腫瘍疾患/犬
2018年8月10日 金曜日
犬の肛門周囲腺腫
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、犬の肛門の腫瘍である肛門周囲腺腫です。
犬の皮膚・皮下組織に発生する腫瘍は、全腫瘍の3分の1を占めるとされます。
その中でも肛門周囲腺腫は肥満細胞腫について2番目に発生率が高い腫瘍とされます。
肛門周囲腺腫は肛門腫瘍の中でも80%以上を占めており、また良性の腫瘍であるため心配はないと考える向きもあります。
とは言え、肛門腫瘍の20%は悪性腫瘍(肛門周囲腺癌、肛門嚢アポクリン腺癌)です。
もし、悪性腫瘍であれば周囲臓器・局所リンパ節への浸潤、遠隔臓器への転移、術後の再発など慎重な対応が必要となります。
ミニュチュア・ピンシャーのゲン君(15歳、雄)は肛門が腫れているとのことで来院されました。
下写真のように時計方向で4~6時方向の肛門(黄色丸)が腫れているのがお分かり頂けると思います。
肛門腫瘍の可能性が高いと思われ、早速細胞診を実施しました。
結果として、肛門周囲腺腫が疑われます。
ゲン君自身も患部が気になるようで肛門を舐めたり、床に擦ったりしているようです。
患部の腫大も増大傾向を示しているとのことから、早速外科的に摘出することとなりました。
肛門周囲腺腫は雄、特に高齢で未去勢犬に多く認められることから男性ホルモン(アンドロゲン)依存性が考えられています。
今回はゲン君は肛門周囲腺腫摘出に加えて、去勢手術を実施することとしました。
気管挿管してイソフルランで麻酔導入してるゲン君です。
まずは去勢手術をするため、陰嚢周囲を消毒します。
陰嚢を切皮して、精巣を包む総鞘膜に切開を加えているところです。
去勢手術の模様は省略します。
次に伏せの姿勢にして、お尻を高く上げて肛門周囲腺腫の手術に移ります。
下写真黄色丸の腫瘍をこれから切除します。
事前に肛門嚢を圧迫して、分泌液をしっかり排出させます。
加えて、糞便の流出を防ぐために綿花を直腸内に挿入します。
腫瘍の近傍からメスを入れて行きます。
肛門の同心円状に平行に切皮します。
切皮すると腫瘍が顔を出します。
肛門周囲腺は発生学的には皮脂腺に分類されます。
一般に肛門周囲腺腫は浅在性で、悪性の肛門周囲腺癌などのように底部周囲組織への固着例は少ないとされます。
加えて、肛門周囲腺腫は数か月以上時間を掛けながら成長していき、無症候性で痛みを伴うことは少ないです。
いずれにせよ、肛門周囲は血管が多く集まっていますので摘出となるとそれなりの出血は避けられません。
極力、出血量を最小限にするためにバイポーラ(電気メス)で止血・切除を繰り返していきます。
下写真は腫瘍の基底部にアプローチしたところです。
下写真は腫瘍を切除したところです。
切除後の患部です。
特に出血もなく摘出は完了しました。
皮下組織を吸収糸で縫合した後に皮膚を縫合します。
縫合が終了しました。
全身麻酔からゲン君は少し覚醒し始めています。
摘出した肛門周囲腺腫の組織です。
下写真は顕微鏡写真の中拡大像です。
さらに強拡大像です。
下写真の肛門周囲腺は形態的に肝臓の細胞に似ています。
この肝様細胞に類似する多角形腫瘍細胞の島状増殖より患部は構成されています。
肛門周囲腺腫は良性腫瘍であり、リンパ節への浸潤・他の組織への遠隔転移もなく、完全摘出で90%以上が完治するとされています。
ゲン君は15歳という高齢での手術でしたので、麻酔等いろいろ不安な点もありましたが問題なくクリアできて良かったと思っています。
最後にゲン君の抜糸後の肛門周囲です。
ゲン君、お疲れ様でした!
