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イグアナ・トカゲの疾病

ヒョウモントカゲモドキの卵胞うっ滞

こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ヒョウモントカゲモドキの卵胞うっ滞です。

爬虫類の産卵において難産、もしくは卵詰まりの状態を総称して卵塞と言います。

卵塞には大きく3つの病態に分けられます。

一つは生理的問題(飼育環境の問題、ホルモン分泌異常などが原因)の機能的卵塞

二つ目は骨盤等の変形や過大卵・異形卵等が原因の機械的卵塞

三つ目が今回ご紹介する卵胞うっ滞です。

卵胞うっ滞とは、産卵時に卵巣内の卵胞が卵管に移動せずに、卵殻を形成しない状態で体腔内に停滞する状態を指します。



ヒョウモントカゲモドキのきなこちゃん(雌、7歳齢以上、体重100g)は腹部が腫れてきたとのことで来院されました。



右の体側部に腫瘤があり、右後足で皮膚を引掻くようで皮膚に一部が裂けて出血が起こっています。



下写真黄色丸がその患部です。





患部に検耳鏡の光を当てて腹水の有無や血管の走行などをチェックします。



ライトを照射する限りでは、脂肪組織の塊が皮下に形成されているように感じられました。



次に細胞診を実施しました。

患部に慎重に注射針を穿刺して患部の細胞を確認したところ、脂肪の組織しか確認できませんでした。



レントゲン撮影を実施しました。



患部には白いマスが認識されます。



患部の拡大像(黄色丸)です。



卵殻が形成された卵が体腔内に存在すれば、明らかに楕円形の卵として画像が認識されます。

しかしながら、今回は卵殻の存在自体はレントゲン上には認められません。



皮下に脂肪腫が出来たのか、あるいは他に腹腔内に問題があるのか、悩ましい状態です。



一旦、内服薬を処方して経過観察としました。

きなこちゃんは午前中に受診されましたが、帰宅されてから患部を足で引掻き、皮膚が裂け腹部から脂肪の塊が出てきたとのことで当日の午後に再受診されました。

下写真の下腹部にぶら下がっているのが裂けた患部からの脂肪組織です。



出血も始まっているため、速やかに試験的開腹をすることにしました。

イソフルランによるガス麻酔を行います。



麻酔導入が完了しました。



きなこちゃんの頭部を自家製のガスマスクに入れて、維持麻酔を開始します。



仰向けにしたところ、患部の皮膚が裂けて腹腔内の脂肪が突出しています。

良く見ると裂け目の頭側側には、球面体上の物体が確認できます。



滅菌生食で患部を洗浄します。



これは明らかに内臓脂肪にあたります。

レントゲン上に確認されたのは、この脂肪組織です。



注意深く、裂け目の下に存在する組織を探査します。



上記黄色丸で示した球面上の物体まで皮膚を切開します。











下写真黄色矢印は卵殻の形成されない状態の卵胞です。



この状態を卵胞うっ滞といいます。

卵巣内で作られた過剰な卵胞が体腔内で停滞している状態です。



正常な卵胞の発育が行われず、腹腔内に停滞した卵胞が他の臓器を圧迫し、腹筋が一部裂けたものと思われます。

その裂け目から、内臓脂肪が顔を出して、皮下の脂肪の塊として認められたものです。



卵胞を外科的に摘出するため、周辺の血管走行を滅菌綿棒で確認します。



下写真黄色丸の比較的太い血管をバイクランプを使用してシーリングします。





卵胞は左側の卵巣で作られたものが腹腔内に停滞していました。

右卵巣は今回は問題ありませんでした。



卵胞摘出後、一部出血が認められたためヘマブロック®を出血部につけて止血しています。

ヘマブロックは微小孔デンプン球と吸水性を有するカルボキシメチルセルロースナトリウムの混合粉末です。

出血部に噴霧することで速やかに止血できます。

バイクランプやバイポーラなどの電気メスで止血すると爬虫類の場合は諸臓器が隣接していますので、健常な臓器を熱変性させる可能性があります。

ヘマブロックはこのような場合の補助止血剤として使用しました。



卵胞摘出後、皮膚を縫合します。





手術はこれで終了します。



酸素吸入を継続してきなこちゃんの覚醒を待ちます。



今回、摘出した卵胞です。





覚醒し始めました。





術後数時間経過したきなこちゃんです。



無事退院し、術後2週間後の抜糸で来院したきなこちゃんです。



爬虫類の場合、定期的に脱皮がおこります。

外科的に皮膚縫合した後に脱皮がタイミング的におこると皮膚の癒合不全に至る場合があります。



術後2週間でちょうど脱皮が始まりました。

皮膚は癒合出来てましたので、抜糸を行いました。



縫合部は脱皮不全が認められますが、これはすぐに剥離するため問題ありません。



卵胞うっ滞が原因となり、腹腔内出血を起こし死亡するケースがあります。

あるいは卵胞が破裂して卵黄性体腔炎を引き起こすこともあり、今回の様に外科的アプローチが必要となる場合があります。

卵胞うっ滞の予防としてホルモン製剤の投薬も試行的に研究されているそうですが、治療法としてはまだ確立されていません。


術後のきなこちゃんの経過は良好です。

きなこちゃん、お疲れ様でした!


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投稿者 院長

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