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腫瘍疾患/犬

2017年3月23日 木曜日

犬の脂肪腫

こんにちは 院長の伊藤です。


本日ご紹介しますのは犬の皮下腫瘍の中でも最も一般的に遭遇する脂肪腫です。

脂肪腫は加齢や肥満と共にその発症頻度は増加して行きます。

顎下、腋下や胸垂や内股などに出来やすいように思います。

脂肪腫は良性の腫瘍で特に外科的に摘出する必要はありませんが、時と場合によっては摘出しないと生活の質が大幅に低下するケースがあります。

足の運行が脂肪腫によって妨げられて、普通に歩行が出来なくなったりする場合や側臥状態で寝ることが出来なくなったりする場合がそれに当たります。



イタリアングレイハウンドのケビン君(去勢済 14歳)は左の腋下から胸部にかけての腫瘤が1年くらいかけて次第に大きくなったとのことで来院されました。



細胞診したところ、明らかな脂肪腫でした。

しかし、かなりの大きさであるため歩行のバランスが取れなくなってきているとのことで、飼主様から外科的摘出の希望がありました。

腋下は太い血管や神経が集まっています。

加えてケビン君は14歳という高齢犬です。

慎重に手術を進めなくてはなりません。

血液検査等ケビン君の全身状態は良好でした。

早速、全身麻酔を施します。



イソフルランのガス麻酔も効き始めて来ました。





患部の剃毛に移りました。

スタッフの片手で余るくらいの大きさであることがお分かり頂けると思います。



下写真黄色丸の部位が脂肪腫を示します。

写真では、なかなかその大きさを表現するのが難しいです。





10cm×10cmは余裕である大きさです。

イタリアングレイハウンドのスマートな体格には余分な脂肪です。





皮膚を切皮します。



腫瘍は体幹皮筋の下にある深胸筋の真下に存在しています。





筋膜を切開して、脂肪腫にアプローチします。





何本も太い血管が走行してますので、電気メス(バイポーラ)で凝固・切開します。



脂肪腫の基底部を拳上するとさらに太い血管が走行しています。

これだけの大きさの腫瘍ですから、栄養血管も太いものが張り巡らされています。



バイクランプで栄養血管をシーリングします。



バイクランプは瞬間的に血管をシーリング出来ますので時間短縮に貢献できます。

従来は一本づつ縫合糸で結紮してました。





シーリングとメス切開を繰り返して、だんだん腫瘍の全容が判明してきました。











腫瘍は、私の片手では持ち上げることが難しい位の大きさです。



無事、腫瘍を摘出できました。



摘出後の患部です。

特に不正出血もありません。



切開した筋膜を縫合します。







最後に皮膚縫合します。





大きな腫瘍でしたが、皮膚のテンションをそれ程かけなくても縫合できたのは幸いです。



覚醒し始めたケビン君です。





摘出した脂肪腫の全容です。

重さは800gありました。

下写真は皮膚の直下側です。



こちらは筋肉層に接していた脂肪腫の裏側です。



個人的には、あまり脂肪腫を外科的摘出はしません。

今回のような事例は少ないですが、比較的短期間で急に増殖が進行するケースはあります。

再度、この摘出した腫瘍を検査しましたが脂肪腫でした。

ケビン君はこれで気持ちよく疾走することが出来るようになると思います。

ケビン君、お疲れ様でした!





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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

2016年5月 4日 水曜日

犬の脾臓全摘手術(組織球性肉腫)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、犬の脾臓を全摘出した症例です。

