フェレットの疾病
2013年3月20日 水曜日
フェレットの皮膚腫瘍 その3(毛芽腫)
以前に フェレットの皮膚腫瘍 その1(基底細胞腫)で基底細胞腫についてコメントさせて頂きました。
私見も踏まえて、この基底細胞腫と本日ご紹介します毛芽腫について話をさせていただきたいと思います。
フェレットの愛ちゃんは、左前肢に腫瘤が出来、次第に大きくなったため来院されました。
思いのほか、患部は大きく指の屈伸が不自由しているようです。
早速、細胞診を実施しました。
パッと見た感じが、以前のフェレットのラスクちゃんの基底細胞腫と非常に似ているように思われました。
卵円形~長円形の濃染する小型核を有する腫瘍細胞群で、細胞質は乏しい特徴があります。
このスライドを検査センターへ送り、結果を待ちました。
結果は、毛芽腫との診断です。
動物の新WHO分類にされている基底細胞腫は、その腫瘍細胞がどの付属器(眼、耳、手、足等)へのいかなる分化も示さないものを指します。
でも実際は、何らかの付属器の細胞に分化することから基底細胞腫にあたる腫瘍は存在しないと言われています。
また動物の新WHOの分類では、基底細胞腫と基底細胞癌を同一腫瘍の良性型と悪性型に分類しています。
結局、新WHO分類では動物の場合、基底細胞腫に当たる腫瘍が存在しないことから、毛芽腫が基底細胞腫に代わって位置付けられているようです。
この毛芽腫は将来、毛包へ分化を示す良性腫瘍であり、悪性腫瘍となるものは基底細胞癌と分類するのが現状のようです。
そうすると以前、フェレットの基底細胞腫と診断された症例はイコール毛芽腫ということになります。
故にフェレットの皮膚腫瘍 その1(基底細胞腫)と 今回のフェレットの皮膚腫瘍 その3(毛芽腫)は同一の腫瘍ということです。
実際、基底細胞腫と毛芽腫の細胞診のスライドを見ますと、ほとんど同じ細胞にしか見えませんでした。
上述した内容からすれば、しごく当たり前のこととなります。
そもそも同じ検査センターで2人の病理医がいて、それぞれの診断名が基底細胞腫と毛芽腫であったわけで困ったことです。
きっと病理医だって世代間の見解の相違もあるのでしょうね。
結局、愛ちゃんは良性の腫瘍でもあり、かつ別件でインシュリノーマと副腎腫瘍を合併して発症しているフェレットのため、この腫瘍については、経過観察とさせていただいています。
病理学の世界で、同じ腫瘍でも呼び名が異なれば混乱を招きます。
臨床医にも、わかりやすいコメントを添えてほしいと感じるのは私だけでしょうか?
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2013年3月15日 金曜日
フェレットの皮膚腫瘍 その2(皮膚組織球種)
フェレットの皮膚に生じる腫瘍、その第2弾は皮膚組織球種です。
フェレットの蓮太君(4歳、♂)は、耳の後ろ側に腫瘤が出来たとのことで来院されました。
丁度右側の耳の裏側あたりに血豆のような色調の腫瘤が認められます。
本人は患部を気にしているようで肢で引掻いたりして、度々の出血、かさぶたが形成されています。
早速、細胞診を実施してみました。
拡大写真です。
ヒキガエルの卵の様に丸く、青く染まった細胞が多数認められました。
結果を検査センターに送り、その結果は皮膚型組織球種とのことでした。
組織球種は良性腫瘍で犬では日常的に認められますが、フェレットではあまり報告例はないらしく珍しい症例です。
犬の組織球種の場合、何もせずほっておいても数か月で消失するケースもあります。
疑わしきは切除したいというのが本心ですが、飼主様のご意向も尊重して経過観察です。
フェレットの組織球種が今後どんな推移を示すか、興味深いところです。
フェレットの蓮太君(4歳、♂)は、耳の後ろ側に腫瘤が出来たとのことで来院されました。
丁度右側の耳の裏側あたりに血豆のような色調の腫瘤が認められます。
本人は患部を気にしているようで肢で引掻いたりして、度々の出血、かさぶたが形成されています。
早速、細胞診を実施してみました。
拡大写真です。
ヒキガエルの卵の様に丸く、青く染まった細胞が多数認められました。
結果を検査センターに送り、その結果は皮膚型組織球種とのことでした。
