腫瘍疾患/犬
2012年3月 5日 月曜日
乳腺腫瘍とレーザーメス
犬は乳房が左右で10個あります。
これらの乳房はリンパ管でつながっています。
第1から第3乳房は腋の下にある腋窩リンパ節へ続いています。
第4,5乳房は浅鼠リンパ節へつながっています。
なんでこんな話をするかというと、乳腺腫瘍(乳がん)の話です。
ヒトの場合と異なり、犬では乳房がこんなにたくさんあり、加えてそれぞれが連結しています。
乳腺腫瘍が発生した場合、1つだけ乳房を切除して再発も無く完了とはいきません。
状況によっては乳房を全部摘出しなくてはならないこともあるわけです。
この手術の大変な点は、乳腺が血管に富んだ組織であり、切除に当たってはかなりの出血を覚悟しなければなりません。
また、乳房の多くを切除した後に欠損した皮膚を引っ張って縫合しなければならない点です。
私は大学は外科出身ですし、手術は好きなんですが出血は大嫌いです。
ですから、乳腺腫瘍の手術は自分にとって大変です。
やっきになっていつも血管を糸で結紮して止血に努めています。
今回は半導体レーザーメスを使用して手術に臨みました。
メスの切り口としては硬性メス(普通のメス)が一番組織の修復はきれいです。
一方、血管はズバッと切ってしまいますので出血は避けられません。
従来、私は電気メスを使用していましたが、半導体レーザーメスに比べて組織のダメージが大きく、組織修復という点ではレーザーメスには及びません。
毛細血管含めてある程度の静脈ならレーザーで血管も焼いて止血も同時に可能です。
今回、手術を受けるのはフレンチブルドッグの雅(みやび)ちゃんです。
右側第2乳房に腫瘍を認め、早期に摘出となりました。
雅ちゃんは右側第3乳房が生まれつきなく、部分乳腺切除術として第1,2乳房をまとめて切除します。
実際使用してみて、出血量は思いのほか少なく、使用したガーゼは何と2枚で済みました。
切れ味も鮮やかできれいな仕上がりになったと思います。
半導体レーザーがヒトの美容整形で活用されるのもうなずけます。
フレンチブルドックは胸が厚く、いわゆるハト胸ですからこの欠損した皮膚を上手に縫い合わせるのがひと苦労です。
術後の経過も良く、抜糸も予定通りできそうです。
これらの乳房はリンパ管でつながっています。
第1から第3乳房は腋の下にある腋窩リンパ節へ続いています。
第4,5乳房は浅鼠リンパ節へつながっています。
なんでこんな話をするかというと、乳腺腫瘍(乳がん)の話です。
ヒトの場合と異なり、犬では乳房がこんなにたくさんあり、加えてそれぞれが連結しています。
乳腺腫瘍が発生した場合、1つだけ乳房を切除して再発も無く完了とはいきません。
状況によっては乳房を全部摘出しなくてはならないこともあるわけです。
この手術の大変な点は、乳腺が血管に富んだ組織であり、切除に当たってはかなりの出血を覚悟しなければなりません。
また、乳房の多くを切除した後に欠損した皮膚を引っ張って縫合しなければならない点です。
私は大学は外科出身ですし、手術は好きなんですが出血は大嫌いです。
ですから、乳腺腫瘍の手術は自分にとって大変です。
やっきになっていつも血管を糸で結紮して止血に努めています。
今回は半導体レーザーメスを使用して手術に臨みました。
メスの切り口としては硬性メス(普通のメス)が一番組織の修復はきれいです。
一方、血管はズバッと切ってしまいますので出血は避けられません。
従来、私は電気メスを使用していましたが、半導体レーザーメスに比べて組織のダメージが大きく、組織修復という点ではレーザーメスには及びません。
毛細血管含めてある程度の静脈ならレーザーで血管も焼いて止血も同時に可能です。
今回、手術を受けるのはフレンチブルドッグの雅(みやび)ちゃんです。
右側第2乳房に腫瘍を認め、早期に摘出となりました。
雅ちゃんは右側第3乳房が生まれつきなく、部分乳腺切除術として第1,2乳房をまとめて切除します。
実際使用してみて、出血量は思いのほか少なく、使用したガーゼは何と2枚で済みました。
切れ味も鮮やかできれいな仕上がりになったと思います。
半導体レーザーがヒトの美容整形で活用されるのもうなずけます。
フレンチブルドックは胸が厚く、いわゆるハト胸ですからこの欠損した皮膚を上手に縫い合わせるのがひと苦労です。
術後の経過も良く、抜糸も予定通りできそうです。
投稿者 もねペットクリニック | 記事URL
2011年8月16日 火曜日
犬の縫合糸反応性肉芽腫
縫合糸反応性肉芽腫って何?
