腫瘍疾患/犬
2019年9月 4日 水曜日
犬の口唇切除(その1 トイプードル・毛芽腫)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、口唇部に腫瘍(毛芽腫)が出来き、切除した症例です。
トイプードルのレオ君(5歳、雄、体重5.8kg)は左上顎口唇部に腫瘤が出来たとのことで来院されました。

この腫瘤について細胞診を実施させて頂きました。
その結果は、上皮系腫瘍との結果が検査センターから出ました。
肥満細胞腫やリンパ腫などの早急な対応が必要な腫瘍ではないのですが、細胞診でさらに詳細を追及することは難しいようです。
飼い主様とも話し合った結果、外科的切除することになりました。
問題は口唇部であるため、腫瘍摘出に必要なマージンを出来る限り取って、なおかつ審美眼的にも耐えられる傷跡で抑える必要があります。
レオ君に全身麻酔をかけます。
下写真黄色丸が今回の腫瘍です。

電気メスを使用しますので、余熱で眼に障害を与えないためガーゼで保護します。

腫瘍の大きさは15㎜あり、思いのほか大きいです。


なるべくマージンを広く取るよう硬性メスで皮膚切開を加えます。

皮膚を切開したところで出血が起こります。
今回の切開ラインは、上口唇部を扇形に切り取り、縫合する予定です。
皮膚から切開をはじめ、皮下組織から口腔粘膜面までの全層を切除します。

次いで電気メス(モノポーラ)で皮下組織、口腔粘膜を順次、切開します。


出血している部位はバイポーラ(電気メス)で止血・切開します。



これで腫瘍を切除しました。
大胆に上口唇部を切除してます。
出血も抑えることが出来ています。

扇形にカットした患部を縫合します。

合成吸収糸で口腔粘膜を縫合します。

口腔粘膜の縫合が終了しました。

次いで皮下組織を縫合します。

皮下組織の縫合が完了です。

最後にナイロン糸で皮膚縫合を行います。

皮膚縫合が完了し、手術は終了です。

縫合部の全様です。
上口唇部の段差はそれほど目立ってないと思われます。


麻酔から覚醒したレオ君です。
上口唇部の皮膚が突っ張っている感じがあります。
時間と共に患部の皮膚は伸展して、ある程度自然な形に復旧します。

摘出した腫瘍です。

腫瘍の側面からの写真です。

腫瘍にメスで割を入れます。

割面は下写真のように白く膨隆してます。

下写真は病理標本です。
低倍率像です。
隆起部真皮内に多結節状の腫瘍病巣が形成されています。

下写真は中等度の拡大像です。
細胞間の接着は強く、核が棚状に配列しています。

さらに強拡大像です。
小型膿染核と少ない細胞質を持った毛芽様細胞が索状からリボン状に配列増殖しています。
この腫瘍細胞は毛芽腫と呼ばれる毛包幹細胞由来の良性腫瘍です。

今回、摘出した病変部には切除断端部に腫瘍細胞は認められず、完全切除であると病理医からコメントがありました。
今回の手術で予後は良好であると思われます。
2週間後のレオ君です。
縫合部は綺麗に癒合出来ています。

口唇をめくって、粘膜面の縫合も綺麗に癒合しています。

抜糸後の傷口です。
特に顔面の審美眼的な問題はないようで飼主様にも納得して頂きました。
腫瘍の大きさにより、口唇部を広範囲に切除し、皮弁を利用して欠損部を伸展・縫合する方法を選択する場合があります。
今回はそこまでの必要なかったのは、幸いです。


レオ君、お疲れ様でした!

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トイプードルのレオ君(5歳、雄、体重5.8kg)は左上顎口唇部に腫瘤が出来たとのことで来院されました。

この腫瘤について細胞診を実施させて頂きました。
その結果は、上皮系腫瘍との結果が検査センターから出ました。
肥満細胞腫やリンパ腫などの早急な対応が必要な腫瘍ではないのですが、細胞診でさらに詳細を追及することは難しいようです。
飼い主様とも話し合った結果、外科的切除することになりました。
問題は口唇部であるため、腫瘍摘出に必要なマージンを出来る限り取って、なおかつ審美眼的にも耐えられる傷跡で抑える必要があります。
レオ君に全身麻酔をかけます。
下写真黄色丸が今回の腫瘍です。

電気メスを使用しますので、余熱で眼に障害を与えないためガーゼで保護します。

腫瘍の大きさは15㎜あり、思いのほか大きいです。


なるべくマージンを広く取るよう硬性メスで皮膚切開を加えます。

皮膚を切開したところで出血が起こります。
今回の切開ラインは、上口唇部を扇形に切り取り、縫合する予定です。
皮膚から切開をはじめ、皮下組織から口腔粘膜面までの全層を切除します。

次いで電気メス(モノポーラ)で皮下組織、口腔粘膜を順次、切開します。


出血している部位はバイポーラ(電気メス)で止血・切開します。



これで腫瘍を切除しました。
大胆に上口唇部を切除してます。
出血も抑えることが出来ています。

扇形にカットした患部を縫合します。

合成吸収糸で口腔粘膜を縫合します。

口腔粘膜の縫合が終了しました。

次いで皮下組織を縫合します。

皮下組織の縫合が完了です。

最後にナイロン糸で皮膚縫合を行います。

皮膚縫合が完了し、手術は終了です。

縫合部の全様です。
上口唇部の段差はそれほど目立ってないと思われます。


麻酔から覚醒したレオ君です。
上口唇部の皮膚が突っ張っている感じがあります。
時間と共に患部の皮膚は伸展して、ある程度自然な形に復旧します。

摘出した腫瘍です。

腫瘍の側面からの写真です。

腫瘍にメスで割を入れます。

割面は下写真のように白く膨隆してます。

下写真は病理標本です。
低倍率像です。
隆起部真皮内に多結節状の腫瘍病巣が形成されています。

下写真は中等度の拡大像です。
細胞間の接着は強く、核が棚状に配列しています。

さらに強拡大像です。
小型膿染核と少ない細胞質を持った毛芽様細胞が索状からリボン状に配列増殖しています。
この腫瘍細胞は毛芽腫と呼ばれる毛包幹細胞由来の良性腫瘍です。

今回、摘出した病変部には切除断端部に腫瘍細胞は認められず、完全切除であると病理医からコメントがありました。
今回の手術で予後は良好であると思われます。
2週間後のレオ君です。
縫合部は綺麗に癒合出来ています。

口唇をめくって、粘膜面の縫合も綺麗に癒合しています。

抜糸後の傷口です。
特に顔面の審美眼的な問題はないようで飼主様にも納得して頂きました。
腫瘍の大きさにより、口唇部を広範囲に切除し、皮弁を利用して欠損部を伸展・縫合する方法を選択する場合があります。
今回はそこまでの必要なかったのは、幸いです。


レオ君、お疲れ様でした!

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投稿者 もねペットクリニック