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腫瘍疾患/犬

2015年6月18日 木曜日

犬の肛門腫瘍とレーザーメス

こんにちは 院長の伊藤です。

5月から7月にかけ、ほぼ毎日手術の予約が入ってしまい、体力的に乗り切れるか少し不安です。

特にウサギの避妊手術の依頼が多く、5月だけで8件ありました。

手術の効率化・細分化を目指すうえで当院も半導体レーザーメスを導入しました。

レーザーメスについては、その概要をこちらにコメントしましたので興味のある方は参照下さい。


さて本日ご紹介しますのは、犬の肛門腫瘍です。

シーズーのマロン君(去勢済、11歳7か月)は4年位前から肛門に腫瘤が認められ、次第に大きくなってきました。





肛門周囲腺腫の疑い(下写真黄色丸)があり、7歳の時点で去勢手術を実施いたしました。

去勢手術の効果を期待したのですが、腫瘤は少しずつ大きくなり、新たに別の腫瘍(白丸)も出て来ました。



本来、細胞診を実施してから外科的切除に至ります。

ただ肛門腫瘍の場合は、細胞診では悪性・良性の鑑別は確実性に欠ける言われています。

すでに腫瘍は大きくなっており、切除してから病理検査に出すことにしました。



消毒後の患部です。



患部から6時方向にある腫瘍は、牽引しますと蔓が伸びる感じで栄養血管を含んだ茎状の組織(下写真黄色矢印)が認められます。



半導体レーザーに装着するプローブの種類は多く、血管や管腔臓器を切断する時に使用するユニバーサルバイポーラー(下写真)を6時方向の腫瘍に使用しました。



血管ならばこのバイポーラ-で4mm径までシール切断が可能です。

下写真の黄色矢印がユニバーサルバイポーラです。

腫瘍の茎にあたる部位を挟んで切断をしていきます。







こんな感じで切断します。

茎の中の栄養血管も完全にシールされて出血は認められません。



次に腫瘍本体の切除ですが、チゼルハンドピース(下写真黄色矢印)を使用しました。







これで切除完了です。



次に九時方向の腫瘍です。



この腫瘍は細径コニカルプローブ(下写真黄色矢印)を使用して切除します。



こちらの腫瘍は、浅在性で底部周囲組織への固着は認められません。





レーザー切除の煙が漂っていますが、これで腫瘍切除は終了です。





九時方向の腫瘍切除後の皮膚縫合を行いました。



これでお尻周りがすっきりしたね、マロン君!



摘出した腫瘍を病理検査に出しました。

6時方向の腫瘍の病理所見です。

低倍率です。



高倍率です。



こちらの腫瘍は肛門周囲腺上皮腫と診断されました。

軽度の異型性が認められ、悪性腫瘍です。

単発性の腫瘍で、大きくなる前に摘出できて良かったです。



次に9時方向の腫瘍です。

低倍率です。



高倍率です。



こちらの腫瘍は、肛門周囲腺腫であることが判明しました。

肛門腫瘍の中で肛門周囲腺腫の発生率は80%以上を占めます。

肛門周囲腺腫は、雄で非常に多く発生し、雌では稀です。

高齢で未去勢の雄に認められ、アンドロジェン依存性が高いとされてます。

この肛門周囲腺腫は良性腫瘍であり、数か月から数年かけて次第に増大していきます。

増大する一方で、患部は通常無症候性で痛みを伴うことは少ないとされます。


肛門周辺は血管が豊富に集まっており、加えて肛門腫瘍にはさらに栄養血管が集結しています。

したがって外科的摘出にあたり、出血量は多量になる場合があります。

今回、使用した半導体レーザーは出血を極力抑えることが可能であり、それは手術時間の短縮にもつながります。






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2014年12月13日 土曜日

チワワの脾臓摘出手術(結節性過形成)

