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ウ―パールーパー・カエルの疾病

カエルの腹水症(その2)

カエルの腹水症について先回、コメントさせて頂きました。

先回はイエアメガエルで非常に体格の立派なカエルの腹水症でした。

その詳細に興味のある方はこちらをクリックして下さい。


今回、ご紹介しますのはアオガエルのありすちゃんです。

非常に小さなカエルで全長2㎝位です。

ありすちゃんは樹上性両生類に分類されるカエルで、水辺の草むらや森林の高草や木の上で生活するタイプです。

腹水が貯留し始めているとのことで、三重県からはるばる来院されました。



水槽を下から見上げると腹部が腫大しているのがお分かり頂けると思います。



腹水のため、元気・食欲が減退しているとのこと。







先回のイエアメガエル君のように大きな個体ならまだしも、全長2cm位の個体の腹水をどのように抜去するかが問題です。

一般的には、希釈した哺乳類用の電解質液中に、個体を一定時間浸漬します。

浸透圧差を利用して、腹水を少しずつ抜いていきます。

飼い主様的には、一度に腹水を抜去して楽にしてあげたい思いが強いようです。

小さな個体のため、一度の抜去ではショック状態に陥るかもしれないし、針で内臓を傷つける可能性もあります。

でも覚悟を決めて、腹部穿刺を実行することとなりました。



ライトを当てて、腹水の貯留している領域を確認します。



用意した注射針は27Gのもので当院で最細の注射針です。

この27Gでも小さな体には、かなり太く見えてしまいます。

慎重に針を進めていきます。



結局、0.15mlの腹水を抜去しました。

小さな体には大量の腹水抜去に当たります。



ありすちゃんはかなりスマートな体になりました。



その後、特にショック状態もなく、動き回っているので何とか腹水抜去は成功したみたいです。

しかしながら、この腹水が貯留する原因は不明です。

両生類の場合、犬猫のように血液検査も満足にできませんし、ありすちゃんの様に極小個体では積極的な治療もリスクを考える必要があります。

この処置の2か月後に、再び腹水貯留でありすちゃんを穿刺して腹水抜去しました。

原因は、心不全、腎不全、肝不全、感染症等などが考えられます。

まずは、強肝剤を投薬して経過を診ていきます。






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投稿者 院長 | 記事URL

ウーパールーパーの外鰓が溶ける!

昨日に続いてウーパールーパーの話をします。


本日、ご紹介するウーパー君は外鰓(えら)がだんだん小さくなって来たとのことで来院されました。

下写真の黄色丸が示す外鰓が小さくなっているのがお分かりでしょうか?





同じ水槽内で複数飼育している場合、ウーパールーパーは互いを咬んで指がちぎれたり、尻尾が切れたりする場合はあります。

今回のウーパー君は単独飼育とのことで、咬症によるものではありません。

ではなぜ立派で大きかった外鰓が小さくなってしまったのか?

答えは飼育水中の細菌が原因で、外鰓が炎症を起こしてしまったのです。

Aeromonas hydrophila 等が原因菌とされています。

治療法としては、水槽の水を清潔なものに変えること。

飼育水が不衛生な状態なので、飼育水の濾過やエアレーションを徹底する必要があります。

外鰓を昨日ご紹介したメチレンブルーや魚病用のグリーンFゴールド等で薬浴を実施します。

これも昨日コメントしたように薬物中毒にならないように、魚用の規定量の3分の1位の用量で3分くらい体を浸漬します。

この処置をしばらく続け、外鰓の回復を経過観察していきます。



基本的には、水質をしっかり衛生的に管理できていれば、ウーパールーパーは元気に飼育することが可能です。

特に水温を25度以下に保つことが重要です。

実際、この夏に水温が30度以上の状態の水槽に入れたままにして、熱中症にかかり死亡したケースもあります。

水温が高くなるほどに、水槽内の水質は悪化して雑菌は増殖していきます。

この外鰓の委縮・溶解は細菌感染症なので、しっかり治療する必要があります。



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投稿者 院長 | 記事URL

ウーパールーパーのメチレンブルー中毒

今年の暑さは酷いですね。

メディアは、熱中症について毎日しつこく報道していますので、幸いなことに当院では熱中症の患者は少ないです。


犬猫のみならず、飼育環境の温度・湿度管理で爬虫類や両生類の飼主様方も苦労されています。

本日は、両生類では非常に人気の高いウーパールーパーの薬物中毒の話です。



ウーパールーパーのしろちゃんは、皮膚病のため飼主様が自己責任で薬浴をされました。

しろちゃんを購入されたペットショップのスタッフから、メチレンブルーの薬浴を進められて1晩以上薬浴をしていたところ、体のバランスを崩してローリングをするようになり、心配になっての来院です。