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宜しかったら、こちらをクリックして頂けるとブログ更新の励みとなります。
本日ご紹介しますのは、犬の肛門の腫瘍である肛門周囲腺腫です。
犬の皮膚・皮下組織に発生する腫瘍は、全腫瘍の3分の1を占めるとされます。
その中でも肛門周囲腺腫は肥満細胞腫について2番目に発生率が高い腫瘍とされます。
肛門周囲腺腫は肛門腫瘍の中でも80%以上を占めており、また良性の腫瘍であるため心配はないと考える向きもあります。
とは言え、肛門腫瘍の20%は悪性腫瘍(肛門周囲腺癌、肛門嚢アポクリン腺癌)です。
もし、悪性腫瘍であれば周囲臓器・局所リンパ節への浸潤、遠隔臓器への転移、術後の再発など慎重な対応が必要となります。
ミニュチュア・ピンシャーのゲン君(15歳、雄)は肛門が腫れているとのことで来院されました。
下写真のように時計方向で4~6時方向の肛門(黄色丸)が腫れているのがお分かり頂けると思います。
肛門腫瘍の可能性が高いと思われ、早速細胞診を実施しました。
結果として、肛門周囲腺腫が疑われます。
ゲン君自身も患部が気になるようで肛門を舐めたり、床に擦ったりしているようです。
患部の腫大も増大傾向を示しているとのことから、早速外科的に摘出することとなりました。
肛門周囲腺腫は雄、特に高齢で未去勢犬に多く認められることから男性ホルモン(アンドロゲン)依存性が考えられています。
今回はゲン君は肛門周囲腺腫摘出に加えて、去勢手術を実施することとしました。
気管挿管してイソフルランで麻酔導入してるゲン君です。
まずは去勢手術をするため、陰嚢周囲を消毒します。
陰嚢を切皮して、精巣を包む総鞘膜に切開を加えているところです。
去勢手術の模様は省略します。
次に伏せの姿勢にして、お尻を高く上げて肛門周囲腺腫の手術に移ります。
下写真黄色丸の腫瘍をこれから切除します。
事前に肛門嚢を圧迫して、分泌液をしっかり排出させます。
加えて、糞便の流出を防ぐために綿花を直腸内に挿入します。
腫瘍の近傍からメスを入れて行きます。
肛門の同心円状に平行に切皮します。
切皮すると腫瘍が顔を出します。
肛門周囲腺は発生学的には皮脂腺に分類されます。
一般に肛門周囲腺腫は浅在性で、悪性の肛門周囲腺癌などのように底部周囲組織への固着例は少ないとされます。
加えて、肛門周囲腺腫は数か月以上時間を掛けながら成長していき、無症候性で痛みを伴うことは少ないです。
いずれにせよ、肛門周囲は血管が多く集まっていますので摘出となるとそれなりの出血は避けられません。
極力、出血量を最小限にするためにバイポーラ(電気メス)で止血・切除を繰り返していきます。
下写真は腫瘍の基底部にアプローチしたところです。
下写真は腫瘍を切除したところです。
切除後の患部です。
特に出血もなく摘出は完了しました。
皮下組織を吸収糸で縫合した後に皮膚を縫合します。
縫合が終了しました。
全身麻酔からゲン君は少し覚醒し始めています。
摘出した肛門周囲腺腫の組織です。
下写真は顕微鏡写真の中拡大像です。
さらに強拡大像です。
下写真の肛門周囲腺は形態的に肝臓の細胞に似ています。
この肝様細胞に類似する多角形腫瘍細胞の島状増殖より患部は構成されています。
肛門周囲腺腫は良性腫瘍であり、リンパ節への浸潤・他の組織への遠隔転移もなく、完全摘出で90%以上が完治するとされています。
ゲン君は15歳という高齢での手術でしたので、麻酔等いろいろ不安な点もありましたが問題なくクリアできて良かったと思っています。
最後にゲン君の抜糸後の肛門周囲です。
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2017年12月11日 月曜日
犬の血管肉腫
こんにちは 院長の伊藤です。
脾臓に関わる疾病について、これまでに数件報告させて頂きました。
脾臓の結節性過形成、血腫、組織球性肉腫については下線をクリックして頂けると過去の記事が見れます。
興味のある方はご覧下さい。
さて、本日ご紹介しますのは犬の血管肉腫です。
この血管肉腫は悪性腫瘍の一つです。
血管肉腫は血管を構成する血管内皮細胞に由来する腫瘍です。
つまり血管が存在する場所であれば、どこで発生しますし高い転移性を持ちます。
特に脾臓は血管肉腫の好発部位で脾臓に発生する病変の第1位となっています。
犬の脾臓腫瘍の発生率において2/3ルールがあります。
脾臓腫瘤の約2/3は悪性腫瘍で、そのうちの2/3は血管肉腫と言うものです。
ミニュチュア・シュナウザーのポッケちゃん(10歳5か月、避妊済み)は腹囲の膨満、食欲・元気の低下で来院されました。