こんにちは 院長の伊藤です。


本日は腹腔内臓器摘出術の中でも、比較的高頻度に実施されている脾臓摘出術についてコメントさせて頂きます。

脾臓はリンパ系器官の中で最も大きな臓器です。


脾臓はどんな働きをしているかというと

1:血液の濾過

2:血液の貯蔵

3:免疫機能

4:造血

以上です。

そんな頑張っている脾臓ですが、全摘出術の適応となるのは原発性脾臓腫瘍や重度外傷による脾臓破裂です。

脾臓疾患の症状は、一般的にあいまいで脾臓疾患に特異的な症状はありません。

強いて挙げれば、突然の元気消失、嘔吐、体重減少、貧血です。



チワワのモカ君(11歳、雄)は突然の食欲不振、元気消失で来院されました。



血液検査ではCRP(炎症性蛋白)が4.3mg/dlと上昇している点が気になります。

他の血液検査項目は特に異常点はありません。

レントゲン検査を実施しました。





上の写真の黄色丸の箇所が円形に大きく腫大した腫瘤を表しています。

臓器の位置関係からすれば脾臓か、腸間膜リンパかといったところでしょうか。


その大きな腫瘤を超音波検査しました。

均一な微細斑点状の内部エコーを示す限界明瞭な低エコーの腫瘤が描出されました。

腫瘤エコーは脾臓エコーと連続性を持ち,脾臓の一部である画像所見が得られました。



恐らくこれは、脾臓の内部で出血をして腫大しているか、もしくは血管肉腫のように脾臓に生じる悪性腫瘍の可能性もあります。

この腫瘤が脾臓の腫瘍であった場合、脾臓全摘出して病理検査に出さないと悪性か良性かは不明です。

悪性であれば、血管肉腫や脾臓リンパ腫や内臓型肥満細胞腫であることが多いです。

腫瘍でなければ、結節性過形成の可能性もあります。

仮に結節性過形成であるとしても、腫瘤が大きくなれば腹腔内で破裂して死亡するケースもあります。

細胞診で患部を穿刺して確認する方法は、これが血管肉腫であった場合、禁忌とされます(出血が止まらなくなったり、腫瘍をばら

まくこととなる)ので、開腹して肉眼で確認する方法が確実です。


いずれにせよ、試験的開腹を実施することとしました。

全身麻酔下のモカ君です。









皮膚、皮下組織、腹筋、腹膜にメスをいれて腹腔内が露出した時、大きな腫瘤が飛び出てきました(下写真)。



明らかに脾臓に形成された腫瘤です。

良く見ると2か所大きな腫瘤があり、腫瘍の可能性がありますし、部分的に切除しても境界面が不明瞭ですから全摘出することとしました。

脾臓は胃に沿って存在しており、摘出する場合は短胃動静脈、左胃大網動静脈、脾動静脈など多くの血管を縫合糸で結索して離断していきます。

非常に煩雑な手技となりますが、当院はバイクランプですべての血管をシーリングしていきます(下写真)。

これだけでも手術時間の短縮につながりますし、不整出血を防ぐこともできます。







すべて合わせて1時間以内に手術は終了しました。



覚醒時のモカ君です。



摘出した脾臓です。





下写真の黄色丸の部分が腫瘤です。



この腫瘤が腫瘍なのか確認するため、病理検査に出しました。

下写真は患部の顕微鏡写真(低倍率)です。

大小不整なリンパ濾胞と間質増生、うっ血、出血で構成されています。





下は高倍率の写真です。

リンパ濾胞を形成するリンパ球は多様で、単一系統の異型細胞の増殖は認められません。

つまり腫瘍細胞は認められません。



腫瘤部以外の脾臓には、うっ血と髄外造血が認められました(下写真)。



結論は、脾臓の結節性過形成と診断されました。

結節性過形成は老齢犬にしばしば認められる非腫瘍性の病変です。

しかし、放置すると過形成リンパ組織がさらに融合していき、より大きな腫瘤となって脾臓破裂の原因になります。

結局、脾臓全摘出がベストの選択肢であり、全摘出後の予後も良好とされます。


脾臓は全摘出して大丈夫なの?

よくその質問を受けます。

脾臓の機能は他の臓器で代償できるものが多く、脾臓が必ずしも存在しないと命の維持に問題が生じるかというとそうでもありません。

ただ免疫介在性疾患や寄生性疾患の反応で腫大している脾臓は内科的治療を選択すべきとされてます。


モカ君の術後の経過は良好で、術後に食欲は戻り、1週間後に無事退院されました。

退院時のモカ君です。

お腹もすっきりして良かったね!





