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腫瘍疾患/犬

2015年6月30日 火曜日

ウェルシュコーギーの血管周皮腫(レーザーによる蒸散処置)

こんにちは 院長の伊藤です。

本日、ご紹介しますのは顔面に発生した腫瘍をレーザーで処置したケースです。

体表部にできる腫瘍は、その発生部位により、外科的に切除出来る場合とできない場合に明暗が分かれます。

特に顔面にできる腫瘍は、完全切除が難しく腫瘍が大きくなるほどに困難を極めます。

飼い主様としても、愛犬の容貌を崩すまでの手術を希望されない場合も多いです。

愛犬の命と容貌のどちらを取るか、悩まれる事例です。


ウェルシュ・コーギーのエミリーちゃん(15歳、避妊済)は顔面に大きな腫瘍(下写真黄色矢印)が出来たとのことで来院されました。



1年ほどの間、この腫瘍はどんどん大きくなっていったそうです。

正直、よくぞここまで経過観察されたと思いました。







まずどんな腫瘍なのか、細胞診を実施しました。

病理医からは、血管周皮腫との診断でした。

下写真は細胞診の顕微鏡像です。



血管周皮腫は、軟部組織肉腫の一種です。

悪性腫瘍であり、治療法は外科的切除か放射線療法となります。

特に顔面腫瘍ですから、外科的に完全切除は困難です。

縫合のための皮膚マージンを取ることは出来ません。

飼い主様は化学療法も放射線療法も特に希望されず、左眼の視野を防ぐ腫瘍を取れる範囲で良いから切除して欲しいとの意向でした。

そのため、半導体レーザーを使用して腫瘍をレーザーの熱で蒸散させ縮小させる方法を取ることとしました。

下写真は半導体レーザーのユニバーサルハンドピース(ラウンドプローブ)で先端部が丸くなっています。

このラウンドプローブの利点は、熱伝導が浅い所までしか届かないため、先端部を患部に加圧して限局的に熱蒸散することが出来ます。

加えて、エミリーちゃんの様に高齢犬の場合、麻酔のリスクが絡んできますが無麻酔で実施することが可能です。





飼い主様のご了解を頂き、レーザーによる蒸散処置を実施することとなりました。





プローブを加圧した皮膚から200度あまりの熱が伝道され、皮膚が焦げて煙が出て来ました。







途中で何度か水を飲んでもらいます。



プローブが接触している腫瘍部はすぐに炭化します。

炭化した組織より深部組織から出血が始まりました。

しかし、プローブに接触するとすぐに炭化し派手な出血に至る心配はありません。







左手で患部を持つ手に力を加えると蒸散している部位から、一挙に熱変性していない腫瘍が飛び出してきました。







腫瘍の中心部の塊が一挙に排出されて、患部は随分縮小したようです。

後は蒸散した患部からの出血を抑えて今回の処置は終了としました。





処置が終了したエミリーちゃんです。

処置前に比べて患部が小さくなっているのがお分かり頂けるでしょうか?







硬性メス(ステンレス刃)を使用した場合、おそらく出血を止めることが大変な状況になっていたと思われます。

今回はあくまで患部を縮小させることが目的でしたから、目標は達成できたと思います。

下写真の左側が炭化した腫瘍組織、右は圧迫排出した腫瘍組織です。

炭化すると腫瘍組織の水分が蒸発しますので、かなり組織量が炭化したことが予想されます。



エミリーちゃんの患部には高熱が加えられたはずなんですが、本人は特に熱がることもなく1時間以上に及ぶ処置に無麻酔のまま耐えてくれました。

処置中は何度か、水を飲むことで体温を下げて気分転換することで対応できました。

ただ、応急的な対応なので残った腫瘍が再び増殖することは十分考えられ、今後の展開は憂慮されます。



エミリーちゃん、お疲れ様でした。





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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL

2015年6月18日 木曜日

犬の肛門腫瘍とレーザーメス

こんにちは 院長の伊藤です。

5月から7月にかけ、ほぼ毎日手術の予約が入ってしまい、体力的に乗り切れるか少し不安です。

特にウサギの避妊手術の依頼が多く、5月だけで8件ありました。

手術の効率化・細分化を目指すうえで当院も半導体レーザーメスを導入しました。

レーザーメスについては、その概要をこちらにコメントしましたので興味のある方は参照下さい。


さて本日ご紹介しますのは、犬の肛門腫瘍です。

シーズーのマロン君(去勢済、11歳7か月)は4年位前から肛門に腫瘤が認められ、次第に大きくなってきました。





肛門周囲腺腫の疑い(下写真黄色丸)があり、7歳の時点で去勢手術を実施いたしました。

去勢手術の効果を期待したのですが、腫瘤は少しずつ大きくなり、新たに別の腫瘍(白丸)も出て来ました。



本来、細胞診を実施してから外科的切除に至ります。

ただ肛門腫瘍の場合は、細胞診では悪性・良性の鑑別は確実性に欠ける言われています。

すでに腫瘍は大きくなっており、切除してから病理検査に出すことにしました。



消毒後の患部です。



患部から6時方向にある腫瘍は、牽引しますと蔓が伸びる感じで栄養血管を含んだ茎状の組織(下写真黄色矢印)が認められます。



半導体レーザーに装着するプローブの種類は多く、血管や管腔臓器を切断する時に使用するユニバーサルバイポーラー(下写真)を6時方向の腫瘍に使用しました。



血管ならばこのバイポーラ-で4mm径までシール切断が可能です。

下写真の黄色矢印がユニバーサルバイポーラです。

腫瘍の茎にあたる部位を挟んで切断をしていきます。







こんな感じで切断します。

茎の中の栄養血管も完全にシールされて出血は認められません。



次に腫瘍本体の切除ですが、チゼルハンドピース(下写真黄色矢印)を使用しました。







これで切除完了です。



次に九時方向の腫瘍です。



この腫瘍は細径コニカルプローブ(下写真黄色矢印)を使用して切除します。



こちらの腫瘍は、浅在性で底部周囲組織への固着は認められません。





レーザー切除の煙が漂っていますが、これで腫瘍切除は終了です。





九時方向の腫瘍切除後の皮膚縫合を行いました。



これでお尻周りがすっきりしたね、マロン君!



摘出した腫瘍を病理検査に出しました。

6時方向の腫瘍の病理所見です。

低倍率です。



高倍率です。



こちらの腫瘍は肛門周囲腺上皮腫と診断されました。

軽度の異型性が認められ、悪性腫瘍です。

単発性の腫瘍で、大きくなる前に摘出できて良かったです。



次に9時方向の腫瘍です。

低倍率です。



高倍率です。



こちらの腫瘍は、肛門周囲腺腫であることが判明しました。

肛門腫瘍の中で肛門周囲腺腫の発生率は80%以上を占めます。

肛門周囲腺腫は、雄で非常に多く発生し、雌では稀です。

高齢で未去勢の雄に認められ、アンドロジェン依存性が高いとされてます。

この肛門周囲腺腫は良性腫瘍であり、数か月から数年かけて次第に増大していきます。

増大する一方で、患部は通常無症候性で痛みを伴うことは少ないとされます。


肛門周辺は血管が豊富に集まっており、加えて肛門腫瘍にはさらに栄養血管が集結しています。

したがって外科的摘出にあたり、出血量は多量になる場合があります。

今回、使用した半導体レーザーは出血を極力抑えることが可能であり、それは手術時間の短縮にもつながります。






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