血液検査上では炎症性蛋白(CRP)が7.0㎎/dlオーバーと体の内部で高度の炎症がおこっていること、RBC(赤血球数)500万/μl、さらにHb(ヘモグロビン)9.5g/dl
Ht(ヘマトクリット) 28.6% 血小板数が147,000/μlと貧血傾向を示しています。
早速、レントゲン撮影を実施しました。
下写真の黄色丸は脾臓が腫大していることを示します。
下写真の赤丸は膀胱内に存在する尿石です。
これはストラバイト尿石であることが判明しました。
次いでエコー検査です。
脾臓が腫大しており、脾臓の腫瘤内部は低エコー源性を示す領域が認められます。
ここで脾臓が悪性の腫瘍なのか良性なのかを判断するのは難しいです。
組織生検をするのも一法ですが、生検した部位からの過剰な出血があれば、命に関わります。
脾臓腫瘤に由来する腹腔内出血(血腹)を呈した症例の1/3が良性の腫瘍であったとの報告があります。
良性であっても、脾臓が破裂して血腹になってしまうと考えた時に良性か悪性かの精密検査の意義は低いと思われます。
3㎝以上に達した脾臓腫瘤は術前の良性・悪性の判断する必要性はないとする獣医師もいます。
むしろ、迅速に脾臓を全摘出して血腹を防止した方が賢明です。
私も飼主様に脾臓の全摘出手術を薦めさせて頂きました。
ポッケちゃんの脾臓全摘出手術を始めます。
ポッケちゃんのお腹は見た目から若干張っている感じがあります。
腹膜下には腫大した脾臓が控えているはずですので、慎重に脾臓を傷つけないように腹膜を切開して行きます。
いきなり脾尾部が飛び出してきました。
続いて脾頭部です。
結節部が大きく膨隆しているのがお分かり頂けると思います。
脾臓表面は脾内出血のためかうっ血色を呈しています。
ポッケちゃんの体に対して脾臓が腫大してるのが分かります。
脾臓と胃をつなぐ動静脈を丁寧にシーリングしていきます。
バイクランプを用いて動静脈をシーリングします。
シーリング出来た箇所をメスで離断していきます。
最後に脾尾部のシーリング部位をメスで離断して脾臓全摘出は完了です。
ポッケちゃんのお腹を閉腹したところです。
術前と比較してお腹周りがスッキリした感じですね。
今回は写真を添付しませんでしたが、膀胱切開も一緒に行い膀胱内の結石も摘出しました。
また血管肉腫は他の臓器への転移率が高い腫瘍であるため、確認できる範囲を肉眼的レベルで診たところ、他の臓器への転移は認められませんでした。
手術はこれで終了です。
まだ麻酔から完全に覚めきれていないポッケちゃんです。
摘出した脾臓です。
脾頭部は腫瘤が結節を形成して、高度に膨隆してます。
この脾臓を病理検査に出しました。
病理検査の結果は血管肉腫でした。
下写真は低倍率の病理標本です。
異型性のある内皮細胞によって内張りされたスリット状・海綿状の血管腔が認められます。
高倍率の病理標本です。
病巣には出血、繊維素析出、壊死が頻繁に生じています。
腫瘍細胞は少量の弱酸性細胞質、軽度から中等度の大小不同を示す類円形正染核、明瞭な核小体を有しています。
さて、ポッケちゃんが血管肉腫であることが判明した以上、今後の治療計画を立てていく必要があります。
犬の血管肉腫における予後は極めて悪く、外科的脾臓摘出単独では2か月の生存率は31%、1年生存率は7%とされています。
外科的摘出後に化学療法を併用した場合は、生存期間は5~7か月間と生存期間の延長は期待できるとされます。
飼い主様と話し合った結果、化学療法を併用する治療方針を決めました。
治療効果・費用を比較して、塩酸ドキソルビシンとサイクロフォスフォマイドを使用する化学療法を選択しました。
この抗がん剤を3週間に1回投与(1クール)して5クール繰り返します。
下写真は塩酸ドキソルビシンです。
点滴に入れて投薬していきます。
ポッケちゃんに第1回目の化学療法を実施しているところです。
12月現在、ポッケちゃんの化学療法は5クール(全行程)を終了しました。
脾臓摘出後すでに5か月経過しました。
若干の貧血傾向はありますが、経過は良好です。
ポッケちゃんのご家族の熱心な応援もあって、本当に血管肉腫なのかと言うくらい活動性があります。
是非この調子でポッケちゃん、頑張って頂きたいと思います。
スタッフ共々、ポッケちゃんをバックアップしていきます!
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脾臓に関わる疾病について、これまでに数件報告させて頂きました。
脾臓の結節性過形成、血腫、組織球性肉腫については下線をクリックして頂けると過去の記事が見れます。
興味のある方はご覧下さい。
さて、本日ご紹介しますのは犬の血管肉腫です。
この血管肉腫は悪性腫瘍の一つです。
血管肉腫は血管を構成する血管内皮細胞に由来する腫瘍です。
