イグアナ・トカゲの疾病
アルマジロトカゲの代謝性骨疾患(MBD)
こんにちは 院長の伊藤です。
最近、トカゲ類の来院が多いのですが、本日ご紹介させて頂くのはアルマジロトカゲです。
アルマジロトカゲは、南アフリカ共和国に住むトカゲです。
最大全長20cm級となり、昼行性で岩場に棲息します。
敵に襲われると尾を咥えて丸くなる姿勢をとることから、アルマジロトカゲという名がついたそうです。
飼育下繁殖個体がまれに流通していますが、価格も高価とされています。
そんな珍しいアルマジロトカゲです。
アルマジロトカゲのマルちゃん(雌、年齢不明)は前足に力が入らないとのことで来院されました。
下写真の黄色丸の前足の足首(手根関節)をご覧ください。
黄色矢印の示すように手根関節から下がナックリングを示しています。
実際、歩行させると両前足には力が入らず、手根関節に支点にした匍匐前進のスタイルをとってしまいます。
関節部に疼痛を伴っているようです。
まずはレントゲン撮影を実施することにしました。
レントゲン上では骨折や脱臼は認められません。
一方、骨密度は低いようです。
マルちゃんは実年齢は不明なんですが、全長は10㎝ちょっとぐらいのため、まだ成長期と思われます。
以前に代謝性骨疾患(MBD)についてコメントさせて頂きました。
興味のある方はこちらをご覧ください。
トカゲ類で特に成長期に多いのが、この代謝性骨疾患(MBD)です。
紫外線照射量とビタミンD3の摂取量が不十分だと腸管からのカルシウム吸収率が低下し、結果として骨からカルシウムが溶けだし(脱灰)、骨が脆弱化して疼痛や神経症状が現れるのがMBDです。
マルちゃんはMBDにより、四肢骨が脆弱化して疼痛を生じ、ナックリングに至ったと推察されます。
治療法としては、紫外線ランプによる紫外線照射量を増やすこと、ビタミンD3に加えてカルシウム剤の投与が必要となります。
爬虫類や鳥類で跛行や神経症状が絡んでくるとこのMBDが関与していることが多いように思います。
神経症状については、こちらを参照下さい。
MBDが進行して骨の変形、特に脊椎湾曲症や骨の脆弱化に伴う骨折が、症状として出るようになると治療の効果が期待できない場合もありますので要注意です。
爬虫類は飼育法(飼育環境や給餌)にまつわる問題から疾病が引き起こされることが非常に多いのでご注意ください!
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投稿者 院長 | 記事URL
テグートカゲの直腸脱
こんにちは 院長の伊藤です。
皆さん、トカゲの仲間であるテグーについてご存知でしょうか?
正確にはテグートカゲ科Tupinambis属の総称です。
南米に棲息し、一般には草食ですが、生卵などの動物性蛋白質も好むとされてます。
体長は1mぐらいになり、体重も2㎏台まで成長します。
恐竜の面影を残しており、個人的に好きなトカゲです。
アルゼンチン・ブラック&ホワイトというカラーのテグートカゲのポポちゃん(10か月齢、体重1.9㎏、性別不明)は直腸が飛び出て戻らないとのことで来院されました。
トカゲの仲間はお腹を仰向けにすると怒り出す個体が多く、尻尾による攻撃には注意が必要となります。
したがって、直腸脱の場合は神輿を担ぐようにして個体を伏せの状態で上に持ち上げ患部を確認します。
下写真黄色丸の部位が脱出した直腸です。
体格も大きな個体なので、直腸脱になりますと胴体の体重直接、直腸に荷重したり床材との干渉があったりで直腸は傷だらけになっています。
早速、直腸を消毒して傷の確認をします。
幸い直腸の縫合を必要とするほどの傷は見当たりません。
脱出した直腸を総排泄腔の中に優しく戻していくこととしました。
直腸の表面には、滑りをよくするためにオイルを塗ります。
直腸を紙ガーゼで包みこんで、優しく押し戻していきます。
綺麗に戻りました。
ただこのままでは、腹圧をかけていきんだりすれば再脱出の可能性がありますので、総排泄腔の両端を縫合します。
下写真の黄色丸が総排泄腔の両端を縫合した部位です。
この縫合した状態で排便・排尿が可能であれば、1週間ほど経過観察して、縫合糸を抜糸して治療は終了です。
しばらく保定されたのでポポちゃんは疲れたようですね。
さて、1週間後のポポちゃんです。
患部からの直腸脱出もなく、排便・排尿も問題なく出来ているとのことでした。
早速、抜糸に移ります。
治療はこれで終了となります。