じっと一か所に居るのが辛そうに絶えず動き回っている状態です。

どちらかというと苦悶しているかのように見えます。

顔を診ますとメチレンブルーの青色が残っています。





ウーパールーパーは薬剤の反応が、魚類に比べるとデリケートで慎重に薬浴はすべきだと私は思っています。

今回はメチレンブルーの薬量も多く、長時間の浸漬であったことを考慮しますと、メチレンブルーの中毒の可能性が高いと思います。

血液検査ができない生物なので、残念ながら客観的な医学的データ―を明示できないのが残念です。


入院していただき様子を診ていますと次第に下顎が腫れはじめ、開口し始めました。



この時、すでにしろちゃんは動くこともなく動きが停止しています。

ひょっとしたら死亡しているかもと思い、触れると動きます。

しかし、鰓の色も白くあせ始めてきました。

さらに体全体がむくみ(浮腫)始めました。



両生類は、浸透圧の関係で絶えず水分子が体内に入り込んできますので、この水を体外に排出するために腎臓が活躍します。

このとき腎臓が薬物で傷害を受けますと、体内に入ってくる水分が原因で体液の異常分泌が起きます。

体全体が浮腫を起こして腫れあがったり、下顎に体液が貯留して口が閉じなくなります。

今のしろちゃんが、まさにこの状態で、開口状態が続きました。




両生類に対応した生理食塩水の濃度は0.65%とされています。

理論上はこの0.65%生理食塩水中にウーパールーパーを入れておけば、水槽内の水とウーパールーパーの体内との浸透圧差はゼロとなります。

結果、浮腫を防ぐことは可能となります。


哺乳類用の生理食塩水0.9%を希釈して0.6%の生理食塩水中にしろちゃんを浸漬しても特に容態は改善しません。

浸透圧調整以前にすでに腎機能が、メチレンブルーにより壊滅的な障害を受けていたと思われます。

こうなると両生類の治療は、厳しくなります。


残念ながら、翌日しろちゃんは亡くなられました。

両生類の治療の限界を感じる症例でした。

ウーパ―ルーパーの薬浴は基本短時間で薬用量も魚類の濃度3分の1位から初めて、少しづつ濃度を上げていくべきと思います。

薬は使用法を間違えると命に係わりますので、少しでも不明な点があったり、不安があれば両生類に詳しい獣医師にお尋ね頂くようお願い致します。



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投稿者 院長 | 記事URL

ベルツノガエルの皮膚外傷

本日ご紹介しますのはベルツノガエルの皮膚外傷です。

基本的にカエルの皮膚はデリケートで簡単に傷を負ってしまいます。

一方、皮膚の再生力は強く比較的短期間で皮膚損傷は治癒します。


ベルツノガエルのガンモちゃん(1.5歳・雌)はお尻と下腹部に外傷を負って来院されました。



下写真の黄色丸が皮膚の外傷で、皮膚が裂けています。



次に背側尾部の皮膚外傷です。

丸く穿孔傷(黄色丸)が生じています。



外傷の原因が何なのかは不明です。

ガンモちゃんは、テラリウムの中で生活しているため、環境中で何か患部を引っ掛けたりしたのかもしれません。

いずれにしても、患部を消毒し縫合して、細菌感染から保護する必要があります。

早速、縫合処置を行います。





次に下腹部の縫合です。



カエルは後足は発達していますので、それなりに縫合時の出血は多いです。



下写真の様に縫合して終了です。



カエルの場合、絶えず生活環境には不衛生な水が存在して、傷口との接触があります。

つまり、細菌感染が前提での治療になりますので、術後の衛生管理が重要になります。

1週間、抗生剤の投薬をして頂きます。



ベルツノガエルの場合は、器用に患部を口で干渉したりはしないので、術後の患部は2週間以内に抜糸できるのではないかと思っています。





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投稿者 院長 | 記事URL

ウーパールーパーのイカリムシ感染症

皆さんはイカリムシという魚類や両生類に寄生する虫体をご存知でしょうか?