つまり血管が存在する場所であれば、どこで発生しますし高い転移性を持ちます。
特に脾臓は血管肉腫の好発部位で脾臓に発生する病変の第1位となっています。
犬の脾臓腫瘍の発生率において2/3ルールがあります。
脾臓腫瘤の約2/3は悪性腫瘍で、そのうちの2/3は血管肉腫と言うものです。
ミニュチュア・シュナウザーのポッケちゃん(10歳5か月、避妊済み)は腹囲の膨満、食欲・元気の低下で来院されました。
血液検査上では炎症性蛋白(CRP)が7.0㎎/dlオーバーと体の内部で高度の炎症がおこっていること、RBC(赤血球数)500万/μl、さらにHb(ヘモグロビン)9.5g/dl
Ht(ヘマトクリット) 28.6% 血小板数が147,000/μlと貧血傾向を示しています。
早速、レントゲン撮影を実施しました。
下写真の黄色丸は脾臓が腫大していることを示します。
下写真の赤丸は膀胱内に存在する尿石です。
これはストラバイト尿石であることが判明しました。
次いでエコー検査です。
脾臓が腫大しており、脾臓の腫瘤内部は低エコー源性を示す領域が認められます。
ここで脾臓が悪性の腫瘍なのか良性なのかを判断するのは難しいです。
組織生検をするのも一法ですが、生検した部位からの過剰な出血があれば、命に関わります。
脾臓腫瘤に由来する腹腔内出血(血腹)を呈した症例の1/3が良性の腫瘍であったとの報告があります。
良性であっても、脾臓が破裂して血腹になってしまうと考えた時に良性か悪性かの精密検査の意義は低いと思われます。
3㎝以上に達した脾臓腫瘤は術前の良性・悪性の判断する必要性はないとする獣医師もいます。
むしろ、迅速に脾臓を全摘出して血腹を防止した方が賢明です。
私も飼主様に脾臓の全摘出手術を薦めさせて頂きました。
ポッケちゃんの脾臓全摘出手術を始めます。
ポッケちゃんのお腹は見た目から若干張っている感じがあります。
腹膜下には腫大した脾臓が控えているはずですので、慎重に脾臓を傷つけないように腹膜を切開して行きます。
いきなり脾尾部が飛び出してきました。
続いて脾頭部です。
結節部が大きく膨隆しているのがお分かり頂けると思います。
脾臓表面は脾内出血のためかうっ血色を呈しています。
ポッケちゃんの体に対して脾臓が腫大してるのが分かります。
脾臓と胃をつなぐ動静脈を丁寧にシーリングしていきます。
バイクランプを用いて動静脈をシーリングします。
シーリング出来た箇所をメスで離断していきます。
最後に脾尾部のシーリング部位をメスで離断して脾臓全摘出は完了です。
ポッケちゃんのお腹を閉腹したところです。
術前と比較してお腹周りがスッキリした感じですね。
今回は写真を添付しませんでしたが、膀胱切開も一緒に行い膀胱内の結石も摘出しました。
また血管肉腫は他の臓器への転移率が高い腫瘍であるため、確認できる範囲を肉眼的レベルで診たところ、他の臓器への転移は認められませんでした。
手術はこれで終了です。
まだ麻酔から完全に覚めきれていないポッケちゃんです。
摘出した脾臓です。
脾頭部は腫瘤が結節を形成して、高度に膨隆してます。
この脾臓を病理検査に出しました。
病理検査の結果は血管肉腫でした。
下写真は低倍率の病理標本です。
異型性のある内皮細胞によって内張りされたスリット状・海綿状の血管腔が認められます。
高倍率の病理標本です。
病巣には出血、繊維素析出、壊死が頻繁に生じています。
腫瘍細胞は少量の弱酸性細胞質、軽度から中等度の大小不同を示す類円形正染核、明瞭な核小体を有しています。
さて、ポッケちゃんが血管肉腫であることが判明した以上、今後の治療計画を立てていく必要があります。
犬の血管肉腫における予後は極めて悪く、外科的脾臓摘出単独では2か月の生存率は31%、1年生存率は7%とされています。
外科的摘出後に化学療法を併用した場合は、生存期間は5~7か月間と生存期間の延長は期待できるとされます。
飼い主様と話し合った結果、化学療法を併用する治療方針を決めました。
治療効果・費用を比較して、塩酸ドキソルビシンとサイクロフォスフォマイドを使用する化学療法を選択しました。
この抗がん剤を3週間に1回投与(1クール)して5クール繰り返します。
下写真は塩酸ドキソルビシンです。
点滴に入れて投薬していきます。
ポッケちゃんに第1回目の化学療法を実施しているところです。
12月現在、ポッケちゃんの化学療法は5クール(全行程)を終了しました。
脾臓摘出後すでに5か月経過しました。
若干の貧血傾向はありますが、経過は良好です。
ポッケちゃんのご家族の熱心な応援もあって、本当に血管肉腫なのかと言うくらい活動性があります。
是非この調子でポッケちゃん、頑張って頂きたいと思います。
スタッフ共々、ポッケちゃんをバックアップしていきます!
