鳥の疾病
セキセイインコの脂肪腫
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、セキセイインコの腫瘍です。
セキセイインコをはじめとして、小型愛玩鳥にも腫瘍の発症は認められます。
今回の症例は、比較的腫瘍が短期間で腫瘍が大きくなり外科的に摘出した症例です。
セキセイインコのキィちゃん(8.5歳 雌)は、腰背部に腫瘤が発生して数か月の間に一挙に大きくなり、他院からの紹介で当院を受診されました。
下写真の黄色丸が腫瘤です。
診たところ、尾羽の付根の腰背部に位置する尾脂腺周辺から発生した大きな腫瘤のようです。
約2㎝以上の大きさがあります。
すでにキィちゃんは腫瘤が大きくなり、止まり木に停まるのにも苦労しているようです。
腫瘤の皮膚は自身で突っついたり、止まり木との干渉で裂けて出血が認められます。
本来ならば、ここで細胞診を実施して腫瘤がどんな細胞で形成されているのか確認したいところです。
キィちゃんは高齢であることから、細胞診検査(針穿刺)によるストレスでショック状態に陥る可能性もあるため、飼主様は速やかな外科的切除を希望されました。
鳥の場合は、体調が悪くても表面上は健常をつくろうため、本人の挙動・羽や嘴、皮膚の光沢・食欲・排便排尿の状態などから総合的に判断する必要があります。
全身状態は良好と判断し、外科的に摘出手術を実施することとしました。
ガスマスクにキィちゃんに入ってもらい、イソフルランによる麻酔導入を実施します。
麻酔導入出来たところで、マスクから出して維持麻酔に切り替えます。
下写真の黄色矢印は、腫瘤部の先端部が出血、壊死を起こしている部位を示します。
この腫瘤の付根を切断します。
硬性メスで皮膚に切開を加えます。
この腫瘤の発生部位が尾脂腺の頭側に位置していますので、腹部ヘルニアの様に消化管が腫瘤内部に入り込んでいることはありません。
しかし、太い栄養血管は走行している可能性はありますので慎重にアプローチしていきます。
血管の走行が確認できている部位は、電気メス(バイポーラ)で凝固切断します。
中心部にさらに太い血管がありましたので、バイクランプでシーリングを施します。
一滴の出血もなく、腫瘤を切除することが出来ました。
腫瘤の切断面です。
5‐0のナイロン糸で縫合します。
これで縫合は終了です。
全身麻酔から覚醒したばかりのキィちゃんです。
患部を保護するために、キィちゃんにはフェルト地のエリザベスカラーを装着しました。
本人はそれほどエリザベスカラーを気にすることはなさそうです。
キィちゃんは無事、翌日退院して頂きました。
術後、2週間ほど経過したところで、自宅でキィちゃんは縫合部を自主的に抜糸されたそうです。
下写真は、術後3週間経過した患部です。
縫合部は後も分からないくらい癒合出来ました。
術後の経過は良好で、止まり木にストレスなく停まることが出来るようになったキィちゃんです。
今回、摘出した腫瘤です。
切断面です。
腫瘤を剪刃で割を入れてみました。
割面は充実した組織が認められます。
病理検査を依頼し、下写真はその中等度の倍率像です。
ポリープ状の腫瘤は、主に脂肪組織の増殖により構成され、先端部は壊死を起こしていました。
高倍率の病理像です。
構成する脂肪細胞に異型性はなく、腫瘤内には羽包や尾脂腺の構造は認められませんでした。
結論として、今回のこの腫瘤は異型性に乏しい脂肪組織の増殖巣で構成された良性腫瘍の脂肪腫と判定されました。
病理医からは、完全切除とのことで良好な予後が期待されるとのコメントでした。
悪性の腫瘍でなくて良かったです。
キィちゃんにはもっと長生きして頑張って頂きたいと思います。
キィちゃん、お疲れ様でした!