なんだか舌を咬みそうな病名ですが、つまるところ手術で使用した縫合糸に由来する体の炎症反応を指します。
7,8年くらい前から業界紙にも報告されており、当院でも2005年には他院からの紹介例を手術しています。
去勢・避妊手術で使用した糸(特に絹糸)に敏感に反応して、炎症反応を示します。
糸の周辺を取り囲むように肉の組織(肉芽組織)が包み込み、状況によっては内部の漿液が皮膚に穴をあけ、漏出します。
この症状が治療しない限り、ずっと続くのです。
ただこの縫合糸反応性肉芽腫という病名すら確立されたものではなく、原因や発生メカニズムも全然わかっていません。
これまで、私が執刀した患者でこの病気になられたケースは幸い1例もありませんが、他院もしくは動物保護センターで去勢手術を受け、その後、この病気になって当院の診察を受けたケース(再手術を含めて)は4件ほどあります。
またこの病気の特徴は発症する犬種のほとんどがミニュアチュア・ダックスフントであることです。
私が診た患者も全てミニュアチュア・ダックスフントでした。
肉芽腫の中に縫合糸が入っている場合は、比較的術後の経過は良好でした。
でも糸が見つからないケースは、プレドニゾロンやシクロスポリンによる内科的治療で炎症を抑えています。
今回、写真で紹介するのはダックス君で、他院で去勢手術を受けた後、陰のうにろう管(トンネル)を生じジュクジュク炎症が続く症例です。
陰のう内の肉芽組織を出来うる限り摘出し、縫合糸を含んだ組織(精管周囲)を確認しました。
その後、ステロイドの内服を続け、現在のところ症状は落ち着いています。
なんだか舌を咬みそうな病名ですが、つまるところ手術で使用した縫合糸に由来する体の炎症反応を指します。
7,8年くらい前から業界紙にも報告されており、当院でも2005年には他院からの紹介例を手術しています。
去勢・避妊手術で使用した糸(特に絹糸)に敏感に反応して、炎症反応を示します。
糸の周辺を取り囲むように肉の組織(肉芽組織)が包み込み、状況によっては内部の漿液が皮膚に穴をあけ、漏出します。
この症状が治療しない限り、ずっと続くのです。
ただこの縫合糸反応性肉芽腫という病名すら確立されたものではなく、原因や発生メカニズムも全然わかっていません。
これまで、私が執刀した患者でこの病気になられたケースは幸い1例もありませんが、他院もしくは動物保護センターで去勢手術を受け、その後、この病気になって当院の診察を受けたケース(再手術を含めて)は4件ほどあります。
またこの病気の特徴は発症する犬種のほとんどがミニュアチュア・ダックスフントであることです。
私が診た患者も全てミニュアチュア・ダックスフントでした。
肉芽腫の中に縫合糸が入っている場合は、比較的術後の経過は良好でした。
でも糸が見つからないケースは、プレドニゾロンやシクロスポリンによる内科的治療で炎症を抑えています。
今回、写真で紹介するのはダックス君で、他院で去勢手術を受けた後、陰のうにろう管(トンネル)を生じジュクジュク炎症が続く症例です。
陰のう内の肉芽組織を出来うる限り摘出し、縫合糸を含んだ組織(精管周囲)を確認しました。
その後、ステロイドの内服を続け、現在のところ症状は落ち着いています。
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