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2017年11月 2日 木曜日
犬の脾血腫
こんにちは 院長の伊藤です。
犬において脾臓が腫大することは少なくありません。
脾臓が腫大すると血管肉腫に代表される悪性の腫瘍をイメージしがちです。
しかし、脾臓腫大でも良性腫瘍であったり、非腫瘍性のものである場合もあります。
以前、脾結節性過形成の記事を載せましたので、興味のある方はこちらを参照下さい。
さて本日ご紹介しますのは、脾臓の腫大であっても非腫瘍性である脾血腫についてコメントさせて頂きます。
パピヨンのコロ君(11歳8か月、雄、体重6.5kg)は元気消失・食欲廃絶とのことで来院されました。
腹部が腫大している感がありますので、レントゲン撮影を行いました。
下写真の黄色丸が腹腔内の大きなマス(塊)を示します。
さらに下写真の黄色矢印は、大きく腫大している脾臓を描出しているのが判明しました。
この時点でのコロ君の血液検査で赤血球数は536万、ヘマトクリット値は34.9%で正常値を共に下回っています。
コロ君はこれまで内分泌系疾患や免疫系疾患の既往歴はありません。
引き続き、超音波検査を実施しました。
下写真の脾臓内は大小さまざまな嚢胞が形成され、何らかの液体状のもの(血液や膿)が入っていると推察されました。
エコーの所見から血管肉腫のような脾臓実質の腫瘍ではなく、脾臓の内部で血管が破たんして出血した結果としての脾臓血腫が伺えます。
いずれにせよ、脾臓内での出血は進行している可能性があり、脾臓腫大に伴って、腹腔内での脾臓破裂が予想されますので脾臓全摘出をすることとしました。
コロ君に麻酔前投薬をします。
下写真の黄色丸は腹部の腫大を示しています。
腫大した脾臓が横隔膜を通して心臓を圧迫するのを防ぐために手術台を傾斜させます。
腹筋にメスを入れます。
開腹した腹腔内は大きく腫大した脾臓が顔を出しています。
脾臓を全摘出するにあたり、腹腔内から脾臓を持ち上げてある程度体外に出す必要があります。
この時、不用意に力を入れて脾臓を牽引しますと血管を損傷して、大出血する場合がありますので細心の注意が必要です。
脾臓を体外に出しました。
次いで脾動静脈や左胃大網動静脈などをバイクランプでシーリングしていきます。
以前は血管一本ずつを縫合糸で結紮して、大変時間を要しましたが、バイクランプを使用してから効率的に血管のシーリングが出来るようになりました。
血管のシーリングが完了して脾臓を拳上、摘出しているところです。
ほとんど出血はなく、無事脾臓の全摘出は終了しました。
今回のコロ君の脾臓の重量は894gありました。
特にこの時点で血腫を疑っておりましたので、脾摘出後の貧血が一番懸念されます。
脾臓を摘出した腹腔内ですが、特に周囲組織からの出血もなく、また腫大した脾臓が無くなった分、すっきりした感があります。
皮膚縫合が終了したところです。
麻酔から覚醒したコロ君です。
頑張りましたね。
摘出した脾臓は病理検査に出しました。
コロ君が入院中に脾血腫の診断が下りました。
腫瘍細胞は見つからないとのことでホッとしました。
1週間後の退院当日のコロ君です。
術後の貧血や播種性血管内凝固不全症候群(DIC)もなく、コロ君は無事退院して頂きました。
術後2週間が経過して抜糸のため、来院されたコロ君です。
退院後も体調は良好です。
縫合部も良好なので抜糸しました。
抜糸前と抜糸後の写真です。
摘出した脾臓です。
内部に血液を貯留しているため、暗赤色で膨満しているのがお分かり頂けると思います。
病理検査に提出するにあたり、メスで割を入れました。
メスを入れた瞬間に脾臓内の貯留した血液の血漿が勢いよく噴出しました。
脾臓の割面はこのように多量の血液を貯留しており、嚢胞の内面は浮腫を呈して血液の循環不全があったことを示しています。
下写真は病理検査の低倍率像です。
充血・うっ血や線維素析出により著明に拡張した複数の脾洞が認められます。
中等度の倍率像です。
脾洞の内皮細胞にも異型性細胞(腫瘍細胞)は認められません。
脾血腫は腹部への鈍性外傷や何らかの血管障害に続発して生ずる病変とされます。
今回、コロ君の血腫が何により生じたかは不明ですが、早急な処置を取れたのが良かったと思います。
脾臓の腫瘤性病変には腫瘍性(血管肉腫、リンパ腫、肥満細胞腫、組織球性肉腫、形質細胞腫)や非腫瘍性(脾血腫、結節性過形成、出血性梗塞など)の様々な物が含まれます。
結局、ある程度の脾臓の分類分けの見当がついたところで病理検査に出すことが肝要です。
そのためには外科的摘出が前提となることが多いでしょうから、ポイントは脾臓の腫大を早期に発見することに尽きます。
コロ君、お疲れ様でした!