一般に直腸脱の原因は腹圧をかけていきむ所作を繰り返して起こることが多いです。
例えば下痢をするとか、産卵をするといった場合、あるいは怒りっぽい性格で周囲を威嚇する習性があるなどの場合です。
今回のポポちゃんの場合、下痢はしていなかったとのことです。
原因は不明ですが、今後の経過観察は必要です。
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投稿者 院長 | 記事URL
グリーンイグアナの大脱走
こんにちは 院長の伊藤です。
本日はグリーンイグアナの逃走劇とその結果の外傷等の治療について報告します。
グリーンイグアナの との君 (雄、10歳)は自宅から脱走し、警察に捕獲されたとのことです。
その逃走劇の最中、無理な姿勢により左前足の拳上、口腔内の出血・受傷で来院されました。
ご覧のとおり、との君は立派な体格で体長は1.6mあります。
体重は5.5kgあります。
こんな大きなイグアナが街中を歩いていたら、イグアナを知らない一般人が見たらパニックってしまうでしょうね。
イグアナは基本的にはおとなしい性格ですが、発情期であったり、不快な思いをさせると攻撃的に暴れることもあります。
イグアナは尻尾の筋肉が強靭で、安易に触れるとはねつけられます。
尻尾の鱗、特に背側面は剣の様に皮膚をせん断する場合があります。
警官に捕獲された時に暴れたらしく、左前肢が動かない状態とのことでレントゲン撮影を実施することとしました。
との君は疼痛で動けないということもあると思いますが、撮影中はとてもおとなしくしてくれています。
レントゲン像は下の通りです。
結果として、骨の脱臼・骨折は認められませんでした。
おそらくは暴れた時に靭帯を痛めた可能性が高いと思われます。
次は口腔内の出血の確認です。
口をゆっくり開けて確認します。
下写真の黄色丸の部分が受傷しています。
咬む力も強いですから、咬んだ時に強く引っ張られたんでしょうね。
見るからに痛々しい状態です。
よくブログで私がご紹介するマウスロットよりびらん状態が酷いです。
いずれにせよ、非ステロイド系鎮痛薬と抗生剤を投薬して治療を開始させて頂くこととしました。
早くとの君、回復して下さいね!
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投稿者 院長 | 記事URL
ヒョウモントカゲモドキの脱皮不全
こんにちは、院長の伊藤です。
脱皮は爬虫類にとって非常に重要なシステムです。
表皮が更新される時に、陳旧化した表皮がまるごと脱落して行きます。
ヘビの場合は脱皮する時は、衣服を脱ぐように全身の表皮を一気に脱ぎ去ります。
トカゲの場合は、体節ごとにバラバラに剥離します。
ところが、この脱皮がスムーズにいかない場合(脱皮不全)もあります。
この脱皮不全ですが、状況によっては残った皮が組織を締めつけて血行障害を起こし、虚血性壊死を招きます。
その結果、瞼や指先や尻尾が脱落してしまう事もあります。
つまりは、爬虫類にとって脱皮不全は命に関わる一大事であることを認識下さい。
ヒョウモントカゲモドキのユキちゃん(2歳、雌)は右眼の瞼が脱皮不全で開かなくなり来院されました。
下写真黄色丸の部分が上瞼が脱皮不全を起こして、皮が引っ付いたままになっています。
ここでピンセットなどで無理やり剥がそうとすると、組織を傷める場合が多いです。
特に瞼の場合は、次の脱皮まで瞼が開かなくなることもあるようです。
温浴をして時間をかけて、皮をふやかしてから剥がす方法が本人にはやさしいと思います。
しかし、今回は診察中での処置を希望されてますので、早急に剥離させる方法が要求されます。
そこで流動パラフィンを使用することにしました。
流動パラフィンを脱皮不全の箇所に滴下して、浸透させてからゆっくりと剥がしていきます。
微妙な力加減でじわじわと剥離していきます。
無事患部の脱皮不全をクリアしました。
皮を綺麗に剥離した後は、瞼も少し開けることが出来るようになってきました。
瞼の突っ張りが無くなって、しきりに舌で右眼周辺を舐めまわしています。
脱皮不全の予防のためにも、水槽にキッチンペーパーを敷いて水を十分に含ませたウェットシェルターを準備できるのが理想です。
あるいは、先ほど申し上げたように、温浴をして脱皮不全の部位をふやかしてから皮を剥がす方法も推奨されます。
いずれにしても、爬虫類にとって脱皮不全は侮れませんのでご注意を!!