組織球種は良性腫瘍で犬では日常的に認められますが、フェレットではあまり報告例はないらしく珍しい症例です。
犬の組織球種の場合、何もせずほっておいても数か月で消失するケースもあります。
疑わしきは切除したいというのが本心ですが、飼主様のご意向も尊重して経過観察です。
フェレットの組織球種が今後どんな推移を示すか、興味深いところです。
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2013年3月 4日 月曜日
フェレットの皮膚腫瘍 その1(基底細胞腫)
フェレットの皮膚腫瘍は一般的によく認められます。
加齢とともに皮膚腫瘍の発生率は増えます。
フェレットの皮膚腫瘍は良性であることが多いとされます。
本日ご紹介するのは、フェレットのラスクちゃん(♀、6歳)です。
頚背部に腫瘤が出来ての来院です。
下写真の黄色丸の部分に腫瘤があります。
表面の中心部が陥没している腫瘤です。
ジワジワと一月ぐらいの間に大きくなったそうです。
早速、細胞診を実施しました。
腫瘍の悪性度を比較する上で、N/C比という表現が使われます。
N/C比は核の面積を細胞質の面積で割った比のことです。
核はその細胞の増殖活性を表します。
細胞質はその細胞の機能の場を表します。
N/C比は、成熟した細胞ではほぼ一定値を示します。
一方、核の増殖が活発でその量は増えてるけど、細胞質の量が減少する場合は、細胞の発達(細胞の分化)が不十分であることを指します。
その場合、N/C比は高い値を出します。
悪性腫瘍は、核はどんどん増殖するけど、それに見合った細胞質が作られないため、N/C比は高くなるわけです。
一般に、N/C比が高いほど悪性度(異型度)が高いとされるのは、この理由からです。
今回の細胞診の結果は、このN/C比の高い細胞からなる集塊が多く認められ、皮脂腺細胞や脂腺上皮腫への分化を伴う基底細胞腫と検査センターからの診断でした。
一般にフェレットの基底細胞腫は4歳以上にもっともよく見られるとされています。
フェレットの場合、この基底細胞腫は良性腫瘍です。
腫瘍としては、徐々に大きくなり、可動性があっても皮下組織にまでは進行はしないとされます。
切除も比較的容易にでき、術後の経過は良好です。
ラスクちゃんの年齢もあり、飼い主様が外科的切除は希望されませんでしたので、このまま経過を見ていくこととしました。
この腫瘍が急激に大きくなることがあれば、切除をお考え下さいね。
加齢とともに皮膚腫瘍の発生率は増えます。
フェレットの皮膚腫瘍は良性であることが多いとされます。
本日ご紹介するのは、フェレットのラスクちゃん(♀、6歳)です。
頚背部に腫瘤が出来ての来院です。
下写真の黄色丸の部分に腫瘤があります。
表面の中心部が陥没している腫瘤です。
ジワジワと一月ぐらいの間に大きくなったそうです。
早速、細胞診を実施しました。
腫瘍の悪性度を比較する上で、N/C比という表現が使われます。
N/C比は核の面積を細胞質の面積で割った比のことです。
核はその細胞の増殖活性を表します。
細胞質はその細胞の機能の場を表します。
N/C比は、成熟した細胞ではほぼ一定値を示します。
一方、核の増殖が活発でその量は増えてるけど、細胞質の量が減少する場合は、細胞の発達(細胞の分化)が不十分であることを指します。
その場合、N/C比は高い値を出します。
悪性腫瘍は、核はどんどん増殖するけど、それに見合った細胞質が作られないため、N/C比は高くなるわけです。
一般に、N/C比が高いほど悪性度(異型度)が高いとされるのは、この理由からです。
今回の細胞診の結果は、このN/C比の高い細胞からなる集塊が多く認められ、皮脂腺細胞や脂腺上皮腫への分化を伴う基底細胞腫と検査センターからの診断でした。
一般にフェレットの基底細胞腫は4歳以上にもっともよく見られるとされています。
フェレットの場合、この基底細胞腫は良性腫瘍です。
腫瘍としては、徐々に大きくなり、可動性があっても皮下組織にまでは進行はしないとされます。
切除も比較的容易にでき、術後の経過は良好です。
ラスクちゃんの年齢もあり、飼い主様が外科的切除は希望されませんでしたので、このまま経過を見ていくこととしました。