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犬において脾臓が腫大することは少なくありません。
脾臓が腫大すると血管肉腫に代表される悪性の腫瘍をイメージしがちです。
しかし、脾臓腫大でも良性腫瘍であったり、非腫瘍性のものである場合もあります。
以前、脾結節性過形成の記事を載せましたので、興味のある方はこちらを参照下さい。
さて本日ご紹介しますのは、脾臓の腫大であっても非腫瘍性である脾血腫についてコメントさせて頂きます。
パピヨンのコロ君(11歳8か月、雄、体重6.5kg)は元気消失・食欲廃絶とのことで来院されました。
腹部が腫大している感がありますので、レントゲン撮影を行いました。
下写真の黄色丸が腹腔内の大きなマス(塊)を示します。
さらに下写真の黄色矢印は、大きく腫大している脾臓を描出しているのが判明しました。
この時点でのコロ君の血液検査で赤血球数は536万、ヘマトクリット値は34.9%で正常値を共に下回っています。
コロ君はこれまで内分泌系疾患や免疫系疾患の既往歴はありません。
引き続き、超音波検査を実施しました。
下写真の脾臓内は大小さまざまな嚢胞が形成され、何らかの液体状のもの(血液や膿)が入っていると推察されました。
エコーの所見から血管肉腫のような脾臓実質の腫瘍ではなく、脾臓の内部で血管が破たんして出血した結果としての脾臓血腫が伺えます。
いずれにせよ、脾臓内での出血は進行している可能性があり、脾臓腫大に伴って、腹腔内での脾臓破裂が予想されますので脾臓全摘出をすることとしました。
コロ君に麻酔前投薬をします。
下写真の黄色丸は腹部の腫大を示しています。
腫大した脾臓が横隔膜を通して心臓を圧迫するのを防ぐために手術台を傾斜させます。
腹筋にメスを入れます。
開腹した腹腔内は大きく腫大した脾臓が顔を出しています。
脾臓を全摘出するにあたり、腹腔内から脾臓を持ち上げてある程度体外に出す必要があります。
この時、不用意に力を入れて脾臓を牽引しますと血管を損傷して、大出血する場合がありますので細心の注意が必要です。
脾臓を体外に出しました。
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血管のシーリングが完了して脾臓を拳上、摘出しているところです。
ほとんど出血はなく、無事脾臓の全摘出は終了しました。
今回のコロ君の脾臓の重量は894gありました。
特にこの時点で血腫を疑っておりましたので、脾摘出後の貧血が一番懸念されます。
脾臓を摘出した腹腔内ですが、特に周囲組織からの出血もなく、また腫大した脾臓が無くなった分、すっきりした感があります。
皮膚縫合が終了したところです。
麻酔から覚醒したコロ君です。
頑張りましたね。
摘出した脾臓は病理検査に出しました。
コロ君が入院中に脾血腫の診断が下りました。
腫瘍細胞は見つからないとのことでホッとしました。
1週間後の退院当日のコロ君です。
術後の貧血や播種性血管内凝固不全症候群(DIC)もなく、コロ君は無事退院して頂きました。
術後2週間が経過して抜糸のため、来院されたコロ君です。
退院後も体調は良好です。
縫合部も良好なので抜糸しました。
抜糸前と抜糸後の写真です。
摘出した脾臓です。
内部に血液を貯留しているため、暗赤色で膨満しているのがお分かり頂けると思います。
病理検査に提出するにあたり、メスで割を入れました。
メスを入れた瞬間に脾臓内の貯留した血液の血漿が勢いよく噴出しました。
脾臓の割面はこのように多量の血液を貯留しており、嚢胞の内面は浮腫を呈して血液の循環不全があったことを示しています。
下写真は病理検査の低倍率像です。
充血・うっ血や線維素析出により著明に拡張した複数の脾洞が認められます。
中等度の倍率像です。
脾洞の内皮細胞にも異型性細胞(腫瘍細胞)は認められません。
脾血腫は腹部への鈍性外傷や何らかの血管障害に続発して生ずる病変とされます。
今回、コロ君の血腫が何により生じたかは不明ですが、早急な処置を取れたのが良かったと思います。
脾臓の腫瘤性病変には腫瘍性(血管肉腫、リンパ腫、肥満細胞腫、組織球性肉腫、形質細胞腫)や非腫瘍性(脾血腫、結節性過形成、出血性梗塞など)の様々な物が含まれます。
結局、ある程度の脾臓の分類分けの見当がついたところで病理検査に出すことが肝要です。
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コロ君、お疲れ様でした!
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2017年8月10日 木曜日
犬の子宮腺筋症
こんにちは 院長の伊藤です。
今回ご紹介しますのは、犬の子宮腺筋症です。
一般的には犬の避妊手術を実施する際に、多くの病院は術前に血液検査や患者の症状によってはエコーやレントゲン検査等実施すると思われます。
それでも一般症状は特に問題なく、現場で開腹してみたら子宮に病変が認められたケースもあります。
本日はそんな症例となります。
チワワのヒナちゃん(雌、10歳6か月齢、体重4.5kg)は当初、乳腺炎で当院にて治療を受けられてました。
2週間でヒナちゃんの症状が落ち着いたため、避妊手術を飼主様がご希望されました。
避妊手術をしていない場合、7・8歳以降のシニア世代になると乳腺腫瘍、子宮蓄膿症の発症率が一挙に上がります。
その点を飼主様も懸念され、一般の避妊手術を実施することとなりました。