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2014年9月20日 土曜日

ウェルシュ・コーギーの軟部組織肉腫

こんにちは 院長の伊藤です。

今回、ご紹介しますのは軟部組織肉腫という腫瘍の摘出手術です。

ウェルシュコーギーの半蔵君(11歳7か月・雄)は右側腹部にしこりがあるとのことで来院されました。



患部を針生検で細胞診したのが下写真です。




病理医から軟部組織由来の間葉系腫瘍、つまり悪性腫瘍との診断を受けました。

触診では、患部は皮下組織に限局しているように思えました。

レントゲン撮影、エコー検査で遠隔部の転移が無いことを確認しました。

日を改めて、半蔵君の腫瘍を摘出することとしました。

下写真黄色丸は全身麻酔下の半蔵君の腫瘍を指します。





転移を防ぐため、腫瘍組織のマージン(縁取り)を出来るだけ広く取りつつ、摘出します。





半蔵君の皮下脂肪が思いのほか厚く、えぐるような感じで筋肉層まで脂肪組織を切開していきます。



ところどころに太い血管も走っており、不用意に切断しないようにメスを進めていきます。



電気メスで出血部は凝固させます。



腫瘍組織自体は皮下組織でとどまっていましたが、接触の可能性がある筋膜層も1層切除することにしました。



切除した腫瘍です。



半蔵君の摘出後の皮下組織を死腔ができないよう細かく縫合していきます。





手術終了時の患部です。



麻酔覚醒直後の半蔵君です。

お疲れ様でした。



摘出した腫瘍とそのマージンです。



この腫瘍を病理検査に出しました。

下写真が高倍率の病理組織顕微鏡像です。

一面が腫瘍性紡錘形細胞で敷き詰められています。



病理医の診断は軟部組織肉腫・グレード2と判明しました。

軟部組織肉腫は悪性腫瘍に分類されます。

その発生部位に応じて線維肉腫、血管周囲腫、脂肪肉腫などと呼称されますが、その特徴は共通していますので軟部組織肉腫として一つのグループにまとめられています。

悪性度により、転移という現象が悪性腫瘍には認められます。

軟部組織肉腫はグレード(悪性度)3まであり、外科的切除後の転移率はグレード1が13%、2が7%、3が41%という報告があります。

軟部組織肉腫は、比較的遠隔転移が起こりにくい腫瘍とされています。

ゆっくりこの腫瘍は成長していき、多くは臨床症状を示さないことが多いです。

グレード3の症例には、外科的手術に加えて化学療法が推奨されていますが、この軟部組織肉腫の化学療法の効果についてはほとんど報告されていません。

半蔵君はグレード2とのことで今回は、外科的切除で対応させて頂き、経過観察することとしました。

退院時の半蔵君です。



そして2週間後の抜糸した半蔵君の患部です。

綺麗に縫合部の皮膚はついています。



術後3か月近く経過した現在、転移もなく半蔵君の状態は良好です。

今後の経過を慎重に診ていきたいと思います。





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2014年7月21日 月曜日

乳腺腫瘍切除手術(どこまで取ればよいの?)


こんにちは 院長の伊藤です。


ワンちゃんの世界も高齢化社会と言われて久しいです。

高齢犬で問題となる疾病の一つに乳腺腫瘍があります。

飼い主の皆様も乳腺腫瘍の手術となりますと麻酔を心配される方が多いです。

腫瘍の部位や数によりますが、手術時間は比較的長時間に及ぶ場合もあります。

加えて、出血量も多い手術です。

乳腺腫瘍が発見された場合、腫瘍を含めて乳腺は何個切除すれば再発が防げるの?

