤飲シリーズを載せています。
今回は19回目の異物誤飲紹介となります。
犬がどんな異物を誤飲するかを皆様に知って頂き、誤飲予防の一助になればと思います。
柴犬の豆太君(2歳5か月齢、去勢済、4.3kg)はおやつ用のペーストを塗りつける芯棒(スティック)をかみ砕いて誤飲してしまったとのことで来院されました。
約4㎝位のプラスチック製の芯棒とのことです。
早速、レントゲン撮影を実施しました。
レントゲン写真の黄色丸が胃を示します。
特に下写真の側臥像で胃内(黄色丸)の横に波線の入った異物が存在しているのがお分かり頂けると思います。
今回、誤飲したと申告のあった異物の形状に非常に酷似してます。
異物の大きさから恐らくは十二指腸まで降りることは不可能です。
結局、胃を切開して異物を摘出することとなりました。
豆太君を全身麻酔します。
剣状突起直後から臍までをメスで正中切開します。
切開線直下に胃が垣間見えます。
胃を牽引したところです。
胃内には硬い異物が触知できます。
下写真のとおりに胃の漿膜面(外側部)に異物の波状の横線が浮かび上がって描出されています。
レントゲンで撮影した通りの長軸が4㎝位の異物です。
胃体部で血管走行の少ない部位にメスを入れます。
メスを入れた部位から外科鋏で胃の漿膜・筋層・粘膜面(全層)をカットしていきます。
胃の創面部を鉗子で優しく把持し広げます。
胃内に黄色を帯びた異物が認められます。
当初、簡単に摘出できると見積もっていたのですが、胃の粘膜面に異物のヒダが食い込んで、思うように摘出が出来ません。
なるべく胃の切開ラインは広げることなく異物を取り出したいのですが、力を加えて牽引すると胃が裂けそうな感じです。
時間を掛けながら、慎重に少しづつ異物を胃内から引き出しました。
やっと摘出出来ました。
次に胃の閉鎖を行います。
胃切開した部位は二重縫合で閉鎖します。
私の場合、まず第一層目は単純連続縫合を行います。
下写真がその単純連続縫合です。
漿膜、筋層、粘膜下織まで全層貫通して針を入れます。
単純連続縫合が終了したところです。
次に第二層目は、結節レンベルト縫合を実施します。
漿膜・筋層までに針を入れて縫合します。
これで胃の閉鎖は終了です。
二重縫合法は創部の止血・漿膜の接着に優れているとされます。
合成吸収糸で腹膜・筋肉層を縫合します。
最後に皮膚をナイロン糸で縫合します。
これで豆太君の手術は終了です。
全身麻酔から覚醒したばかりの豆太君です。
スティックに塗布するペーストがおいしくて、スティックの先端部をまるごと噛み切って誤飲したようです。
この異物のヒダ状の形状もあって、胃の粘膜面にしっかり食い込んでいました。
早急に胃切開で摘出できて良かったと思われます。
下写真が摘出した異物です。
綺麗に洗浄した後の異物です。
豆太君は経過良好で1週間後に退院されました。
術後2週間目に抜糸で来院された豆太君です。
異物誤飲は飼主様の責任です。
異物をペットの口の届く場所の置かないこと、摂食する機会をなくすことを心がけて下さい。
当院の患者様で、異物誤飲で3回摘出手術を実施したケースがあります。
豆太君、お疲れ様でした!
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本日もアーカイブシリーズを載せます。
今回は、ペースト状の犬用おやつを塗りつけるスティックを誤飲した柴犬の症例です。
犬用おやつは昔から各種タイプが市販されています。
おやつである以上、嗜好性が高く夢中でおやつ自体を丸呑みこみしてしまうケースは多いです。
しかしながら、備品としておやつと同時に梱包されてるスティックを誤飲してしまうことはメーカー側も予想していなかったのでしょうか?
今回はそんなお話です。
こんにちは 院長の伊藤です。
当院のHP上に犬の疾病で異物誤飲シリーズを載せています。
今回は19回目の異物誤飲紹介となります。
犬がどんな異物を誤飲するかを皆様に知って頂き、誤飲予防の一助になればと思います。
柴犬の豆太君(2歳5か月齢、去勢済、4.3kg)はおやつ用のペーストを塗りつける芯棒(スティック)をかみ砕いて誤飲してしまったとのことで来院されました。
約4㎝位のプラスチック製の芯棒とのことです。
早速、レントゲン撮影を実施しました。
レントゲン写真の黄色丸が胃を示します。
特に下写真の側臥像で胃内(黄色丸)の横に波線の入った異物が存在しているのがお分かり頂けると思います。
今回、誤飲したと申告のあった異物の形状に非常に酷似してます。
異物の大きさから恐らくは十二指腸まで降りることは不可能です。
結局、胃を切開して異物を摘出することとなりました。
豆太君を全身麻酔します。
剣状突起直後から臍までをメスで正中切開します。
切開線直下に胃が垣間見えます。
胃を牽引したところです。
胃内には硬い異物が触知できます。
下写真のとおりに胃の漿膜面(外側部)に異物の波状の横線が浮かび上がって描出されています。
レントゲンで撮影した通りの長軸が4㎝位の異物です。
胃体部で血管走行の少ない部位にメスを入れます。
メスを入れた部位から外科鋏で胃の漿膜・筋層・粘膜面(全層)をカットしていきます。
胃の創面部を鉗子で優しく把持し広げます。
胃内に黄色を帯びた異物が認められます。
当初、簡単に摘出できると見積もっていたのですが、胃の粘膜面に異物のヒダが食い込んで、思うように摘出が出来ません。
なるべく胃の切開ラインは広げることなく異物を取り出したいのですが、力を加えて牽引すると胃が裂けそうな感じです。
時間を掛けながら、慎重に少しづつ異物を胃内から引き出しました。
やっと摘出出来ました。
次に胃の閉鎖を行います。
胃切開した部位は二重縫合で閉鎖します。
私の場合、まず第一層目は単純連続縫合を行います。
下写真がその単純連続縫合です。
漿膜、筋層、粘膜下織まで全層貫通して針を入れます。
単純連続縫合が終了したところです。
次に第二層目は、結節レンベルト縫合を実施します。
漿膜・筋層までに針を入れて縫合します。
これで胃の閉鎖は終了です。
二重縫合法は創部の止血・漿膜の接着に優れているとされます。
合成吸収糸で腹膜・筋肉層を縫合します。
最後に皮膚をナイロン糸で縫合します。
これで豆太君の手術は終了です。
全身麻酔から覚醒したばかりの豆太君です。
スティックに塗布するペーストがおいしくて、スティックの先端部をまるごと噛み切って誤飲したようです。
この異物のヒダ状の形状もあって、胃の粘膜面にしっかり食い込んでいました。
早急に胃切開で摘出できて良かったと思われます。
下写真が摘出した異物です。
綺麗に洗浄した後の異物です。
豆太君は経過良好で1週間後に退院されました。
術後2週間目に抜糸で来院された豆太君です。
異物誤飲は飼主様の責任です。
異物をペットの口の届く場所の置かないこと、摂食する機会をなくすことを心がけて下さい。
当院の患者様で、異物誤飲で3回摘出手術を実施したケースがあります。
豆太君、お疲れ様でした!
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