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本日ご紹介しますのは、セキセイインコの腫瘍です。
セキセイインコをはじめとして、小型愛玩鳥にも腫瘍の発症は認められます。
今回の症例は、比較的腫瘍が短期間で腫瘍が大きくなり外科的に摘出した症例です。
セキセイインコのキィちゃん(8.5歳 雌)は、腰背部に腫瘤が発生して数か月の間に一挙に大きくなり、他院からの紹介で当院を受診されました。
下写真の黄色丸が腫瘤です。
診たところ、尾羽の付根の腰背部に位置する尾脂腺周辺から発生した大きな腫瘤のようです。
約2㎝以上の大きさがあります。
すでにキィちゃんは腫瘤が大きくなり、止まり木に停まるのにも苦労しているようです。
腫瘤の皮膚は自身で突っついたり、止まり木との干渉で裂けて出血が認められます。
本来ならば、ここで細胞診を実施して腫瘤がどんな細胞で形成されているのか確認したいところです。
キィちゃんは高齢であることから、細胞診検査(針穿刺)によるストレスでショック状態に陥る可能性もあるため、飼主様は速やかな外科的切除を希望されました。
鳥の場合は、体調が悪くても表面上は健常をつくろうため、本人の挙動・羽や嘴、皮膚の光沢・食欲・排便排尿の状態などから総合的に判断する必要があります。
全身状態は良好と判断し、外科的に摘出手術を実施することとしました。
ガスマスクにキィちゃんに入ってもらい、イソフルランによる麻酔導入を実施します。
麻酔導入出来たところで、マスクから出して維持麻酔に切り替えます。
下写真の黄色矢印は、腫瘤部の先端部が出血、壊死を起こしている部位を示します。
この腫瘤の付根を切断します。
硬性メスで皮膚に切開を加えます。
この腫瘤の発生部位が尾脂腺の頭側に位置していますので、腹部ヘルニアの様に消化管が腫瘤内部に入り込んでいることはありません。
しかし、太い栄養血管は走行している可能性はありますので慎重にアプローチしていきます。
血管の走行が確認できている部位は、電気メス(バイポーラ)で凝固切断します。
中心部にさらに太い血管がありましたので、バイクランプでシーリングを施します。
一滴の出血もなく、腫瘤を切除することが出来ました。
腫瘤の切断面です。
5‐0のナイロン糸で縫合します。
これで縫合は終了です。
全身麻酔から覚醒したばかりのキィちゃんです。
患部を保護するために、キィちゃんにはフェルト地のエリザベスカラーを装着しました。
本人はそれほどエリザベスカラーを気にすることはなさそうです。
キィちゃんは無事、翌日退院して頂きました。
術後、2週間ほど経過したところで、自宅でキィちゃんは縫合部を自主的に抜糸されたそうです。
下写真は、術後3週間経過した患部です。
縫合部は後も分からないくらい癒合出来ました。
術後の経過は良好で、止まり木にストレスなく停まることが出来るようになったキィちゃんです。
今回、摘出した腫瘤です。
切断面です。
腫瘤を剪刃で割を入れてみました。
割面は充実した組織が認められます。
病理検査を依頼し、下写真はその中等度の倍率像です。
ポリープ状の腫瘤は、主に脂肪組織の増殖により構成され、先端部は壊死を起こしていました。
高倍率の病理像です。
構成する脂肪細胞に異型性はなく、腫瘤内には羽包や尾脂腺の構造は認められませんでした。
結論として、今回のこの腫瘤は異型性に乏しい脂肪組織の増殖巣で構成された良性腫瘍の脂肪腫と判定されました。
病理医からは、完全切除とのことで良好な予後が期待されるとのコメントでした。
悪性の腫瘍でなくて良かったです。
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投稿者 院長 | 記事URL
鳶の多骨性過骨症及び変形性関節症
こんにちは 院長の伊藤です。
本日は鳶(とび)の話です。
鳶とはタカ目タカ科に属する猛禽類の一種です。
上昇気流に乗って、輪を描きながら上空へ舞い上がることで知られています。
鳥は、発情の関連でホルモン分泌のバランスが崩れて、結果としてカルシウム代謝障害を引き起こします。
カルシウム代謝障害に多骨性過骨症(Polyostotic hyperostosis、略してPH)があります。
本日は、このPHに端を発し、変形性関節症から起立不能に陥った症例です。
鳶のチャカちゃん(雌、6歳、体重950g)は左脚に力が入らないとのことで来院されました。
チャカちゃんは遥々、中央アジアのウズぺキスタンから日本にやって来た鳶です。
チャカちゃんは既に仰向けかうつ伏せの姿勢しか取れない状態になっています。
左脚を触診しますと足根関節(足首)の可動が出来ない状態です。
疼痛感が伴っており、足根関節は著しく腫脹しています。
骨折の場合は、触診で骨折部の軋轢音やぐらつきを感じますが、足根関節周辺の骨折は感じられません。
しかしながら、足根関節は棒の様に硬くなっており、柔軟な関節運動は不可能です。
下写真の黄色丸が左脚の足根関節です。
