イグアナ・トカゲの疾病
フタアゴヒゲトカゲのクル病(代謝性骨疾患)
カルシウムの摂取量が少なかったり、カルシウムの吸収に必要不可欠なビタミンD3が足らない場合、体内のカルシウム吸収量が減少します。
血液中のカルシウム量が不足すれば、骨に貯蔵してあるカルシウムが血液中に放出されることとなります。
カルシウムが抜けた骨は非常に柔らかくなり、体の運動を支えることが出来なくなり、状況によっては容易に骨折したりします。
この状態をクル病(骨代謝疾患)と言います。
今回ご紹介しますのは、フタアゴヒゲトカゲのベッテルちゃんです。
もうすぐ1歳になる個体ですが、半年ほど前に後肢が麻痺を起こし、歩行困難になりました。
そのまま半年の月日が経過して、当院を受診されました。
上から見ますと、後肢が開脚姿勢のまま動かすことができません。
半年前と言えば丁度体を作る大事な時期です。
先に述べたビタミンD3は紫外線を受けることで体内でも生成されます。
太陽光を十分に浴びることのできる環境下では、食餌中にビタミンD3が不足していても、クル病はまず起こりません。
しかし、飼育環境によっては十分な太陽光が受けれない部屋も多く、紫外線ランプが必要となります。
一般に、クル病の治療は十分な紫外線の照射、適切なビタミンD3の摂取、食餌への適量のカルシウム添加で回復します。
ベッテルちゃんの骨の状態を確認するためにレントゲン撮影をしました。
特に後肢を拡大しますと下の通りです。
ついでに側面の画像です。
レントゲン写真を診る限りでは、骨密度が極端に低く(骨がスカスカ状態)はありません。
加えて骨折や脱臼も認められません。
脊椎骨のダメージを受けた形跡もなさそうです。
むしろ、クル病を半年前に発症してから少しづつ状態は改善してきたと思われます。
クル病になりますと、低カルシウム血症になり、神経症状が出ることも多いです。
神経症状とは、四肢のしびれ・痙攣発作・不全麻痺等です。
加えて、嘔吐・嗜眠状態を示す個体もいます。
ベッテルちゃんはクル病による低カルシウム血症から後肢の不全麻痺に至ったと考えられます。
現在、この不全麻痺に治療をさせていただいてます。
少しでも後肢の感覚が戻ってきて欲しいです。
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グリーンイグアナの直腸脱(その2)
先回の直腸脱は脱出の状態が重度であり、外科手術が必要な症例でした。
今回は、どちらかというと鳥類の総排泄腔脱(直腸脱)の処置に近い軽度な症例です。
今回のグリーンイグアナ君は、数日前から直腸脱を認め当院を受診されました。
黄色矢印で示した部分が脱出した直腸です。
すでにチョコレート色になっていますが、これは床面との摩擦で出血があり、加えて直腸脱出の時間の経過もあり、直腸の浮腫も進行した結果(黄色丸内)です。
早速、患部を綺麗に洗浄します。
浮腫を起こしている部位にブドウ糖液を十分にかけます(下写真)。
これは、ブドウ糖が高張液のため、浸透圧差を利用して浮腫を少しでも改善するための処置です。
脱出直腸が少しでも小さくなってくれたら、整復の可能性は高くなります。
ナメクジに塩をかけるのと同じ原理と思って下さい。
注射筒を用いてやさしく脱出直腸を元の位置に整復します。
無事、直腸を整復できました。
しかし、これだけでは腹圧がかかると再脱出する恐れがあります。
総排泄腔(肛門)の両端に縫合糸で1,2針縫って、少々肛門に絞りを加えます。
黄色丸内が縫合した部位です。
注射筒を抜いて、再脱出のないことを確認して終了です。
処置後のグリーンイグアナ君は、心なしお尻が気になるようでへっぴり腰な格好です。
この状態で経過を観察し、1週間以内に縫合糸を抜糸します。
下の写真は6日後に再診でみえたグリーンイグアナ君です。
縫合した肛門周囲も異常がなく、直腸の再脱出もなかったそうです。
早速、縫合糸を抜糸します。
抜糸直後、かなり暴れましたが、特に直腸は脱出もなく落ち着いた感じです。
その後も経過は良好で、整復処置は成功です。
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ヒョウモントカゲモドキの胃内出血
当院にもこのヒョウモントカゲモドキが来院されることが増えています。
成体になりますと20~25cmの全長になり、地上性ヤモリの中では大型腫です。
今回、ご紹介させていただくのは胃内出血の症例です。