そんな質問をよく受けます。

そこで本日は、乳腺腫瘍手術法の選択およびメリット・デメリットについて述べていきたいと思います。




そもそも犬の乳頭は通常5対あります。

つまり左右で10個乳頭は存在します。

第1から第3乳頭は腋窩リンパ節(腋の下のリンパ節)へ、第4から第5乳頭は浅鼠径リンパ節(内股の付根のリンパ節)へとリンパ管が続いています。

そして、犬の場合は第3乳頭と第4乳頭の間にリンパ管が連結していることが多いとされてます。

犬の乳腺腫瘍は50%が良性腫瘍、50%が悪性腫瘍と言われます。

一方、猫の乳腺腫瘍は70~90%が悪性腫瘍とされ、猫の場合は基本、全乳腺切除手術が推奨されます。


さて、あなたの大事なワンちゃんが乳腺腫瘍になられたとして手術で摘出する場合、一般的には以下の手術法が現在選択されているように思います。



1:腫瘍のみの切除

 
これは他に基礎疾患があり、麻酔のリスクが高い場合に選択されます。腫瘍の大きさは5㎜以下の限局性で癒着がないのものが対象です。

支配領域のリンパ節(腋窩リンパ節や浅鼠径リンパ節)の郭清をしないことと、腫瘍存在下の乳腺はそのままと言う点で腫瘍再発の可能性がかなり高いと思います。



2:単一乳腺切除手術

1cmより大きく境界不明瞭な腫瘍が、1個の乳腺に限局して存在する時に選択します。

腫瘍に侵された乳腺のみを切除する方法です。

高齢犬で麻酔のリスクが高い場合に選択されます。

該当する乳腺を確実に摘出できずに取り残すと腫瘍再発の可能性ありです。



3:部分乳腺切除手術

1cmより大きい腫瘍が1個の乳腺に限局して存在している。あるいは複数の小さな腫瘍が片側の頭側(第1~3乳頭)か尾側(第4~5乳頭)に限局して存在しているときに選択します。

腫瘍を含む第1~3乳頭領域または第3~5乳頭領域の乳腺をひとまとめにして切除します。

第3乳頭に生じた腫瘍については、先に述べた第3と第4乳頭間がリンパ管で連結していることもあるので、片側の乳腺を全て切除することが推奨されます。

ちなみに私はこの方法をしばしば選択します。先の2つの手術法より再発率は低いです。



4:片側全乳腺切除術

片側の複数の乳腺に腫瘍が存在している場合、あるいは両側の乳腺に腫瘍が存在しているが両側摘出が不可能な場合に選択される手術法です。

両側に腫瘍があるけど皮膚の張力の関係で、一度に全部の乳腺が切除できない場合、約2~3週間後に残りの片側を切除します。

この手術法を選択する症例が当院では多いです。




5:両側全乳腺切除手術

両側の全ての乳腺を一度に切除する方法です。

乳腺組織が無くなりますので、再発の可能性は低いです。

その一方で、広範囲にわたる皮膚切除により、術後の皮膚癒合が困難であったり、術後に呼吸不全になったりする場合もあり、現在は必ずしも推奨される方法とは評価されていません。