直ぐにレントゲン撮影を実施しました。
下は、レントゲンの結果です。
特に両脛骨中に骨髄の不透化(白くなる)像(下写真黄色矢印)が認められました。
飛行する生物である鳥には、軽量化のために一部の骨に、骨髄がなくスカスカになっている含気骨(がんきこつ)が存在します。
含気骨には、椎骨・肋骨・上腕骨・鳥口骨・胸骨・坐骨・恥骨などが挙げられます。
この含気骨は気嚢や肺につながっています。
一方、骨格の中心となる長骨(橈尺骨、脛腓骨、大腿骨など)は非含気性の骨で骨髄部があります。
左足根関節を黄色丸で示します。
上の黄色丸(足根関節)の拡大下写真です。
足根関節が変形しており、一部は吸収されています。
骨膜、骨皮質には炎症像が認められ、骨棘が形成されています。
いわゆる変形性関節炎に罹患しています。
側臥の写真像です。
脛足根骨と足根虫足骨をつなぐ足根関節が消失しています(下写真黄色丸)。
触診する限りでは、足根関節は大きく腫大している一方、関節の可動性は認められません。
レントゲン像では軟骨組織は透過されるため、欠損してるように見える場合があります。
吸収された関節部は、既に軟骨組織に置換されているかもしれません。
鳥類は、発情が起こり、ついで産卵の2週間くらい前から卵殻形成用のカルシウムが骨に蓄積を始めます。
ところが、発情回数が多く卵を産まないでいると、卵殻形成用のカルシウムが骨の中に残ることで前述のPHとなります。
結果、骨の柔軟性は失われて硬化していきますから、骨折しやすくなり関節部は変形性関節炎を引き起こす場合があります。
チャカちゃんは慢性発情が原因で、PHから変形性関節症になったものと考えられます。
変形性関節炎を完治させることは不可能です。
変形性関節症の治療は、消炎鎮痛剤を投薬して疼痛管理を行います。
今回の疾病の基になったと思われるPHについては、過発情を制御するのが理想です。
発情抑制のために黄体ホルモン製剤、抗エストロゲン剤、Gn-RH誘導体を使用します。
しかし、発情抑制が上手くできても一旦、沈着したカルシウムは消失することはなくて症状の緩和や病状の制限に留まることが多いです。
鳶などの猛禽類については、発情抑制剤の薬用量が不明のため、投薬のリスクを考慮して消炎鎮痛剤で対応させて頂きました。
今後、チャカちゃんの脊椎に変形が生じた場合、後躯麻痺や排尿・排便障害が起こらないか経過観察が必要です。
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本日は鳶(とび)の話です。
鳶とはタカ目タカ科に属する猛禽類の一種です。
上昇気流に乗って、輪を描きながら上空へ舞い上がることで知られています。
鳥は、発情の関連でホルモン分泌のバランスが崩れて、結果としてカルシウム代謝障害を引き起こします。
カルシウム代謝障害に多骨性過骨症(Polyostotic hyperostosis、略してPH)があります。
本日は、このPHに端を発し、変形性関節症から起立不能に陥った症例です。
鳶のチャカちゃん(雌、6歳、体重950g)は左脚に力が入らないとのことで来院されました。
チャカちゃんは遥々、中央アジアのウズぺキスタンから日本にやって来た鳶です。
チャカちゃんは既に仰向けかうつ伏せの姿勢しか取れない状態になっています。
左脚を触診しますと足根関節(足首)の可動が出来ない状態です。
疼痛感が伴っており、足根関節は著しく腫脹しています。
骨折の場合は、触診で骨折部の軋轢音やぐらつきを感じますが、足根関節周辺の骨折は感じられません。
しかしながら、足根関節は棒の様に硬くなっており、柔軟な関節運動は不可能です。
下写真の黄色丸が左脚の足根関節です。
直ぐにレントゲン撮影を実施しました。
下は、レントゲンの結果です。
特に両脛骨中に骨髄の不透化(白くなる)像(下写真黄色矢印)が認められました。
飛行する生物である鳥には、軽量化のために一部の骨に、骨髄がなくスカスカになっている含気骨(がんきこつ)が存在します。
含気骨には、椎骨・肋骨・上腕骨・鳥口骨・胸骨・坐骨・恥骨などが挙げられます。
この含気骨は気嚢や肺につながっています。
一方、骨格の中心となる長骨(橈尺骨、脛腓骨、大腿骨など)は非含気性の骨で骨髄部があります。
左足根関節を黄色丸で示します。
上の黄色丸(足根関節)の拡大下写真です。
足根関節が変形しており、一部は吸収されています。
骨膜、骨皮質には炎症像が認められ、骨棘が形成されています。
いわゆる変形性関節炎に罹患しています。
側臥の写真像です。
脛足根骨と足根虫足骨をつなぐ足根関節が消失しています(下写真黄色丸)。
触診する限りでは、足根関節は大きく腫大している一方、関節の可動性は認められません。
レントゲン像では軟骨組織は透過されるため、欠損してるように見える場合があります。
吸収された関節部は、既に軟骨組織に置換されているかもしれません。
鳥類は、発情が起こり、ついで産卵の2週間くらい前から卵殻形成用のカルシウムが骨に蓄積を始めます。