本日、ご紹介させて頂きますのはウーパールーパーのウーちゃんです。

ウーちゃんの鰓(エラ)を初めとして、体表部に白い棘のようなもの(イカリムシ)が現れたとのことで来院されました。

下写真のどこにこの寄生虫がいるか、お分かりでしょうか?



答えは黄色丸で囲んだ箇所にイカリムシが寄生しています。



側面の画像です。



イカリムシは下写真の黄色丸に存在しています。



イカリムシのイカリは、船の碇(イカリ)を指して呼びます。

一度身体に刺さると外れにくい形状を先端部がしている点から、イカリムシと呼ばれるようになったそうです。

魚を初め、両生類にも寄生するため、駆除が非常に大変です。

下写真は、今回摘出したイカリムシです。

黄色矢印はV字体の卵嚢です。



上のイカリムシを顕微鏡で撮影、拡大したのが下写真です。






上段写真:卵が詰まった卵嚢です。(黄色矢印)

中断写真:消化管(黄色矢印)

下段写真:口器(黄色丸)



イカリムシはどこから現れるのか?

ほとんどのイカリムシは外部からの持ち込みです。

水草であったり、餌としての金魚であったりします。

イカリムシの成虫は一度に300から500の卵を産卵します。

その寿命は2か月で15回ほどの産卵をします。

ウーちゃんには80匹以上のイカリムシが寄生(黄色丸)していました。



結局、イカリムシの駆除は一匹ずつ鉗子で抜いていくしかありません。

血液が集まる部位が好きなようで、鰓に一番集まっています。



鉗子で抜く時、気を付けないと簡単に出血を起こします(下写真)。



ウーちゃんの場合は、口の中にまでイカリムシが寄生していました。



内股にも寄生しています。



摘出したイカリムシの一部です。



イカリムシを体表部から摘出した直後は、出血もありウーちゃんは軽い虚脱状態になりました。



イカリムシ摘出後には、寄生されていた皮膚が発赤、内出血を起こしてます。




さて、このイカリムシ感染によるウーパールーパーの治療法です。

まず、取り残しのないように確実にイカリムシを摘出します。

寄生していた部位はエロモナス等の水棲細菌に汚染しますので、消毒が必要となります。

下写真はイカリムシ感染で潰瘍に至った皮膚をメチレンブルーとアクリノールの合剤で傷口を消毒しているところです。







個体の全身状態によって、薬浴を実施するかは判断します。

一般的には、ウーパールーパーは薬剤に弱いため、局所的な消毒で対処するケースが多いです。



水槽はイカリムシの卵や幼体で汚染されていますので、完全に消毒したつもりでもダメで水槽を新調する(リセットと言います)必要があります。

魚類のイカリムシ治療でリフィッシュ(トリクロルホン)を使用される方がみえますが、幼体のみにしか効果はありません。

むしろ毎日、水槽の水を新鮮な水と交換することで卵と幼体の絶対数を減らしていく方が安全です。

2か月ほど経過を観察して、イカリムシが出現しなくなれば治療は成功です。


治療後のウーちゃんの経過も良好で、食欲も増えてきて良く動けるようになってきました。

再診時のウーちゃんです。





寄生虫なる生物は内部寄生であれ、外部寄生であれ、巧妙に宿主の生活に、寄生虫自身のライフサイクルを組み込んで自己増殖していきます。

今回のウーちゃんはイカリムシの高度寄生例でした。

まだウーちゃんは成体で基礎体力もあり、感染に飼主様が気づかれてから来院まで速やかであったため、生還できました。

鰓に大量に寄生した場合、一挙にイカリムシを摘出しますと多量の出血でショック状態に陥ますので、細心の注意が必要です。

くれぐれも外部からの餌なり、水草を水槽に導入する際は、お気を付け下さい!



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