この腫瘍が急激に大きくなることがあれば、切除をお考え下さいね。
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2013年3月 2日 土曜日
フェレットの第2前臼歯根尖周囲病巣
フェレットにも歯石が付着します。
歯石による疾病(歯周病)は犬猫同様生じます。
以前、犬の第4前臼歯根尖周囲病巣についてコメントさせて頂きました。
歯の並び方を表記したものを歯列といいます。
動物種によって、この歯列は異なります。
永久歯は犬は42本、猫は30本になります。
一方、フェレットは切歯が上下左右3本、犬歯が上下左右1本、前臼歯が上下左右3本、後臼歯が上顎に1本づつ、下顎に左右2本づつで合計34本あります。
本日ご紹介するフェレットのライム君は、右眼の下が腫れているとのことで来院されました。
黄色矢印の部分ですが、触診では中に波動感のある腫れを感じます。
口腔内を診たところ、歯石が予想以上に付着していましたので、この右眼下の腫れも前臼歯の根尖周囲の炎症で膿が溜まっているものと推察されました。
レントゲン撮影を実施しました。
黄色丸の箇所が、第2前臼歯の根尖周囲に骨吸収像が認められました。
早速、歯石除去と第2前臼歯抜歯を行うことになりました。
気管挿管を施し、全身麻酔下で右眼下の腫瘤に注射針で穿刺しました。
しっかり膿が貯留していました。
次に超音波スケーラーで歯石除去します。
右上顎第2前臼歯は下写真の様に歯石除去後、すでに歯髄(歯の中)まで茶褐色に変色しており、歯髄炎になっていました。
この第2前臼歯を抜歯するために、ダイアモンドバーで歯根部を分割します。
分割した第2前臼歯をエレベーターで脱臼させ、抜歯します。
抜歯後に歯根部があった部位から膿が流れ出てきました。
ライム君は体重がわずか850gしかない小さな体です。
本日の処置は本人にとっても辛かったと思いますが、よく頑張ってくれました。
ライム君は5歳になりますが、この年齢になりますと歯石が高度に付着する個体に遭遇します。
歯周病はフェレットにも犬猫にも生じます。
常日頃のデンタルケアを心がけていただきたいと切望します。
実年齢よりもとても若く見えるライム君でした。
歯石による疾病(歯周病)は犬猫同様生じます。
以前、犬の第4前臼歯根尖周囲病巣についてコメントさせて頂きました。
歯の並び方を表記したものを歯列といいます。
動物種によって、この歯列は異なります。
永久歯は犬は42本、猫は30本になります。
一方、フェレットは切歯が上下左右3本、犬歯が上下左右1本、前臼歯が上下左右3本、後臼歯が上顎に1本づつ、下顎に左右2本づつで合計34本あります。
本日ご紹介するフェレットのライム君は、右眼の下が腫れているとのことで来院されました。
黄色矢印の部分ですが、触診では中に波動感のある腫れを感じます。
口腔内を診たところ、歯石が予想以上に付着していましたので、この右眼下の腫れも前臼歯の根尖周囲の炎症で膿が溜まっているものと推察されました。
レントゲン撮影を実施しました。
黄色丸の箇所が、第2前臼歯の根尖周囲に骨吸収像が認められました。
早速、歯石除去と第2前臼歯抜歯を行うことになりました。
気管挿管を施し、全身麻酔下で右眼下の腫瘤に注射針で穿刺しました。
しっかり膿が貯留していました。
次に超音波スケーラーで歯石除去します。
右上顎第2前臼歯は下写真の様に歯石除去後、すでに歯髄(歯の中)まで茶褐色に変色しており、歯髄炎になっていました。
この第2前臼歯を抜歯するために、ダイアモンドバーで歯根部を分割します。
分割した第2前臼歯をエレベーターで脱臼させ、抜歯します。
抜歯後に歯根部があった部位から膿が流れ出てきました。
ライム君は体重がわずか850gしかない小さな体です。
本日の処置は本人にとっても辛かったと思いますが、よく頑張ってくれました。
ライム君は5歳になりますが、この年齢になりますと歯石が高度に付着する個体に遭遇します。
歯周病はフェレットにも犬猫にも生じます。
常日頃のデンタルケアを心がけていただきたいと切望します。
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