ところが、発情回数が多く卵を産まないでいると、卵殻形成用のカルシウムが骨の中に残ることで前述のPHとなります。
結果、骨の柔軟性は失われて硬化していきますから、骨折しやすくなり関節部は変形性関節炎を引き起こす場合があります。
チャカちゃんは慢性発情が原因で、PHから変形性関節症になったものと考えられます。
変形性関節炎を完治させることは不可能です。
変形性関節症の治療は、消炎鎮痛剤を投薬して疼痛管理を行います。
今回の疾病の基になったと思われるPHについては、過発情を制御するのが理想です。
発情抑制のために黄体ホルモン製剤、抗エストロゲン剤、Gn-RH誘導体を使用します。
しかし、発情抑制が上手くできても一旦、沈着したカルシウムは消失することはなくて症状の緩和や病状の制限に留まることが多いです。
鳶などの猛禽類については、発情抑制剤の薬用量が不明のため、投薬のリスクを考慮して消炎鎮痛剤で対応させて頂きました。
今後、チャカちゃんの脊椎に変形が生じた場合、後躯麻痺や排尿・排便障害が起こらないか経過観察が必要です。
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文鳥の上腕骨・脛骨骨折
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、文鳥の骨折症例です。
愛玩鳥は室内で放鳥時に突発的な事故(衝突や圧迫)で骨折に至るケースが多いです。
骨折整復がもちろん必要ですが、内臓を圧迫して肺出血や内臓破裂を起こしている場合も少なくありません。
状況に応じた迅速な判断が哺乳類以上に必要とされます。
文鳥(名前はなし、雄・10歳)を踏みつけてしまったとのことで、起立不能となった文鳥君の診察をすることになりました。
両翼からは出血があり、肢は力が入らない状態です。
右肢は明らかに骨折があり、翼の上腕骨も開放骨折が認められました。
呼吸はしっかりしており、骨格以外の問題は診たところ大丈夫のようです。
一先ずレントゲン撮影をしました。
下写真の黄色丸は、骨折の箇所を示してます。
両翼の上腕骨と右の脛骨が骨折しています。
下写真黄色丸は左翼の上腕骨の骨折端です。
全身状態は麻酔に耐えられると判断して、骨折整復手術を行うこととしました。
イソフルランで麻酔導入をしています。
維持麻酔に変えます。
下写真黄色矢印は左翼の骨折端が開放骨折をしている部位を示します。
ピンニングによる整復を施すために上腕骨骨折近位端から25Gの注射針を挿入します。
この注射針を肩関節側(下写真青矢印方向)に貫通(下写真青丸)させます。
次いで上写真青丸の貫通した穴から、上腕骨遠位端(下写真黄色矢印)方向へ新しい注射針を挿入します。
この時、最初に挿入した注射針は下写真青矢印方向に順次抜去していきます。
今回使用した25G(直径0.5mm)サイズで両端が尖った極細のキルシュナ―ワイヤーがあれば良いのですが、実情は注射針で代用しています。
注射針ですから中空構造のため、ニッパーでカットしても断端が変形してしまい、逆方向の骨髄内へ挿入が引っかかって苦労します。
それを回避するため、このような面倒な操作を今回は致しました。
次いで、上腕骨の骨折端同志を鉗子にて固定し、注射針でピンニングして固定します。
肩関節側の刺入した注射針をニッパーでカットします。
さらに右脛骨骨幹部の骨折整復を行います。
下写真は脛骨骨折部の皮下出血が進行している状態を示しています。
骨折部の皮膚をメスで切開します。
踵から注射針を刺入し、骨折部まで挿入していきます。
脛骨骨折遠位端まで注射針が貫通したところ(黄色丸)です。
骨折部遠位端(青丸)の注射針を今度は骨折部近位端(黄色丸)まで挿入します。
そのために骨折端同志を整復して固定します。
小型愛玩鳥の場合は、骨が細く脆弱のため、指先で整復し固定した後に注射針を貫通させます。
踵の部分の注射針をニッパーでカットし、断端を鉗子でLの字に曲げます(黄色丸)。
整復処置中、ピンの挿入が正しく行われているかをレントゲンで確認しました。
下写真は踵から注射針を刺入しているところです。
右上腕骨へ注射針を刺入しているところです。
刺入部をカットし、整復終了時の写真です。
開放創になっていた翼の筋膜と皮膚を縫合します。
次いで、右脛骨の筋膜と皮膚を縫合します。
三か所の骨折整復は、文鳥君にとって大変な試練であったと思われます。
ピンニングした骨折部は旋回運動に弱いため、テープにより外固定を施します。
翼は羽ばたいたりすると骨折部整復部が破たんしますので、テープで胴体ごと固定します。
なるべく胸郭の呼吸運動を抑制しないようにゆるいテーピングでとどめます。
まだ文鳥君は、自力で起立することが出来ませんので介護が必要です。
流動食を強制給餌しているところです。
皮つき餌を少しづつついばみ始めました。
今回は不慮の事故で大変な思いをした文鳥君、骨折が治癒するのもひと月ほど先となります。
まだ先は長いので、しっかり治療に専念したいです。