何らかの原因で脾臓が著しく腫大した場合、腹腔内の脾臓破裂を防ぐために全摘出を選択する場合があります。

その詳細については、過去の記事でチワワの脾臓摘出手術(結節性過形成)で載せてありますので参考にして下さい。


ゴールデンレトリバーの雑種であるレオン君(12歳10か月齢、体重23.5kg、去勢済)は食欲不振、嘔吐、下腹部の腫れが主徴で来院されました。





血液検査を行い、白血球数が21,800/μl及びCRP(炎症性蛋白)が7.0㎎/dlオーバーと明らかに体内で炎症が起こっているのが判明しました。

ちなみに赤血球数、ヘモグロビン値、ヘマトクリット値は正常値であり、貧血を疑う所見はありませんでした。

触診で左側下腹部の腫れが気になりましたのでレントゲン撮影を実施しました。





黄色丸で囲んである部位が大きく腫大していおり、明らかに異常です。

該当する臓器は脾臓であると思われます。

引き続き、エコー検査をしました。



エコー像では無エコーと低エコーの領域で占められる病変部が脾臓に認められました。

脾臓をエコー下で針生検して細胞診を行いました。


検査センターの病理医に調べて頂き、結果が1週間後に通知されました。

結果は、高悪性度のリンパ腫や赤血球貪食性組織球肉腫の疑いはない、つまり悪性腫瘍の疑いは低いとのことでした。

いつものことながら、細胞診と実際に摘出した臓器の病理学的診断は違うことが多いです。

細胞診の結果を待っている1週間で、レオン君の全身状態は次第に悪化してきました。

試験的に開腹し、私の肉眼的判断で脾臓を摘出するべきか否かを判断させて頂くこととしました。

脾臓を摘出するにしても、少しでも全身状態の良好な早期に取るべきであると思います。


レオン君に全身麻酔を施します。





開腹を行います。



腹筋を切開したところで非常に大きな塊(黄色矢印)が顔を出しました。



思っていた以上に脾臓が大きく腫大しています。

手荒に扱うと内部で大出血しますので、慎重に体外へ持ち上げます。







最初に顔を出したのは脾臓表面に突出した隆起の一部であることが判明しました。

その隆起の下部に腫大した脾臓が控えていました。



下写真は腫大した脾臓の全容です。

脾臓に大網(脂肪組織)が絡まっており、残念ながら脾臓の高度腫大は、写真では伝わらないかと思います。

この脾臓の状態を診て、全摘出することにしました。



脾臓は胃と複数の血管で繋がっています。

短胃動脈、左胃大網動静脈、脾動静脈の3本の血管をバイクランプ(下黄色矢印)でシーリングしていきます。





従来は縫合糸で血管をまとめて結紮し、血管を離断していたのですが、バイクランプを使用することで確実な血管シーリングが可能となりました。

脾臓摘出にかかる時間も大幅に短縮することが出来ます。



このようにして脾臓の全摘出は終了です。



脾臓摘出後、他の腹腔内臓器・リンパ節等に腫瘍の伝播を確認しましたが、明らかな転移巣は認められませんでした。

高度に腫大した脾臓を摘出することで、レオン君のお腹は随分スッキリ、細くなりました。



出血も最小限に留めることが出来、手術は無事終了しました。



レオン君、お疲れ様でした!



摘出した脾臓です。

高度に腫大(特に縦方向)した脾臓であることが分かります。

脾臓の重量は2kgありました。







腫瘍であることは疑いなく、メスで患部を切開したところです。



この組織片を病理検査に出しました。



病理検査の結果では、異型性を示す紡錘形・多角形細胞が分裂している像(下黄色丸)が多く認められます。



病理検査では組織球性肉腫という診断でした。

組織球性肉腫は間質樹状細胞由来の悪性腫瘍とされます。

脾臓以外にもリンパ節、肝臓、肺、関節周囲などにも発生することが多いです。

この組織球肉腫の好発犬種として、レトリーバー、ウェルシュコーギー、バーニーズマウンテンドッグなどが挙げられます。

レオン君は開腹して確認した限りでは、腹腔内の腫瘍は認められませんが、顕微鏡レベルでは何とも言えません。

念のため、内科的にも抗がん剤の投薬をさせて頂き、経過を診ていく予定です。

術後3日目のレオン君です。

食欲も戻り、表情も良くなってきました。





レオン君は1週間の入院の後、元気に退院することが出来ました。

ベティ(写真中央)と避妊手術で入院中のマリリンちゃん(青色☆)とレオン君(黄色☆)のスリーショットです。

みんなでレオン君の退院を祝っての一コマです。



レオン君は今後、組織球性肉腫がどんな挙動を示すか、経過観察していく必要があります。

レオン君、頑張っていきましょう!