以上、長々と手術法の紹介にお付き合いいただいて恐縮です。

現時点での文献的な結論を申し上げると、術後の生存期間は、先に述べたどの手術法をもってしても変わらないそうです。

ただ再発までの期間が手術法により有意に延長したという報告(例えば部分乳腺切除術より全乳腺切術)はあります。

結局、正しい手術法を選択することで、術後のワンちゃん達の生活の質の向上につながれば良いのではないでしょうか。




乳腺腫瘍手術の実例紹介です。

ミニチュア・シュナウザーのめいちゃん(13歳、未避妊雌)は乳腺腫瘍に気づかれて来院されました。



触診をしましたところ、左側第2、4、5乳頭付近に乳腺腫瘍を認めました。

このケースでは、前述した分類に準じて、左側全乳腺切除を選択しました。

めいちゃん13歳という高齢犬ですが、全身状態は良好で血液検査でも主要臓器の機能障害は認められません。

早速、全身麻酔を施し、左側全乳腺切除を実施します。



皮下脂肪の中に動脈が潜んでいますので、慎重に血管を結紮しながら乳腺を切除していきます。



下写真は切除した左側乳腺(黄色矢印)です。



乳腺を左側全部切除し、皮下脂肪を縫合して、残すところ皮膚縫合のみとなっためいちゃんです。



下写真は拡大したものですが、片側全乳腺切除となると、思いのほか広範囲にわたる切除であることがご理解頂けると思います。



皮膚縫合後の状態です。




今回の手術は腫瘍自体の直径が小さいため、皮膚切除もそんなに広範囲に及ぶレベルではありません。

それでも、乳腺腫瘍手術はこのように見た目痛々しいものです。



しばしの入院後、元気に退院されためいちゃんです。




乳腺腫瘍手術の度に早期の避妊手術をお勧めしています。

初回発情以前、2回目発情以前、2回目の発情以降の避妊手術を実施した犬の乳腺腫瘍発生率はそれぞれ0.05%、8%、26%と報告されています。

早ければ早いほど、乳腺腫瘍発生率は抑えられます。

しかしながら、4回目の発情以降の避妊手術による乳腺腫瘍発生の予防効果はないとされています。

したがって、避妊手術は1歳までに済ませるのが理想です。

私が過去に乳腺腫瘍手術を行った症例は、殆どが避妊していないシニア世代のワンちゃん達です。

出来ることなら、多くの方たちに早期避妊手術の重要性をご理解いただきたく思います。





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2014年5月 3日 土曜日

犬の肥満細胞腫(その3)

院長の伊藤です。

体調を崩して1週間ほど入院し、先日退院することが出来ました。

入院中は患者様に大変ご迷惑をおかけいたしました。

FacebookのHPにも励ましのメールを読者の皆様からたくさんいただき、ありがとうございました。

開業以来、十数年にわたり定休日以外は休むことなく頑張ってまいりましたが、だんだん無理の効かない年齢になってきたようです。

今後、自己の健康管理をしっかり行い、診療業務に邁進致しますのでよろしくお願い致します。





さて、本日ご紹介させて頂きますのは以前にもコメントしたことのある肥満細胞腫です。

肥満細胞腫は犬猫ともに発生率の高い皮膚の悪性腫瘍です。

発生は皮膚・皮下組織が発生率が一番高く、約90%が単発です。

肥満細胞腫は、その外観が発生部位によって多様な形状を示すことから "偉大なる詐欺師" と称されています。

過去の私の経験からもこの肥満細胞腫は直径5㎜位のものがわずか1か月で4~5cmまで大きくなったりしますので注意が必要です。

一般の飼主様にあっても、触って何かしこりがあるなと思われたら病院でしっかり確認して頂けると良いと思います。




ミックス犬のマロちゃん(雌、10歳8か月、体重20㎏)は左大腿部に大きなしこりが出来たとのことで来院されました。



下写真の黄色丸で囲んだ部分が腫瘤を示します。



約7㎝四方のものです。

早速、細胞診を実施しました。



良く見ますと、細胞質に細かな顆粒を持つ核が大小不同の細胞(肥満細胞)がたくさん認められます。

下写真は拡大した写真です。



検査に出したところ、肥満細胞腫のGradeⅡに相当するとのことでした。

現時点で腫瘍部が大きいため、外科的切除をするためには、マージン確保が非常に困難です。

腫瘍7㎝となりますと大きく組織を切除しなくてはなりませんので、ひとまずステロイドを術前投薬することとしました。

ステロイドの効果で腫瘍が小さくなってくれたら、そこでマージンも大きく取ることが可能です。

マージンが確保できれば、切除後の腫瘍再発も抑えることが出来るでしょう。


しばし、ステロイド内服を続けて頂いたマロちゃんです。

腫瘍の大きさが約1㎝に縮小しました。



ここで腫瘍摘出手術を実施することとしました。

マージンを2㎝は十分に取ることが出来そうです。



慎重に電気メスで皮下組織を切開剥離していきます。





摘出した腫瘍です。



皮下組織から筋膜にかけ、腫瘍細胞が存在していると思われる部位はメスで削ぎ落としていきます。

今回のマロちゃんの場合、筋肉内の腫瘍の浸潤は認められず筋膜を切除する程度で終了することが出来ました。



皮下組織を死腔の生じないように縫合します。





最後に皮膚を縫合して終了です。





マロちゃんは術後の経過もよく2日後に退院されました。

今後は肥満細胞腫の再発がないように定期的にチェックが必要です。

マロちゃん、お疲れ様でした!





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