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本日ご紹介しますのは、文鳥の骨折症例です。
愛玩鳥は室内で放鳥時に突発的な事故(衝突や圧迫)で骨折に至るケースが多いです。
骨折整復がもちろん必要ですが、内臓を圧迫して肺出血や内臓破裂を起こしている場合も少なくありません。
状況に応じた迅速な判断が哺乳類以上に必要とされます。
文鳥(名前はなし、雄・10歳)を踏みつけてしまったとのことで、起立不能となった文鳥君の診察をすることになりました。
両翼からは出血があり、肢は力が入らない状態です。
右肢は明らかに骨折があり、翼の上腕骨も開放骨折が認められました。
呼吸はしっかりしており、骨格以外の問題は診たところ大丈夫のようです。
一先ずレントゲン撮影をしました。
下写真の黄色丸は、骨折の箇所を示してます。
両翼の上腕骨と右の脛骨が骨折しています。
下写真黄色丸は左翼の上腕骨の骨折端です。
全身状態は麻酔に耐えられると判断して、骨折整復手術を行うこととしました。
イソフルランで麻酔導入をしています。
維持麻酔に変えます。
下写真黄色矢印は左翼の骨折端が開放骨折をしている部位を示します。
ピンニングによる整復を施すために上腕骨骨折近位端から25Gの注射針を挿入します。
この注射針を肩関節側(下写真青矢印方向)に貫通(下写真青丸)させます。
次いで上写真青丸の貫通した穴から、上腕骨遠位端(下写真黄色矢印)方向へ新しい注射針を挿入します。
この時、最初に挿入した注射針は下写真青矢印方向に順次抜去していきます。
今回使用した25G(直径0.5mm)サイズで両端が尖った極細のキルシュナ―ワイヤーがあれば良いのですが、実情は注射針で代用しています。
注射針ですから中空構造のため、ニッパーでカットしても断端が変形してしまい、逆方向の骨髄内へ挿入が引っかかって苦労します。
それを回避するため、このような面倒な操作を今回は致しました。
次いで、上腕骨の骨折端同志を鉗子にて固定し、注射針でピンニングして固定します。
肩関節側の刺入した注射針をニッパーでカットします。
さらに右脛骨骨幹部の骨折整復を行います。
下写真は脛骨骨折部の皮下出血が進行している状態を示しています。
骨折部の皮膚をメスで切開します。
踵から注射針を刺入し、骨折部まで挿入していきます。
脛骨骨折遠位端まで注射針が貫通したところ(黄色丸)です。
骨折部遠位端(青丸)の注射針を今度は骨折部近位端(黄色丸)まで挿入します。
そのために骨折端同志を整復して固定します。
小型愛玩鳥の場合は、骨が細く脆弱のため、指先で整復し固定した後に注射針を貫通させます。
踵の部分の注射針をニッパーでカットし、断端を鉗子でLの字に曲げます(黄色丸)。
整復処置中、ピンの挿入が正しく行われているかをレントゲンで確認しました。
下写真は踵から注射針を刺入しているところです。
右上腕骨へ注射針を刺入しているところです。
刺入部をカットし、整復終了時の写真です。
開放創になっていた翼の筋膜と皮膚を縫合します。
次いで、右脛骨の筋膜と皮膚を縫合します。
三か所の骨折整復は、文鳥君にとって大変な試練であったと思われます。
ピンニングした骨折部は旋回運動に弱いため、テープにより外固定を施します。
翼は羽ばたいたりすると骨折部整復部が破たんしますので、テープで胴体ごと固定します。
なるべく胸郭の呼吸運動を抑制しないようにゆるいテーピングでとどめます。
まだ文鳥君は、自力で起立することが出来ませんので介護が必要です。
流動食を強制給餌しているところです。
皮つき餌を少しづつついばみ始めました。
今回は不慮の事故で大変な思いをした文鳥君、骨折が治癒するのもひと月ほど先となります。
まだ先は長いので、しっかり治療に専念したいです。
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キバタンの脛骨骨折
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのはオウムの仲間のキバタンという愛玩鳥です。
キバタンの中でも目の周りのアイリング(眼の周囲の毛のない部位)が青いキバタンをアオメキバタンと呼びます。
キバタンはオーストラリアやニューギニア原産で体重400g~880g、体長44~50cmとされます。
平均寿命は50~70年と非常に長寿の鳥です。
アオメキバタンのシュガーちゃん(性別不明、2歳、体重550g)は左肢を拳上しているとのことで来院されました。
早速、レントゲン撮影を実施しました。
脛骨の中央部が斜骨折しているのが判明しました。
体重のある鳥なのでシンプルなギブス固定では骨癒合まで持っていくのは困難と思われます。
骨髄ピンによる固定法を選択することとしました。
斜骨折している骨折端が皮膚を貫通して骨髄炎までなると大変です。
急遽、手術となりました。
イソフルランでマスクによる導入麻酔をします。
シュガーちゃんはおとなしく、思いのほかスムーズに麻酔導入は遂行できました。