ヒナちゃんの術前の血液検査も異常は認められません。
一般の避妊手術の流れで進めて行きます。
腹筋を切開したところ、腫大した子宮が飛び出て来ました。
問題はこの子宮外側面が凸凹の形状をしている点です。
触診の限りではいかにも腫瘍であろうという感じがします。
子宮漿膜面(外側面)が腹側も背側も小さな腫瘤が沢山形成されています。
バイクランプで卵巣動静脈をシーリングします。
メスでシーリングした動静脈を切っていきます。
ヒナちゃんの体から比較して子宮は腫大しているのがお分かり頂けると思います。
子宮以外に他の腹腔内臓器に腫瘍病変がないか調べましたが、特に異常な所見は認められませんでした。
皮膚縫合が終了したところです。
麻酔から覚醒したヒナちゃんです。
特に平常時の避妊手術の流れで終了しました。
改めて摘出した子宮です。
子宮内の筋肉層から腫瘤が盛り上がっている感じです。
病理検査に出して専門医の診断を待ちます。
元気に退院されたヒナちゃんです。
2週間後の抜糸の時も非常に元気で経過は良好とのことでした。
1週間ほどで病理検査結果が出ました。
診断は子宮腺筋症及び子宮内膜過形成とのことでした。
下写真は低倍率の子宮の画像です。
子宮平滑筋層に多くの過形成された子宮腺が形成されています。
この病態を子宮腺筋症といいます。
下写真は高倍率の過形成された子宮腺です。
子宮内腔や過形性腺管腔には好酸性の液体が貯留しています。
避妊しないと過剰あるいは長期にわたるエストロゲンやプロゲステロンによる子宮内膜のの刺激が原因で子宮内膜過形成が起こります。
その結果、今回の様に子宮腺や子宮内腔に漿液が貯留します。
この状態の合併症として続発性細菌性子宮内膜炎や子宮蓄膿症が起こります。
腺筋症の子宮を漿膜面から観察した場合、腫瘤状・数珠状に見え子宮平滑筋系腫瘍との鑑別が困難となるそうです。
今回、病理検査に出して結果、子宮の腫瘍でなかったのが判明して良かったと思います。
いずれにせよ、避妊手術は最初の発情を迎える前に実施することが、シニアになって産科系疾患を回避する近道と言えます。
ヒナちゃん、お疲れ様でした。
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今回ご紹介しますのは、犬の子宮腺筋症です。
一般的には犬の避妊手術を実施する際に、多くの病院は術前に血液検査や患者の症状によってはエコーやレントゲン検査等実施すると思われます。
それでも一般症状は特に問題なく、現場で開腹してみたら子宮に病変が認められたケースもあります。
本日はそんな症例となります。
チワワのヒナちゃん(雌、10歳6か月齢、体重4.5kg)は当初、乳腺炎で当院にて治療を受けられてました。
2週間でヒナちゃんの症状が落ち着いたため、避妊手術を飼主様がご希望されました。
避妊手術をしていない場合、7・8歳以降のシニア世代になると乳腺腫瘍、子宮蓄膿症の発症率が一挙に上がります。
その点を飼主様も懸念され、一般の避妊手術を実施することとなりました。
ヒナちゃんの術前の血液検査も異常は認められません。
一般の避妊手術の流れで進めて行きます。
腹筋を切開したところ、腫大した子宮が飛び出て来ました。
問題はこの子宮外側面が凸凹の形状をしている点です。
触診の限りではいかにも腫瘍であろうという感じがします。
子宮漿膜面(外側面)が腹側も背側も小さな腫瘤が沢山形成されています。
バイクランプで卵巣動静脈をシーリングします。
メスでシーリングした動静脈を切っていきます。
ヒナちゃんの体から比較して子宮は腫大しているのがお分かり頂けると思います。
子宮以外に他の腹腔内臓器に腫瘍病変がないか調べましたが、特に異常な所見は認められませんでした。
皮膚縫合が終了したところです。
麻酔から覚醒したヒナちゃんです。
特に平常時の避妊手術の流れで終了しました。
改めて摘出した子宮です。
子宮内の筋肉層から腫瘤が盛り上がっている感じです。
病理検査に出して専門医の診断を待ちます。
元気に退院されたヒナちゃんです。
2週間後の抜糸の時も非常に元気で経過は良好とのことでした。
1週間ほどで病理検査結果が出ました。
診断は子宮腺筋症及び子宮内膜過形成とのことでした。
下写真は低倍率の子宮の画像です。
子宮平滑筋層に多くの過形成された子宮腺が形成されています。
この病態を子宮腺筋症といいます。
下写真は高倍率の過形成された子宮腺です。
子宮内腔や過形性腺管腔には好酸性の液体が貯留しています。
避妊しないと過剰あるいは長期にわたるエストロゲンやプロゲステロンによる子宮内膜のの刺激が原因で子宮内膜過形成が起こります。
その結果、今回の様に子宮腺や子宮内腔に漿液が貯留します。
この状態の合併症として続発性細菌性子宮内膜炎や子宮蓄膿症が起こります。
腺筋症の子宮を漿膜面から観察した場合、腫瘤状・数珠状に見え子宮平滑筋系腫瘍との鑑別が困難となるそうです。
今回、病理検査に出して結果、子宮の腫瘍でなかったのが判明して良かったと思います。
いずれにせよ、避妊手術は最初の発情を迎える前に実施することが、シニアになって産科系疾患を回避する近道と言えます。
ヒナちゃん、お疲れ様でした。
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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL
2017年8月 5日 土曜日
犬の黒色細胞腫-棘細胞腫
こんにちは 院長の伊藤です。