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投稿者 院長 | 記事URL
フトアゴヒゲトカゲのダニ感染症
爬虫類にはダニの感染はつきものです。
犬猫のように哺乳類のダニ感染と見た目が若干異なり、自然の摂理の奥深さには驚かされることがあります。
今回、ご紹介しますのはフトアゴヒゲトカゲのダニ感染症です。
はるばる長野県からお越しいただいたフトアゴヒゲトカゲ君(年齢不明、雄)は、体表部に広範囲にわたってダニの感染が認められるとのことで来院されました。
おそらくこの写真でパッと見、ダニとわかる方はいないと思います。
下写真の黄色丸内がダニの寄生部位です。
鱗の間に赤い物体が付着しているのがお分かり頂けるでしょうか?
次に尻尾です。
この赤い物体をセロテープを皮膚に押し付けて付着したものを調べてみました。
下写真の様にぎっしりとダニが付着しています。
フトアゴヒゲトカゲの血液を吸引して体全体が赤くなっています。
顕微鏡で見てみました。
体は扇形をしています。
犬に寄生するフタトゲチマダニなどとは形状容姿が随分異なります。
体がつぶれてしまったダニです。
私なりになぜこのような形状なのか、考えてみました。
爬虫類の皮膚から吸血する場合、鱗が当然邪魔になります。
ダニが皮膚にアプローチするには鱗の間を攻めるしかありません。
喰いつけば当然、宿主の爬虫類は引掻いて外そうとします。
この扇形の形状ならば、鱗の間に綺麗にフィットします。
加えて宿主による攻撃にも、わずかに鱗の間から出ている体はうまくかわすことが可能でしょう。
宿主の血液を吸って赤くなった体は、あたかも爬虫類の号彩色に紛れて外部からは、違和感なく見えると思います。
このダニを如何に駆除するかです。
イベルメクチンの内服薬を処方させて頂きました。
爬虫類のダニ寄生は飼育環境下からの感染というよりは、ショップで販売されている時点で既に寄生してることが多いようです。
この駆虫薬で対処する一方、飼育環境の清掃、消毒が必要です。
ケージ・シェルター・水入れ等をこまめに掃除して下さい。
ダニを一匹ずつピンセットで摘出される方もみえますが、皮膚・鱗を傷つける場合もありますので注意が必要です。
ベビーオイルやオリーブオイルを体に塗布して、ダニを呼吸困難にさせ駆除される方もみえますが、完全に落とすことは難しいです。
むしろ、早めに爬虫類を診察する病院で駆虫薬を投薬された方が、効率よく駆除できると思います。
フトアゴ君、早くダニを落としてスッキリして下さいね!
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はるばる長野県からお越しいただいたフトアゴヒゲトカゲ君(年齢不明、雄)は、体表部に広範囲にわたってダニの感染が認められるとのことで来院されました。
おそらくこの写真でパッと見、ダニとわかる方はいないと思います。
下写真の黄色丸内がダニの寄生部位です。
鱗の間に赤い物体が付着しているのがお分かり頂けるでしょうか?
次に尻尾です。
この赤い物体をセロテープを皮膚に押し付けて付着したものを調べてみました。
下写真の様にぎっしりとダニが付着しています。
フトアゴヒゲトカゲの血液を吸引して体全体が赤くなっています。
顕微鏡で見てみました。
体は扇形をしています。
犬に寄生するフタトゲチマダニなどとは形状容姿が随分異なります。
体がつぶれてしまったダニです。
私なりになぜこのような形状なのか、考えてみました。
爬虫類の皮膚から吸血する場合、鱗が当然邪魔になります。
ダニが皮膚にアプローチするには鱗の間を攻めるしかありません。
喰いつけば当然、宿主の爬虫類は引掻いて外そうとします。
この扇形の形状ならば、鱗の間に綺麗にフィットします。
加えて宿主による攻撃にも、わずかに鱗の間から出ている体はうまくかわすことが可能でしょう。
宿主の血液を吸って赤くなった体は、あたかも爬虫類の号彩色に紛れて外部からは、違和感なく見えると思います。
このダニを如何に駆除するかです。
イベルメクチンの内服薬を処方させて頂きました。
爬虫類のダニ寄生は飼育環境下からの感染というよりは、ショップで販売されている時点で既に寄生してることが多いようです。
この駆虫薬で対処する一方、飼育環境の清掃、消毒が必要です。
ケージ・シェルター・水入れ等をこまめに掃除して下さい。
ダニを一匹ずつピンセットで摘出される方もみえますが、皮膚・鱗を傷つける場合もありますので注意が必要です。
ベビーオイルやオリーブオイルを体に塗布して、ダニを呼吸困難にさせ駆除される方もみえますが、完全に落とすことは難しいです。
むしろ、早めに爬虫類を診察する病院で駆虫薬を投薬された方が、効率よく駆除できると思います。
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