ハイイエローという品種で背部表面のきれいな黄色が特徴です。
まだ生後4カ月の幼体ですが、皮膚が非常に薄く外貌から腹部に内出血があるとのことで来院されました。
ヒョウモントカゲモドキの餌は一般に動物性蛋白質として生きたコオロギを与えます。
生餌はチョットという飼い主は冷凍のコオロギを利用することもあります。
やはり。生餌の方が食いつきは良いようです。
今回のような幼体ではコオロギを丸呑みこみした後で,体の内部を咬まれてしまうことがあります。
ヒョウモントカゲモドキによらず、他のトカゲでもいわゆるマウスロットと呼ばれる口腔内の生餌による受傷で食欲不振に至るケースは多いです。
口腔内ならまだしも、食道や胃内で咬まれては辛いところです。
この幼体もどうやらコオロギを飲み込んでから出血が生じたようです。
コオロギも生命力が強い個体だったのか、この幼体の胃の消化力が弱かったのでしょう。
胃粘膜を保護するH2ブロッカーと抗生剤、止血剤の投薬で完治しました。
話は変わりますが、ヒョウモントカゲモドキに限らず、爬虫類はクリプトスポリジウム(原虫)の媒介をするという報告があります。
最近では住宅の貯水槽にいるクリプトスポリジウムが水を飲んだ住人に下痢を起こした例もあります。
水系感染症の病原体として重要視されている原虫です。
そういった点から、現在は要注意外来生物にヒョウモントカゲモドキは指定されています。
飼育上の衛生管理にはお気を付け下さい。
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グリーンイグアナのビタミンD/カルシウム不足(代謝性骨疾患)
今回ご紹介しますのは、グリーンイグアナのビタミンD・カルシウム不足(代謝性骨疾患)です。
ビタミンDとカルシウムは密接な関係にあります。
丈夫な骨を作るためには、いくらカルシウムを与えてもビタミンDが不足していますとカルシウムは吸収されません。
結果としてカルシウム不足の症状がでます。
クル病という症状ですが、エキゾチックアニマルではMBD(Metabolic Bone Disease)と呼ばれています。
MBDは世界中のイグアナの80%あまりが罹患しているといわれます。
成長の段階で症状は異なります。
幼体はカルシウムを多量に必要としますが、MBDになりますと背骨や尻尾の変形・手足の変形・顎の軟化が認められます。
症状が進行すると四肢の麻痺・痙攣・骨折が起こります。
このMBDは自然界にはない疾病です。
100%人為的な原因(食餌・温度管理・紫外線症者が不適切)によるものです。
このグリーンイグアナは元気がなく食欲が消失とのことで来院されました。
ぱっと見て気になるのは、下顎の腫れと変形です。
これは、まさにMBDの特徴とする下顎の腫脹です。
別名グロテスクスマイルと呼ばれています。
治療法は環境と餌の改善です。
冬場であれば十分な紫外線が供給できないので、爬虫類用の蛍光灯を設置する必要があります。
餌はカルシウムを十分に含む野菜を与えます。
チンゲンサイ、ミズナ、コマツナ、ハダイコン等です。
重症例ではビタミンDやカルシウムの投与を必要とします。
残念ながら幼体時の骨の変形は元に戻らないことが多いので、MBDの予防をしっかりして頂きたく思います。
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グリーンイグアナの直腸脱
彼らは異物を丸飲み込みして、下痢をすることも多く、最悪開腹手術で腸を切除して異物を摘出する場合もあります。
今回のイグアナは下痢が続いて(過去に何度となくビニール袋を飲んでいます、)、直腸が脱出し戻らなくなってしまった症例です。
直腸が長時間にわたり脱出してしまい、床面との接触・後足で踏みつけた受傷が重なり、直腸が壊死を始めました。
最終手段として、直腸を切除する手術を実施しました。
術後の経過は良好で下痢も収まり、排便も気持ち良く出来るようになりました。
エキゾチックアニマルの手術でいつも気を使うのは、麻酔です。
特に発情期にある爬虫類は麻酔が全然かからないこともあります。
メスをお腹に入れた瞬間、ゴジラのごとく大暴れされたこともあります。
まだまだ爬虫類の麻酔は犬猫のように確立されておりませんが、欧米の情報などをかき集めて実践しています。
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