このまま維持麻酔をします。
左肢が外転してブラブラになっています。
皮膚をメスで切開して、骨折部にアプローチします。
筋肉層を鉗子で分離します。
下写真の黄色矢印は骨折端を示します。
斜骨折していますので、骨折端は下写真のように鋭い形状です。
遠位骨折端より踝に向けてピンを骨髄に挿入します。
キバタンの骨髄腔は広く、直径1㎜の骨髄ピンを使用しました。
ピンが踝を貫通しているのがお分かり頂けると思います。
ピンを完全に踝から突出させて、逆方向にドリルのピン装着します。
今度はピン(両端が鋭利なタイプ)の反対側を骨折端の近位部に向けて挿入します。
ピンが骨折部に顔を覗かせています。
ココで骨折部を固定して鉗子で整復します。
ピンを骨折部から脛骨近位端へ向けて挿入します。
ピンの先端が皮膚を穿孔して突出しています。
ここで確認のためレントゲン撮影をします。
骨髄にピンはしっかり入っています。
ここで骨折部の整復がしっかり出来ているかを確認します。
問題がないのを確認後、踝に突出しているピンをペンチで離断します。
次いで、脛骨近位端(膝関節部)に突出しているピンの先端をペンチで同じく離断します。
骨折部を露出するために分離した筋膜を縫合します。
筋膜縫合完了です。
次いで皮膚を縫合します。
これで手術は終了となります。
最終のレントゲンチェックです。
骨折した左肢は牽引すると正常な右肢と平行にまっすぐに伸展します。
骨折により骨髄や周囲組織が破たんして出血があり、患肢が内出血で黒ずんでいるのが分かります。
術後の管理で最も重要なのは、キバタンは咬む力が強いため患部を自傷しないようガードする必要があります。
まずは患部をテーピングします。
テーピングはこれで完了です。
シュガーちゃんがまだ麻酔から覚醒しない間にエリザベスカラーを装着します。
麻酔から覚醒したところです。
麻酔から完全に覚醒して初めて手術は無事終わったと実感します。
翌日のシュガーちゃんです。
装着したエリザベスカラーは見事に破壊されました。
元気なのは良いことです。
念のため二重にカラーを装着しました。
この状態でも食餌はしっかり食べることが出来ます。
シュガーちゃんは手術後2日目に退院されました。
下写真は術後1週間のシュガーちゃんです。
患肢への荷重も、ある程度抵抗なくできるようになりました。
飼い主様に甘えているシュガーちゃんです。
今後は、骨髄ピンを抜去するタイミングを経過観察していきます。
中型から大型の鳥の骨折はセキセイインコやオカメインコとは異なり、小型犬に近い感覚が必要になります。
特に長寿な鳥種ほど、手術は気を使います。
シュガーちゃん、お疲れ様でした!
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本日ご紹介しますのはオウムの仲間のキバタンという愛玩鳥です。
キバタンの中でも目の周りのアイリング(眼の周囲の毛のない部位)が青いキバタンをアオメキバタンと呼びます。
キバタンはオーストラリアやニューギニア原産で体重400g~880g、体長44~50cmとされます。
平均寿命は50~70年と非常に長寿の鳥です。
アオメキバタンのシュガーちゃん(性別不明、2歳、体重550g)は左肢を拳上しているとのことで来院されました。
早速、レントゲン撮影を実施しました。
脛骨の中央部が斜骨折しているのが判明しました。
体重のある鳥なのでシンプルなギブス固定では骨癒合まで持っていくのは困難と思われます。
骨髄ピンによる固定法を選択することとしました。
斜骨折している骨折端が皮膚を貫通して骨髄炎までなると大変です。
急遽、手術となりました。
イソフルランでマスクによる導入麻酔をします。
シュガーちゃんはおとなしく、思いのほかスムーズに麻酔導入は遂行できました。
このまま維持麻酔をします。
左肢が外転してブラブラになっています。
皮膚をメスで切開して、骨折部にアプローチします。
筋肉層を鉗子で分離します。
下写真の黄色矢印は骨折端を示します。
斜骨折していますので、骨折端は下写真のように鋭い形状です。
遠位骨折端より踝に向けてピンを骨髄に挿入します。
キバタンの骨髄腔は広く、直径1㎜の骨髄ピンを使用しました。
ピンが踝を貫通しているのがお分かり頂けると思います。
ピンを完全に踝から突出させて、逆方向にドリルのピン装着します。
今度はピン(両端が鋭利なタイプ)の反対側を骨折端の近位部に向けて挿入します。
ピンが骨折部に顔を覗かせています。
ココで骨折部を固定して鉗子で整復します。
ピンを骨折部から脛骨近位端へ向けて挿入します。
ピンの先端が皮膚を穿孔して突出しています。
ここで確認のためレントゲン撮影をします。
骨髄にピンはしっかり入っています。
ここで骨折部の整復がしっかり出来ているかを確認します。
問題がないのを確認後、踝に突出しているピンをペンチで離断します。
次いで、脛骨近位端(膝関節部)に突出しているピンの先端をペンチで同じく離断します。