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2015年11月 8日 日曜日

犬の口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日、ご紹介しますのは犬の口腔内に生じた悪性黒色腫の話です。

以前にもウサギの悪性黒色腫についてコメントさせて頂きました。

詳細はこちらをクリックして下さい。


犬の口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)は、最も良く見られる口腔内悪性腫瘍とされます。

通常、メラニンを伴う著しい色素沈着が見られる腫瘍です。

皮膚に発生するメラノーマは良性であることが多い一方で、口腔内メラノーマは大部分が悪性腫瘍と言われます。

メラノーマの発生年齢の平均は約11歳と報告され、高齢犬の疾患とされています。

メラノーマは高率で歯肉に発生します。

多くの飼主様は持続的な口臭や口腔内からの出血、嚥下困難を理由に来院されます。



ミックス犬のあずきちゃん(年齢不明、未避妊)は、口腔内に黒いできものがあり、次第に大きくなってきたとのことで来院されました。

あずきちゃんは迷い犬で、たまたま飼主様宅に迷い込んできたそうです。

そのため、実年齢は定かではありませんが、おそらく10歳は超えているでしょう。


下写真黄色丸が口の横にできた腫瘍です。

メラノーマによる悪臭があずきちゃんの口腔内から漂っています。





この腫瘍はどのようなタイプか細胞診を実施しました。

結果は口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)との病理医からの診断でした。

他の部位への転移がないか、各リンパ節を初め胸腔内のレントゲン撮影を実施しましたが、特に転移は認められませんでした。

口腔内メラノーマは転移率が高い一方で、外科手術を初期のステージから施せば苦痛の緩和のみでなく、生存期間を延長させることも可能です。

あずきちゃんは、外科的にこの口腔内メラノーマの摘出手術を受けられることになりました。



メラノーマに加えて、乳腺腫瘍もあり(下写真黄色丸)、これらの腫瘍を一度に摘出することになりました。





患部の拡大写真です。





乳腺腫瘍については、本来腫瘍の近傍の乳房も合わせて摘出するのが常なんですが、飼主様の希望もあり局所の腫瘍のみ摘出することとなりました。







強い力で患部を牽引すると千切れて出血が予想されましたので、バイクランプを使用して摘出することとしました。

大きな腫瘍ですので、栄養血管も腫瘍内に太いものが入り込んでいるため、バイクランプの80℃の過熱で血管をシーリングして短時間で摘出する予定です。



可能な限り健常な口腔粘膜とメラノーマの境界面をバイクランプでシーリングを実施して行きます。









バイクランプの過熱で、手術室は独特な焦げ臭い匂いで充満します。





さらに細かな止血・切開作業はバイポーラの電気メスで進めます。





メラノーマ(下写真黄色丸)を摘出しました。





さらに歯肉表面に浸潤していると思しき箇所には、半導体レーザーで焼烙します。





これで処置は終了です。



乳腺腫瘍も部分摘出完了です。



麻酔から覚醒したあずきちゃんです。



摘出したメラノーマです。



切開した断面です。

腫瘍の内部までメラニン色素が浸潤しています。



この断面をスタンプ染色して顕微鏡で確認しました。



強拡大像です。

腫瘍細胞の細胞質は色素顆粒が認められます(黄色矢印)。



今回の手術は口腔内ということもあり、場合によっては腫瘍が歯槽骨まで浸潤している可能もあります。

マージンを十分に確保して摘出することができない部位でもあり、今後再発する可能性も考えなくてはなりません。

あずきちゃんは外科手術の補助として、化学療法のうち内服薬でしばらくバックアップしていく予定です。

大変な手術でしたが、良く頑張ってくれました。

あずきちゃん、お疲れ様でした!

