フェレットの疾病
2014年8月 5日 火曜日
フェレットのシュウ酸カルシウム尿石症(その2.膀胱切開手術)
こんにちは 院長の伊藤です。
先日、フェレットのシュウ酸カルシウム尿石症(その1.前哨戦)で排尿障害のちゃちゃ丸君についてコメントさせて頂きました。
前回までのあらすじは
フェレットのちゃちゃ丸君(2歳、去勢済、体重1kg)はおしっこが出来なくて来院されました。
シュウ酸カルシウム結晶(下写真)が砂粒状になって、尿路閉塞したのが排尿障害の原因でした。
尿道にカテーテルを入れて生理食塩水をフラッシュして、尿道に詰まっていた結晶を膀胱内に押しこみました。
その後、圧迫排尿を何度も繰り返して、自力で排尿は可能(下写真)になりました。
さて、翌日のちゃちゃ丸君の処置が今回のテーマです。
尿道閉塞は解除できたと思っていたのもつかの間で、翌日のちゃちゃ丸君はまた排尿困難に陥ってしまいました。
結局、膀胱に溜まっている尿石を排出しない限り、いつかは尿道に降りてきて閉塞する可能性は高いです。
ちゃちゃ丸君の尿石は、シュウ酸カルシウムなので療法食や薬で溶解することが基本的にできません。
結局、外科的に膀胱を切開して内部に溜まっている尿石を排出するのがベストです。
そんなわけで全身麻酔下で、外科的に膀胱切開することになりました。
フェレットのシュウ酸カルシウム尿石症(その2.膀胱切開手術)の始まりです。
膨満した膀胱を穿刺して尿を吸引します。
度重なる排尿障害で、血管が怒張して色もくすんだ膀胱です。
メスで膀胱を切開します。
ペニスにカテーテルを挿入します。
尿道にカテーテルは無事挿入できましたので、これから尿道から膀胱にかけて生理食塩水でフラッシュして、洗浄していきます。
尿道から生理食塩水を注入したら、膀胱切開部から結晶と粘膜の塊が排出されてきました。
いろいろと膀胱から砂粒状の結晶(結石にはまだなっていない)が排出されました。
もうこれで何も出ないという所まで、しっかりと洗浄を繰り返します。
下写真は、尿道からフラッシュした生理食塩水が、膀胱切開部から勢いよく飛び出したところです。
尿道から膀胱まで、スムーズに生理食塩水が循環するのを確認して膀胱を縫合します。
無事、手術は終了しました。
その後、入院中もちゃちゃ丸君は排尿は問題なく、気持ちよくできるようになりました。
元気にちゃちゃ丸君は退院され、つい先日縫合部の抜糸に来院されました。
フェレットのシュウ酸カルシウム(その1)にも載せましたが、今後の課題は食餌の管理になると思います。
シュウ酸カルシウム結晶は療法食での溶解はできないので、今後再び結晶が生成されないよう動物性高蛋白食で維持していただきたいと思います。
排尿できなくて苦しい思いをしたちゃちゃ丸君ですが、これからは気持ちよくおしっこできるようになって欲しいですね!
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先日、フェレットのシュウ酸カルシウム尿石症(その1.前哨戦)で排尿障害のちゃちゃ丸君についてコメントさせて頂きました。
前回までのあらすじは
フェレットのちゃちゃ丸君(2歳、去勢済、体重1kg)はおしっこが出来なくて来院されました。
シュウ酸カルシウム結晶(下写真)が砂粒状になって、尿路閉塞したのが排尿障害の原因でした。
尿道にカテーテルを入れて生理食塩水をフラッシュして、尿道に詰まっていた結晶を膀胱内に押しこみました。
その後、圧迫排尿を何度も繰り返して、自力で排尿は可能(下写真)になりました。
さて、翌日のちゃちゃ丸君の処置が今回のテーマです。
尿道閉塞は解除できたと思っていたのもつかの間で、翌日のちゃちゃ丸君はまた排尿困難に陥ってしまいました。
結局、膀胱に溜まっている尿石を排出しない限り、いつかは尿道に降りてきて閉塞する可能性は高いです。
ちゃちゃ丸君の尿石は、シュウ酸カルシウムなので療法食や薬で溶解することが基本的にできません。
結局、外科的に膀胱を切開して内部に溜まっている尿石を排出するのがベストです。
そんなわけで全身麻酔下で、外科的に膀胱切開することになりました。
フェレットのシュウ酸カルシウム尿石症(その2.膀胱切開手術)の始まりです。