骨折部を露出するために分離した筋膜を縫合します。
筋膜縫合完了です。
次いで皮膚を縫合します。
これで手術は終了となります。
最終のレントゲンチェックです。
骨折した左肢は牽引すると正常な右肢と平行にまっすぐに伸展します。
骨折により骨髄や周囲組織が破たんして出血があり、患肢が内出血で黒ずんでいるのが分かります。
術後の管理で最も重要なのは、キバタンは咬む力が強いため患部を自傷しないようガードする必要があります。
まずは患部をテーピングします。
テーピングはこれで完了です。
シュガーちゃんがまだ麻酔から覚醒しない間にエリザベスカラーを装着します。
麻酔から覚醒したところです。
麻酔から完全に覚醒して初めて手術は無事終わったと実感します。
翌日のシュガーちゃんです。
装着したエリザベスカラーは見事に破壊されました。
元気なのは良いことです。
念のため二重にカラーを装着しました。
この状態でも食餌はしっかり食べることが出来ます。
シュガーちゃんは手術後2日目に退院されました。
下写真は術後1週間のシュガーちゃんです。
患肢への荷重も、ある程度抵抗なくできるようになりました。
飼い主様に甘えているシュガーちゃんです。
今後は、骨髄ピンを抜去するタイミングを経過観察していきます。
中型から大型の鳥の骨折はセキセイインコやオカメインコとは異なり、小型犬に近い感覚が必要になります。
特に長寿な鳥種ほど、手術は気を使います。
シュガーちゃん、お疲れ様でした!
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投稿者 院長 | 記事URL
セキセイインコの気嚢破裂
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのはセキセイインコの気嚢破裂と言う疾病です。
鳥の解剖学的構造は、哺乳類と比較して飛行するために特殊な構造をしています。
そもそも鳥には哺乳類のように横隔膜は存在せず、呼吸様式も横隔膜呼吸でなく、胸を膨らませるフイゴ式呼吸です。
そのため、鳥は胸を急に押さえることで低換気に至り死亡する場合もあります。
鳥に特徴的な構造として気嚢の存在が挙げられます。
気嚢とは肺から延長した空気の入る袋です。
鳥の飛行は肺による酸素供給だけでは賄えないほどのハードな運動です。
そこで空気を蓄えておく気嚢という袋が必要となりました。
気嚢の存在で常時、肺に空気が供給されるため、鳥は長時間飛行が可能になりました。
また長時間の飛行で体温が上昇した場合、気嚢から体熱を放散する効果も期待できます。
気嚢は鳥の種類により異なる場合もありますが、一般的に頚気嚢(無対)、鎖骨間気嚢(無対)、前胸気嚢(左右に一対)、後胸気嚢(一対)、腹気嚢(一対)が存在します(下模式図参照)。
セキセイインコのきいちゃん(1歳3か月、雌)は頸背部に大きな瘤があるとのことで来院されました。
下写真の赤矢印が腫大した頸背部です。
羽を分けて皮膚を露出すると下写真の赤丸のように皮下の膨らみが認められます。
触診するとこの膨らみは、流動性を持った内容物(水や膿)は入っておらず、腫瘍のように充実性の内容も認められません。
どちらかというと内容は空気でいわゆる皮下気腫です。
確認のため、レントゲン撮影を実施しました。
結果は以下の写真の通りです。
黄色矢印が示しているのが皮下に空気が溜まっている部位です。
皮下気腫が出来るというのは、気嚢が何らかの原因で障害を受けて空気が漏れ、皮下に貯留していることを表します。
この症状を気嚢破裂といいます。
前述のように気嚢は鳥の体内に分布しています。
障害を受けた気嚢の部位により気腫は、今回のように頸背部以外に喉や大腿部など予想外の部位に発生することもあります。
気嚢は気管支粘膜が膨らんでできた風船のようなものですから、極めて薄い脆弱な組織です。
気嚢が破れたとしても縫合するということは出来ません。
出来るだけ安静を保って、障害を受けた部位が自然治癒して塞がるのを待つ形になります。
自然治癒するまでの間は、気嚢から漏れ出た空気が皮下に貯留していきますから、注射針で皮下に穴をあけて空気を吸引する必要があります。
漏出した空気を吸引しないでおくと、気嚢の膨らむ余地が無くなりますから呼吸不全に陥ります。
結局、皮下に空気が溜まればその都度、空気を抜いて気嚢の障害の回復を待つという治療のスタイルを取ります。
下写真はきいちゃんの膨隆している皮下気腫を穿刺し、空気を吸引しているところです。
空気を抜いた直後の皮膚です。
若干の皮下出血が認められます。
きいちゃんの皮下気腫の空気抜去後は頸背部の腫れもなくなりスッキリしています。
気嚢の障害は様々です。
例えば、放鳥時にどこかにぶつかって、気嚢を損傷したりすることもあるでしょう。
気嚢炎になると呼吸不全から死亡する場合も出て来ますので、早めに内服で治療する必要があります。
きいちゃんは、暫く抗生剤や抗炎症剤の内服で気嚢炎治療も合わせて実施させて頂きます。
きいちゃん、お疲れ様でした!