最後に飼主のお姉ちゃんたちとのショットです。





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2015年10月17日 土曜日

犬の軟部組織肉腫(その2 ベティの場合)


こんにちは 院長の伊藤です。

皮膚から皮下組織に及ぶ腫瘍は、あらゆる動物種に認められます。

犬の皮膚及び皮下組織に発生する腫瘍の約15%を占めるのが軟部組織肉腫です。

以前、ウェルシュコーギーの軟部組織肉腫についてコメントさせて頂きました。

悪性腫瘍である軟部組織肉腫についての詳細は、こちらを参照下さい。


今回、軟部組織肉腫で紹介するのは当院の看板犬のベティです。



今年の6、7月と2回にわたり、老齢性前庭器症候群という疾患になり一旦、起立不能状態に陥りました。

その時の詳細はこちらを参照下さい。

何とか回復し元気に生活できるようになったのもつかの間、左側胸部にウズラ卵大の腫瘤が見つかりました。

この腫瘤は、わずか数週間で米粒大から一挙にウズラ卵大に大きくなりました。

下写真のマジックで囲んである箇所が皮下の腫瘍です。



大きな丸の中に2個、小さな丸の中に1個腫瘍が認められました。



速やかに細胞診を行いましたが、検査センターの結果が線維肉腫などの間葉系腫瘍であるとのこと。

おそらくは軟部組織肉腫に間違いないと判断して、外科的摘出をすることとしました。

当院を受診された方はご存知だと思いますが、すでに14歳の老犬です。

ヒトの年齢で換算すれば90歳位のお婆ちゃんになります。

局所麻酔を最初は検討したのですが、術野がかなり広いため、皮下に局所麻酔を浸潤させるにはかなりの麻酔量が必要となり、麻酔のリスクを考えると局所麻酔も全身麻酔もあまり変わらないだろうと思われました。

私が14年間世話してきた子ですから、自分の最大能力を出して全身麻酔による手術にあたることとします。

確実な全身麻酔を行うために橈側皮静脈に点滴のルートを確保します。





気管挿管します。





完全に寝ています。

これから麻酔のモニタリングを慎重に行います。



体重が23kgあるので手術台が小さく見えます。



極力マージンは大きく取って、腫瘍を摘出します。





ガーゼから少し先端が出ているのは、半導体レーザーメスです。







手術室は、レーザーメスによる肉の焦げる臭いで充満してます。



下写真の黄色丸は、皮下組織に存在する腫瘍です。



腫瘍が浸潤していると思しき部位は、徹底してレーザーで焼いて摘出します。

ベティの場合、皮下脂肪が多く幸いに筋膜までの浸潤はありませんでした。



腫瘍を切除した跡です。



胸はテンションがかかる部位なので、皮下に吸収糸をかけて皮膚が綺麗に癒合できるようにします。



皮下縫合が完了しました。





皮膚縫合が終了しました。





ベテイは、大きな麻酔による障害もなく無事1時間ほどの手術に耐えてくれました。



摘出した腫瘍です。



黄色丸が腫瘍です。



病理検査に出した結果です。

異型性を示す腫瘍性紡錘形細胞によって、ベティの腫瘤は構成されていました。

軟部組織肉腫のグレードは3段階に分けられます。

グレードを分ける指標は、顕微鏡下で10視野あたりの有糸分裂像の数、そして壊死巣の%で判定されます。

下写真の黄色矢印は盛んに分裂(有糸分裂)している腫瘍細胞です。





結局、ベティのグレード2とのことでした。

グレード2は再発率が34%というデータ―が出ています。

もっと早期に摘出すべきであったと自責の念に駆られます。

今後も患部の再発を慎重に経過観察が必要となります。



術後、暫くの間ベティにはTシャツを着て過ごしてもらいました。



療養中、ベティの誕生日を祝って、患者様のひまわりちゃんからプレゼントを頂きました。



どんなプレゼントなのか、ベティは興味津々です。



頂いてすぐにクッションを利用させて頂いてます。

ひまわりちゃん、ありがとうございました!