膨満した膀胱を穿刺して尿を吸引します。
度重なる排尿障害で、血管が怒張して色もくすんだ膀胱です。
メスで膀胱を切開します。
ペニスにカテーテルを挿入します。
尿道にカテーテルは無事挿入できましたので、これから尿道から膀胱にかけて生理食塩水でフラッシュして、洗浄していきます。
尿道から生理食塩水を注入したら、膀胱切開部から結晶と粘膜の塊が排出されてきました。
いろいろと膀胱から砂粒状の結晶(結石にはまだなっていない)が排出されました。
もうこれで何も出ないという所まで、しっかりと洗浄を繰り返します。
下写真は、尿道からフラッシュした生理食塩水が、膀胱切開部から勢いよく飛び出したところです。
尿道から膀胱まで、スムーズに生理食塩水が循環するのを確認して膀胱を縫合します。
無事、手術は終了しました。
その後、入院中もちゃちゃ丸君は排尿は問題なく、気持ちよくできるようになりました。
元気にちゃちゃ丸君は退院され、つい先日縫合部の抜糸に来院されました。
フェレットのシュウ酸カルシウム(その1)にも載せましたが、今後の課題は食餌の管理になると思います。
シュウ酸カルシウム結晶は療法食での溶解はできないので、今後再び結晶が生成されないよう動物性高蛋白食で維持していただきたいと思います。
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投稿者 もねペットクリニック | 記事URL
2014年8月 2日 土曜日
フェレットのシュウ酸カルシウム尿石症(その1.前哨戦)
こんにちは 院長の伊藤です。
今年の夏は、犬猫以外にも尿石症の症例が多いです。
普通は飲水量の減少する冬に多発するのですが。
その中で、フェレットのシュウ酸カルシウムによる尿石症をご紹介します。
フェレットのちゃちゃ丸君(2歳、去勢済、1.0㎏)は尿が出なくなり来院されました。
実は、このちゃちゃ丸君は今年の2月に排尿障害で来院され、ストルバイト尿石症の治療を受けて頂いた既往歴があります。
詳細はこちらをご覧く下さい。
さて、ちゃちゃ丸君ですが、以前のストラバイト結晶生成の理由は、尿素分解酵素産生微生物による尿路感染が尿をアルカリ化してミネラルの再吸収を阻害するような腎障害を起こし、尿石症に至ったというものです。
この時ちゃちゃ丸君には、抗生剤・止血剤・ストラバイト結晶を溶解する療法食の組み合わせで治療を展開しました。
この疾病治療の長期的展望としては、高品質な動物性蛋白質の食餌に変えることです。
その後、ちゃちゃ丸君は、猫用のストラバイト溶解食から維持食を食べて頂いたようですが、以前以上に排尿困難となり苦悶の表情です。
まずは尿道カテーテルを留置して、排尿を可能にしなくてはなりません。
そのために全身麻酔を施すことにしました。
下腹部は膀胱が尿で膨満しており、外貌からも膀胱が腫れている(下写真黄色丸)のがお分かり頂けると思います。
尿道カテーテルを挿入するためには、膀胱内の圧を取るために皮膚から針を穿刺して尿を吸引します。
ちゃちゃ丸君の蓄尿は40ml近くに及びました。
フェレットのペニスは犬同様、骨があり下写真の様になっています。
このペニスに尿道カテーテルを挿入します。
一般には尿道が狭いため、静脈留置用の留置針を使用します。
尿道内に砂粒が存在しており、カテーテルを進めるのは若干抵抗を感じました。
尿吸引後の膀胱内には尿は残ってませんので、生理食塩水をフラッシュします。
加えて、エコーで膀胱内の状態を観察します。
膀胱内には、たくさんの細かな砂粒が(下写真黄色矢印)、注入した生理食塩水の中をぐるぐる回っているのが確認されました。
生理食塩水が膀胱内に抵抗なくフラッシュ出来ているということは、尿道内は砂粒が閉塞を起こしてはいないということです。
一旦、カテーテルを抜去して、下腹部を圧迫して、膀胱内の生理食塩水の排出を試みました。
勢いよく圧迫排尿することが出来ました。
尿を採取して顕微鏡で確認したところ、下写真にありますように正八面体の結晶がたくさん見つかりました。
拡大写真です。黄色矢印が示しているのが正八面体のシュウ酸カルシウム結晶(二水和物)です。
半年ほど前の尿石症はストラバイト結晶でしたが、今回はシュウ酸カルシウム結晶とはどういうことなのか?