最近の傾向として、外科手術の中心が腫瘍摘出となって来ています。
当院では、犬猫よりエキゾッチクアニマルの腫瘍外科が多いです。
今回は、犬の皮膚腫瘍の中で黒色細胞腫ー棘細胞腫についてコメントします。
以前に犬の口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)、ウサギの悪性黒色腫について記述してますので興味のある方は下線をクリックして下さい。
ミニュチュア・シュナウザーのロック君(13歳、去勢済、体重8.5kg)は下腹部に黒いできものがあるとのことで来院されました。
直径1㎝近くの潰れたキノコのような腫瘤です。
早速、細胞診を実施したところ、検査センターの診断は上皮性腫瘍(角化物産生腫瘍)とのことです。
細胞診の結果を鑑みて、速やかに腫瘍摘出することとしました。
下写真黄色丸がその腫瘍です。
黒色の扁平状の腫瘍です。
悪性黒色腫(メラノーマ)でないと良いのですが。
下写真黄色矢印が腫瘍を示しています。
全身麻酔でロック君は寝てます。
極力、腫瘍周囲のマージンを取って、摘出します。
ジワジワと出血が始まりますので、電気メス(バイポーラ)で止血しながら皮膚を剥離して行きます。
バイポーラによる炭化した痕跡がありますが、特に大きな出血もなく摘出終了です。
胸腹部で縫合時にテンションがかかりますので、皮下組織を鉗子で鈍性剥離して皮膚の進展の余裕を持たせます。
皮膚縫合完了です。
摘出した腫瘍です。
病理検査に出した結果です。
下写真は低倍率の画像です。
キノコ状の病変は高度に肥厚した表皮で覆われています。
上写真のピンク丸の箇所を倍率を上げて、下写真で説明します。
表皮細胞はその90%が角化細胞(ケラチノサイト)で残りの10%は色素細胞(メラノサイト)で構成されます。
下写真の赤色のひし形部がケラチノサイトで表皮を構成しています。
このケラチノサイトには腫瘍化した細胞(異型性)は認められません。
黄色丸は増殖したメラノサイトです。
このメラノサイトの細胞質内にはメラニン色素顆粒を多量に含んでいます。
メラノサイトには腫瘍化した細胞はありません。
以上の所見からケラチノサイトとメラノサイトが同時に良性に増殖しているのが特徴です。
この病変は黒色細胞腫ー棘細胞腫 と呼ばれる非常に珍しい病変とのことです。
両成分の増殖が真に腫瘍性のものなのかも不明で、報告例も少ないそうです。
その臨床的挙動も不明で、完全摘出により根治するとされています。
ロック君は当日退院して頂きました。
2週間後のロック君ですが、皮膚の癒合も問題ありませんでした。
抜糸時のロック君です。
ロック君、お疲れ様でした。
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最近の傾向として、外科手術の中心が腫瘍摘出となって来ています。
当院では、犬猫よりエキゾッチクアニマルの腫瘍外科が多いです。
今回は、犬の皮膚腫瘍の中で黒色細胞腫ー棘細胞腫についてコメントします。
以前に犬の口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)、ウサギの悪性黒色腫について記述してますので興味のある方は下線をクリックして下さい。
ミニュチュア・シュナウザーのロック君(13歳、去勢済、体重8.5kg)は下腹部に黒いできものがあるとのことで来院されました。
直径1㎝近くの潰れたキノコのような腫瘤です。
早速、細胞診を実施したところ、検査センターの診断は上皮性腫瘍(角化物産生腫瘍)とのことです。
細胞診の結果を鑑みて、速やかに腫瘍摘出することとしました。
下写真黄色丸がその腫瘍です。
黒色の扁平状の腫瘍です。
悪性黒色腫(メラノーマ)でないと良いのですが。
下写真黄色矢印が腫瘍を示しています。
全身麻酔でロック君は寝てます。
極力、腫瘍周囲のマージンを取って、摘出します。
ジワジワと出血が始まりますので、電気メス(バイポーラ)で止血しながら皮膚を剥離して行きます。
バイポーラによる炭化した痕跡がありますが、特に大きな出血もなく摘出終了です。
胸腹部で縫合時にテンションがかかりますので、皮下組織を鉗子で鈍性剥離して皮膚の進展の余裕を持たせます。
皮膚縫合完了です。
摘出した腫瘍です。
病理検査に出した結果です。
下写真は低倍率の画像です。
キノコ状の病変は高度に肥厚した表皮で覆われています。
上写真のピンク丸の箇所を倍率を上げて、下写真で説明します。
表皮細胞はその90%が角化細胞(ケラチノサイト)で残りの10%は色素細胞(メラノサイト)で構成されます。
下写真の赤色のひし形部がケラチノサイトで表皮を構成しています。
このケラチノサイトには腫瘍化した細胞(異型性)は認められません。
黄色丸は増殖したメラノサイトです。
このメラノサイトの細胞質内にはメラニン色素顆粒を多量に含んでいます。
メラノサイトには腫瘍化した細胞はありません。
以上の所見からケラチノサイトとメラノサイトが同時に良性に増殖しているのが特徴です。
この病変は黒色細胞腫ー棘細胞腫 と呼ばれる非常に珍しい病変とのことです。
両成分の増殖が真に腫瘍性のものなのかも不明で、報告例も少ないそうです。
その臨床的挙動も不明で、完全摘出により根治するとされています。
ロック君は当日退院して頂きました。
2週間後のロック君ですが、皮膚の癒合も問題ありませんでした。
抜糸時のロック君です。
ロック君、お疲れ様でした。
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