術後約2週間で抜糸することとなりました。





傷口も綺麗に治っています。

下毛も順調に生えてきています。



今後、腫瘍が再発しても恐らく、外科的切除は行いません。

麻酔に耐えられないでしょう。

当院の看板犬として14年にわたって頑張ってくれた子です。

それでも近いうちにお別れしなくてはならない日が訪れると思います。

高齢犬の麻酔管理・外科手技について身を以て教えてくれたベティに感謝します。

そして、出来うるなら長生きして欲しいと願う私です。








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2015年6月30日 火曜日

ウェルシュコーギーの血管周皮腫(レーザーによる蒸散処置)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日、ご紹介しますのは顔面に発生した腫瘍をレーザーで処置したケースです。

体表部にできる腫瘍は、その発生部位により、外科的に切除出来る場合とできない場合に明暗が分かれます。

特に顔面にできる腫瘍は、完全切除が難しく腫瘍が大きくなるほどに困難を極めます。

飼い主様としても、愛犬の容貌を崩すまでの手術を希望されない場合も多いです。

愛犬の命と容貌のどちらを取るか、悩まれる事例です。


ウェルシュ・コーギーのエミリーちゃん(15歳、避妊済)は顔面に大きな腫瘍(下写真黄色矢印)が出来たとのことで来院されました。



1年ほどの間、この腫瘍はどんどん大きくなっていったそうです。

正直、よくぞここまで経過観察されたと思いました。







まずどんな腫瘍なのか、細胞診を実施しました。

病理医からは、血管周皮腫との診断でした。

下写真は細胞診の顕微鏡像です。



血管周皮腫は、軟部組織肉腫の一種です。

悪性腫瘍であり、治療法は外科的切除か放射線療法となります。

特に顔面腫瘍ですから、外科的に完全切除は困難です。

縫合のための皮膚マージンを取ることは出来ません。

飼い主様は化学療法も放射線療法も特に希望されず、左眼の視野を防ぐ腫瘍を取れる範囲で良いから切除して欲しいとの意向でした。

そのため、半導体レーザーを使用して腫瘍をレーザーの熱で蒸散させ縮小させる方法を取ることとしました。

下写真は半導体レーザーのユニバーサルハンドピース(ラウンドプローブ)で先端部が丸くなっています。

このラウンドプローブの利点は、熱伝導が浅い所までしか届かないため、先端部を患部に加圧して限局的に熱蒸散することが出来ます。

加えて、エミリーちゃんの様に高齢犬の場合、麻酔のリスクが絡んできますが無麻酔で実施することが可能です。





飼い主様のご了解を頂き、レーザーによる蒸散処置を実施することとなりました。





プローブを加圧した皮膚から200度あまりの熱が伝道され、皮膚が焦げて煙が出て来ました。







途中で何度か水を飲んでもらいます。



プローブが接触している腫瘍部はすぐに炭化します。

炭化した組織より深部組織から出血が始まりました。

しかし、プローブに接触するとすぐに炭化し派手な出血に至る心配はありません。







左手で患部を持つ手に力を加えると蒸散している部位から、一挙に熱変性していない腫瘍が飛び出してきました。







腫瘍の中心部の塊が一挙に排出されて、患部は随分縮小したようです。

後は蒸散した患部からの出血を抑えて今回の処置は終了としました。





処置が終了したエミリーちゃんです。

処置前に比べて患部が小さくなっているのがお分かり頂けるでしょうか?







硬性メス(ステンレス刃)を使用した場合、おそらく出血を止めることが大変な状況になっていたと思われます。

今回はあくまで患部を縮小させることが目的でしたから、目標は達成できたと思います。

下写真の左側が炭化した腫瘍組織、右は圧迫排出した腫瘍組織です。

炭化すると腫瘍組織の水分が蒸発しますので、かなり組織量が炭化したことが予想されます。



エミリーちゃんの患部には高熱が加えられたはずなんですが、本人は特に熱がることもなく1時間以上に及ぶ処置に無麻酔のまま耐えてくれました。

処置中は何度か、水を飲むことで体温を下げて気分転換することで対応できました。

ただ、応急的な対応なので残った腫瘍が再び増殖することは十分考えられ、今後の展開は憂慮されます。



エミリーちゃん、お疲れ様でした。





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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

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