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本日ご紹介しますのはセキセイインコの気嚢破裂と言う疾病です。
鳥の解剖学的構造は、哺乳類と比較して飛行するために特殊な構造をしています。
そもそも鳥には哺乳類のように横隔膜は存在せず、呼吸様式も横隔膜呼吸でなく、胸を膨らませるフイゴ式呼吸です。
そのため、鳥は胸を急に押さえることで低換気に至り死亡する場合もあります。
鳥に特徴的な構造として気嚢の存在が挙げられます。
気嚢とは肺から延長した空気の入る袋です。
鳥の飛行は肺による酸素供給だけでは賄えないほどのハードな運動です。
そこで空気を蓄えておく気嚢という袋が必要となりました。
気嚢の存在で常時、肺に空気が供給されるため、鳥は長時間飛行が可能になりました。
また長時間の飛行で体温が上昇した場合、気嚢から体熱を放散する効果も期待できます。
気嚢は鳥の種類により異なる場合もありますが、一般的に頚気嚢(無対)、鎖骨間気嚢(無対)、前胸気嚢(左右に一対)、後胸気嚢(一対)、腹気嚢(一対)が存在します(下模式図参照)。
セキセイインコのきいちゃん(1歳3か月、雌)は頸背部に大きな瘤があるとのことで来院されました。
下写真の赤矢印が腫大した頸背部です。
羽を分けて皮膚を露出すると下写真の赤丸のように皮下の膨らみが認められます。
触診するとこの膨らみは、流動性を持った内容物(水や膿)は入っておらず、腫瘍のように充実性の内容も認められません。
どちらかというと内容は空気でいわゆる皮下気腫です。
確認のため、レントゲン撮影を実施しました。
結果は以下の写真の通りです。
黄色矢印が示しているのが皮下に空気が溜まっている部位です。
皮下気腫が出来るというのは、気嚢が何らかの原因で障害を受けて空気が漏れ、皮下に貯留していることを表します。
この症状を気嚢破裂といいます。
前述のように気嚢は鳥の体内に分布しています。
障害を受けた気嚢の部位により気腫は、今回のように頸背部以外に喉や大腿部など予想外の部位に発生することもあります。
気嚢は気管支粘膜が膨らんでできた風船のようなものですから、極めて薄い脆弱な組織です。
気嚢が破れたとしても縫合するということは出来ません。
出来るだけ安静を保って、障害を受けた部位が自然治癒して塞がるのを待つ形になります。
自然治癒するまでの間は、気嚢から漏れ出た空気が皮下に貯留していきますから、注射針で皮下に穴をあけて空気を吸引する必要があります。
漏出した空気を吸引しないでおくと、気嚢の膨らむ余地が無くなりますから呼吸不全に陥ります。
結局、皮下に空気が溜まればその都度、空気を抜いて気嚢の障害の回復を待つという治療のスタイルを取ります。
下写真はきいちゃんの膨隆している皮下気腫を穿刺し、空気を吸引しているところです。
空気を抜いた直後の皮膚です。
若干の皮下出血が認められます。
きいちゃんの皮下気腫の空気抜去後は頸背部の腫れもなくなりスッキリしています。
気嚢の障害は様々です。
例えば、放鳥時にどこかにぶつかって、気嚢を損傷したりすることもあるでしょう。
気嚢炎になると呼吸不全から死亡する場合も出て来ますので、早めに内服で治療する必要があります。
きいちゃんは、暫く抗生剤や抗炎症剤の内服で気嚢炎治療も合わせて実施させて頂きます。
きいちゃん、お疲れ様でした!
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