ストラバイトはアルカリ尿中に生成されます。
この半年の間、飼い主様は、尿を酸性に維持するストラバイト維持食を与えて頂いてたようです。
シュウ酸カルシウムは中性から酸性尿で産生されます。
加えて動物性高蛋白食や脂質のおやつを与えるとなり易いとも言われます。
フェレットは肉食獣なので、高蛋白食は必須ですから回避できません。
食生活が関与しているように思えますが、フェレットのストラバイト以外の尿石症は、原因が今のところ不明です。
遺伝的な代謝異常が存在する可能性はあるそうです。
生理食塩水を何回も膀胱内に注入して、スムーズに圧迫排尿を繰り返し、エコーで膀胱を確認しました。
膀胱内のシュウ酸カルシウム結晶はほぼ洗い出すことが出来たように思います(下写真)。
その後、ちゃちゃ丸君は自力で排尿できるようになりました。
排尿障害は何とかクリアできたと思ったのですが・・・・・・・・・・・・・・。
実は今回のこの処置は前哨戦に過ぎませんでした。
その後の我々の奮闘は、次回のブログにご期待下さい!
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普通は飲水量の減少する冬に多発するのですが。
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フェレットのちゃちゃ丸君(2歳、去勢済、1.0㎏)は尿が出なくなり来院されました。
実は、このちゃちゃ丸君は今年の2月に排尿障害で来院され、ストルバイト尿石症の治療を受けて頂いた既往歴があります。
詳細はこちらをご覧く下さい。
さて、ちゃちゃ丸君ですが、以前のストラバイト結晶生成の理由は、尿素分解酵素産生微生物による尿路感染が尿をアルカリ化してミネラルの再吸収を阻害するような腎障害を起こし、尿石症に至ったというものです。
この時ちゃちゃ丸君には、抗生剤・止血剤・ストラバイト結晶を溶解する療法食の組み合わせで治療を展開しました。
この疾病治療の長期的展望としては、高品質な動物性蛋白質の食餌に変えることです。
その後、ちゃちゃ丸君は、猫用のストラバイト溶解食から維持食を食べて頂いたようですが、以前以上に排尿困難となり苦悶の表情です。
まずは尿道カテーテルを留置して、排尿を可能にしなくてはなりません。
そのために全身麻酔を施すことにしました。
下腹部は膀胱が尿で膨満しており、外貌からも膀胱が腫れている(下写真黄色丸)のがお分かり頂けると思います。
尿道カテーテルを挿入するためには、膀胱内の圧を取るために皮膚から針を穿刺して尿を吸引します。
ちゃちゃ丸君の蓄尿は40ml近くに及びました。
フェレットのペニスは犬同様、骨があり下写真の様になっています。
このペニスに尿道カテーテルを挿入します。
一般には尿道が狭いため、静脈留置用の留置針を使用します。
尿道内に砂粒が存在しており、カテーテルを進めるのは若干抵抗を感じました。
尿吸引後の膀胱内には尿は残ってませんので、生理食塩水をフラッシュします。
加えて、エコーで膀胱内の状態を観察します。
膀胱内には、たくさんの細かな砂粒が(下写真黄色矢印)、注入した生理食塩水の中をぐるぐる回っているのが確認されました。
生理食塩水が膀胱内に抵抗なくフラッシュ出来ているということは、尿道内は砂粒が閉塞を起こしてはいないということです。
一旦、カテーテルを抜去して、下腹部を圧迫して、膀胱内の生理食塩水の排出を試みました。
勢いよく圧迫排尿することが出来ました。
尿を採取して顕微鏡で確認したところ、下写真にありますように正八面体の結晶がたくさん見つかりました。
拡大写真です。黄色矢印が示しているのが正八面体のシュウ酸カルシウム結晶(二水和物)です。
半年ほど前の尿石症はストラバイト結晶でしたが、今回はシュウ酸カルシウム結晶とはどういうことなのか?
ストラバイトはアルカリ尿中に生成されます。
この半年の間、飼い主様は、尿を酸性に維持するストラバイト維持食を与えて頂いてたようです。
シュウ酸カルシウムは中性から酸性尿で産生されます。
加えて動物性高蛋白食や脂質のおやつを与えるとなり易いとも言われます。
フェレットは肉食獣なので、高蛋白食は必須ですから回避できません。
食生活が関与しているように思えますが、フェレットのストラバイト以外の尿石症は、原因が今のところ不明です。
遺伝的な代謝異常が存在する可能性はあるそうです。
生理食塩水を何回も膀胱内に注入して、スムーズに圧迫排尿を繰り返し、エコーで膀胱を確認しました。
膀胱内のシュウ酸カルシウム結晶はほぼ洗い出すことが出来たように思います(下写真)。
その後、ちゃちゃ丸君は自力で排尿できるようになりました。
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実は今回のこの処置は前哨戦に過ぎませんでした。
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